秘密 -J’aime vous-
『前回のあらすじ』
ベーゼレブル・ツヴァイ視点で、エックス視点と同じ内容の物語が語られる。
されどそれは、エックス本人が気付いていない、気付けない部分を映し、ベーゼレブル自身の心境をも映していた。
次の幕が開けば今の共闘は終わり、また敵同士となる。それを理解した上で、彼は心から強く思う。
最後の試練として、エックスの前に立ち塞がる。その時こそ、最高の戦いをしたい……と。
白い衝撃波に包まれ、開かれた七番目の幕。その舞台は──現代。けれど、不思議な事に人気がない。
光が差し込む空を見上げる。太陽の位置的に時刻は昼、今居る場所はスクランブル交差点のど真ん中。
なのに……人が居ない。ベーゼレブルなら何か知っているかも!そう思い振り返るが、誰も居ない。
(俺達や絆達は居るぜ!宿主様)
(けど……不思議ね。この世界、不気味な位に人の気配を感じないわ)
(……コレハ俺ノ予想ナノダガ、今ノ時代ハ人類ガ第三次世界大戦ヲ起コシタ後デハ?)
沸き上がる不安。それを拭う様に左腕から頭に届く、ゼロ達の声にホッと胸を撫で下ろす。
一人ではなく、会話相手が居る安心感。恥ずかしながら、まだまだ精進が足りないと痛感する。
霊華とルシファーの発言はある意味、説得力があった。改めて街を見渡してみると……
一見綺麗なビル郡に見えるも、眼に真実の紋章を発現させ街を視ると壊滅状態。これは……一体?
(俺ニ変ワレ、王!!)
「ど──!?」
「魔閃衝!!」
咄嗟の言動だった。突然ルシファーが叫び、此方が「どう言う事だよ!」と言う前に紫色の光に包まれ。
主導権はルシファーに移り、左手を突きの動作で正面へ繰り出し、放ち、矢の如く飛ぶは紫色の衝撃波。
照明も無い商店街の中。真っ黒闇へ一直線に飛び込み──鉄を叩く様な高い音と小さな爆発音が響く。
少し間が空き、商店街の暗闇から陽の差す表通りへ歩き出て来る……現状最悪な人物が一人。
「先手を打たれる前に撃つ……流石は私が認めた強者」
「三騎士・シナナメ……」
そう。三騎士の中でも実力者であり、剣士としても凄腕の実力者。逆に思えば、よく退けれ続けたものだ。
初回の時間稼ぎを耐え抜きから始まり、何度か戦ったり行動を視て来たが……今回は今までの比じゃない。
平均的な女学生の体から放たれる殺気は、完全に此方を殺りに来てる。逃がす気は毛頭無く、撤退も無い。
文字通り生きるか死ぬかの二択。ルシファーの先手が無ければ、恐らく殺られていたと思う程。
「決着の時……か?」
「それ以外に、何がある?」
「それもそう……だな」
シナナメが来た。その事実から察し、確認の意味も含めて訊ねるルシファーに、真顔のまま即答で返答。
確かにムゲン世界で『オメガゼロ抹殺計画の実行日は近い……その時こそ、決着をつける』と言った。
が……到着後直はキツい!ゼノスの大群を倒しムゲン世界を破壊した際の肉体的、精神的疲労がある。
日を改め全快してから~と言うのは戦場では通じない。それを理解した上で、ルシファーも納得し。
日本刀を右手に召喚。それが双方合意の合図となり、お互いに刀を構え──斬り込んだ。
「何──!?」
「えっ?これ……どう言う事?」
刀が激突しそうな瞬間。突然クラッカーの様な軽い音が鳴り、双方の間で発生する赤い煙が発生。
ルシファーの驚く言葉ごと煙に包まれ、今攻め込まれるのはマズイ。そう認識し、煙の外へ出ると……
何故か主導権は自分に戻り、全く意味が分からない。困惑する中、遠くから手を振り近付く存在が一人。
「どう?ビックリしたでしょ」
「今のは……水葉師匠が?」
「そう。お義姉ちゃんのマジック!と言うか、師匠は禁止。お義姉ちゃんと呼ぶ事」
それは……水葉先輩。元気一杯の笑顔で話し掛けられ、理解が追い付かない頭のまま聞き返せば──
水葉先輩の手品だと言い、師匠呼びではなくお義姉ちゃん呼びと訂正された。……何故?
師匠と言うと、お年寄りってのが漫画とかではよくあるよね。そう言うイメージだろうか?
改めて思い返すと、アイは水葉先輩を若作りと言っていた……先輩は高校生だが、どう言う意味だ?
「てか……シナナメは?」
「んふふ~……ひ・み・つ」
先程まで居たシナナメは何処へ行ったのか?再戦にしろ避けるにしろ、居場所を知りたくて聞くも。
右目を閉じて此方にウインクし、秘密と言った。女性は秘密が多いとは聞くが、先輩も相当多い。
納得しない自分の右手を取り、笑顔で駆け出す先輩。何処へ行くのか訊ねようとも一瞬思ったが……
また「ひ・み・つ」とか言われそうで、何も言わず、渋々引っ張られるがまま付いて行く。
「もしもし?うん、見付けたよ。案内と操作宜しく」
「……それ、フュージョン・フォン?」
「似てるでしょ?少しでも貴くんと同じモノを持ちたくて、魔改造しちゃった」
空いてる右手でスカートのポケットから携帯を取り出し、何処かへ電話をしている様子。
案内は分かる。が操作とは一体……そんな折、持ってる携帯電話に目が行く。
形状・色共に、自分や寧が持っているフュージョン・フォンに瓜二つ。まあ、自分のは壊されたが……
駄目もとで訊ねると、あっさり答えた。発言から察するに、ただの携帯を瓜二つレベルに改造したと。
「…………」
「ごめんね。私だって本当は全部伝えたいし、教えたい。けど今はまだ、その時じゃない」
「じゃあ──教えてくれる時って、いつ?」
多分、これ以上聞いてもはぐらかされる。本当の事は教えてくれない。そう理解し、黙る。
此方の心情を察してか、先輩は謝罪の言葉と自身も伝えたい・教えたい旨を伝えた上。
まだ話す時ではない、と付け加えた。ならば話してくれるのはいつなのか?敢えて聞いたら……
「融合四天王・マジックを倒した時……かな?」
ある意味、無理難題をぶつけられた。殺しても死なないアイツを……マジックを倒した時?
半ばそれはもう、教える気はない。そう遠回しに言われているとさえ思った程。
しかし改めて考えてみる。副王に任されたこの旅、魔神王討伐の中でマジックと戦闘になった事がない。
此方から一方的に、防衛・救助目的で攻めた事はあれど、向こうから襲われた経験がない。と思い出す。
「着いたよ~」
「着いたって、此処……」
「入ろ入ろ」
到着したと言う其処は──大型スーパー。違和感や不信感が強く沸くも、先輩に引っ張られ中へ。
スーパーの中には誰も居ない。いや、正確には仲間達の気配は感じるが、他人は居ない。
奥へ案内される中、店内をチラッと見る。食品は沢山残っていた。賞味期限までは分からんがな……
階段を登り二階へ。スタッフルームらしき部屋に入ると、数人の仲間達が居て思わず頬が緩む。
「……たっくん。もう──戦わないで」
「マキナ……悪い。まだ、終われそうにないや」
机の上に置かれた紙の地図と、自分達やシナナメの駒。それを見て、シナナメが消えた理由を知る。
此方の視線に気付き、戦う事を止める様に言われた。けれど……まだ、終われない。
本気で戦えるのは──後、四回。まだ手足は動く、五感も残ってる。次本気で戦えば……今度は何を失う?
多分、マキナは此方の事情を知っている。だから戦うなと言い、おぞましい程の魔力を解き放つ。
「ちょっとちょっとちょっと!アンタ達、仲間内でドンパチやるつもり!?」
「マキナがやる気なら……やむを得まいな」
「たっくんが戦い続けるなら、それを止める為に……戦う」
臨戦態勢に入り、此方も力の蛇口を少し解放。一触即発な空気を察し、桔梗が双方の間へ入る。
仲間内でのドンパチは、そう珍しい話じゃない。過去の旅でも何度かあった、相違の違い。
が……今はそんな場合ではない。溜め息混じりに力の放出を止め、スタッフルームから出て行く。
屋上へ出て、転落防止用の網を右手で掴む──右眼は未来を、左眼が過去を映す景色を視ながら。
「もう二度と……みんなと同じ景色は視れないんだよな。クソッ……みんなの姿も、普通に視れないなんて」
ワールドロードに近付く程、本気で戦う度。自分は普通の人間から遠ざかって行く。
眼に映る景色や人物も、お婆さんや幼児に見える。そう見えないのは、不老になったモノや妖怪だけ。
あの場に居た水葉先輩や妖怪の桔梗、同僚たるマキナの姿は変わらず見えていたが……
ニーア、ゆかり、巴の姿は老婆に見えていた。……改めて考えると先輩、なんで見た目が普通に見えたんだ?
苦悩を抱えつつ、遠くを視ていた為か。背後に近付く足音に気付かず、右肩に手を置かれ振り向く。
「どうかしたの?本当にあの場で戦うのかもって思っちゃったけど」
「…………ゆかりか」
「本当は助かったんでしょ?ゾークと三騎士・シナナメが戦い、ゾークを倒してくれたって」
其処には此方へ向けて優しく微笑み、心配する心情ゆかりの姿があった。のだが……
老婆としての姿が強く見えた為、少し認識するのに間が空く。発言的に此方の事情を知ってるのだろう。
ムゲン世界でナイトメアゼノ・ゾークとシナナメが戦い、ゾークを打ち倒してくれて助かったと。
思考にすら出さず、内心感謝していたのを見破られ、苦笑いで返すと溜め息混じりに遠くへ視線を向ける。
「運命って……残酷だよね」
「そうだな。望んでもいない事を乗り越えられる前提で押し進めやがる」
此方へ体ごと振り向き、三歩後ろへ下がりながら運命は残酷だと言う。自分もゆかりの方へ向き直り。
運命が持ち込む厄介事、心へ深い傷跡を残す行為に文句を述べ共感している旨を示し。
左手でコートを掴み、左側へ広げて腰に装着済みのバックルを見せ、仮面を右手に召喚する。と同時に……
ゆかりも上着のチャックを全て降ろし広げた。腰にはハート模様のカードケース、左手には白兎の仮面が。
「……驚かないんだね」
「お互い様だろ。お互いに秘密を抱えて、心に深い傷跡を残し続けているだけだ」
「…………うん、そうだね。流石は、私が心から好きになったスレイヤー様だよ」
お互いに仮面を被りながら、淡々と話を続ける。会話中の時間だけは、またその時ではないと示す様に。
顎と口を保護する部品を互いに装着。そのままでは違和感が強く、端から見ればただのコスプレ。
自分は右手でバックルの左右にあるパーツの右側を掴み、ゆかりは左手でケースから一枚のカードを引く。
暫しの沈黙が屋上を支配すると一陣の風が二人の間を通り抜けた──それを始まりの合図とし。
「「変身!!」」
パーツを引っ張られたバックルは開き、連動して第二装甲ことパワードスーツを召喚し体に纏う。
ゆかりはカードをケースの正面に近付け、恐らく電子マネーの様に読み込ませたのだろう。
何処からかバラバラの白いパーツを召喚し、足下から装着されて行き……コードネーム、白兎へ。
変身完了後、俺から歩み出すと白兎も此方へと歩き出す。双方手が届き、掴み合い出来る距離へ。
「……好きだぞ。ゆかり」
「うん、ありがとう。私も──君が好きだよ」
悔いや後悔が残らない様、お互い胸の内を吐き出し、右手で握手をする。これで……最後にする為に。
強く握った手に力を込め合い、離さず逃がさない。仮面で互いに素顔は見えないが──分かる事がある。
ゆかりもわざと敗けてやる気は微塵もない。それを理解すると思わず口角が上がり、微笑む。
敵味方関係無く似た者同士惹かれ合い、好き合う。故に……真っ向からぶつかり合おうと。




