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ワールドロード  作者: オメガ
七章・ferita che non si chiude
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秘密 -J’aime vous-

 『前回のあらすじ』

 ベーゼレブル・ツヴァイ視点で、エックス視点と同じ内容の物語が語られる。

 されどそれは、エックス本人が気付いていない、気付けない部分を映し、ベーゼレブル自身の心境をも映していた。

 次の幕が開けば今の共闘は終わり、また敵同士となる。それを理解した上で、彼は心から強く思う。

 最後の試練として、エックスの前に立ち塞がる。その時こそ、最高の戦いをしたい……と。



 白い衝撃波に包まれ、開かれた七番目の幕。その舞台は──現代。けれど、不思議な事に人気がない。

 光が差し込む空を見上げる。太陽の位置的に時刻は昼、今居る場所はスクランブル交差点のど真ん中。

 なのに……人が居ない。ベーゼレブルなら何か知っているかも!そう思い振り返るが、誰も居ない。


(俺達や絆達は居るぜ!宿主様)


(けど……不思議ね。この世界、不気味な位に人の気配を感じないわ)


(……コレハ俺ノ予想ナノダガ、今ノ時代ハ人類ガ第三次世界大戦ヲ起コシタ後デハ?)


 沸き上がる不安。それを拭う様に左腕から頭に届く、ゼロ達の声にホッと胸を撫で下ろす。

 一人ではなく、会話相手が居る安心感。恥ずかしながら、まだまだ精進が足りないと痛感する。

 霊華とルシファーの発言はある意味、説得力があった。改めて街を見渡してみると……

 一見綺麗なビル郡に見えるも、眼に真実の紋章を発現させ街を視ると壊滅状態。これは……一体?


(俺ニ変ワレ、王!!)


「ど──!?」


「魔閃衝!!」


 咄嗟の言動だった。突然ルシファーが叫び、此方が「どう言う事だよ!」と言う前に紫色の光に包まれ。

 主導権はルシファーに移り、左手を突きの動作で正面へ繰り出し、放ち、矢の如く飛ぶは紫色の衝撃波。

 照明も無い商店街の中。真っ黒闇へ一直線に飛び込み──鉄を叩く様な高い音と小さな爆発音が響く。

 少し間が空き、商店街の暗闇から陽の差す表通りへ歩き出て来る……現状最悪な人物が一人。


「先手を打たれる前に撃つ……流石は私が認めた強者」


「三騎士・シナナメ……」


 そう。三騎士の中でも実力者であり、剣士としても凄腕の実力者。逆に思えば、よく退けれ続けたものだ。

 初回の時間稼ぎを耐え抜きから始まり、何度か戦ったり行動を視て来たが……今回は今までの比じゃない。

 平均的な女学生の体から放たれる殺気は、完全に此方を殺りに来てる。逃がす気は毛頭無く、撤退も無い。

 文字通り生きるか死ぬかの二択。ルシファーの先手が無ければ、恐らく殺られていたと思う程。


「決着の時……か?」


「それ以外に、何がある?」


「それもそう……だな」


 シナナメが来た。その事実から察し、確認の意味も含めて訊ねるルシファーに、真顔のまま即答で返答。

 確かにムゲン世界で『オメガゼロ抹殺計画の実行日は近い……その時こそ、決着をつける』と言った。

 が……到着後直はキツい!ゼノスの大群を倒しムゲン世界を破壊した際の肉体的、精神的疲労がある。

 日を改め全快してから~と言うのは戦場では通じない。それを理解した上で、ルシファーも納得し。

 日本刀を右手に召喚。それが双方合意の合図となり、お互いに刀を構え──斬り込んだ。


「何──!?」


「えっ?これ……どう言う事?」


 刀が激突しそうな瞬間。突然クラッカーの様な軽い音が鳴り、双方の間で発生する赤い煙が発生。

 ルシファーの驚く言葉ごと煙に包まれ、今攻め込まれるのはマズイ。そう認識し、煙の外へ出ると……

 何故か主導権は自分に戻り、全く意味が分からない。困惑する中、遠くから手を振り近付く存在が一人。


「どう?ビックリしたでしょ」


「今のは……水葉師匠が?」


「そう。お義姉ちゃんのマジック!と言うか、師匠は禁止。お義姉ちゃんと呼ぶ事」


 それは……水葉先輩。元気一杯の笑顔で話し掛けられ、理解が追い付かない頭のまま聞き返せば──

 水葉先輩の手品だと言い、師匠呼びではなくお義姉ちゃん呼びと訂正された。……何故?

 師匠と言うと、お年寄りってのが漫画とかではよくあるよね。そう言うイメージだろうか?

 改めて思い返すと、アイは水葉先輩を若作りと言っていた……先輩は高校生だが、どう言う意味だ?


「てか……シナナメは?」


「んふふ~……ひ・み・つ」


 先程まで居たシナナメは何処へ行ったのか?再戦にしろ避けるにしろ、居場所を知りたくて聞くも。

 右目を閉じて此方にウインクし、秘密と言った。女性は秘密が多いとは聞くが、先輩も相当多い。

 納得しない自分の右手を取り、笑顔で駆け出す先輩。何処へ行くのか訊ねようとも一瞬思ったが……

 また「ひ・み・つ」とか言われそうで、何も言わず、渋々引っ張られるがまま付いて行く。


「もしもし?うん、見付けたよ。案内と操作宜しく」


「……それ、フュージョン・フォン?」


「似てるでしょ?少しでも貴くんと同じモノを持ちたくて、魔改造しちゃった」


 空いてる右手でスカートのポケットから携帯を取り出し、何処かへ電話をしている様子。

 案内は分かる。が操作とは一体……そんな折、持ってる携帯電話に目が行く。

 形状・色共に、自分や寧が持っているフュージョン・フォンに瓜二つ。まあ、自分のは壊されたが……

 駄目もとで訊ねると、あっさり答えた。発言から察するに、ただの携帯を瓜二つレベルに改造したと。


「…………」


「ごめんね。私だって本当は全部伝えたいし、教えたい。けど今はまだ、その時じゃない」


「じゃあ──教えてくれる時って、いつ?」


 多分、これ以上聞いてもはぐらかされる。本当の事は教えてくれない。そう理解し、黙る。

 此方の心情を察してか、先輩は謝罪の言葉と自身も伝えたい・教えたい旨を伝えた上。

 まだ話す時ではない、と付け加えた。ならば話してくれるのはいつなのか?敢えて聞いたら……


「融合四天王・マジックを倒した時……かな?」


 ある意味、無理難題をぶつけられた。殺しても死なないアイツを……マジックを倒した時?

 半ばそれはもう、教える気はない。そう遠回しに言われているとさえ思った程。

 しかし改めて考えてみる。副王に任されたこの旅、魔神王討伐の中でマジックと戦闘になった事がない。

 此方から一方的に、防衛・救助目的で攻めた事はあれど、向こうから襲われた経験がない。と思い出す。


「着いたよ~」


「着いたって、此処……」


「入ろ入ろ」


 到着したと言う其処は──大型スーパー。違和感や不信感が強く沸くも、先輩に引っ張られ中へ。

 スーパーの中には誰も居ない。いや、正確には仲間達の気配は感じるが、他人は居ない。

 奥へ案内される中、店内をチラッと見る。食品は沢山残っていた。賞味期限までは分からんがな……

 階段を登り二階へ。スタッフルームらしき部屋に入ると、数人の仲間達が居て思わず頬が緩む。


「……たっくん。もう──戦わないで」


「マキナ……悪い。まだ、終われそうにないや」


 机の上に置かれた紙の地図と、自分達やシナナメの駒。それを見て、シナナメが消えた理由を知る。

 此方の視線に気付き、戦う事を止める様に言われた。けれど……まだ、終われない。

 本気で戦えるのは──後、四回。まだ手足は動く、五感も残ってる。次本気で戦えば……今度は何を失う?

 多分、マキナは此方の事情を知っている。だから戦うなと言い、おぞましい程の魔力を解き放つ。


「ちょっとちょっとちょっと!アンタ達、仲間内でドンパチやるつもり!?」


「マキナがやる気なら……やむを得まいな」


「たっくんが戦い続けるなら、それを止める為に……戦う」


 臨戦態勢に入り、此方も力の蛇口を少し解放。一触即発な空気を察し、桔梗が双方の間へ入る。

 仲間内でのドンパチは、そう珍しい話じゃない。過去の旅でも何度かあった、相違の違い。

 が……今はそんな場合ではない。溜め息混じりに力の放出を止め、スタッフルームから出て行く。

 屋上へ出て、転落防止用の網を右手で掴む──右眼は未来を、左眼が過去を映す景色を視ながら。


「もう二度と……みんなと同じ景色は視れないんだよな。クソッ……みんなの姿も、普通に視れないなんて」


 ワールドロードに近付く程、本気で戦う度。自分は普通の人間から遠ざかって行く。

 眼に映る景色や人物も、お婆さんや幼児に見える。そう見えないのは、不老になったモノや妖怪だけ。

 あの場に居た水葉先輩や妖怪の桔梗、同僚たるマキナの姿は変わらず見えていたが……

 ニーア、ゆかり、巴の姿は老婆に見えていた。……改めて考えると先輩、なんで見た目が普通に見えたんだ?

 苦悩を抱えつつ、遠くを視ていた為か。背後に近付く足音に気付かず、右肩に手を置かれ振り向く。


「どうかしたの?本当にあの場で戦うのかもって思っちゃったけど」


「…………ゆかりか」


「本当は助かったんでしょ?ゾークと三騎士・シナナメが戦い、ゾークを倒してくれたって」


 其処には此方へ向けて優しく微笑み、心配する心情ゆかりの姿があった。のだが……

 老婆としての姿が強く見えた為、少し認識するのに間が空く。発言的に此方の事情を知ってるのだろう。

 ムゲン世界でナイトメアゼノ・ゾークとシナナメが戦い、ゾークを打ち倒してくれて助かったと。

 思考にすら出さず、内心感謝していたのを見破られ、苦笑いで返すと溜め息混じりに遠くへ視線を向ける。


「運命って……残酷だよね」


「そうだな。望んでもいない事を乗り越えられる前提で押し進めやがる」


 此方へ体ごと振り向き、三歩後ろへ下がりながら運命は残酷だと言う。自分もゆかりの方へ向き直り。

 運命が持ち込む厄介事、心へ深い傷跡を残す行為に文句を述べ共感している旨を示し。

 左手でコートを掴み、左側へ広げて腰に装着済みのバックルを見せ、仮面を右手に召喚する。と同時に……

 ゆかりも上着のチャックを全て降ろし広げた。腰にはハート模様のカードケース、左手には白兎の仮面が。


「……驚かないんだね」


「お互い様だろ。お互いに秘密を抱えて、心に深い傷跡を残し続けているだけだ」


「…………うん、そうだね。流石は、私が心から好きになったスレイヤー様だよ」


 お互いに仮面を被りながら、淡々と話を続ける。会話中の時間だけは、またその時ではないと示す様に。

 顎と口を保護する部品を互いに装着。そのままでは違和感が強く、端から見ればただのコスプレ。

 自分は右手でバックルの左右にあるパーツの右側を掴み、ゆかりは左手でケースから一枚のカードを引く。

 暫しの沈黙が屋上を支配すると一陣の風が二人の間を通り抜けた──それを始まりの合図とし。


「「変身!!」」


 パーツを引っ張られたバックルは開き、連動して第二装甲ことパワードスーツを召喚し体に纏う。

 ゆかりはカードをケースの正面に近付け、恐らく電子マネーの様に読み込ませたのだろう。

 何処からかバラバラの白いパーツを召喚し、足下から装着されて行き……コードネーム、白兎へ。

 変身完了後、俺から歩み出すと白兎も此方へと歩き出す。双方手が届き、掴み合い出来る距離へ。


「……好きだぞ。ゆかり」


「うん、ありがとう。私も──君が好きだよ」


 悔いや後悔が残らない様、お互い胸の内を吐き出し、右手で握手をする。これで……最後にする為に。

 強く握った手に力を込め合い、離さず逃がさない。仮面で互いに素顔は見えないが──分かる事がある。

 ゆかりもわざと敗けてやる気は微塵もない。それを理解すると思わず口角が上がり、微笑む。

 敵味方関係無く似た者同士惹かれ合い、好き合う。故に……真っ向からぶつかり合おうと。



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