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ワールドロード  作者: オメガ
六章・Ich bin menschlich
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コフィン -Tell me thetruth-

 『前回のあらすじ』

 ナイトメアゼノ・タキオンを倒し、共闘関係は終了。それを瞬時に理解し、ミミツへ決着の有無を訊ねる静久。

 危うく戦闘になり掛けるがマジックの介入もあり、また今度へ。過去の続きを見て、三騎士が揃った理由を知る。

 ミミツが悪魔へ対価として、自身の世界を支払った気持ちを理解するエックス。

 真の自由とは、無月闇納が成し遂げる世界だと言い、不自由の中にある自由の大切さを改めて知るのであった。



(この壁画……かなり崩れてるけど、幾らか読めそうね)


 石造りの薄暗い遺跡を進む中。霊華が文字の彫られた壁画を見付け、思わず足を止めて視てしまう。

 双子月……異形、変態、星喰らい。それ位しか読めない。のだが……左眼が過去の壁画を視る。

 双子月の片割れに眠りし異形の覇王。封印の中で変態を繰り返し、星喰らいの魔神王となり降臨せん。

 関連してか。スカーレット達が生きていた時代の記憶が掘り起こされ……侵略者達が攻め込む日を思い出す。


「…………」


「こっちよ、スレイヤー」


 なかなか来ない此方に気付いてか、離れた場所から声を掛けてくる桜花。

 思考を閉じる様に一旦目を閉じ、深呼吸してから大きく左手を振る桜花が居る方へ駆け足で向かう。

 見るからに分厚そうな石造りの大きな扉が、視界に映る。天井……恐らく五十メートルか?

 その近くまで高い扉と言うのもあり、押して開くのだろうか?そんな疑問すら浮かぶ。


「この遺跡を作った博士は、相当貴方に思い入れがあったんでしょうね」


「どう言うこ……と」


「こう言う事よ。本当、最初は開けるのに滅茶苦茶苦労したんだから」


 突然この遺跡の設計者は、自分に思い入れがあった。と言い出す為、理解が追い付かず聞き返す最中……

 重々しい扉は客人を招き入れるかの如く自ら開くも、扉の重量で床を擦る音を遺跡内に響かせる。

 この結果が発言の理由だと知ると同時に、開いた先の光景に──思わず息を飲んだ。


「…………部屋、間違えてない?」


「やられた……。この第六遺跡を担当する博士、本当に何を考えてるのかしら」


 大部屋の中には──多種多様な魔物が数多く居り、不思議のダンジョン系で見るモンスターハウス状態。

 豚に近いオーク、海竜に魚介類やらアンコウ、翼竜の名を持つワイバーンと何故か竜種もチラホラ。

 鳥類や牛系も……ってコイツら、食用向きの魔物ばかり。巨人族のギガンテスも居るが、食えたか?

 そう思った途端。左腕に抱き付いていた静久が離れたと思えば、魔物の大群の前に立つ。


「秒で終わらせる……」


「静久、ご機嫌斜め」


 パッと見た感じ、百は居そうな魔物達を前にして言い放つ言葉にしては……余りにも強気。

 身長や姿も普段よく見る少女体型。第三者から見れば、生け贄の少女と蹂躙する側の魔物。

 なんだが……その背中から感じる気迫は、味方ですら寒気として命の危険を覚える程。

 詠土弥の発言も的を射ており。此方に気付いた魔物達が一斉に襲い来る中、静久が右手を向けて握った直後。


「……私に出会った、己の運命を呪え……」


 大部屋に居た魔物達は全員白目を向き──即死。何が起きたかも分からず、双方を見るリバイバー。

 静久の能力は液体の支配。即ち、魔物達の血液を一瞬で凝固させ、触れる事も無く全滅させた。

 普段は自分のやり方に付き合ってくれているんだが……今回は本当に機嫌が悪い様子。


「ふむ。野菜が欲しいところだけど、これならハンバーグとか作れそうだな」


「──!!」


「オーク肉のハンバーグかぁ……ちょっと興味あるかも」


 ゼロとルシファーが動き、静久の仕留めた魔物達を影の中へと次々収納して行く様子を見ている内。

 何が作れるだろう?と思い出たのが……ハンバーグ。その単語を聞き、リバイバーの興味ある発言の後。

 絆・恋・愛が左腕から飛び出し、静久を含め変身形態でお座りをしつつ、尻尾を大きく振る始末。

 そんなに喰いたいんかい。なんて内心ツッコミを入れていると……魔物で見えなかった奥の扉が開く。


「完成した料理を速く運んで!」


「承諾。ディーテ、運びます」


「えっほ!えっほ!ニーア、これは?」


「ムニエルはテーブルに持って行っても良いんだよ、ライチ」


 シオリの指示する声が響き、ディーテが駆け付け台所と思わしき場所へ近付き。

 炒飯を盛った皿を持ち、背後のテーブルへと運べばまた戻り、次々と料理を運ぶ。

 それに混ざってライチが台所側へ小走りで向かい、料理を手にしニーアへ持って行くか否かを訊ねる。


「さて……私も手伝おうかしらね」


「オメガゼロ・エックスさ~ん!こっち、こっちで~す」


「お、おう……」


 突然マジックまでもが台所へ向かい、入れ代わる形でライチが此方へ走って来て右手を引っ張り。

 長方形のテーブルへと案内された。椅子に座らせられると、目の前には和・洋・中と様々な料理の数々が。

 食べても良い。と言わんばかりにアイが右手を向け、木製の箸を手に恐る恐る食べてみる。

 どれも美味しいのに……何故か、涙が溢れて止まらない。料理から伝わる悲しみが、とても辛い。

 最後になるかも知れない、別れたくない。そんな想いが、この料理には溢れん程込められている。


「た……貴紀さん?ディーテ、貴紀さんはどうしたんだ?」


「解析……エラー。適切な検索結果は出ませんでした」


 みんなと別れる時が──刻一刻と近付いている。ゼロの体と自分が完全同化するまでの時間が近い。

 後一ヶ月半……それまでの間にこの旅に、みんなへの気持ちに答えを出さなくてはならない。

 食べる手は止まらず、数多くの料理を平らげて行く。少しずつ、人の領域に戻りつつある。

 何百人前と言う量を絆達と平らげると、テーブルの上にホログラムが投影された。


「こうして話すのは、いつ以来だろうな。オメガゼロ・エックス」


「…………コフィンか。何の用件だ」


「Tell me thetruth──と聞くのではないか?と思ったが、そうではなかったな」


「次は言わん。何の用件だ」


 ホログラムに投影され話し掛けて来るのは……高身長の細い体型で憎たらしい顔をした白衣の男。

 右腕で涙を拭い、目を細めたあからさまな不機嫌顔で用件は何か?と問い掛けるも。

 此方が本当の事を教えて!と言うと予想していたと小馬鹿にする様、笑いながら言い返した為。

 鷲掴みにせんと開いた左手を向け、用件を話さなければ破壊する!と脅しつつ聞き返す。


「……いつまで無駄な抵抗をする?世界とは時の流れに乗り、移り行くものだろうに」


「侵略行為も、時の流れだと言う気か?それにお前が助力したのも」


「その通り。故に俺は他の博士達とは違い、君にパワーアップアイテムを与える気はな──」


 此方の意図を理解し、やれやれ……と言いたげな様子で首を横に振り、語り出した。

 確かに世界とは、時の流れに乗って移り行くものではある。流行とかブームがまさしくそうだしな。

 されど、宇宙からの侵略者に自ら協力するのはどうなんだ?それも、呪神を封印した数日後に!

 自分の問いに肯定で答え、他の博士達とは違い強化アイテムは与えない。と言い切る前に途切れた。


「ご苦労様。臆病者の蝙蝠男さん」


「ま、マジック?」


「どうせ、彼女達に貴方の活動限界が近い事を伝えたんでしょ。だからこんなお別れ会みたいな事をさせた」


 ホログラムを消したのは、コフィンを臆病者やら蝙蝠男と罵倒する融合四天王マジック。

 余りにも咄嗟の出来事で、思わず呼び掛けると……コフィンがみんなの行動を予想した上で。

 自分を精神的に苦しめる為、こうなる様に仕込んだのだろうと話す。


「惚れた相手が貴方を好いてるからって、本当に馬鹿な男」


「…………貴女は」


 余りにも謎多き人物、マジック。彼女は何を何処まで知っているのだろうか? 

 話から察するに、スカーレットやコフィンの事も知っている様子。もしや超古代の人物……?

 そんな予感が脳内を駆け巡り、貴女は誰なのか?そう訊ねようとした時──

 彼女の人差し指が此方の続く言葉を塞ぐ様に、唇へ押し当てられ。


「近い未来──貴方が私の真実を知り、Tell me thetruthと訊ねる日が来る。その時まで内緒よ」


 自分がマジックの真実を知る……本当にそんな日が来るのか?と疑問すら浮かぶ中。

 言い終わった彼女は此方の唇から指を離し、自身の唇へと当て微笑む。なんか、おちょくられてる?

 言動すら謎だらけなのに、真実に辿り着く日が来るのだろうか。呆気に取られていると……

 黒い大剣と棺桶が目の前を過る。飛んで来た方向──自分から見て左側を見れば、桔梗とアイが居た。


「ぜぇ……ぜぇ……あ、アンタねぇ。毎度そうやっておちょくるのも大概にしなさいよ!?」


「あら、おちょくるだなんて人聞きの悪い。私は彼に対しては、事実しか言ってないのだけれど?」


「尚更悪いと思わない?事実や嘘も、時には相手を深く傷付ける。特に、貴女の言葉はね」


 大剣と棺桶が通り過ぎた後、さっきまで居た場所へ転移して戻って来たマジック。

 何故か頬を赤く染め、肩で息をしながら言う桔梗に対し──事実しか伝えてないと返され。

 言葉に詰まる。代わりにアイが口を開け、事実・真実・嘘も誰かを深く傷付けると発言。

 確かにそれはそう。自身は何気ない言葉でも相手は傷付き、根に持つのも割りとある。


「えぇ、そうね。それでも私は事実を伝え続けるわ。私と彼の──約束だもの」


「ちょっ、それって!?」


「紋章……やっぱり、貴女も持っていたのね」


 アイの発言に肯定するも、自身のスタンスを貫くと返した後。彼女と自分の約束だと言い。

 左手の甲に浮かび、白金色に輝く三つ葉のクローバーの紋章を見せる。確か花言葉は……

 約束・幸運・私のものになって、だったか。紋章に驚く桔梗と、ある程度は予想していたアイ。


「えぇ、貴女達の誰よりも早く──ね。それじゃあ、今度は月夜に二人で逢いましょう」


「さっさと帰れ!!」


「桔梗。それだと負け犬の遠吠えよ?」


 貴女達の誰よりも早く。と挑発や誘いの言葉の後に自分へ白い封筒を押し付け、何処かへ転移した様子。

 ムキになって叫ぶ桔梗を見て、左手で頭を押さえながらその行動を指摘。

 封筒が気になり、開けてみると……一枚の手紙とマイクロチップが一つだけ入っていた。

 手紙の内緒は「コフィン(棺桶)の中身を貴方にあげる。必ず役に立つわ」とだけ。


「この……小さい板?に何か、役立つ情報が入ってるって事?」


「そうね。フュージョン・フォンで読み込んでみましょう」


 手紙を覗き込んで来た桔梗とアイ。黒く、小さいマイクロチップを携帯電話に差し込む。

 すると──何かの設計図が幾つか出て来た。図面から察するに、装備品やオプションらしいが。

 時代錯誤な物、sin・第三装甲を強化する内容だ。ただ……リアライズ、オーバーチューン使用時限定?

 何故今使える技法に対応した設計に成っているのかが、不思議で仕方がなかった。




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