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ワールドロード  作者: オメガ
六章・Ich bin menschlich
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自由 -discomforts-

 『前回のあらすじ』

 己の命を燃やして拘束具を解き放ち、本気を出したナイトメアゼノ・タキオン。

 加速と一秒先の未来へ時間跳躍を巧みに使い、ミミツと専用のsin・第三装甲を纏った静久らを苦しめる。

 相手の優勢に思われたが……静久達の一手二手先を読んだ策に奇襲を許し、形勢逆転されてしまう。

 最後は静久とミミツの最大火力を受け、母・無月闇納へ遺言を残し消滅するのであった。



「……それで、どうする?今此処で、私達と決着をつけるか……?」


 あの大爆発と橋や建造物を倒壊させる衝撃波を見せた上で、川辺に現れたミミツへ対し。

 今決着をつけるか否かを問う静久。ある意味脅しでもあり、逆に言えばエネルギー残量が少ないが為。

 連戦を回避すべく、声・言葉選び・タキオン撃破時に見せた威力。それらをカードに、ブラフを放つ。


「…………いいですわよ。今、此処で決着をつけても」


「……ッ!!」


「何とかタキオンを倒したのに、まだ殺り合う気かよ。あの二人」


 ブラフが失敗したのか、それとも腹を括る切っ掛けを作ってしまったのか……それは分からない。

 ミミツは影を触手の如く自由自在に動かし、此方の動きに対し対応しようとしており。

 バイザーにはoverheat(オーバーヒート)の文字。スーツ内温度は百六十度で、即時排熱を推奨中。

 リバイバーが残った橋から此方を見下ろし、共通の敵を倒したのに何故戦うのか?と言いたげ。


「はいはい。双方、意地の張り合いは禁止。この勝負、融合四天王として私が預かるわ」


「ふ、ふん!命拾いしましたわね」


「ハッ……どの口が言う。魔力が底を尽き掛けてる癖に……」


 全員に聴こえる様に両手を強く二回叩き、それに気付いた面々は音の鳴る方へ意識が向く。

 続けて静久とミミツを注意し、決着は自身が預かると言い場は終息。かと思いきや、言い合いは続く。

 魔力が底を尽き掛けてるのは此方も同じ。正副予備の魔力がほぼ尽き、魔力経路が脈打つ様に明滅中。

 捨て台詞と思わしき言葉を告げ、影に潜り何処かへとミミツは行った後──装甲の各部が排熱の為に解放。


『緊急事態解除。紅い靴システム、停止』


「ふぅ……香川県さぬき市で入った、から風呂以来の温度か……」


「あれ?静……久?」


 左手を顔に当てると白蛇の仮面は鼻先からお面を頭に乗せる様に、口部は左右に開き取り外す。

 過去のサウナ体験を口にしながら蒸気が勢い良く排出され、リバイバーは何か疑問を持ったらしく。

 疑問系で静久の名を呼ぶ。当人は何の用事かと視線を横に向ければsin・第三装甲が外れ、融合も解除。


「……何か用か?」


「いや、用って言うか……雰囲気とか色々、変わり過ぎてないか?!」


「静久、色っぽい」


 普段通りの対応、気だるげな発言。しかし髪は肩に当たらない程度から、腰に届くまで真っ直ぐ伸び。

 平らな胸は程よく双子山を作り、身長も百五十六センチへ成長。着ていた白いワンピースだが……

 水に濡れ半透明になった服が肌に引っ付き、詠土弥の言う通り色っぽい。水も滴るなんとやら……だ。


「ふむ……少し本気を出し過ぎたか。案ずるな。少しすれば意識して、前の身長に戻せる……」


「えっ?!静久って、ロリっ子じゃないのか!?」


「……阿呆。妖怪や神の部類は身長を変更可能。年齢なんぞ、飾りにしか過ぎん……」


 静久の言う本気と言うのがどう言ったモノかは不明だが、リバイバーの驚きは別方向を向いていた様子。

 確かに歩く下半身ことゼウスには、年齢や姿形なんぞ関係無い。妖怪も個体差はあれど、同じ様なもの。

 そう言えば以前、絆達と横に並んだ事があるが……大体横一列多少の身長差はあれど似通った背丈。

 ロリだと男女問わず油断し易く、潜入がやり易いから低身長にしてる。とは聞いた覚えがある。


「まあ……本当の理由は別にあるが……な」


「絡み付いたり巻き付くなら、蛇の姿でね?」


 本当の理由云々と言いつつ、三人へ見せ付ける形で右腕に抱き付いてくる静久。

 引き吊った顔で苦笑いをするリバイバー、羨ましそうな詠土弥、無反応のマジック。

 三者三様の反応を見、返事を返した時──背景が再び虚無になり、影の悪魔と当時のミミツが出現。


「では──行こうか。ハラハラとドキドキが止まらない、刺激的な世界へ」


「賛成!けれど、そんな世界は何処にあるのかしら?」


「我らが創造主様に連絡をしてある。もう少しすれば、そのお姿を見せくださるであろう」


 取り敢えず静久を一度引き離し、自分が着ているコートを脱いで静久へ羽織る様に着せる。

 そうしている内に続きが始まり、ミミツが望み・願う世界へ行こうと言う影の悪魔・チェルノボーグ。

 大喜びするミミツ。だが問題は何処にあるのか?と言う点。彼女の世界は悪魔へ対価として支払われ。

 虚無と化し何もない。チェルノボーグは創造主に連絡をしたと言い、不思議がる彼女は首を傾げた時。


「へぇ~……これはまた随分と、綺麗サッパリ掃除された世界の様ね」


「遠路はるばるお越し頂き、感謝の極み。我らが創造主・無月闇納様」


 空間に穴を開け、黒紫色のドレスを身に纏った無月闇納が出てくると同時に、空間に空いた穴──

 次元穴は閉じ、辺りを見渡す闇納に対し跪き頭を下げ感謝を述べる。されど、当の本人は全く見ない。

 本当に見えていないのか、あるいは意識的に見ない様にしているのか。は不明だが……


「貴女が──ハラハラとドキドキが止まらない、刺激的な世界へ連れて行ってくれるの?」


「えぇ。生きるか死ぬか、恋愛が実るか腐るかも不明なドキドキとハラハラが止まらない、刺激的な世界へ」


「何それ!?理想の世界だわ!!」


 素朴な疑問を投げるミミツに気付き、彼女にとって魅力的な言葉を連ねて返答を返す闇納。

 けれど、よくよく考えれば極普通に当たり前の事。なんだが……変わらない普通を生きた彼女には。

 とても魅力的なのだろう。ある意味、鳥籠と言うあの村から飛び出し、世界へ羽ばたくと言うのだから。

 差し出された右手をミミツが取り、二人と悪魔は消えた。こうして、三騎士を集めたって訳だな。


「……現実でも、よくあるパターンだな」


「そうなのか?」


「よくあり過ぎるのに……阿呆な連中は気にも留めず、愚者は己の行動を正当化する……いつの世も変わらん」


「全くの同感。親から子へ負の連鎖が繰り返されるから、精神年齢が子供の馬鹿な連中が増えて行くのよ」


 改めて──ミミツが悪魔に自身の世界を対価に支払ってでも……の気持ちが理解出来た。

 いや、寧ろこうなって当然だ。親や大人達の対応・性格・風習。要はそう言ったモノの積み重ね。

 常識だ何だと押し付けて相手の自由を奪い、選択肢を取り上げ心を苦しめる。全く愚かしい行為だ。

 流石に現人類が大嫌いな三人が揃っている為か、愚行だ何だと愚痴る機会が多い。


「……今の人類が悪い、と言いたいのか?」


「半分はな。もう半分は──善意による抑圧・制圧だ。みんな大好きな正義・善意が心を殺すとな」


「そう言う批判も、自由じゃないのか?俺は少なくとも、そう思うんだけど」


 目を細めて不服そうな表情を見せ、先程の会話・愚痴から自身の意見を述べるリバイバー。

 半分はその通り。残りはこれが正しい、お前の事を思って……と言った束縛・抑圧行為。

 発言者は正義感・善意で言う為尚質が悪い。正しければ、何をしても許される訳でもない。

 確かに批判を言うのも自由だ。が……それは感情論で行ってはならない。それでは猿と大差ないからだ。


「それはそうだ。されど、時と場合にもよる」


「どんな時と場合によるんだ?」


「感情的になっていないか?物事を冷静に考え、理解しているか?と言う事よ」


「今のお前みたく……自分の頭で考えず、何でも間でも訊く愚行……とかもな」


 ぶっちゃけた話、批判も別に構わない。ただ感情で物事を言わず、自分の頭で理解した上で考え。

 分からない部分は己の考えを意見として伝えた上、互いの思考における誤差を擦り合わせ、理解し合う。

 されど人が集まれば思考は停止し、馬鹿になり選択肢を放棄する。自分の考えを放棄してしまうが故に。


「なんか……俺、ボロクソに言われてない?」


「言われてるな。要は自分の頭で考え、不明点は自身の考えを伝えた上で訊き、擦り合わせろって話だ」


 察するに二人の返答内容から、お前は頭が悪い。と言う表現で受け止めたのだろう。

 まあ、自分もそう捉えている訳だが。それもあり、自身がこうではないか?と思うアドバイスを伝える。

 愚直に言われた通りやる、自分で考えて行動する、無視するのも個人の自由。


「自由とはそう言う事だ。真の自由ってのはある意味、無月闇納が達成した後の世界を言う」


「惑星や空気も無く、彼女(ミミツ)の世界よりも更に虚無。自身以外何もない世界こそ、真の自由よ」


「つまり、俺達は多くの不自由と数少ない自由の中で生きてるのか」


 自由と言う言葉が持つ意味は、我々が日常的に思うモノより更に多く、酷く残酷で孤独なモノ。

 真の自由云々と声高に訴える者もいるが……所詮は自身が思う都合の良い部分しか持たない自由であり。

 本当の自由は──無月闇納が目指す究極の平和。即ち、全世界を完全なる虚無に還す事。

 不幸の中に幸福があるように、不自由の中にも自由がある。リバイバーはそう解釈した様子。


「重力により地面に足を着け、呼吸を行い酸素を取り入れ、体を動かす。これも不自由の一つよ」


「話の途中、割って入る様で悪いわね。スレイヤー、一旦メンテナンスを含めた休憩に入りなさい」


 例えで何が不自由かを話すマジックは、選べる不自由と選べぬ不自由も様々あると話す。

 そんな中。何もない空間に穴が空いてひょっこり顔を出し、元調律者の桜花が謝罪も含め話し掛ける。

 確かに戦闘やら何やら続きで、休憩は取れてない。その申し出を受ける様に深く頷く。


「みんな、貴方の活躍をハラハラしながら観ていたから、姿を見せて安心させてあげなさい」


「分かった。……って、みんなは何処に居るんだ?」


「何処に居るのか、ですって?貴方に必要な場所を探し当てて、其処で待ってるのよ」


 すると納得した様に頷き返し、仲間達が自分の活躍を心配してた為、直接会って安心させろと言う。

 それ事態は理解したものの──オラシオンやミミツの記憶世界に紛れ込んで来た面々も含め。

 何処に居るのかが不明。なので素直に聞くと……やや怒り気味に返され、自分に必要な場所に居るそうな。

 それだけを言い残し、穴の中へ戻って行ってしまった。空いた穴は閉じる様子もなく、口を開けている。


「取り敢えず……行ってみるか」


「だな。此処に居ても、何も変わりそうにないし」


 ミミツの記憶世界に居続けても変化は無さそうなので、桜花を追う形で穴の中へ飛び込む。

 自分達が全員入ったのを確認した後、穴は自ら口を閉じるかの如く空いた穴を塞ぐ。

 周囲はやや薄暗く、石造りなのか床や壁が酷く冷たい。靴越しにも冷気を感じる辺り、相当な低温だろう。




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