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ワールドロード  作者: オメガ
六章・Ich bin menschlich
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常識 -doubt everything-

 『前回のあらすじ』

 五人の子供達は悪魔召喚を成功させてしまい、影の悪魔・チェルノボーグを呼び出す事に成功する。

 子供達は悪魔と契約を交わし、その内の四人が魔女や魔女の遣いとして大人達に処刑されてしまう。

 一人残ったミミツは自身の住む世界や己の老いなどを対価に、影の魔女となった理由が明らかに。

 其処へ現れるナイトメアゼノ・タキオン。ミミツも殺害すると述べた為、エックス達と共闘して迎撃する事に。



「──!?」


 共闘が決まった直後──フィールドは何処かの橋の上へ。タキオンは此方に両手を真っ直ぐ伸ばし。

 指先から青白い光弾を休む事なく発射。恐らくこれは、DT-0が右手から放つ電磁波光線。

 アレを連射用に改良したモノと予想。着弾による爆煙が舞い上がる中、足が勝手に右側へ飛び出す。


「我らが主は嘆いておられる。知的生命体は何故、愚かしくも醜いのか?──と」


「人類が愚かで醜いのは、今に始まった話でもあるまい──てッ!!」


「現人類が死守するオメガファイル。それを貴殿が読破した為、貴殿は現人類に命を狙われ続けている」


 タキオンの右手は此方を追跡しつつ電磁弾を撃ち続けるも、着弾するのは足が離れる二秒前の位置。

 知的生命体の愚行・醜さなど、今に始まった話でもない。そう言いつつ、足は半円形を描く様に走り。

 一気に懐へ飛び込み、右膝蹴りを胸部へ繰り出すも……攻撃の手を止め、此方の膝を左手で受け止め。

 オメガファイルを話題に出し、端的に俺が現人類に命を狙われている理由を話す。


「誰が──地球人を皆殺しにしようとする侵略者を……守ってやるもんかよッ!!」


「至極当然の回答。現人類は低能力者を抹消、高能力者のみを残す政策を国民に無断で行って──!?」


「消費税もッ……国民から搾り取った金を大企業に回し、格差を広げ!自国を他国に売る手法だし──な!!」


 そう。俺が倒す・命を奪う相手とは……この星、ワールドに住む原住民を虐げる侵略者。

 オメガファイルにも記載されているが、現人類とは旧人類の超古代文明を襲った侵略宇宙人を指す。

 左手に持った朔月を奴の頭部に向け発砲する刹那。タキオンの右手に左手首を掴まれ、逸らされる。

 話ながら足掻くも相手の方が力は強く、効果無し。故に──奴の顔面目掛け、頭突きを打ち込んだ。


「知ってる?無料の予防接種と言って避妊薬を投与し、人口削減を実行した国がある事を」


「少子化対策で増税して、結婚子育てを抑制した上で人口削減って……政府の対策って矛盾してないか?!」


「世界のWHOは腐敗済み。日本を新薬の実験場にする計画も動く中、(トップ)が腐れば国が腐るのも当然よ」


 タキオンと激突する最中、僅かながらも耳に届くマジックとリバイバーの会話。

 無料(タダ)程高いモノは無い。その施しの裏に何が、どんな心理が潜んでいるか?考える方が少ない。

 能力の低い者を人口削減の対象にし、能力が高い者だけを残し続ける。それもオメガファイルの内容。

 当たり前・常識・ノーマルと言った思考停止から抜け出さない限り、人類は自ら滅亡するだけだ。


「共闘と言っておいてタイマン。……成る程、此方の注意を削ぐのが目的か」


「さて、どうか──ねッ!!」


 一瞬怯ませるも。次の瞬間には仰け反った姿勢を元に戻し、此方の顔や胸を狙った突きを繰り出す他。

 機動力を殺す為、足を狙ったローキックが混ぜられ、直撃し右膝から力が抜けてしまう。

 それを知ってか。システムに制御を奪われた足は徐々にタキオンの動きを学習し、不意打ちに対し。

 片足を上げて避けた上、逆に相手の脛を蹴るなどの反撃を織り混ぜる。


「取った!」


「──ッ!?」


 続けて声で注意を引き、後ろへ跳び後退。自分の言動が反している事に疑問を抱いたのだろう。

 奴は一瞬動きを止め、下を見て気付く。真横から太陽光を受ける此方の影が、奴へ向いている事に。

 直後、見下ろす影から黒剣が飛び出し──タキオンの顔の正面に刀身の半分までが突き刺さる。


「影なれど、出来る事は幾らでもありま……?!」


「消え──ッ!?」


「貴紀さん!!」


 確実に殺った。筈が蜃気楼の様に揺れては消え、周囲を見る前に足が勝手に身を捻り背後へ蹴り込む。

 すると……無傷のタキオンが居り、此方の左足を左手で鷲掴み、持ち上げては橋の上に叩き付ける。

 流石に顔は両手で防いでいるが、それでも何度も受けては身が持たない!そんな時……


「ふむ」


「痛覚は無し──と言った感じかしら?」


「元よりこの体は主様が戦闘用に改造したモノ。痛覚や感情と言った不純物は持ち合わせていない」


 黒い魔獣がタキオンの左手を食い千切り、助けてくれた後。粘土を捏ねる様にうねり、ミミツの姿へ。

 左手を失っても何の素振りも見せない。ミミツが感想や質問にも似た言葉を投げ掛けると。

 戦闘用に改造されている為、任務を達成する以外の機能は持ち合わせていないと言う。

 任務遂行する為だけの生命……か。戦争が当たり前の時代はそれが普通だとしても、悲しいモノだな。


「どうすんだ!?俺達は貴紀さんを助けなくて良いのか?!」


「貴方が戦闘に加わって勝率は上がる?断じて否、逆に彼の邪魔よ。なら、此処で大人しくしてなさい」


「畜生……見てるしか、出来ないのかよ!」


 伏せたまま魔力を弾丸に変え、朔月に装填しタキオンへ向けて撃てど──幻を撃った様にすり抜け。

 直感が反応。今度は上から急降下しながら踏み込んで来た為、慌てて体を横に転がし回避。

 次の瞬間。タキオンは勢いの余り橋に下半身が埋まり、此処がチャンスとミミツは影に潜り。

 一本の黒い腕と成り、今度は胴体を背後から貫く。も……また蜃気楼の如く消え、今度はミミツの背後へ。


「ミミツ!」


「成る程。文字通りこれは影であり、本体ではない。されど」


「ぐっ──!?い……一体、何を……」


「本体との繋がりを通してダメージを送った?!」


 右手でミミツの頭をもぎ取るタキオンを見て思わず彼女の名を叫ぶも……彼女は全く効いてない様子。

 その事実・理由を瞬く間に理解し、次は左手の手刀で彼女の影を左肩から右脇腹へと切り裂く。

 すると……今度はダメージを受けた様子で、何処か声が苦しげ。理由を問い掛けるも、答えない。

 答えたのはマジック。曰く縁を辿り、攻撃を与えた影から操る本体へ痛覚を送ったと思われる。


「……あれ?マジックさん、アイツがこの戦いで姿を消した時の時間って、分かるか?!」


「えぇ。最初が午後七時二十二分、二回は七時二十分、三度目が七時十八分、四回目は十二分だけど?」


「やっぱり……短い感覚で時間を飛び越えてる。もしかしたら、アイツを倒せるかも!」


 フォース・ガジェットを鞭形態に切り替え、立ち上がると同時にタキオン目掛けて振るい。

 奴の左腕に緋色の光を絡ませ、力一杯引き追撃を阻止。そんな中、リバイバーが何かに気付いた様子。

 マジックに特定の行動をした時間を訊ね、回答を聞き、勝機の可能性を見出だしたらしい。


「貴紀さん!ソイツを過去の時間に飛ばさせず、消えた際の時間まで維持させてくれ!」


(おいおい。軽率に無理難題を言ってくれるぜ)


(ダガ……ソレシカ今、勝機ハナイ)


(そうね。そして、そんな無理難題を解決してくれる可能性を秘めたsin・第三装甲は──)


 早い話。タキオンはダメージを受けた直後、数分前の時間へ飛んでいると個人的に解釈。

 しかし、その飛ぶ前……致命傷を受けた時間まで跳躍を許さなければ、ダメージは復活する。

 跳躍の条件・事前動作も見切れていない。が……やるしかない点に関しては、ルシファー達も同意見。

 朔月を戻し、利き手じゃない左手でフュージョン・フォンを取り出し右腰へ装着後、主導権交代。


『sin・フュージョン!』


「コール……ゼノサーペント(異形の嫉妬)


 静久の腰にアークバックルが現れ、ランプが緑色に光るとsin・フュージョンが発動。

 第二装甲を身に纏い、バックルの左右端に専用付属パーツが自動的に装着。

 sin・第三装甲の重装甲が高速回転しながら飛来しては、タキオンの頭に直撃し有余時間を作る。

 開いて変形し、続く八岐大蛇ユニットも次々と第二装甲に装着され、sin・フュージョンは完了。


change(チェンジ)……Seven(七つ) Deadly() Sins(大罪)serpent(嫉妬の) Sin()


「面倒な相手だが……貴紀が本気を出せない以上、私がやるしかない……」


「蛇──データにある、射撃専門特化型。ならば、答えは一つ」


 バックルから鳴る音声。気だるげだが、自分の事情を理解してくれている静久の声と。

 事前情報から此方が射撃特化型と見抜くタキオン。気付けば右手に持っていたフォース・ガジェットは消え。

 此方が身構える前に、タキオンが射撃武装の射程外となる懐へ飛び込もうと急接近。


「最大火力を使う前に潰すのみ」


「確かに、それが最善の一手である事は認める……私が射撃専門の奴なら……な」


「──!?」


 大砲や重火器など強力な武器は自らを巻き込まない、一番火力が出せる距離の関係で主に遠距離が多い。

 そう理解しているが故の最善策・最善の行動──に対して、静久は思わせ振りな言葉と共に。

 両手を胸元の高さ・左右の手の位置が微妙に前後する不思議な構えを取った次の瞬間。

 胸部を狙った右手の掴みに対し、左手を伸ばして逆に相手の右手首を掴み返した上、左側に逸らす。


「自分の常識は他人の非常識……普通こそ、真に疑うべきモノと知れ」


 右腕関節を曲げて更に近付き、此方の頭部へ時間差の左肘打ちを繰り出すも……

 静久は素早く右手で受け止め、腹部狙いの右膝蹴りすら左足で膝関節を踏み返し、未然に防ぐ。

 これは──幻想の地で門番の手伝いをしてた頃、拳法家の師匠に教わった沖縄拳法空手・夫婦手(めおとで)

 今のは守りに徹したやり方だが、左右の手どちらも攻撃や防御になり得る。何で忘れてたんだろう?


「夫婦手か」


「フッ……私のはな。もう一人は導火線に火がついた様だが……」


「導火せ──」


 攻撃を全て捌かれ、距離を取り何の拳法か見抜くタキオン。それに応えるが如く、言葉を返す静久。

 もう一人・導火線と言う意味深なワード。その意味を理解し、答える前に……

 自身の影から無数の黒い手が伸び、休む暇も与えぬ拳が繰り出す怒濤の連打で川沿いへ追い込み。

 最後に真下から顎を殴り上げ、橋の下にある川へとアーチを描く様に落下。静久も追い掛ける形で降りる。


「主様。貴女様の許可無く拘束具を解くこの身を、どうかお許し下さい」


「あら?その発言だとわたくし達を相手に手加減をしていた、と言う事かしら?」


「然り。そこの我らが主より生まれし骨董品(がらくた)と違い、我々は拘束具が無ければ生存出来ぬ身」


 背中から落ち、水の中に浸かった模様。此方も着水したが……川の深さは膝辺りまである様だ。

 無表情のまま起き上がり、懺悔とも受け取れる謎の発言。それにミミツが疑問を投げ掛ければ──

 肯定し、此方とは異なる生まれ方故、拘束具云々と言い右手を自身の顔に当て……

 今まで燕の顔と思っていた部分の仮面を取り外す。その素顔はまさに──怪物の一言だった。


「まさにdoubt(ダウト) everything(エヴリシング)……全てを疑え。と言う訳か……」




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