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ワールドロード  作者: オメガ
六章・Ich bin menschlich
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悪魔契約 -strega-

 『前回のあらすじ』

 図書館で決まる、夜中に子供達五人で悪魔召喚・黒魔術の儀式を行う事が決定される。

 一度自宅へ帰るミミツだが、両親は彼女にご飯を作り置きするなど最低限しかせず、行う儀式も失敗続き。

 しかし、エックスは空間に小さな亀裂を発見。ミミツ達は何故失敗したのか?原因を探る内、黒い指輪を発見。

 エックスとリバイバーも、自身らが持つ不思議な指輪を見る。彼ら彼女の指輪は、どんな力を宿しているのだろうか?



 何十度目かの夜中に行われる、楽しい生活を求めた子供達による悪魔を呼び出す魔術儀式。

 何度失敗しても、何が原因かを一つずつ調べては行う彼ら・彼女らの姿には、関心すら覚える。

 現在行っている行為に対する良し悪しは別にして。すると、魔方陣が黒い指輪に強く反応し──


「我を求め呼び出せし者よ、我は影の悪魔・チェルノボーグとでも呼ぶが……ふむ。新たな契約者が子供とは」


「成功した……悪魔さん!私達、楽しく面白い生活をする為にアナタを呼び出したの」


「ほう──では汝らが願いに対する対価を払えば、望むモノを何でも与えようではないか」


 子供達は、悪魔召喚に成功した。してしまった……魔方陣が淡く発光し、近くの畜産小屋に映る影。

 形こそ人の姿に瓜二つなれど、肉体は持っていない。自ら影の悪魔と名乗る通り、影が本体らしい。

 恐らく仮名でチェルノボーグと名乗った後、自身を呼び出したのが子供達と知る。

 喜ぶ子供達。ミミツが召喚理由を話せば、悪魔は好奇心旺盛な子供達へ等価交換を持ち掛けた。


「分かったわ。対価を払えば良いのね!」


「その通り。新たな契約者は物覚えが早くて助かる」


 純粋な子供が悪い大人に利用される様に、親が子に善悪や常識を教えない・育てない。

 そんな子供は、悪魔にとって最高の贄。望むモノを何でも与えると言う言葉に、子供達は乗り気。

 好奇心旺盛故に悪魔と言う概念が恐怖である事を理解しておらず、影の悪魔がニヤリと笑った……気がした。

 正義と悪。どちらが一番怖く危険かと言えば……正義だ。故に自分は、悪を成して巨悪(正義)を討つ。


「悪魔さん悪魔さん、影の悪魔さん。図書館の本を全てを対価に、お菓子を沢山頂戴!」


「御安い御用だ。何なら、他の国の珍しいお菓子も与えようではないか」


「凄い凄い!図書館の本が次々とお菓子に変わって行くわ」


 儀式に関わった一人の女の子は、魔術書を読む・他の子供達と集まる為に使用していた図書館の本。

 それ全てを対価として世界中のお菓子を貰い──突然消えた本の数々と、現れたお菓子の山に驚く大人達。

 何が起きたのか?全く理解出来ず慌てふためく大人達を見て、大声で笑う女の子。

 当然その笑い声から何かを知っている、又は犯人と考えた大人達は椅子等を手に、女の子へ近付き……


「魔女め!図書館の本を全てお菓子に変えおってからに!!」


「痛い痛い痛い!!やめ、止めてよぉ……」


「魔女は火炙りか串刺しの刑だ!今宵、子供達が寝た頃を見計らって執り行うぞ!」


「ひ……火炙りに串刺し!?い、いや……いやぁぁぁぁっ!!」


 女の子を魔女と断定。怒りをあらわにし、手にした椅子や足で全身を殴る蹴るの行き過ぎた暴行。

 確かに怒る気持ちは分かる。偉人達が残した叡智たる図書館の本、その全てをお菓子に変えられたのだ。

 現代で言えば、他人の大切な物を全て売って私腹を肥やすも同然。子供相手に物騒な発言をし。

 その日の夜遅く──有言実行。女の子は全裸のまま尻に刺された杭を口から吐き、火炙りにされて死んだ。


「う……っ!!」


「流石は人類。正義の為なら酷い事も平然とやるもんだ」


「生きたまま串刺しての火炙り──か。アレ、内臓とか貫いてるから結構痛いのよね。杭も鉄製だし」


 壮絶な光景に吐き気を覚え、この場から離れて吐くリバイバー。まあそれが世間一般の反応だろうよ。

 自分は改めて正義の危うさ・危険性を覚え、マジックは体験済みらしく、当時の痛みを語る他。

 言われて気付いたが……女の子を串刺した杭は鉄製。外側の火と杭が発する内側の熱に焼かれたのか。


「悪魔さん。僕、犬が欲しい。僕の言葉に忠実な犬!」


「宜しい。では忠犬を与える為、対価は……そうだなぁ。君のご両親を貰おうか」


「僕の両親でいいの?うん、分かった!」


 次は男の子が悪魔へ頼み、今度の対価は両親だと言う。それに対し、男の子の一言目は疑問系。

 二言、三言目はあっさりと承諾。何も知らないご両親は影の悪魔に対価として捧げられ、消滅。

 代わりに、男の子の前に柴犬が二匹現れる。等価交換……本当に、これは等価なのだろうか?

 じゃれつく柴犬を大層可愛がる男の子。だが──両親を対価に支払う程の価値があると?


「聞きました?あの家に住むご夫婦、子供を一人残して突然消息不明になったそうよ?」


「聞きましたわ。けど、残された子供が悪魔を使って自身の両親を消した……と村中で噂されていますわ」


「まぁ。それではもう、魔女狩りならぬ魔女の遣い狩りが始まってますのね」


「今日の昼過ぎ、ファラリスの雄牛が始まりまるそうですのよ」


 翌朝。小さい村故に誰が何をし、居なくなったか……が、素早く噂や犯人などが広まっている様子。

 昔の事故に関係ない。と思っていても、何処で誰と繋がっているかなんて、分からないもの。

 空を見上げれば太陽の位置が真上を少し越えており、昼過ぎを示す。その時──笛の音が鳴り響く。


「なんか、柔らかいメロディーが聴こえる。この音色、結構好きかも」


「また嘔吐したくないなら、口を閉じな。でなきゃ、今言った発言を死んでも後悔するぞ」


 リバイバーの言う通り、村の何処かからメロディーが聴こえる。が……真実は知らぬが仏。

 ファラリスの雄牛、真鍮製の牛型拷問器具(アイアン・メイデン)。この音色は牛型の腹部を外側から強火で焼き。

 内部に高熱を加え焼き殺す。この音色も牛の鼻に笛を差し込み、処刑者の悲鳴を音色に変えた物。

 ……とは言え、何故犯人が早々にバレた?誰かが視ていた、告げ口がないとおかしい。


「考え事中、悪いわね。貴方が思考している間にもう、合計四人も処刑されたわ」


「残る関係者はミミツだけ……か」


 考え中。マジックに肩を軽く叩かれ振り向けば、もう魔術儀式に関わった者はミミツを残すだけ。

 例え子供でも、親しい友達の死は応えたのだろうか?四人目の処刑が終わって暫くの間。

 対価関連の問題は鳴りを潜め、彼女が嫌い、大人達が求める『普通だらけの生活』が戻った日の夕方。


「私の生活を──楽しくて面白い生活に変える事……なんて、出来る?」


 最後に一人残ったミミツは俯いたまま振り返らず、自身の影に潜む悪魔に問い掛ける。

 すると彼女の影に赤い目と口が現れ、不気味な笑みを浮かべれば……

 夕陽の方角を向く彼女と向かい合う様に影は移動し、実体を持つかの如く起き上がる。


「それは勿論、対価が大きければ大きい程、面白く楽しい生活を過ごさせてやろう」


「そう……!なら、こんな普通の生活は要らないわ!楽しく素敵な世界に──なるのなら!」


「承知した」


 彼女は無邪気なままそう答え、悪魔は意図も容易く彼女の『世界』を手に入れた。

 あっと言う間に悪魔はその世界の生命体、時間、ありとあらゆる全てを対価として貰い。

 彼女(ミミツ)の世界は瞬く間に、空や風と言ったモノすら何もない、虚無の世界に変わり果てた。

 もしかしたらミミツはこの時から……悪魔との影響で心が狂い始めたのかもな。


「自分と相手を好きな容姿に変えられる影の力を与えよう。代わりに、君の今より先の──と──を貰う」


「いいわ」


「ハラハラとドキドキが止まらない刺激的な世界へ案内する代わり、今までの記憶を全て貰おう」


「えぇ。それも構わないわ」


 多分、この時からミミツは半ば悪魔の言いなりになっていたのだろう。

 けれど、普通と言う世界から抜け出せたのだから、本人としては幸せだとしか思ってないのかもな。

 影の力を貰う代わり、一部聞き取れない何かを対価として支払った様。自分とは何もかもが正反対。

 ……ちと胸糞悪くなったので、コートの内側から狐色の丸めた細い棒を取り出し、口に咥える。


「……煙草?」


「阿呆。煙草は吸うのも臭うのも、大っ嫌いなんよ」


「蜜柑の皮を丸めて乾燥させた物ね。乾燥させた物に火を着ければ、ゴキブリ除けにも使えるわよ?」


 煙草と間違えられたが……コレはマジックが言う通り、蜜柑の皮を乾燥させた物。漢方薬にもなる上。

 乾燥前なら風呂に入れたり、フローリング・机・キッチン・窓の掃除にも使える優れ物。

 それは兎も角、影の悪魔が受かれ気味なミミツに何か話しているが……当の本人は聞いているのか?


「……パートナー達は今、別行動中かしら?」


「あぁ。静久以外はsin・第三装甲の完成度を上げる細かい調整の為、離れているな」


「運が良いのか悪いのか。貴方はいつも──」


 少し考える様子を見せたと思ったら、絆達が別行動中かどうかと訊ねられ、理由を答える。

 静久を除く三名のsin・第三装甲は未完成品。最終戦に向けて勝率を上げる為、寧達の元へ行っている。

 それを運の良し悪しと言うと、此方に右手を向ければ白い冷気が集い……先端の尖った氷柱を作り。


「運に救われているのね」


『緊急事態発生。システム・赤い靴を強制的に起動』


「貴紀さん!?」


 此方の頭目掛けて放つ刹那──またバックルが緊急事態を伝え、ブーツが黒から赤へ変色。

 脚が勝手に動き、屈むと同時に何故か後方へ蹴りを繰り出す。視線を動かし、視たモノは……

 燕頭の超人野郎が背後から、あの命を抜き取り握り潰す即死技。アレを行う瞬間だった。

 運良く屈んだ為に回避は成功。マジックの撃つ氷柱がナイトメアゼノ・タキオンの右手に刺さり凍らす。


「コイツ……マジックさん達に倒されたんじゃないのか!?」


「我らが母なる主の(めい)に従い──主以外の生命を全て抹殺する。例え、時間を飛び越えてでも」


 倒したのを見ていたリバイバーは酷く驚く。目の前で倒された筈なのに、何故また現れるのかと。

 それに対し、タキオンが答える。例えと言うが、有言実行されては例え話にすらならない。

 完全に倒すとなれば、破壊の力なり冥刀の概念斬り系が必須。つまり……特定の存在しか奴らを倒せない。

 その中で素朴な疑問が浮かぶと同時に、枝分かれする様に疑問が次々に生える為。


「おい。その抹殺対象は──お前達の味方に該当する三騎士も入るのか?」


「然り。我らは主・無月闇納様以外を抹殺対象に捉える。当然──四天王や無月終焉達も」


「成る程。遂に無月闇納の人類救済計画……全ての命の統一化が実行されたのね。さて、貴女はどうする?」


 疑問を投げ掛けた。すると……タキオンは凍った右手に力を込め、刺さった氷柱ごと砕きながら話す。

 その上で、主以外は味方陣営であろうが抹殺すると断言。それを聞き届けたマジックは少し宙に浮き。

 誰かに問い掛けた時──リバイバーの影が激しく揺れ動き、隣に現れる大人姿のミミツ。


「自己防衛で迎撃するだけですわ。……よろしくて?」


「あぁ。コイツを完全に倒すまでの間、共闘するしかないだろうよ」


 此方に敵意や変な動きは見せず、投げ掛けられた問い掛けに対し自己防衛で戦うと発言。

 此方に顔を向け、共闘は大丈夫ですか?と言いたげに聞かれた為、その提案を汲み取り。

 ナイトメアゼノ・タキオンを完全に倒すまで……と言う期間限定を儲けた上で。

 右手にフォース・ガジェット、左手に朔月を持ち。苛立ち気味に咥えていた蜜柑の乾燥皮を噛み潰す。




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