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ワールドロード  作者: オメガ
六章・Ich bin menschlich
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儀式 -ring-

 『前回のあらすじ』

 十八世紀のアメリカ・セイラム村、今ではダンバースと呼ばれる記憶世界へ到着した一行。

 其処はかつて、魔女狩りが起きた場所。故に、魔女や悪魔・魔術に関する資料が図書館に残されており。

 子供のミミツは友達と一緒に魔女裁判の本を見付け、普通だらけの生活から抜け出し楽しく面白い生活を求め。

 マジックは自身の魔女経験から発言し、エックスは人類に対する皮肉を口にするのであった。



 自分とマジックが人類に対し皮肉を述べている間に、窓から見える空が茜色に変化。

 夕刻を伝えていると視覚から分かる。それを知ってか、図書館に居た他の来客達も各々帰って行く。

 反面、このちびっ子達はまぁ~だ魔女関連の本を囲い、夢中になって何かを読んでいる。


「魔術儀式……悪魔召喚の魔方陣?」


「外で描いてたヤツだな。所々、ミスってた部分もあったが」


「要は西洋版のこっくりさん。ただ、どちらも遊び感覚でやるモノじゃない」


 彼女達から自分達が見えてないのを利用し、どんな内容の本を読んでいるのか覗き込む。

 其処には黒魔術に関する記述が載っていた。それも、素人が安易に真似してはいけないレベル。

 勉学で言えば、赤子に世界レベルの学業を教える位無謀かつ、偶然が重なれば都市一つは消せるヤツ。

 図面には悪魔召喚の魔方陣や必要な物が記されており、外で描いてた陣にやや似ている。


「せめて白魔術を学んでくれ」


「白魔術?」


「黒魔術は自己満足用、白魔術は奉仕用と覚えれば良いわ。ゲームでもあるでしょ?黒魔法と白魔法って」


「あぁ~、攻撃用と回復用の!アレってそう言う分別されてたんだ!」


 好奇心は猫をも殺す。そんなことわざを思い出し、愚痴った言葉にリバイバーが反応し聞き返す。

 これから起きるやも知れぬ出来事が用意に想像出来、痛む額を右手で押さえる自分を見て。

 マジックが代わりに返答し、理解し易くゲームを例えに説明すれば、早々に納得した様子。


「そう言えば、貴紀さんがスレイヤーって呼ばれてる理由って何かあるのか?」


「殺した相手の仲間や家族を悉く殺し尽くしたからじゃね?」


「…………聞いてゾッとしたぁ……絶対貴紀さんと敵対とかしたくねぇ~」


 何を思い出したのか、リバイバーから素朴な疑問を訊ねられたので、軽く理由を含めて話してやった。

 すると聞いた本人は「聞くんじゃなかった」と言わんばかりの青ざめた顔で感想を述べる。

 まあ、それがスレイヤーたる異名の由来。敵味方から尊敬と畏怖の念を込められ、呼ばれる理由。

 殺された親族等は復讐をする。故に人類人外から仲間達を護る為に──敵は子孫も探し殺し尽くす。


「夜中にみんなで集まって、楽しい生活の為に魔術儀式をしましょ!」


「親には内緒だよな?」


「勿論!」


「それじゃあ、解散!」


 ミミツ達の会話を聞き、生前の幼少期を思い出す。趣味に没頭して、夜中まで起きていたのを。

 親には内緒。そうは言っても、意外と見られているものだ。叱ってくれる人が居る、幸せ者だった。

 解散の言葉をミミツが伝え、各々家に戻って行く。反面教師に適した父、厳しくも優しかった母。

 もう二度と逢えない両親を思い返しながら、子供達の背中で微笑む赤い笑みを睨む。


「……貴方は全身を血と罪で染めた人を見た事はある?」


「流石に……そんな人は見た覚えがない」


「そう。なら覚えておきなさい。彼──スレイヤーこそ、闇を切り裂く紅き光と」


「紅き光ってそう言う意味かよ。貴紀さん……その体に、どんだけの罪と重りを背負ってるんだ?」


 後ろで何やら話している二人。されど今は、あの赤い笑みが気になり、振り向かない。

 逆に言えば世の中には罪無き者は存在せず、誰しも生存と言う罪を背負い、生きている。

 知るも罪、知らぬも罪。そして死ねばあの世で罪を裁かれる。ならば、生とはなんぞや?

 子供達を見送ってから振り向き、二人に向き合う。それに合わせて場面も変化し、何処かの民家へ。


「ただいま~……」


 ミミツが帰宅直後の家内は薄暗く、両親の姿はリビングの何処にも見受けられない。

 奥にある扉が少し開いており、漏れている明かりから別室に居るのだと分かる。が……返事はなく。

 いつもの事。と言わん慣れた様子で四角形のテーブルへ歩き、ランタンのレバーを捻り火を灯す。

 ……当時のランタンって、そう言う火の灯し方だっけ?いや、別世界なら技術に幾らかの差はあるか。


「一人でご飯も慣れたけど……やっぱり」


「なんか……こう言う過去とかを見ると、倒し辛いよなぁ。貴紀さんはどうだ?やっぱり倒し辛い?」


(確かに可哀想って感情はある。が──俺達も宿主様も馬鹿じゃねぇ。倒すべき時は倒す。だろ?)


 椅子に座り、一人夕飯のミートソーススパゲッティを銀のフォークで食べるミミツ。

 ポツリと呟いたリバイバーは、此方に意見を聞いてくるが……ゼロが話す内容と同じ。

 可哀想とは思う。だからと言って、手を抜けば此方が殺られる。救える・救えないは時の運。

 質問者のリバイバーに短く首を横へ振り、再びミミツへ視線を戻せば……居ない。外へ出れば既に夜。


「──!」


「~~!」


 昼間に見た村の広場へ駆け込むと、其処には魔術儀式を行う五人の子供達の姿があった。

 その眼にはこれから起こるであろう、夢見る楽しい生活が映っているのだろうか?

 五人の表情に疑いや恐怖心は無く、あるのはまだ見ぬ盲信した先、何を対価に求めるか分からぬ幸せ。


「なんで言葉が上手く聞き取れないんだ?」


「知らない言語・専門用語を言われて理解出来る?」


「あぁ~……確かに。それは理解出来ねぇわ」


 儀式の呪文を唱える子供達の声、言葉が上手く聞き取れないと言うリバイバー。

 それに対し、理解し易く訊ねるマジックの言葉に納得した様子。ノイズ出してる本人が言う言葉かねぇ?

 まあ。悪魔を讃え呼び出す呪文を聞きたいのなら、話は別なんだろうけどな。


「現れないね~」


「何か間違ってたのかなぁ?」


「僕ぅ……そろそろ眠い」


 どれだけ呪文を唱えても、魔方陣からは何も出ない。ただ時間が過ぎ、眠気を訴える子も。

 フュージョン・フォンで確認した現在時刻は深夜一時。普通の子供ならもう、眠っている時間。

 何が悪かったのか?等話ながら大人達にバレない様、地面に書いた魔方陣を消して家に戻って行く。

 ……陣があった場所を注視すると、空間に小さな亀裂が出来ている。何かが出てくる前か、出て来た後か。


「あの子達は、何を呼び出そうとしていたんだろうな」


「悪魔だよ。それも、人類の手には負えないレベルの奴」


(人類っていっつもそうだよな。自分達の手に負えない代物やら危険物ばっか作ったり呼び出してよぉ)


「幸せの青い鳥は身近にあれど、それに気付かず遠出をする。人類ってのはそう言うものよ」


 何を召喚する気だったのか?そう呟く姿を見て、敢えて簡単な内容の返答を返す。

 ゼロが愚痴る様に、人類は争いを繰り返す。その中で自らの手に余る代物を作ったり、呼び出す。

 戦争に勝つ為。そう言えば聞こえは良い。人殺しにも大義名分が付き、殺す程に名誉も付いてくる。

 身近にある幸せに気付けないのは、今より上の変化・幸福を求めるが故に──なのだろう。


「何が悪かったのかなぁ?」


「これじゃない?神様や悪魔には供物を捧げる風習がある~って書いてあるし」


「供物かぁ~……何が良いのかしら?」


「神様にはお酒、悪魔には動物の死体を捧げるって本には書いてるから、これかな?」


 翌日の昼。昨夜黒魔術の儀式を行った子供達は再び図書館に集まり、失敗した理由・原因を探る。

 確かに神仏に捧げ物をする風習は今も残っている。酒のみならず、作物と言う場合も。

 悪魔は……召喚・呼び出す為の対価、と見るのが正しいのかも知れん。

 血を対価に使うのは、上位・最上位の魔術や魔法を発動する際に使用する場合もあるがな。


「話は変わるけど……貴紀さん。ニーアさんから告白されたそうだけど、ちゃんと返事は返したのか?」


「…………誰に聞いた、その話」


 シリアスやら子供故の危うさを目の当たりにしている最中、突然恋話にシフトチェンジ。

 本当、誰から聞いた?ぶっちゃけると今は恋話をする場合じゃなく、話す気は毛頭ない。

 生前の経験上誰かに想い人を話したら、クラス中に広められた苦い思い出がある為。

 絶対に話したくない。錆びた機械が動く様に首を動かし、苛立ちを込めリバイバーを睨む。


「誰にって、いや。そのぉ~……」


「此方の恋愛事情には構うな。返事は保留中だが──記憶世界を終えたら返事をする予定だ」


 口封じをされているのか。濁した返事しか返ってこない故、念の為に釘を刺すも。

 執拗に聞かれるのも嫌な為、記憶世界を巡り終えたら返事をする予定だと話し、溜め息混じりに俯く。

 ……今一瞬、自分の影が大きく揺れた様な気がしたんだが……気の所為か?


「何はともあれ。成功するまで何度でも試してみましょ。……あら?」


「指輪だ~。本に挟まれてたみたいだね~」


 自分の影に意識が向く中。記憶世界のミミツと子供達が、魔術書の一冊に挟まれた指輪を発見。

 真っ黒い指輪で、サイズから見ても女性用。子供達が集まり、物珍しげに見ているが……

 本に挟まれてたら、持ち運ぶ際に落ちていたのでは?仮に落ちずとも、指輪分の厚みから目立つ筈。


「指輪……そう言えばこの指輪、自ら意識があるかの様に抜けないんだよなぁ」


「捻れた虹色の指輪かぁ。俺の付けてる指輪はくすんでて見映えも悪いから、逆に羨ましい」


「……元々何かの力を宿していた反面、役目を終えて黒ずんだのね」


 指輪と言うキーワードでふと思い出し。左手を顔の高さに上げ、薬指に嵌まった指輪を見て愚痴る。

 するとリバイバーが右の人差し指に付けた指輪を見せ、鮮やかな点が羨ましいと言う。

 マジックの言う通り、何か力を宿していた痕跡が感じられる。役目を終えて黒ずんだと言うが……

 何だろう?何かを待っているのか、落ちる寸前の線香花火が如き小さな灯火を感じる。


「もしかしたら、この指輪が儀式に必要だったのかも~」


「その可能性はありそうね。今夜の儀式から使ってみましょ」


 魔術の儀式書に挟まれていた、黒い指輪。子供の一人が儀式成功に必要な物かも?そう言うと。

 ミミツは机の上に身を乗り出し、眺めるだけで誰も触ろうとしない指輪を左手で掴み。

 右の人差し指に嵌める。すると指輪は彼女の指に合わせてサイズを調整し、フィットした。


「貴紀さん。指輪が出てきた魔術書のタイトル……」


「偶然か、それとも何者かの狙い通りか……か」


「十中八九後者よ。微かに、悪魔の臭いがするもの」


 用済みとばかりに閉じられた魔術書。そのタイトルが気になり見たリバイバーに言われ、自分も見る。

 影の悪魔──三騎士・ミミツの異名は影の魔女。故に、偶然か故意に仕込まれたモノかと悩む。

 二つに一つ。どちらが正解か、答えを導き出す前に、マジックから後者だと断言され、理由も述べる。

 悪魔の臭いって……どんな臭いだろうか?ルシファーからはそんな異臭、しないんだが。




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