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ワールドロード  作者: オメガ
序章・our first step
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歴史

 生命ってさ。別の命を糧に生きて子孫を残したりするけど、味覚を持つ生命体は何時しか『味』にも拘る様になったよね。

 違う種族同士では言語やら文化と言った、何かしらの『壁』が存在する。

 うん。つまり何が言いたいか、と言うと……


「お……お腹、空いた」


 現在、空腹の余り腹が鳴り止みません。食事はあるけど自然食。

 手っ取り早い話、肉無しの全部野菜。しかも食糧難で配給はされるものの、本当に微々たる量。

 せめてお米でも有れば少しは違うんだが、それすら無い。細い人参と大根にさつまいも、小さい芋や赤かぶが四個ずつ。

 体は子供だが、中身はいい大人。少なくとも常識は知ってるつもりだし、こう言う体験も何度かあった。


「木の実、もしくは狩りでもして食料を得るべきか?」


(ヤルニシテモ霊華達ヘ相談ハスルンダゾ? 昨日ハ運ガ良カッタダケダ)


「だな。で、ゼロは?」


(森ヲ探索中ダ。アイツモアイツデ、相当腹ヲ空カセテイタカラナ)


 自分の側で浮かぶ紫色の光球、ルシファーに相談していた時に気付いた。ゼロの姿がない。

 聞けば飯を喰らいに行ったんだとか。森に居た魔物達……確実に一通り喰われるだろうな。

 そんな事を思いつつ藁の家から出て、霊華を探す。母さん、と呼ぶには年月が経ち過ぎた上に言い損ねて素面(しらふ)じゃ照れ臭くて言えねぇ。


「あれ……霊華の霊力を感じない?」


 つい癖で霊力と言ってしまうが、魔力も霊力も基本的には自然のエネルギー、マナである事に違いはない。

 ある程度の実力者で訓練していれば、様々な方法でマナを感じれる。

 スキルとして獲得せずとも使える事から、慣れみたいなものだろうか? まあ、多少集中力は必要だけど。

 目を瞑り感知に集中する。里の中に霊華と心を感じない。外……知らない匂いだ、複数人で森の外へ出掛けている?


「目が覚めた?」


「えぇ、まぁ、うん」


 話し掛けられて目を開けると、心に仕えてる耳長エルフが前屈みで此方を見ていた。

 それは別に構わんよ。気配消して背後から抱き付く霊華と比べれば。でもな、羞恥心は持ってくれ、頼むから。

 アンタ今、メイド服じゃなくてシャツに短パン姿だからさ、胸元のささやかな谷間が見えるんだよ!!

 無難な言葉を返し、視線を逸らしても理解してないのかそれとも、羞恥心が無いのか……違うな。男として認識されてないわ、これ。


「にしても、その歳でエルフ語が分かるとは」


(やっべ。昔エルフに言葉を叩き込まれてたから、自然と返事を返しちまった!)


 エルフとかは異世界物語にだけ登場する。って話はよく聞くし、言われもする。でもこれだけは言いたい。

 自分が今居る世界、異世界じゃねぇんだわ。

 歴とした現実。世界には表と裏がある。表は人間社会があって、裏には架空の存在が沢山いる。

 自分達が言う光闇戦争とは、世界の表裏を行き来して行う戦争。その途中で偶然、エルフ族と知り合い仲良くなった。

 当然、友好関係築くのに苦労はしたがな……


「……まあ言葉を理解出来るなら、生活に問題はない、か」


 言語の壁を乗り越えても、次は種族間の問題が出て来るんですわ。

 ある事無い事子供の喧嘩か、ってな位お互いに言い合いやがる。嘘だとバレたら罪の擦り付け合い。


「生活に問題は無くとも、問題は相手側から此方の有無関係無く押し付けられるもんですよ」


「それは言えてる。同じ種族でも他種族でも、何かしらのいちゃもんを押し付けてくるし」


「その問題すら相手側が意図的、偶然にやった原因なんですよね」


「そうそう。成功を横取り失敗は押し付け。全く、嫌な時代になったものよ。あんの親の七光り野郎」


 ついつい素面(しらふ)で愚痴ってしまったが、シオリと言うエルフも普通に愚痴で返して来た為か。

 愚痴の言い合いと共感していた時、気になるワードが出て来た。親の七光り野郎?

 そのまま聴いてみると「相変わらず口だけのド三流、逃げ足は一流」だの「聖光石の欠片を持って森へ出入りしてる」とか聴けた。


「ま、私の愚痴は此処まで。ほらほら、一緒に『外』で釣りでもしましょ!」


「あぁ、うん」


 丁度声を掛け、森の探索へ出掛けようとした矢先。

 此方の手を取り聖光石の欠片を手渡すと、何故か『釣り』を始めると言い、外……つまりはあの森を舞台に選びやがった。

 「時間に余裕があって丁度良いし、話でもしようじゃない」

 そう言うや否や、自分の手を引っ張って森の中へと歩き出した。此処で変に断って勘繰られるのも面倒だし、付き合う事にした。


(とは思ったものの……何か上手い事動かされてる様な気がする)


(ダガ、村長ガ森ヘ出入リシテイル情報モ確カメタイ。利用サレテイルナラ、此方モ利用スレバ良イ)


 案内され、大きな泉らしき場所へ到着して直ぐに釣竿や青いバケツを渡された。

 水を汲み、釣り針に餌を付け、泉へ投げ込み魚が食い付くまでの待ち時間の間、ずっと水面を見る。


「遥かずっと昔」


「えっ?」


「私の祖先から末代まで伝えろ。って言う言い伝えがあるのよ」


「はぁ……」


 いきなり話し掛けて来た。と思いきや、急に昔話的な内容を話されてもさ。

 何も知らない此方としては、「そうですか」位しか、返答に困って上手い言い返しが出来ないってぇの。


「超古代文明四万年目と五万年目、無に還す者と悪魔が誕生。神羅文明六百年目、時を支配する魔術師襲来」


(時を支配する魔術師って……まさか)


 シオリが話した内容を纏めると、遥か昔に戦争を引き起こした者の名前らしい。

 倒されたのは無に還す者、時を支配する魔術師、暗黒の支配者、無垢なる道化、世界を裂きし者、孤独の創造主、闇の魔神、の……計七体。

 聞いた話じゃ、どいつもこいつも闇の欠片から生まれた挙げ句、生命体の闇を糧に育った存在だとか。


「光を継ぐ者現れし時、共に歩み闇を討て。そう教えられて来た。ただの伝承だと思ってたけど、本当みたいね」


 先祖代々言い伝えられて来た伝承……か。

 どうやらシオリは自分を伝承に伝わる存在だと、確信を持っている様にも思えた。

 いや、あの遺跡に掘られていた伝説、それと幼き頃から聞いていたであろう伝承が、確信になっているのかも知れない。


「付いて来るのは勝手だけど正直言って、色々とキツいが……良いのか?」


「勿論。あ、でも今は……」


「構わんよ。子供の姿と能力じゃ、幾らスキルが強くても力に振り回されるのがオチだし」


 新しい旅仲間が出来た。

 と言えど旅をするには力や知恵も足りず、子供の姿じゃ何かと不都合も多い。

 今は此処で知識を得て、体を鍛え直そう。何も力だけで解決する旅でもないし。


「そう言えば、君の戦法はどんなの?」


「基本的に近距離と中距離での何でもありな戦い方。まあ、足癖は悪い方だな」


 オールマイティー。と言いたかったが、今の状態だと遠距離は苦手。

 理由は簡単。自分の技が全て近距離から中距離程度しか射程がなく、遠距離向きの技はあるにはあるが、今の姿では使えない。


「私の職業はレンジャー(野伏)、盗賊紛いやビーストテイマー(魔獣遣い)も修得したダークエルフ」


 シオリは自らをダークエルフだと言うが、判別し易い筈の肌の色は人間やエルフと同じ。

 職業やスキルについても説明してくれた。

 職業とはそのまま、何を基本的に学んでいるか。スキルは学び、身に付けた技術を指すそうだ。

 盗賊は文字通り鍵の解錠や罠等の探知、身の軽さを生かした活動が上手くなる。

 テイマーは何かを手懐け、使役するスキル。○○テイマーと言い、得意な分野が分かれるそうだ。


「まだあるけど、今はこんな感じ。ねぇ、悪い奴らと戦った話を聞かせて?」


「……」


 こう言ったら、変に思われたり批判なり否定されたりするだろうが、少なくとも自分はこう思う。

 正義だの悪だのと、比べたり判別するのは頭の固い馬鹿げた連中がやる行為だと。

 投げ掛けられる言葉に対して自分はただ、口を閉じ沈黙で応える内、ちょっと疑問が浮かんだので逆に問いを投げ返す事にした。


「じゃあ、今から出す問題を答えれたら話す。それでどう?」


「望むところ」


「追い詰め、殺し、壊す。これらを日常的に行い、悪と悲劇を広める。コレな~んだ」


「……えっ?」


 問題を出したら案の定、言葉に詰まり固まった。

 頭を抱えている姿を見るのが滑稽……とは思わんよ。

 寧ろ色々体験し過ぎた為か、感情を感じ難くなった為表情を作り、感情を偽る事が増えたのも確かだ。


「一つ、体験談から言葉を言おう。『外の世界を知らない限り、知識は増えない』」


「生意気~……」


「言っとくが自分、この星で一番の年上だぞ」


 生意気だと言うから、年上だと言う事を伝えてやったら、また固まった。

 余程衝撃的だったんだろう。

 肉体は転生、と言う小説や漫画では在り来たりな方法を使ったが、一度精神をリセットしないと心が壊れる。

 と言うか、実際に何度か壊した。

 その都度仲間に迷惑を掛けた事を後々知って、反省文書かされたのは言い思い出だ。


「おっ、釣れた。まあなんだ、歴史とかを教えてくれたら代わりに昔の旅話、少しは話すからさ」


「……分かった」


 少し拗ねている様子を見るに、問題が解けず答えも判明しなかったから、と予想。

 後、年齢に関しても信じてないだろうな。

 それは兎も角、歴史とかに関しては色々と聴けたのは幸い。一番興味深かったのは──

 「歴史と言っても超古代と神羅の時代が長く、後は古代文明や少し前だとだとへいせい? とかよ?」だ。


「えぇ~っと、そうなると……」


(超古代、神羅ハ兎モ角。後ハ俺達ガ知ル歴史ト同ジラシイナ。シカモ)


「自分達が住み、活動してた場所。日本と同じか」


 知らない時代は兎も角、聴いた限りでは日本と同じ。つまり、此処は未来の日本……と仮定して。

 どうやら昔は機械・魔法・奇跡のレベルは高かったそうだが、種族差や個人差、才能まで使用に影響する為、機械系が盛んになった。

 これが自分達がよく知る時代、昭和~平成。

 となると別の名前と肉体だった時は大正~昭和前半、今の名前と姿では平成初期から……か。


「スキルとか魔法、奇跡がまた使われ始めたのは?」


「千百年位前かな。その百年後にオメガゼロ・エックス復活とか霊達が話してたけど、千と十年後まで君は現れなかった」


 はぁ!? 悪魔アバドンやベーゼレブルと戦ったのが、まさかの……千年前?!

 いや、正確に言えば千と十年前。えぇっと今の年齢は何歳だ? 確か宿る前に見た時、小一位って言ったよな。

 そうなるとぉ~……何歳だっけ? あぁ、そうだ、七歳だ。えっ……後二十年したら世界は滅ぶのか?


「うっげ……マジかよ」


「どうしたの?」


「世界滅亡まで、後二十年しか残されてない」


 信用するしないなんか言ってられない。

 少しでも信用出来る仲間が欲しい。焦りからか思わず口に出してしまった世界滅亡の話。

 正直夢物語扱いされると思いもしたが、魔神王と関連する話を、シオリは信じてくれた。何故かと問うと──


「私の目の前に代々話続けた伝説が存在して、あの遺跡に残されたモノ全て。それを目にしたら信じる他ないじゃん」


 屈託のない満面の笑みで言うシオリに、胸の奥から理解出来ない何かがこみ上げてきた。

 同時に思い出せるだけの、みんなとの出会いと別れ、戦いを思い出として蘇って……もう、みんなに逢えない。

 そう痛感する程胸が締め付けられ、苦しかった。


「ちょっと、どうしたの?!」


「えっ? あ……」


 心配され、知らず知らずの内に溢れ、頬を伝う涙に気付いた。

 手で幾ら拭っても、涙は一向に止まってくれない。ただ……何故だろう。

 またみんなに逢いたくて、でも逢えない事実に心が苦しくて。苛められていた時の様に、弱音を吐き出したくて仕方がなかった。


「……昔の話、聞きたかったんだよな?」


「えっ、うん」


「今、丁度話したい気分だから、話してあげるよ」


 話している内に鮎が数匹釣れ、バケツの中で元気に泳いでいる中。

 自分は多分、いや十中八九。暗い顔をしたまま話し始める。

 昔の旅路……冒険談を、まるで犯した罪を告白するかの様に。






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