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ワールドロード  作者: オメガ
六章・Ich bin menschlich
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魔女の村 -grimoire-

 『前回のあらすじ』

 星の記憶へ続く道を進む中。無月闇納の手先に襲われるも予想外な面々に救われ、エックスは意識を失う。

 目を覚ませば宇宙の何処かにある玉座に居り、黒いフード付きコートを着た少年と再会する。

 彼との会話から悪夢を狩る者だと教えられ、魔皇と契約を交わした力だと教わった後。

 過去は変えられないが、未来は変えられると言われ、無月闇納を倒すべく光る階段を降りるのであった。



 白く輝く階段を早足で下り続け、白と黒に光へと駆け込んだ。その先を越えると──

 目が覚めた直後、薄暗い緑色が見えた。長時間猫背かつ、座り込む姿勢で寝かされていた為か。

 首・背中・腰・尻の四点が痛い。痛みがあるのなら、肉体は再構築されているのだろう。

 誰の仕業かは知らんがな。何はともあれ、現状把握と情報の収集が最優先。取り敢えず、辺りを見渡す。


「……大型のゴミ箱だな、此処」


(漸く目が覚めたか、宿主様。俺達も気付いたらゴミ箱の中に居てよ。どうすっかと悩んでたところだ)


 正面には汚れた熊のぬいぐるみや、埃や汚れでボロボロになった魔女関連の本や折れた箒が沢山ある。

 ……この子達も、親に棄てさせられた夢らしいな。どの時代・地域・人種でも、洗脳は続いてる様だ。

 内心愚痴る中、鈍い鐘の音が響く。鳴り止んだ後、足音や物音がしないかと警戒し耳を澄ませるも。

 物音は一つもない。左手でゴミ箱の蓋を少し開け、周囲の安全を確認してから外へ。


「日本……では無さそうだな」


(洋風映画やホラゲーで見る小さい村って感じだな。馬車を引く奴の服装も、日本じゃ見ねぇし)


 空は青く、白い雲が幾つも浮かんでいる。が……その街並みは日本では殆んど見ない様な。

 玄関から少し離れた先に、門が付いている家も見受けられる上、ゼロの言う通り服装も全く違う。

 貴族を思わせる様な服装の男性も居れば、足下まで届きそうなドレス?を着る女性も居る。

 民家も各々別々離れてたり、隣同士密接しているのもある。兎や鶏などの家畜も育てている様子。


(本体曰く、此処は十八世紀のアメリカ・セイラム村。現在ではダンバースって地名だ)


「魔女裁判にちなんで、魔女の町って異名のある場所か」


(なんで知ってんだよ。って、宿主様は宇宙系や怪異系には興味持ってたな)


 ゼロが真夜と通信し、教えてくれた現在地は──魔女裁判が起きていた村。

 魔女に関連する本や箒がゴミ箱に棄てられてたのは、過去を黙殺なり思い出さない為の方法かもな。

 十八世紀って言うと、日本は江戸時代ど真ん中って辺りか。そう、ゼロの言う通り……

 クトゥルフ神話を含む宇宙系や怪異の類いは何故か興味を持っている為、セイラムも当然知ってる。


「貴紀さん!良かった。突然闇に飲まれたから、慌てて闇に飛び込んだんだけど……此処は?」


「アメリカ合衆国マサチューセッツ州に在るセイラム村。セイラム魔女裁判の現地だな」


「魔女裁判が起きた村……にしては、幾分か小さくないか?」


 ゼロと話していると。小さな民家の前で此方に気付き、手を振り駆け寄って来るリバイバー。

 話す内容は自分の体験とは異なるが、第三者から見た光景的には語る通りなのかも知れん。

 取り敢えず情報共有をするも、言われて辺りを見渡すと……確かに、行き交う人が少なく村も小さい。


「んん~……おっ、向こうに人だかりが見える。聞くだけは聞いてみるか」


「そうだな。現状、此処が誰の記憶世界かすら判別出来てないし」


 遠方を見る・又は直射日光を遮る様に、眉の上に左手を添え、背伸びしながら此方の背後を見ている。

 人が集まっている現場を見付けたらしく、自分に意見を求める形で提案をするリバイバー。

 特に宛もない為、情報を求めて近付く内。見覚えしかない後ろ姿が視界に映る。


「……あら?随分と遅い到着ね。居眠りでもしてたのかしら?」


(げぇ、マジック!!)


「まあ──そうだな。此方としてはアンタが何故此処に居て、先程助けてくれたのか?が気になるがな」


 握り拳の人差し指を唇に当て、何かを呟くマジックだったが……此方に気付いて振り向き、この言葉。

 知ってか知らずか。それとも鎌を掛けているだけか?驚くゼロとは裏腹に、此方は冷静な態度で返し。

 干し草ロールが置かれているが、放牧している為何も居ない飼育舎の前に立つ彼女の隣へ。

 同じ視線の先──村の中央で円陣を描く子供達男女を眺めながら続く言葉を吐き、訊ねた。


「自己防衛よ。新しいペットは主人(闇納)以外を抹殺する用教育されてるみたいでね」


「これが本当の、親ガチャ失敗ってヤツか?」


「教育的にはね。けど、人類だって同じよ?家庭では親、学校なら先生、職場だと上司が洗脳してくる」


「確かに。そう考えると、人類ってのは社会に取って都合の良い奴隷を生産するライン工場だな」


 自己防衛、主人以外を抹殺する教育を受けたペット。それを聞いて、親ガチャと言う言葉が出た。

 されど、指摘する様に人類も同じ。家族・隣人・先生・政治家・ネット……人を洗脳するには十分過ぎる。

 鵜呑みにするのではなく自分の頭で考え、行動しなければ、自ずと誰かの奴隷になってしまう。

 目を細めながら、何かを描く子供達を眺めながら隣に居るマジックへと言葉を返す。


「まあ──何事も適切な教育は必要よ。でなきゃ、人類は滅びの道を歩むだけ」


「……そうだな。国を滅ぼすなら、先ずは頭を腐敗させれば済む話だし」


 一切、お互いに顔を合わせて話さない。そんな自分達を、不思議そうに横から見比べるリバイバー。

 教育・常識とは、その場で生きる為に必要な情報。なれど、外に出れば常識はまた異なる。

 如何に優れた・又は強大な国でも、トップが悪かったり、思考思想が腐っていれば国も腐敗して滅ぶ。

 そう理解者した時──理解した。夢現は確かに今、過去を見せてくれているが……恐らく此処は。


「……今頃気付いたって顔ね」


「馬鹿だなぁ……なんでこんなにも簡単な事、気付かなかったんだろう」


「えっ?えっ?えっ?」


 当たり前だった、目の前にずっとあった。なのに──その事実から、ずっと目を背け続けていた。

 気付いた時、自分自身の愚かさに悔しさを覚え、握り拳を作り俯く。誰にも、顔を見られたくないから。

 理解が及ばず、どう言う事?と言いたげなリバイバーには……言わない方が良いだろう。お互いの為にも。


「改めて……此処は後に魔女の村と呼ばれる場所よ」


「三騎士・ミミツの子供時代──って訳か」


 此方の意図を察したのか、マジックは話を進める。魔女の村……つまり、影の魔女・ミミツの記憶世界。

 ぶっちゃけた話、あの子供達の中にミミツが居るのか?それか、大人なのかも分からない。

 けれど……何故か子供時代と口走った。あの円陣を視ただけで分かる。相当ヤバいモノを描いていると。


「起こした被害と悪性は決してイコールではなく、幼く純粋故に些細な苛立ちからも……か」


「人の精神は余りにも未熟過ぎて、感情的に動く。それが世界崩壊の引き金とも知らず」


「デーモン・コア。日本に落とされる第三の原子爆弾となる筈だった代物だな」


 夢現が口にした言葉を、ふと思い出す。被害と悪意は必ずしも繋がりはしないが、根元は同じ心。

 真夜もよく言っていた。人の精神と化学力は相反し、赤子にロケランを持たせる状態。

 人は……他人に認め、定義して欲しい。存在価値・理由・意味を──他人に求める赤子だと。

 知れば知る程、人に対して絶望してしまう。だからこそ、理解する。無月闇納の計画(プロジェクト)、その必要性を。


「……少し、昔話をしてあげる。ミミツはこの小さな村で生まれたごく普通の女の子だった」


「なんで、アンタがそんな……ムゴムゴ」


「裕福でも貧相でもなく、友達も(すこー)しいる位のちょっぴり好奇心が強いだけ」


 多分、自分は暗い表情をしていたのだろう。マジックは話題を変える様に、ミミツの昔話を始め。

 何故どうして。話の最中にも関わらず疑問をぶつけるリバイバーの口を、左手で塞ぐ。

 子供達は以前として陣を描いている。裕福・貧乏・好奇心……いずれも、度が過ぎれば毒となる。


「問題は両親が彼女の面倒を余り見なかった。最低限はして、後は彼女の好きにさせる教育方針」


「それ、親としてはどうなんだ?」


 続く昔話。リバイバーは自分達の前に回り出ては、素朴──いや。常識人としては当たり前を訊ねる。

 自分とマジックは鏡の様にお互いの顔を見、それが何故か不思議と笑えてしまい、腹を抱えて笑う。

 まあ疑問を聞いた矢先、目の前で突然笑われたら変な事言ったかな?とは思う。現に今がそうだしな。


「多少、子供の面倒見が足りないとは思うな」


「えぇ、過保護・放任主義過ぎるのは問題。夢・才能の開花を妨げるだけだしね」


「少なくとも、家から追い出したり暴力暴言を振るってない分、温情とすら思える」


「あ……なんか、すみません」


 個人的な解答としては、一般的な家庭で見るなら、もう少し子供に意識を向けても良い。

 マジックも同じ認識らしく問題点をあげ、自分も過去の経験から温情と思える部分を言う。

 それを聞いてか、何故か謝られた。申し訳ないと思ったのかも知れないが、それが自分の常識。


「そんな彼女が十歳の誕生日を迎えた日、運命の歯車は動いた」


「運命の歯車って言うと、貴紀さん達の旅が始まったのと同じ感覚だな」


 話と同調する様に周囲も粘土を捏ねる様に変化し始め──本棚がずらりと並ぶ、二階建ての図書館に。

 素材は全て木造かつ年期が入っているが、掃除や手入れが行き届いており、古臭さを感じない。

 リバイバーの言葉に続き、マジックの右人差し指が子供達が囲い本を読む木造の円卓を指し示す。

 同時に子供達の所へ歩き出す為、自分達も大丈夫なのか疑問に思いつつ、後を追い円卓の近くへ。


「こんな普通だらけの生活なんて嫌!みんなで魔女になって、楽しく面白い生活をしましょ」


「賛成ー」


「毎日が普通過ぎてつまんないし、大人達は勉強しろーって五月蝿いし~」


 高く積み上げた、一番上の本に書かれたタイトルは……魔女裁判。恐らく、積んだ本全てが魔女関連。

 住む場所・国が違えば常識や普通、考え方も変わる。金髪の子が大半を占める中、銀髪の子が居る。

 多分後ろ髪が長く、ふんわりと捻れたサイドテールの彼女がミミツだと、自分の直感が訴える中。

 物騒な会話が続く。……理想はいつの世も、自身に都合の良い部分しか見えない、難儀なモノだな。


「魔女になって楽しく面白い生活……か。魔女の生活も思ってる程、良いものじゃないけどね」


「スポーツ選手とかもそうだな。テレビや雑誌で見れるのは、輝いてる部分だけだし」


「う~ん……二人が揃って話をすると、人類に対する皮肉とかでたっぷりだな」


 魔女と言う部分に反応し、呆れた様子で話すマジック。知り合いに魔女は三人程居るが──

 各々基本的に単独行動や魔法の勉学、魔法に関する交流と暇潰しを兼ねたお茶会をしてる。

 世間一般的には魔女も天才も変わらない。自身と違う相手を受け入れない限り、恐れられ続けるだけ。

 人類に対する皮肉云々と言うも、お互いに長く生き過ぎただけ。半ば、呆れているのさ。




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