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ワールドロード  作者: オメガ
六章・Ich bin menschlich
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夢現 -Me and you-

 『前回のあらすじ』

 新たな技法・オーバーチューンの存在をルシファーから教わるも、その当人は何かに疑問を持つ。

 戦いが終わるまで待っていた映像は続きを投影し、無月闇納に勧誘され、冥刀の制作者と明かされる。

 勧誘を受け、任務をこなす内にコトハ、ミミツと勧誘された者達で結成された三騎士へ。

 そこまで見届けた直後。エックスは影に引きずり込まれ、真っ暗闇の中へ。



 真っ暗闇に飲まれる中。光輝く右腕が此方に真っ直ぐ、一生懸命手を差し伸べてくる。

 敵意や恐れは感じない。誰の右腕か分からないけど……自分も左手を精一杯伸ばし、誰かの右手を掴む。

 すると一気に持ち上げられ、暗闇の中から無事脱出。目の前には、白いお面を被る黒衣姿の子供が。


「君はイリス……いや、ヴァイスの記憶世界に居た……」


「僕の名前は夢現。君の眼に宿るオメガゼロの力を利用して、仲間や敵対者の過去を見せている者」


 見覚えのある真っ白い部屋、壁に貼られた絵の数々。自らを僕と呼ぶ彼女は……夢現と名乗った上。

 ヴァイスから始まり……琴音やエリネ、シナナメと続く回想を見せている張本人だと自白。

 何故わざわざそんな事をするのか?疑問が疑問を生み、思考回路はごっちゃごちゃ。


「君はこれを、寄り道だと思う?」


「…………思ってしまう部分があるのは認める」


「でも、これは本筋。君は──知らなければならない。心の奥底に隠した何か、その理由を」


「…………そう、だな。色々な時代を巡り、愛刀・破王を探していたけど……ずっと、此処(心の中)にあったんだ」


 此方の顔を見て、心を埋め尽くす疑問を読んだのか。記憶世界を巡るのが寄り道と思うかと訊ねて来た。

 幾ばくか沈黙の後、正直に答えた。早く無月闇納を、融合四天王を倒さなければ!と焦る心を肯定する様に。

 夢現は此方の返答を否定せず、これは本筋。物語で言う外伝や過去編ではなく、本編だと言う。

 何処にも愛刀・破王は無かった。幸せの青い鳥同様、探し物はずっと此処にあったと右手を胸に当てる。


「人間は常に、自分と自分を見ている自分自身が居る。意識と無意識の様にね」


「つまり……どう言う事?」


「魂と心──本来は一つと思っていた。でも本当は一つじゃなくて、魂が心と向き合っていないって事」


 お面の子が説明をしてくれるも、学の足りない自分にはちんぷんかんぷんで、思わず聞き返してしまう。

 その時。部屋のドアが開き、ルージュのお供で黒く短めの髪が特徴のR──リバイバーが現れ。

 此方にも分かり易く、噛み砕いて説明してくれた。ふむ……本心とプライドみたいなもんか。

 改めて、此処に見覚えある理由が分かった。トリックを倒した後、爆発に飲まれて辿り着いた場所だ!


「もしかして……シナナメは自分の(過去)と向き合えず、逃げ出した?」


「そうなるかな。力が強くなった反面、心は深く傷付いたまま。だから虚無の紋章を得たのかも」


「彼女が弱い訳じゃない。人は皆、仮面を付けて生きている。光の紋章は仮面を剥がし、現実を見せるだけ」


 話を聞き、シナナメの一件に思う部分があり訊ねれば、リバイバーは肯定し仮説を語る。

 それは彼女の過去を見た限り、的中だろう。絶望する程のトラウマを隠し、忘れる為の紋章と考えれば。

 続く夢現の言葉に、自分は頷く。奴は強い。時間稼ぎやトラウマを見せ、追い返す以外の方法が無い程に。

 仮面云々もそうだ。相手の弱みを知れば、利用し金銭なり脅して来たりする奴も存在するからな。


「そう言えばさ。以前此処に来た時、黒いフードコートの少年に会って話したんだけど」


「──!?……何か、話したの?」


「えっ?まあ、幾らかは」


 ふと以前此処へ来た際出会った少年を思い出し、知り合いかと思い訊ねてみたら……

 驚いた様子を見せたかと思えば、少し間が空いてから問い掛けられ、彼と話した内容を伝えると。

 ホッと胸を撫で下ろしていた。もしかして彼は、重要な秘密を知っている人物なのか?


「夢現さん。貴紀さんは後、此処で幾つの過去を見れば良いんだっけ?」


「三つだよ。それが終わった後は、君達を次の場所へ送り届ける予定」


 此方をチラッと横目で見たリバイバーは、何かを察したらしく夢現に質問を投げ掛ける。

 確かに後幾つ、誰の過去を見れば終わるのかさえ分からない現状、それは知りたい情報。

 後三つ。オラシオンの面々ならトワイ、シオリ、アイの三名。なんだが……シナナメの件がある為。

 もしかしたら、まだ過去を見ていないミミツの可能性もある。余り敵の過去は見たくないんだがな……


「と言うか、自分が他人の過去を見る必要はあるのか?」


「君が掴んだ力──融合と同調。その本質は何?」


「何って、自分と他者の心身を一体化させて戦う……」


「なら、その力を最大限高める方法は?君が親友や仲間と思っていても、相手はどう思ってる?」


 そんな気持ちもあり、素朴な疑問を投げ掛けたら──自分の使う力の本質は何かと問われ。

 当たり前の内容を話した。すると……投げ返される疑問。知らない内に成長してた、なんて事がザラな為。

 正確な返答は出来なかったし、後者に関しては相手側の認識次第な為、絶対にこうだ!とは言えない。


「君の力は繋がり──絆の力。君がもっと心を開けば、彼ら・彼女らは更に力を貸してくれる」


「白刃と黒刃。それに貴紀さんが使う技って、今まで旅して紡いだ相手との絆から生まれたモノだろ?」


 言われてみれば……確かにそうだ。一人の人間として旅を続け、沢山の出会いと別れがあり。

 託されたモノも、いっぱいあった。それは力を宿した物やその人が持つ技術、知恵に勇気。

 受け取った何かを昇華させ、技や行動原理に組み込んだりしてきた。

 それなら当然──夢現が言う様に、此方から心を開けば、向こうも心を開いてくれるかも知れない。


Me() and() you(あなた)。会話にしろ何にしろ、自分と相手が存在している」


「買い物もそうだよな。買い手と売り手がいて、始めてやり取りが発生する訳だし」


「Me and you……か」


 夢現の言葉と、リバイバーの分かり易い説明を聞いて、当たり前な事を改めて痛感した。

 私とあなた──それは人物であり、物でもある。自分と相手が居るからこそ、全ての物事が始まる。

 会話・観察・執筆・絵描き・生産。星があるから大地が存在し、水が存在するが故に大地が潤う。

 当たり前過ぎて……忘れていた。自分自身や相手と向き合い、対話する大切さ。成長の切っ掛けを。


「……夢現。君は、自分の心を成長させる為に、誰かの過去を見せてくれているんだね?」


「うん。それと同時に──君への挑戦状でもある。もう一度、僕を手にする資格があるか否かを」


 一度目を閉じ、頭の中で思考を纏めてから目を開き、夢現に答え合わせの意味も含めて訊ねると。

 頷き、肯定。した後……自分に対して、彼女をもう一度手にする資格云々の挑戦状でもあると言った。

 その時点で、夢現と言う存在が何なのかを理解した。そうだと分かった以上、絶対に掴み取らねば!


「挑戦状──記憶世界であったバトルや、過去を自分が見て何を思うか?って事か」


「ずっと、君へ問い掛けていたんだよ?四聖獣のお面を被り、性別や声すらも偽ってね」


「……黒いフードコートの少年は、違うんだ?」


「アレは僕じゃないよ。それと、アレは理解しては駄目な存在。同時に、無月闇納の最終目標でもある」


 夢現の言う挑戦状が記憶世界で戦ったイリスや心鬼、シナナメなんじゃないだろうか?

 後三つある記憶世界でも、戦う相手が居るかも知れない上、誰かの過去を見て何を思うか?も必要。

 話ながら夢現が指差す右側の白い壁には、四聖獣のお面が飾られ、気になった疑問を投げ掛けたら。

 初めて此処で会った少年……彼は理解しちゃ駄目な存在かつ、無月闇納の最終目標?何故あの子が?


「誰かの記憶世界へ向かう準備は良い?」


「……あぁ。心構えや小休止も十分だ」


「起こした被害と悪性は、決してイコールではない。片や幼く純粋故に、片や些細な苛立ちからもある」


 胸元で腕を組み、疑問に対して頭を悩ませていると次へ向かう準備の有無を聞かれた為。

 頷き、肯定の言葉を伝えたら──意味深な言葉を返された。起こした……つまり、やらかした被害と。

 悪性はイコールではないと言う。多分、幼い子供と中学生のやらかしは同じではない、と言いたいのだろう。


「無月闇納のやらかしは……どの部類に入るんだろうね?」


「正直、今の自分には答えられない。それでも──自分は、アイツの暴走を止めたい。止めてやりたい」


 前述を踏まえ、宇宙規模と言う……恐ろしい被害を叩き出し続けている、無月闇納。

 それは──悪気や悪性も無い、純粋な気持ちだと……理解してしまっている。

 混じりっ気の無い、純粋な善意・善性。世間的には、悪だと断言され処罰されてしまう。

 きっと、暴走の阻止を望んではいない。それでも、俺は闇納の暴走を止める。アイツを……助けたいから。


「あっ、夢現さん。次の記憶世界には、俺も貴紀さんに同行しても良いか?」


「……構わない。ただ」


「分かってる。核心を突く様な発言は厳禁、だろ?」


 自分の想いに反応してか、左手の甲で勇気の紋章が緋色に光る。が……これは別の紋章に反応してる?

 リバイバーに話し掛けられる夢現だが、何かを考えているのか?目を閉じており。

 即答ではなく、少しの間を空けてから返事を返す。同時に注意をしようとしたっぽいが……

 それは言われずとも重々承知の様子。言いたい事を先に言い、理解していると伝えていた。


「可能なら、残り三つの記憶世界を早く攻略して欲しい」


「何か焦ってる様子だが、何かあるのか?」


「……そうだね、焦ってはいるよ。だって──君達が全滅する未来を固定すべく、飛び回る怪物がいるから」


「──!?」


 木造扉から次の記憶世界へ向かおうとする直前、攻略を急かす様な発言を言われ。

 何を焦っているのか?その理由を訊ねた結果……予想の斜め上を行く返答が返ってきた。

 自分達の全滅する未来を固定する!?そんな怪物に関する話、今まで全く聞いてないぞ!

 そもそも。未来を固定すると言うのは、デトラの持つ破壊の力に匹敵する異能。一体、どんな怪物なんだ……




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