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ワールドロード  作者: オメガ
六章・Ich bin menschlich
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勧誘 -Another world-

 『前回のあらすじ』

 シナナメと一騎討ちを続けるルシファー。現状では押し切られると判断し、幾ばくか本気を出す。

 その実力は極めて高く、戦闘方法もこれまでの戦い方とは全然違うものに変化。

 対応しようにもアドリブが多く、斬擊に対処すれば格闘技で迫り、対戦相手に焦りを生ませる。

 最後は新たな技・Stellar(ステラ)と斬り合うも、光の紋章の効果を受けシナナメは逃走。勝敗は引き分けに。



 何故か現れた三騎士・シナナメ当人を退け、記憶世界に投影される映像へみんなが視線を戻す中。

 自分は……夜空へ飛んで行く折れた白刃と黒刃を見送り、ルシファーへ顔を向ける。


「にしても、ルシファーは滅茶苦茶強いんだな」


「……オーバー(決められた枠を)チューン(越えしメロディー)と言う技法だ。オメガゼロの力を使わない戦いの時に役立つ。覚えて置くと良い」


 普段は本気を出した戦いをしない上、戦うのは自分がメインと言うのもあり、その強さを褒めるも。

 何かを考える様に目を閉じ、少し間が空き目を開けてから使用した技法の名前を教えてくれた。

 オメガゼロの力を使わないそうだが、どう言う原理で行えるのだろうか?


「……待てよ?改めて使って分かったが、この感覚──リアライズと同じだな。なら、アレは一体……」


「ルシファー?」


「我が友よ。そろそろ場面が変わるが、見なくても良いのか?」


「お、おう。見る見る」


 ……考え事は別に構わないが、その内容を独り言で呟く癖は二十歳頃に始まって以降変わらんな。

 はて……今、自分は何を思考した?浮かぶ疑問を二重の意味で誤魔化す様に、名前を呼んだのだろうか。

 ベーゼレブルに呼ばれ、場面が変わる前に視線を記憶映像のシナナメへ向けると、砂嵐が発生し場面移動。


「弱い……弱過ぎる」


 道場と思われる場所へ次々と変わり、師範代らしき人物が木製の床に仰向けで倒れている。

 発言と行動から察するに、シナナメは強者を求め道場破りをしているのではないだろうか?

 不老不死。老いも死もないが故に、一つの場所に長く居続けられない。仮に居ても、迫害や畏怖の対象。

 娯楽も一時の暇潰し。肉体は不老不死でも精神は磨耗し、狂った挙げ句実験材料にされるのがオチ。


「…………」


「…………何用だ?」


 月の出ていない夜。廃棄された何処かの小さな集落にて、道場破りで勝ち取った看板を細かくし。

 焚き火の薪として燃やしている。勝ち取った戦利品とは言え、その使い方はどうなんだ?

 そんな彼女と焚き火を挟んだ向かい側に、長い白髪の女性が珍しげに音を鳴らし燃える炎を見つめる。

 それに気付きいていたらしく、少し間を空けて問い掛ける。何の用件かと。


「あら?執拗に私達を探していたみたいだから、此方から出向いて来たんだけど?」


「裏世界ですら極一部しか知らされぬ秘密組織・終焉の闇」


「ご名答。それで、貴女の望みは──」


 訊かれた質問に対し、分かっている事をわざわざ聞くんだ。とばかりに聞き返し、返答する無月闇納。

 当時も今も、終焉の闇と言う組織が存在している事実は表・裏世界を含めて限られた者しか知らない。

 返って来た言葉が正解だった為、闇納が望み云々と言い出す瞬間──

 シナナメは左隣に置いた冥刀を左手で掴み、鞘を抜き捨てる要領で居合い抜きを繰り出す。


「な……っ!?」


「残念。ソレは私が暇潰しに造った物。創造主に牙を向ける様には出来てないのよ」


 ……筈が、冥刀自身が創造主へ刃を向ける行為を拒み、鞘から抜ける気配が全く無い。

 更に鞘と柄を握る手も何故か離れず、最大のチャンスから最悪の展開へ陥り、闇納と冥刀を見る。

 と言うか、あの概念を斬る物騒極まりない刀を造ったの、アイツかよ。


「チャンスをあげる。此処で私に存在ごと抹消されるか、私の指揮下に入り強者と戦うか」


「…………その強者と言うのは、どれ程強い?」


「少なくとも今の貴女がミンチにされた上、ハンバーグにされて食卓に出る程」


「良いだろう。その強者共と殺り合う機会をくれると言うのなら、指揮下に入る。但し──」


 今此処で生きるか死ぬか?幾ら不老不死でも肉体と魂を消滅させられては、死んだも同然。

 そんな脅し込みの選択を与え、返って来た返答……と言うか質問は、ある意味シナナメらしい内容。

 比較の説明も理解し易い反面、人肉ハンバーグと言う単語を思い出し何故そのチョイス?とすら思う。

 だが、言われた当人はそれ程の強者達と戦えるなら~と承諾。されど、言葉は続く。


「えぇ。作戦や内容は出すけれど、基本は貴女の判断に任せる。それで良いかしら?」


「それで良い。心身共に弱い者など、斬る価値もない」


「交渉成立。先ずは融合四天王の指示に従い、活動を学んで貰うわね」


 相手の心を読んでいたのか。闇納は先手を打つ様に言葉を並べ、これで文句は出ないと言う核心的表情。

 当人も弱き者を斬るつもりはないらしく、こうして双方の利害が一致し始まった、新たな生活。

 融合四天王達から指示を受け、任務を達成して行く。弱者は部下の魔物・魔族が受け持ち。

 強者と認めた者は自身の手で斬り伏せる。そんな日々が続いて行く中、何やら疑問を持った様子を見せる。


「あの方が言う強者とは、如何なる者か」


「どんな絶望にも勇気・知恵・力を持ち、何度でも挑む彼女の力を持った半身」


「…………成る程。それは是非とも、戦ってみたい相手だ」


「融合四天王の標的でもある分。その強さ・諦めの悪さは──私が太鼓判を押すわ」


 あの方──無月闇納の言う強者とはどんな相手か?自身を勧誘する程の存在なのだろうか?

 その時。食堂で共にしていたマジックに投げ掛け、返って来た言葉をただただ無言で聞き。

 興味を持った様子。それを後押しする様にマジックが太鼓判を押した為か、少し口角が上がる。


「騎士?」


「貴殿専用のコードネームと思えば良い。それから、新しく入った新人の教育も与えられておる」


「つまり、上層部から面倒事の押し付け……と」


 場面が変わり、部屋は作戦室っぽい所へ。今度は男性側のトリックと会話中。

 活躍を認められ、騎士と言う称号・コードネームと新人の研修を与えられた。

 不老不死と成る前、殿と姫の我が儘(面倒事)を押し付けられていた為か意味を理解しており。

 溜め息混じりに呟く。まあ、気持ちは幾らか分かる。新人の失敗も自身の責任に繋がるしな。


「この者も貴殿と同じく、上が直々に拾って来た。つまり、訳ありだな」


「ふひひ!!コトハっでぇぇぇっす!」


「…………煩い」


 上……即ち、闇納が拾って来たと言う事。そう言えば、コトハの過去に関しては以前見た覚えがある。

 呪神・珠沙華(じゅしゃげ)を封印する巫女の一族の生き残り。一族が滅びた原因はコトハだけど。

 ふと思ったけど……シナナメやコトハの過去で起きた出来事、デトラやアダムの記憶には一切無い。

 自己紹介をするもこの喧しさは当時から変わらず、思わずぼやく姿と言葉には同感だ。


「新しい人材を連れて来た。以後、コードネームを騎士から三騎士に変更するそうだ」


「ミミツと言います。以後、宜しくお願いしますわ」


「んん~?誰ぇ~?」


「この魔力、ただ者ではないな」


 またシーンチェンジ。場所こそ同じだが、今度はブレイブと彼の後ろから現れる大人姿のミミツ。

 自己紹介をしているのにも関わらず、コトハは目を細めて遠くを眺める様に眉の上に右手を置く。

 シナナメは感じ取れた魔力量から常人ではないと見抜き、じっと睨んでいる。


「私は十八世紀ですわ」


「くひひ……アタシは江戸時代~」


「戦国時代だ。だが……成る程な。我々は違う時代・違う世界に生まれ、この世界に集まった訳か」


 場所は食堂に変わり、お互い生まれた時代を話し合う三騎士。てか、別世界の住人なのか。

 ドイツもコイツも訳ありで実力も高い異能力者。無月闇納は恐らく、別世界から自分との戦いに備え。

 強力な手札を揃えていたのか。それこそ、不完全なオメガゼロに牙が届くレベルの存在を。

 融合四天王や無月闇納は此方の世界で、自分達と関係なり因縁のある相手のみだが……


「どうでした?融合四天王の皆様や、あのお方が狙うオメガゼロ・エックスは」


「ふひひ……いや~、あんな化け物とは予想外も予想外。目標物の回収以上を狙ったらやられてたわ~」


「大幅な弱体化を受けていると聞き、ガッカリしていたが……幾らか楽しめそうだ」


「お次は私ですわね。悪夢の海域、MALICE MIZERに行ってきますわ」


 三騎士の二人が居る部屋へ戻ってくるコトハ。此方との戦闘はどうだったかを訊ね。

 茶色い小袋を小さな円卓に置き感想を述べる辺り、トリスティス大陸攻略後の話っぽい。

 冥刀の手入れを行い、興味無さげに聞いていたシナナメも興味が湧いた様子。

 席を立ち、今度は自身がMALICE MIZERへ任務で赴く番だと言い、部屋を出て行くミミツ。


「ただいま戻りました。お話に聞く通り、予想外過ぎて侮れないお方でしたわ」


「やっぱり~?そんじゃあ、あの違和感はアタシだけじゃなかった訳か~!」


「影ながらMALICE MIZERでの戦いを見届けましたが──確かに、アレは私達の脅威と呼べます」


 次はMALICE MIZER攻略後らしく、帰還したミミツは部屋で待っていた二人に報告する。

 コトハの言う違和感とやらが何かは、自分には理解出来ないが……何を感じたんだろう?

 それ以前に、陰ながらあの戦いを見届けていたのかよ。そう考えると、奥の手が一つバレた訳か。

 シナナメはまた冥刀の手入れ中で視線こそ興味無さげだが──口角が微妙に上がっている。


「戻って来ましたわ。どうでした?任務通り、倒せました?」


「いや、最低限の時間稼ぎしか達成出来なかった。が……私が狙うべき好敵手を見付けた」


「ぶっほ!アンタでも勝てない上、好敵手扱いとか……アイツも災難過ぎ!!」


「ルシファー……次はもっと、血湧き肉躍る戦いをしたいものだ」


 会話から察するに、ユーベル地方攻略後。シナナメが部屋に戻って来たのを見て、訊ねるミミツ。

 しかし時間稼ぎしか出来なかった反面、狙う・倒すべき好敵手(ルシファー)を見付けたと話す。

 吹き出す程笑った後、シナナメに狙われる事を災難と腹を抱え、足をジタバタしながら笑うコトハ。

 そんな姿を見ている内、突如足下の影に飲み込まれ、真っ暗闇の中へと引きずり込まれた。




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