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ワールドロード  作者: オメガ
六章・Ich bin menschlich
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結末 -The endjustifies the mean-

 『前回のあらすじ』

 非戦闘員の巴を狙う心鬼であったが、ベーゼレブルの妨害を受け阻止されてしまう。

 されど想起・悪夢を使いエックスの記憶から旅の中で戦ったボス達の複製を生み出す。

 そんな時、エックス達八人の心が一つになり誕生したオメガアーマー。しかし短時間でエネルギー切れに。

 ピンチに陥った一行。当時のディストラクションが助力をしたお陰で、琴音は心鬼を倒す事に成功。



 心鬼が完全に倒されたのを見届けたディストラクション──デトラは踵を翻し、来た道を戻って行く。

 自分の中に、デトラの存在は感じる。それならアレは、広島原爆の一件を終えた後の……


「結局、私達がして来た事って……正しかったのかな?」


「……分からない。でも、一つだけ言える事がある」


「何?」


 姿が見えなくなった後、近衛琴音は独り言の様に呟く。正直自分も、絶対的な答えを持ってはいない。

 自分達がしてる・して来た事が絶対に正しいとも言えない。それでも、これだけは言える。

 そう口にすると、琴音は首だけを此方に向け、その言える内容は何か?と問われた。


「今は結果論に過ぎないけど。この先、これが正しかったんだって、そう正当化されるんだろうな」


「The end(エンド) justifies(ジャスティファイズ) the() mean(ミーン)……ですね」


 戦争や略奪も、結局はそう。この選択が正しかったと、これしか方法はなかったんだと正当化される。

 それに続き巴が言った言葉はルシファー曰く、結果が過程を正当化する──と言ったらしい。

 そうだな。童話・桃太郎も鬼退治と言いつつどんな悪さをしたのか明確になってない鬼を痛め付け、金品を盗む。

 暴行と窃盗罪を犯しながら、それが正義であるかのように描かれている。なんとも不思議な話だ。


「これから、どうするんだ?」


「此処にお墓を建てる。例え利用されていたとしても──これが全てを知った今の私が出した答えだから」


「…………そうか」


 故郷を失くし、同郷の者達は全滅してしまった。そんな彼女にこれからどうするのかを訊ねると。

 墓と言う名のお城を建てると言った。今回は見れなかったが、前に聞いた彼女の両親も……

 無月闇納、ハーゼンベルギアに体を乗っ取られていた間に殺された。その感情整理もあるのだろう。

 それもあり、幾らか間が空きながらも……今、何を言っても裏目に出ると考え、敢えて短く答えた。


(宿主様。俺達も此処を離れようぜ?)


(そうね。此処は未来でコトハの呪術を受けたエルフの森みたく、死者で溢れ返りそうだし)


(二人ノ意見ニ同感ダ。鎮魂ノ舞イ等、徹底シタ死霊対策モ無シニ留マルノハ悪手以外ノ何デモナイ)


 三人曰く。弔う縁者のいない死者の為の墓こと、無縁塚も同然なこの場所に長居は無用と言う。

 今風に言えば、幽霊を凝縮させた事故物件。確かに、そんな所で長居する必要はない。のだが……

 近衛琴音が心配になり視線を向けるも、此方に背を向け空を見上げている。此処は琴音の記憶世界。

 きっと──琴音は一人で心鬼と戦い、偶然か必然か。立ち寄ったデトラの協力を得て勝ったのだろう。

 

「隣の芝生は青い……ですね。今回の一件で、それがよく分かりました」


「そうだな。琴音やみんなの事、良い部分しか見ず、辛い部分を知ろうともしてなかったんだな、自分」


(普通ハソンナモノダ。好イタ惚レタデモ、己ノ理想像ヲ押シ付ケル阿呆モイル位ダ)


 ヴァイスにしろ琴音にしろ。改めて考えるとみんなの事、全く知らないんだなって思った。

 確かにルシファーの言葉も正しい。好いた惚れたにしろ、相手の事を知ろうとせず。

 自分自身が思う理想像を押し付け、少しでも違うと声をあらげて怒る。そう言うアンチもいるしな。


「その点、私達はお互いに知り尽くしてますからね。そりゃあ──アッガイ○ックスター!?」


「一方的にだろ。確かに肉体関係は持っちまったけれども」


(てか、アッガイマック○ターってマニアック過ぎねぇか?シャイニングボー○よりはマシだけどよぉ)


 唐突に沸き出した這い寄る混沌の真夜。赤らめた頬を両手で触れ、思い出に浸り腰を左右に振る。

 そりゃあ……の続きで何を言うか察し、流れる様に右足で相手の首を締め、左足で相手の左太ももを固定。

 両手で真夜の両手首をしっかりと掴み、左右に広げエビ反りになる様にし──マッ○ルスパークの完成。

 悲鳴に叫んだその名前は、知る人ぞ知る機体名であり。ゼロの言う通りマニアック過ぎる。


「真面目な話、信頼・信用の有無がこの結果を生んだんです。多分、彼女だけがトリスティス大陸に辿り着いたのも」


「どうして、此処でトリスティス大陸の話があがるんだ?」


「思い出してくださいよ。あの大陸で起きた出来事、そのテーマが何だったのかを」


「あ……」


 フィニッシュホールドを解いた途端、真面目な話に移る真夜が語る内容は……信頼と信用。

 初めてゲートを通り、旅したトリスティス大陸の話も出て何故今その話題を?と思うも。

 巴と共に出来事を思い返し、納得した。種族・人種の違いや個々の欲望が疑心暗鬼を生み、滅びたと。


「SNSは使い方を誤れば、大量の人殺し・犯罪者・差別主義者を生み出す。情報は比較から破滅を生むんですよ」


(確カニナ。慎マシイ国モ豪華ナ国ノ情報ヲ得テ比較シ、自国ノ良サヲ殺シテマデ追イ掛ケ破滅スル)


(信頼と安心を蹴って最安値の案を選んだ結果、借金まみれで苦しい国なんてザラだしな)


 魔物の街があった森から歩いて離れる中、目まぐるしく時間が流れ去るように過ぎて行く。

 真夜の言う通り、情報社会は手軽に情報が手に入る反面、誹謗中傷や嘘偽りが飛び交う。

 人は愚かな生き物だ。多数派になれば、自分達の意見主張が正しいと誤認し、それを正義と掲げる。

 または他者や他国を陥れんと画策を企て、仲間と思っていた国に裏切られ自ら墓穴を掘る国もある位だ。


「所詮は他人。自分の人生に深い関わりの無い相手。故に匿名やら偽名を利用して叩き、鴨にする畜生ですし」


「……邪神と同意見って言うのはなんか、そちら側に染まって来た気がする」


「ハッハー!!夢を夢で終わらせる程、我々は諦めが良くないですからね!って、おや?」


 そう。そこからどう言った友好関係なり恋愛関係を構築するかの違いはあれど、所詮は他人。

 SNSは匿名故に誹謗中傷などが善悪の意識や罪も無く、まかり通って被害者を増やしてしまう。

 何事も使い方次第とは言え、真夜の意見には同意だ。話していると、向かい側から太い枝を支えに誰かが来た。


「っ……流石に、手酷い送迎を貰ったか」


「アレは──」


「成る程成る程納豆キナーゼ。それでケルナグ○ルと言う訳ですな」


「いや、尚更訳が分からん。てか、ゲームかアニメキャラかどっちだ?」


 巴が前のめりに倒れたデトラに駆け寄ろうとするも真夜が肩を掴み、右側の茂みへと隠れるので。

 その意味と琴音の話を思い出し、追い掛ける形で隠れる中。これまた身近なボケと古いボケを言い始め。

 ツッコミを入れる中で、改めて自分自身もそれを理解する知識がある事に、内心ツッコミを入れたい。


「彼は人類が七分割された後、長崎・広島の原爆事件を経験。行方不明者の捜索で此方へ来訪し、心鬼の撃破に貢献」


「その後。親友(ドゥーム)の開く報告会で秘密裏のミッションを受け、組織を抜け今現在……って訳か」


 多分、デトラが人類に関わりたくなかったのはきっと……人の持つ正義(欲望)が嫌になったから。

 歩み寄れない、寄ろうとしない。見ざる聞かざる言わざるな人類を、見限ったんだな。

 その後。運良くドゥームからのミッションを受けて組織を抜け出し……また、此処へ辿り着いた。

 辿り着いたのは偶然かも知れないし、琴音を助けた時に出来た縁が引き寄せた、必然なのかも知れない。


「魔王様!倒れている者が居ます」


「あの人は……っ!」


 茂みに隠れていると、自分達が戻って来た道から黒いローブを身に付けた二人が歩いて来ると。

 倒れているデトラに気付くや否や駆け寄り、頭や背中に手をかざし魔力関知で症状を調べ。

 命に別状はないと知れば一人は辺りを警戒し、一人はデトラに肩を貸し来た道を戻る。


「今の魔力……琴音だ。でもどうして、魔王と呼ばれてるんだ?」


「それは──おっと、そろそろ場面が切り替わりますね」


 感じ慣れた魔力。それは顔を確認するまでもなく、琴音本人だと理解した。んだが……

 勇者から何故魔王へ?その疑問へ答えようとした真夜だが、場面が切り替わるのを察知し言葉が途切れる。

 切り替わった場面は、琴音の城と思わしき一室。其処にはベッドに寝かされたデトラと、看護する琴音の姿が。


「何故、俺を助けた?」


「その言葉、そっくりそのまま貴方に返す。十年前、どうして私を助けてくれたの?」


 天井に視線を向けたまま、ポツリと訊ねる。すると訊ねた言葉を返され、少し間が空く。

 デトラ的に、原爆の一件は幻想側には関係の無い話。故に、話したくない部分に触れるのだろう。


「とある闇を確実に倒す為、その力より生まれし欠片を潰して回っていた」


「あの時倒した心鬼が闇の欠片だったって事?」


「あぁ。奴らは気付かぬ内に心へ忍び込み、闇──負の感情を餌に成長し、強くなる」


 だから言いたくない部分を切り捨て、必要な部分だけを手短に伝えた。心鬼を倒す為に助けたと。

 改めて思い返すと、ナイトメアゼノも心にある負の感情を利用して誕生している。

 もしかしたら、ナイトメアゼノは無月闇納が生み出した遠い子孫なのかも知れない。


「なら、暫く此処で体を休めるなり情報収集の拠点に使うと良いわ」


「……いいのか?」


「えぇ。その代わり、私を鍛えて欲しいの。迷い出た家族を護り抜く為にも」


 琴音からの提案・交換条件を受け「その位なら構わん。俺も、鍛え直す必要がある」と承諾するデトラ。

 このまま千年、二千年と共に過ごし、琴音は恋心を抱いていった。けれど、告白をする日……

 デトラは彼女の前から姿を消す。そう──近付く無月闇納から琴音を護る為、囮となって。

 漸く思い出した。あのまま残っていたら、闇納の虚無・アインで城ごと抹消されてたんだ。


「デトラ。滅茶苦茶な魔法を教えてから消えるなんて……誰っ!?」


「信愛なる我が友は幻想が薄れ行く世で再び、汝の前に必ず現れる。故に我が友を常に信じてやってくれ」


「何を、言ってるの?」


「幻想と現世では流れる時が大幅に違う。時を合わし力となる為、暫し現世で学びを得ると良い」


 悲しむ琴音の居る魔王城へ侵入し、現れたその人物は──まさかの親友・ドゥーム。

 トリスティス大陸攻略後に聞いた言葉通り、預言だか助言らしきもの。確かに、何を言ってるの?って話。

 するとドゥームは戸惑う琴音に右手を向け、何処かへ転移させてしまった。発言通りなら、本当に現世へ?

 と言うか、デトラは琴音に滅茶苦茶と言わしめるとか、どんな魔法を教えたんだか。


「……成る程。貴方が残した切り札(キング)と答えを得た手札(エース)、しかと見届けましたよ」


「本当、急に真面目モードになるのな……」


 何かを理解したらしく、急にシリアス全開でキリッとした鋭い目付きになったと思えば。

 意味深な言葉を呟き、立ち上がる姿を見て釣られて立ち上がりながらツッコミを入れる。

 キングは王様、エースは──何だろ?兎にも角にも、場面が暗く閉じて行く。

 きっと、琴音に関する過去の記憶も此処で終わりなんだろう。それに合わせて、目蓋を閉じる。


「我々の計画も結局は──The endjustifies the meanなんですがね」




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