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ワールドロード  作者: オメガ
五章・corrotto cielo stellato
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共闘

 『前回のあらすじ』

 悪夢の空間と化したアイドル育成事務所のビルから、取り込まれたライバー達を救出し外へ転移させたエックス。

 残る夢見姉妹と欲森横旅の居る部屋の前で携帯を通話状態にし、突入するも……彼はもう既に、欲森横旅ではない。

 朔月で相手の頭を撃ち抜くが、人類のカテゴリーから抜け出した彼は喋り終えると発火し黒い塊へ。

 上昇し続ける室内温度。空間を漂う魔力をフェイクが解き、無事脱出するも……スルトが誕生してしまう。



 此方を見下ろす灼熱の巨人。奴の発する熱気が温度を異常なまでに上げ、立っているだけでもキツい。

 戦う、戦わない以前の問題。この真夏を超える気温の中では、満足に戦う気力すら失われて行く。

 一分未満でこれでは、世界中の被害は異常気象を遥かに上回る。高温に意識が飛び、倒れそうな時……


(王、しっかり……)


「やれ、マジック。哀れな巨人をキンッキンに冷やしてやれ」


「あいあい。それじゃあちょっぴり、本気を出しちゃおっかな?」


「貴様らは……オォォオォッ!?」


 誰かの腕に支えられ、別の誰かと何か話していると思ったら……上昇し続けていた気温が止まり。

 ひんやりとした空気が漂い、意識が戻った視界に飛び込んで来たのは──なんと。

 耳を塞ぐ程の咆哮をあげ、燃え盛る炎ごと瞬時に氷付けになった巨人、オメガゼノ・スルト。

 そして自分を左腕で支えてくれている終焉、スルトを氷の塊にしてみせた融合四天王・マジック。


「助けてくれた事には感謝するが──っ」


「……勘違いするな。俺は闇納の捨てたゴミを処理しに来ただけに過ぎん」


「そうそう。バグって言う人工悪夢の処理をしにね」


 嬉しさ半分驚き半分のまま慌てて離れるも、意識を取り戻して早々急激に動いた為か。

 また意識が揺らぎ、膝から力が抜けそうになるが……いつの間にか背後に居るマジックに抱き付かれ。

 終焉は此方に視線を向けず、スルトの方を見ながら勘違いをするなと発言した。その時──


「悪いわね。今度は開眼した奇跡の力、間近で見させて貰うわ」


「……え?」


 左耳元でマジックの囁き声が聞こえ、此方の両腕が動かない様に抱き締めていた腕が動き。

 左右の手で両目を覆い隠され、視界が真っ暗になった。当たり前と言えばそうだが──

 暗闇でも夜目が効くスキル・スレイヤーの効果が効かない。そう思った時、広大な宇宙が見えた。

 光も飲み込むブラックホールから飛び出し、宇宙を照らす明かり……無数の星々と光の線が見える。


「見える……気配を殺し、終焉の足元から左胸を狙って長く鋭い尻尾が飛び出して来るのが」


「終焉、その場から離れて!」


「何?まあ良いだろ──ッ!?」


 見えたのは……終焉が串刺しにされ殺される、数秒後の未来。ポツリポツリと呟くと。

 その言葉を聞いたマジックが声をあげ、注意を促す。言われた当人は意味不明だろうが、従い一歩下がった時。

 先程自身が居た場所を的確に、宣言通り甲殻に包まれた蠍にも似た尾がコンクリートを突き破り出現。


「運の良い奴……紙一重で避けるとは」


「この魔力、バグの最終進化系と見ていいな」


 続けて俯けから起き上がる形でコンクを突き破って現れる、ナイトメアゼノ・バグの最終進化系。

 (バグ)──と言うDNA(プログラム)に故障・不具合が発生した突然変異体とも言える程に異形。

 頭部にオオスズメバチの仮面。女性の体に昆虫の甲殻が装甲の様に付き、腰からはムカデらしき尾。

 その姿はまさに自分が使うパワードスーツのそれに近しく、乳部や秘部は甲殻で上手く隠されている。


「指令……復習。オメガゼロの鎮圧。及び、対象の捕獲と帰還」


「神の領域すら恐れん愚かな人類め。まさか俺達の計画と偶然にも、反対路線を歩むとはな」


「あら……お仲間さんは逃げちゃったみたいね」


 人間ボディの口が動くも、声はノイエ・ヘァツ。その光景はまるで、操り人形と腹話術の合わせ技。

 終焉はナイトメアゼノが遥か未来の人類と知っているのか。静かに怒ってる様子。

 チラッと横を見たマジックはフェイクが居なくなったのを、逃げ出したと言い此方へ視線を戻すと。


「流石にッ!!野暮用を済ませた直後だと……キッツいな!」


「呪いのフル装備ぃ~ってな感じよね~。流石に今回はキツいんじゃない?」


 既にバグは自分の方へ飛び込み、両膝蹴りが迫る中。終焉が前に飛び出しては両手で受け止めるも。

 少し押され、歯を食い縛り耐える姿は何処かいつもの余裕が無く、かなり必死な様子。

 野暮用の直後やら呪いのフル装備だの。自分の知らない所で、何か要件を済ませた後の疲労状態らしい。

 もしかしたら……終焉が負けてしまうかも。そう思った瞬間、気付けば自然と体が動き──


「切り裂け──サーキュラーッ、ブレード!」


「ッ!」


 飛び回し蹴りに魔力を込め、胴体目掛けて緋色の刃を素早く繰り出した。のだが……

 自分の直感にも似た、異常な反応速度で此方の動きを視た直後。終焉に両膝を掴まれている点を利用し。

 体を大きく仰け反らせこれを紙一重で回避。それどころか、その勢いのまま終焉の両脚を掴み返し。

 ムカデの尾で足下を掬い仰向けに倒した上。顔面に全体重と加速を乗せた拳を叩き込んだ。


「身体能力が高い?いえ、正確には取り憑いてるヤツがこの娘の潜在能力を無理矢理引き出してる?」


「終焉!」


「くそっ……貴紀、手を貸せ!コイツは思った以上にシンプル過ぎて厄介な相手だ!!」


 怒涛の殴打を打ち込むバグを止める様子も見せず、ただ冷静に相手を分析するマジック。

 止めるべく右腕に緋色の刃を纏い、大きく振り切るも──死角からの攻撃にすら察知。

 終焉を力強く踏みつけて高く跳躍。自分の後ろを取り、鋭くも力強い蹴りを繰り出す。

 見えていたのもあり、両腕で防ぐが……やはり押され、起き上がった終焉から共闘を申し込まれ頷く。


「腕は使えるか?」


「……さっきの蹴り。紫色をした魔力の神経毒を帯びていたらしい。腕は解毒するまで痺れて使えん」


「やはりか。俺も先程の殴打に毒を混ぜられ、体力を大幅に削られている」


 息を合わせろ的な話かと思いきや。腕を心配され、動かそうと力を加えたら……痺れて動かない。

 ゼロ達が調べてくれた結果や、蹴りを防ぐ一瞬に視た内容を話すと、自身の体験と一致しているらしく。

 怒涛の殴打に毒を混ぜられ、体力も奪われたと話す終焉の顔色は青く、体調の悪さが素人目でも分かる。


「今の俺は戦えて十分が限度……来るぞ!」


「愚カナル機械文明ヨ。自ラ生ミ出シタ文明ノ利器デ、滅ビルガ良イ!!」


 体力に余裕が無く、戦闘可能時間は十分だと言う終焉が身構えるや否や。

 先程は人工的な合成音だったのに対し、今度は最初は普通なのに自ら~から高いキーで叫んで迫り。

 両腕にノイエ・ヘァツが二体集まり、ミニガンへと変形。此方に狙いを付け、六本の銃身が回り始める。


「馬鹿!アレはM134だ!」


「え、えむわんさーてぃーふぉー?」


「六本の銃身を持つ米国のガトリングガンだ。痛みを感じる暇も無く死ねる為、無痛ガンとも言うがな」


 アレが何か分からず、取り敢えずバリアで防ごうとした瞬間。終焉に左腕を掴まれ、ビルの裏へ。

 馬鹿と罵られ、アレが何かを教えて貰った後。物知りなルシファーから静かに補足を聴いたら。

 毎分二千から四千発の弾を撃てて、撃ちっ放しにすると機関銃用の大型弾倉すら数秒で撃ち切るらしい。

 因みに映画で見るのは発射速度を下げて射手に負担が大きい為、遊ぶなら空砲でやれ。との補足付き。


「直撃食らったらミンチ確定かよ。(おっそ)ろしいモンを作ったな……人類」


「人類の歴史は闘争の歴史。仮に第四次世界大戦があるとすれば──ッ!」


 説明を聞く程自身の行動が無謀かつ、両腕が使えないのを忘れていると気付き、血の気が下がる。

 同時に、人類に対する脅威も覚える程。終焉の言う通り、人類の歴史は闘争の歴史。

 第四次世界大戦の話をした途端。頭を掴み屈まされると……ビルが根本から持ち上がり、奴の姿が見えた。


「友達!トモダチハ、御馳走!」


「この声……ナイトメアゼノ・メイト!?」


「成る程な。色々な奴らの細胞サンプルを、調律者の超科学で融合させたと言っていたが……いやはや」


 その右腕は伸縮自在の口となり、噛み付いたビルをバリボリと貪り発する言葉と声は……

 ナイトメアゼノ・メイトそのもの。多くの疑問が生まれる中、ポロリと愚痴る言葉の中に。

 とんでもない発言があった。色々な奴らの細胞サンプルを……調律者の超科学で融合させた?

 そうは言っても、無数の人格が生まれてると精神が持たない──その時、例の記憶が蘇る。


「そうか!ノイエ・ヘァツはトリックの右人差し指を取り込んでいた。つまり」


「生まれる人格はトリックの持病やメイトの特性と融合させ、固定……か。最早生命的な意味でのバグだな」


 右腕を黒い槍。左腕を電動回転丸鋸に変態させ、後頭部の長い黒髪を大きく振り乱し。

 気味の悪い笑い声を発しながら此方へ両腕を無差別に振るい電柱や標識も容易く切り裂く。

 けれど、あくまでも無差別かつ振り回しているだけ。見切るのは比較的に容易。


「此処から反撃に出──何ッ!?」


「さようなら。デトラ」


「この声、トリッ……クゥッ!?」


 腹部目掛けて突き出された槍の届く距離。その一歩後ろへバックステップで避け、反撃に移る。

 次の瞬間。槍は大砲に早変わり、驚きに上乗せする様に声をトリックへチェンジさせ……発射。

 白い魔力砲弾の直撃を受け、爆発と共に外へと弾き出されてしまい。自分に意識が向いた終焉も……

 釣竿へ変形させた左腕の釣糸を全身に巻き付けられ、同じく砲撃を受けて後方へと吹っ飛ぶ。


「クソッ……あの無差別な武器の振り回しは俺達に動きを見切らせ、油断させる為の囮だったか」


「アイツ……トリックより数段、能力を上手く使いこなしてやがる」


 毒で本調子じゃない終焉、変身出来てない自分。例えそうだとしても、この切り替わりは厄介。

 こんな油断もへったくれもない状況なのに、右眼がある光景を見せる。それは……

 意識を取り戻した夢見永久を追い掛け、久遠までもが此方へと走っている光景。


「ヤバい……コンクリートの下から根が来る!」


「根っこだと?まさかアイツ、ヴルトゥームの死体すらも獲得済みか!」


「ふはははは!!然り然り然り!わしは運命に、世界に選ばれたのじゃ!ウッドスピア!!」


 すると夢見姉妹を映す光景が一本の光の線になり、その隣の同じく光の線から。

 自分達が鋭く尖った木の根で串刺しの滅多刺しにされるまでの光景が見え、叫び伝え。

 起き上がってお互いに左右へ走り出すと、無数の鋭く細い木の根がコンクリを突き破り飛び出す。

 終焉の言葉に反応したバグの主人格は、ヴルトゥームへと移行。高笑いをし、追撃の根っこが迫る。


「チッ、残り時間が……貴紀、連結技で切り返すぞ!」


「現状を覆すにはそれしかない……か」


 このままでは時間だけが削られ、終焉の体力が毒で尽きてしまう。

 そうなれば、自分も危うい。この危機的状況を打破する為には、連結技に望みを託すしかない。

 ヴルトゥームを前後で挟み撃ちにする位置まで移動。一か八か、出たとこ勝負で突っ込む。




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