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ワールドロード  作者: オメガ
五章・corrotto cielo stellato
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過去と今

 『前回のあらすじ』

 漸く遺跡に辿り着いたエックス達。悠は体がボロボロな為、顔を見せて欲しいと言う久遠に困惑。

 見せれない理由を予想で口にすると当たりで、納得する久遠に対しエックスはジャッジの計画に思う事があった。

 意味深な壁画を解読しつつ先に進めば、心情ゆかりと再会。外は機械が人類に反逆を始めたと話す。

 奥の部屋ではハングマン博士と超古代時代の仲間・スカーレットから、新たな第三装甲の情報を得るのであった。



 みんなが待つフロアへバイクを押しながら向かう中。追跡はないか調べる為、右眼の俯瞰視点を使用。

 覗いた世界は……地獄化が進んでいた。あちこちの地域で人々が赤い木になり。

 それを運良く回避出来ても。見上げる程大きくなる見上げ入道や、様々な妖怪・怪異が人々を襲う。

 赤い木に成る青い果実を自ら、または妖怪・怪異から食べさせられ、インサニア化する者達も。


「人類の科学が発展したが故の弊害……か」


「それ、どう言う事?」


 妖怪達が人間を襲う理由は、単純明白。これは神も同様に無視出来ず、危惧すべき事態。

 ポツリと呟いた愚痴を聞いたのか。後部座席に座るゆかりが横から顔を出し、訊ねて来た。

 生まれた時代が違うからこそ。あぁ、これがジェネレーションギャップか……とすら思う。


「人類は未知の事象・出来事は科学的に解明しようとする。そうだな、久遠」


「えっ?う、うん。分からないモノは科学的に証明して、理解しようとするけど?」


「じゃあ、理不尽・不可解が存在の証明となる妖怪・怪異の立場からすればどうなる?」


「そりゃあ……あっ!!」


 理解して貰う為、敢えて現代人の久遠に話題を振り、その回答を噛み砕いて未来人のゆかりへ回す。

 すると理解出来たらしく、大層驚いた表情を見せる辺り、妖怪達が人を襲う理由に辿り着いた様子。

 そう。妖怪・怪異・神々は人々の恐怖心・信仰心・想像力から生まれた。

 故に存在の証明は、彼ら彼女らの存在を否定するも同然。だから、この暴動も存在の証明と言える。


「──急いで乗れ!速度を上げるから口は開けるな、舌を噛むぞ!」


「な、何々なにぃぃ~!?」


 視点を一人称に戻し、追跡を警戒してバックミラーへ視線を向けた時。

 人間がヴェレーノの実を摂取し変貌した魔人、インサニアの群れが迫ってるのが見えた。

 自分達の通った道を数の暴力で埋め尽くし、小型犬程の大きさで追い掛けて来る姿がなおキモい。

 慌てて乗ってアクセルを回し、ゼロの白い右腕が三人の体に巻き付いたのを確認後、速度を上げる。


『緊急警報発令!遺跡上空に次元穴発生。対象のコードネームを検索……魔人ブリッツと断定』


「このタイミングで魔人の追加!?しかも一番面倒臭いブリッツぅ!?」


 遺跡内に鳴り響く警報。一定の間を開けて床と天井のシャッターが動き、通路を封鎖せんとする中。

 耳にした情報は嫌な敵ランキングの上位に入る魔人ブリッツ。コイツは本当に嫌いな相手。

 両腕からバイクに魔力を流し込み、シャッターが閉じる前に最大加速で通り抜ける事に成功。


「とは言え。インサニアの群れ相手に、この防壁が何処まで持ち堪えれるやら」


「ねぇ。魔人ブリッツって何?」


「……十八年前、終焉の闇によって蠱毒で作られた魔人。格闘能力と観察眼が極めて高い、クソ嫌な奴」


 分厚い二重防壁でインサニアを遮ったが、アイツらの鋭利な脚を前に幾ら時間を稼げるんだか。

 奥の通路へ進む最中。不思議そうに訊ねるゆかりに、光闇戦争での出来事を話す。

 呪術の触媒を作る邪法・蠱毒。本来は虫で行うソレを人と融合獣で行い悪魔合体した魔人。

 特殊能力を全て身体能力に回した結果。魔人の中でも最強で最恐のチョウジンと化した。


「もし仮に遭遇したら生還は諦めろ。アレは文字通り最恐の──っ!!」


「…………標的──確認」


(噂をすれば影とは言うけどよぉ……これは流石に無い展開だろ!?)


 もう少しで先行組のみんなが待つフロアへ到着する。手を振って自分達を呼んでいる。

 ブリッツに関して忠告をする最中、心に油断があったのかも知れん。

 気付けば左隣を並走する、能面同様無機質なモノクロの鳥顔に驚き、バランスを崩し転落。


『非常事態発生!侵入者を排除する為、遺跡の防壁を全て閉鎖』


「お兄ちゃ……ん」


「悠、行っちゃ駄目!」


 投げ出された久遠達と転倒し回転するバイクは運良く防壁の向こう側──

 寧達が待つフロアへ滑り込んで行き。逆に自分は運の良くも悪くも、バイクから飛び出し着地。

 分断する様に警報と共に防壁が閉じ始め、悠君が此方に手を伸ばすも久遠に引き戻されていた。

 何はともあれ。立ち上がり、足を止めている魔人ブリッツと向かい合う。


「…………過去の亡霊か」


「ソイツはお互い様だ。今を生きる人間の為、数多の亡霊が過去の亡者をあの世に送り届ける」


 少し間を開けて口にしたブリッツの言葉は、的を射ているが、それは諸刃の刃。

 お互いに死んでいる者同士だと言い返し、過去に倒した魔人をあの世へ送り返すは亡霊の仕事。

 左手を腹部に向けるとバックルが浮かび上がり、そのまま左ポケットから携帯を取り出す。


「変し──」


「遅い」


 手早く入力を終え、左手から右手に持ち替え右腰のスロットに差し込む瞬間。

 いつの間にか懐に潜り込んでいたブリッツの左手に右手が払われ、後ろの防壁へ携帯が滑り落ちる。

 取りに行こうにも残った右手で首を掴まれ、携帯が落ちた方角とは反対方向へ連れて行かれる始末。


「あの時より……速度が上がってる!?」


「くひひひひっ!それはそう。闇納様自らの手で改良済みで、十八年前と同じ性能ってのは無い無い!」


(マズイわね……こんなタイミングで予期せぬ伏兵が居ただなんて)


 十八年前より速さ、パワー共にかなり違う。その事実に驚いていたら。

 高い天井で逆さまのまま、ぶら下がってるコトハの姿を発見。

 此方が気付くや否や体を丸めて落下。体操選手さながら器用に着地し、隣にブリッツを侍らす。

 霊華の言う通り、予期せぬ伏兵を含めてこんな通路で戦うにはやや狭い上、分も悪い。そんな時……


『緊急事態発生。システム・赤い靴を強制的に起動』


「ま、前にも似た様な事があったが……っ!」


「なぁ~んか、やっっべー空気……」


 突然バックルが電子音を鳴らし、全く知らない機能を装着者の意思に関係無く起動。

 今履いてる特製ブーツが黒から赤に染まると、勝手に右脚が動いてブリッツの顎を膝で蹴り上げ。

 そのまま相手の首に両足を絡ませ、視界が捻って回り床に落ちると……相手の首を捻り切っていた。

 その様子を見てか。コトハは身の危険を察知して自分とブリッツから距離を取っている。


「にしても……赤い靴──ねぇ。過去の罪を償ったら与えられる死の救済。これが信仰の結果とかマジワロエナイ」


 その最中、コトハの独り言を耳にしたその内容は……赤い靴に関するもの。

 赤い靴を履いた者は、死ぬまで躍り続けなければならない。それは神が罪を犯した娘に与えた罰。

 もし……今起動しているシステムが同じモノだとしたら、敵が居なくなれば解除されるのか?


「まあ、いっか。ブリッツが倒されるのも計画の内って、あのやべーお方(無月闇納様)は言ってたし~」


「クソッ……足が、思う様に動かん!」


「そんじゃ、外でケリします~?勿論、来なかったら六甲の山は禿げちゃうけど~!ふひひひひひ!!」


 戦力の要たる魔人ブリッツを倒したのに、それすら計画の内だと我関せずな態度と表情で言う中。

 脚はコトハを敵と認識し、左右の足で回し蹴りなどを幾度も繰り返すが……

 身を屈めたり、のらりくらりとおちゃらけた様子で回避に専念されて全く当たらない!

 挙げ句の果てには外で決着をつけると言いながら宙に浮き続け、天井に空いた穴から遺跡の外へ。


『緊急事態を解除。システム・赤い靴を停止します』


「や、やっと止まったぁ~……」


 漸く足が自分の意思で止まり、尻餅をつきながらコトハが出て行った穴を何気なしに見る。

 来た道の防壁が閉じてから、ブリッツは現れた。それ即ち、奴は遺跡の天井をぶち抜いて来た訳だが。

 何故次元穴が空いた?どうして過去に倒したブリッツが無月闇納の下へ?と疑問が優先された。

 千鳥足ながら壁伝いに歩き、フュージョン・フォンを取り戻し左ズボンのポケットへ直す。


「ふ~ん……今の状態で私達四天王の配下、三騎士コトハと人工ナイトメアゼノ・グラッジに挑むんだ?」


「……暢気に休んでる暇は無いからな。静久。今度こそ、詠土弥を助けるぞ」


「万全じゃない戦闘なんぞ……今までに何度も潜り抜けて来た」


 突然目の前に湧いて出た融合四天王・マジックは宙に浮かび、空気を椅子にして此方を見下ろす。

 口にする言葉は疲弊した状態で、配下とその使いへ無謀な挑戦をするんだ?と馬鹿にしたもの。

 本当は──万全な状態で挑みたい。けど、この山には牧場や温泉地の他、沢山の自然がある。

 自分は人類を助けない。助ける対象は人間と……限りなく似て、全く違うこの星そのもの。


「まあ、今貴方に倒れられても私達の計画に支障が出るし~……じゃあ、貸し一つって事で」


「同意も無く、勝手に貸しを作るな……」


 左人差し指を赤い唇に軽く押し当て、ほんのり口紅の付いた指を此方に向けると──

 白金色……?と思わしき光線が此方の左手の甲に照射された途端、不思議とエネルギーが満たされて行く。

 静久が抗議する中。マジックの左手の甲に、三つ葉のクローバーらしき紋章が見えたが……アレは?


「エネルギーの補給は大いに助かるけど、自分はアンタ達の敵だぞ?」


「そうね。でも、私は貴方を敵だとは捉えていない。今までも、これからも」


「相も変わらず……意味深な言葉を残すな……」


 一つ、率直な疑問をぶつけた。助けてくれるのはありがたい……が、マジックは自分が倒すべき敵。

 改めて面と向かって伝えるも、相手は此方を敵とは見ていない。思い返せば、確かにそうだ。

 自分を倒せる時ですら、倒そうとしない。寧ろ成長を促したり、背中を押してくれている。

 何か、裏でもあるのか?静久の言葉には激しく同意だが、その言葉にもただ微笑むだけ。


「行きなさい。過去のシェアから生まれる平和を忘れ、奪い争う悲劇の今を破壊する為にも」


 天井に空いた穴の位置を確かめ、飛び上がろうとする時。マジックが口を開き、話す言葉にふと思う。

 遠い過去──そう。縄文時代の人間達は、どうやって生きていたのだろう?

 今みたいな機械は無く、武器も石を括り付けた手作り品で食糧の安定性も無い。ではどうやって?

 マジックが言う様にシェアし合ったのでは?でも今は奪い・争う悲劇に……何処で、道を(たが)ったんだ?




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