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ワールドロード  作者: オメガ
五章・corrotto cielo stellato
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市街地防衛戦

 『前回のあらすじ』

 仲間達と再度合流するエックスは、改めて大切なモノの尊さを痛感する中、玄武のお面を被った子に問われる。

 正しい事とは何か?その質問に心を酷く乱され、駆け付けた桔梗のお陰で漸く落ち着く。

 新たな第三装甲は過去の物より扱いが難しく、人間の体では機能を使いこなすのがほぼ無理な代物に。

 超古代の遺跡で見付け、写真に納めた壁画を見る内に呪神・珠沙華(じゅしゃげ)に関する記憶を取り戻す。



「なあ、ルージュ──っ!?」


 ベビドやRとの話を終え、先日の事でルージュに話し掛けた瞬間……館内に警報が鳴り響く。

 警報。それ即ち、良くない出来事が起こったと言う証拠に、自分達は顔を見合わせる。


『緊急事態発生、館の周辺に転移反応を無数感知。識別……新種のナイトメアゼノと判明』


「ナイトメアゼノ?!」


「協力期間中で休戦状態じゃなかったのか!?」


「まだ休戦の筈なんだが……っ!」


 その警報内容は、この館がナイトメアゼノに囲まれたと言うもの。

 驚くルージュ、此方に疑問を投げ掛けるR。もしや、アニマと交わした約束が無効になったのか?

 攻撃を受けて揺れる館内、天井から落ちてくる砂埃。ある光景が脳裏に過り、アニマを探して走る。


「これはどう言う事?!」


『我々を騙したのですか?』


「わ、私は……知りませんの……」


 見付けた!予想通り、想定外な展開でパニックになったみんなにホールで責められ、萎縮している。

 確かにその有無は大事だし、今後の行動や接し方にも関わるが……今はそんな場合じゃない。

 とは言え、声を掛けようにも皆の叱責する声が大きく、多少声を大きくしても掻き消されてしまう。


「全員、静粛に!!そして刮目せよ!」


「──っ!?」


 注意を引く為、魔力と霊力を全力で解放。同時に近くの甲冑が持つ槍を奪い。

 床に柄を強く二回打ち付け、高い金属音がフロア全体に響き渡ってから声を張る。

 この行動と音・声で自分の存在に気付き、注目する一同。正直、目立つのは嫌いなんだがな……


「今はアニマを責めるより、防衛と状況把握が最優先だ。ディーテ、他の情報は?」


「市街地にも此処と同類のナイトメアゼノが出現」


「拠点防衛組と市街地防衛組、救護班に分かれる。異論は無いな?」


 頭が動かなくては、社会も組織も動かない。それは社畜時代に嫌と言う程経験した。

 それもあり、声を大にして自ら行動に移し、追加情報から役割を振り、異論の有無を訊ねれば。

 皆冷静さを取り戻し、頷く。オラシオンの面々と大多数は拠点防衛に回し、一本道を作って貰う。

 自分を含め、現代知識に精通する少数で市街地防衛に向かう前に……オラシオンに耳打ちを少々。


「何を話していたんですか?」


「ちょ~っちね。マッチ一本火事のもとって言うし」


 拠点防衛組に迎撃で先行して出て貰い、ゴミの悪夢と戦闘開始。残った面々を市街地組として結成。

 非戦闘員の小山巴に何を話してたか小声で聞かれるも、これは単なる火の用心。

 フェイク、アニマ、皐月、ニーア、ライチ、ディーテを連れ、ライナーへ駆け込み出発。


「助けてくれた事……感謝、します」


「気にすんな。お互い様だ」


 六両車で現場に到着するまでの間、先程助けた事に対して感謝の言葉を投げ掛けられるも。

 先に此方が助けられている為、貸し借りや恩の押し付け合いを思わせない様、お互い様と言い返す。

 それが例え、自分達を連れ去る為だったとは言えな。助かったのは事実だ。

 そんな話もそこそこに、ライナーは現場から少し離れた場所で停車。


「魔法や奇跡の類いを使えない面々を集めたが、相手は十中八九ゴミの塊。戦い方には注意を」


「ゴミのナイトメアゼノか。個体によっては、剣より打撃武器が有利か」


「ライチ、医療用品の準備は大丈夫?」 


「うん。念の為、予想より多く持って行くつもり」


 現代で魔法の類いは注目され易く、また自衛隊に射たれたり最悪、捕縛される可能性も。

 だからこそ戦い方に注意をし、最有力戦力のオラシオン全てを敢えて拠点防衛に回した。

 みんなの服装は現代に違和感ない様、移動中に着替えて貰ったが……後は行動次第だな。

 念の為、自分のコートを防御用で使って貰う為ニーアに手渡す。


「因果応報、因果応報」


「た、助け──あっ……」


 市街地に駆け込むや否や、生ゴミのナメクジ型ナイトメアゼノに吐瀉物を掛けられる女性。

 その途端、生ゴミ特有の生臭さが周囲に広がる。被害を受けた女性は……

 文字通り肉は腐り落ち、白骨すら残さず吐瀉物の中に溶けていった。アレは溶解液か何かなのか?!


「あ……あんな奴らが、この街中……に?」


「行くぞ、フェイク。勇者候補生の実力、頼りにさせて貰うぞ」


「思考完了。武器による物理攻撃、過度な近接攻撃は危険と判断」


 入り口で足を止め、目を見開き、震えながら街で起こる悲劇を眺めるフェイクと医療組、皐月の四名。

 駆け出す自分に付いて来るのは、自分を倒す為に作られたディーテとアニマだけ。

 電化製品体や粗大ゴミ体は足技をメインに、生ゴミ体なら恋月と朔月の連射で対処。

 ディーテは威力を抑えた電磁砲を撃ち、主に生ゴミ体を。アニマが両方を対処してくれている。


「っ~……流石に、電化製品は痛いなぁ」


「早く……逃げて」


「此処は危険です。早急な退去を」


 スーツ無しだと電化製品系以上に打撃を与えるのは反動が強く、戦闘がキツくなって行く。

 退去を促し、民間人を逃がすアニマとディーテ。だが……逃げ場など、安全地帯なんか無い。

 何処に居ても、滅亡の時が来れば──この星は死の惑星(ほし)となる。乗り越えない限りは。


「撃て撃て撃て撃てぇぇ!!自衛隊として、一人の人間として、救護者も援護してくれる者達も救え!」


「ラジャー!」


 屈んで痛む右脚に手を当て、眼前に迫るナイトメアゼノ達から撃ち込まれる集中砲火。

 照準が安定しないのか、飛距離が弱いのか。命中より外れる数が多く、爆風や爆熱が迫る。

 白シャツの左肩から胸部分に掛けて大きく割け、頬や肌にシャツも火花で焼ける中、奴らを睨む時。

 後ろから大声が聞こえ、発砲音が響く。同時に怒濤の如く足音が鳴り響き、前に出て行く。


「今の内に退避を!後は引き受けます」


「……勇気と無謀を、履き違えるなよ?」


 駆け付けた隊員が自分にそう言うので、注意を怠るなと意味を込めて返し、撤退。

 街から戻って来たのを見てか、我を取り戻す居残り組。ライナー内部へ千鳥足で戻り──

 血塗れた白シャツを六両車の中で適当に脱ぎ捨て、乱雑に席へと座る。ダメージは……予想以上か。


「悪い……俺、人が死ぬのを見たら、足がすくんで……」


「別に気にしてねぇよ……痛っ」


「喋らないで。体力を余計に消費するから」


 目の前で頭を下げ、謝罪するフェイク。気持ちが理解出来るのもあり、責める気はない。

 戦争に慣れてない奴が人の死を目の当たりにした時、先に来るは死への絶対的な恐怖。

 医療組が頭や上半身、脚に薬を塗り、包帯を巻いて貰い緊急措置中。


「もう一回、行ってくる。あの数……ただの自衛隊じゃ、そう長く持たん」


「駄目……っ!」


 一通り治療を受け終わり、席を立ち再度防衛に向かおうとすると。

 動かない様に抱き付かれ、動くに動けない。いや、退かせばいい話なんだが──どうにもな。


「ライチ……今行かなきゃ、一ヶ月以内に来る世界の破滅に対処出来ない」


「え……っ?」


 説得の意味を込め、破滅の予言を口にした。驚く面々と驚きの余り離れるライチ。

 彼女には悪いが、これがチャンスだと思いライナーから抜け出し、市街地を一望出来る場所へ向かう。

 街中に蔓延るあの量……俺一人では捌き切れない、助けも出来ない。ならば、手数を増やせばいい。

 俺が紡ぎ続けて来た数多の絆よ。再びその(えにし)を辿り、彼女と俺を繋いでくれ!


「挽回……いや、絆回(ばんかい)!!呪われし少女・人形遣い(ドールマスター)!」


 近くて遠い場所に居る人形遣いたる彼女を強く想い、紡いだ絆を辿り彼女の力と想いを引き出す。

 青を基調に肩は白のロングコートが目の前に現れ、手に取り慣れた手付きで袖を通せば。

 両手の第一、第二間接の間に光が走り指輪と成り、煌めく先に六体の人形が出現。


「頼んだぞ、みんな!」


「まあ、こう言うのもありかしらね」


「じゃな。人形故、本気は出せんがのぅ」


「無駄口は禁止です。マイマスター、視界共有ですが、情報処理は恋に任せます」


 恋以外の姿を真似た人形達には六人の意識が宿り、強制的に装着されたバイザーには七つの視界が。

 指を動かし、見えない糸を通して六人を市街地へ向かわせる。でも、全部は倒せない。

 この力で、この距離で出来るのは……援護が精一杯。だけどやるしかない、出来るのは俺だけだ!


「クソッ、(コア)さえ撃ち抜ければ……今だ!」


「因果応報、因果……応、報」


「エリアA~D、制圧完了。他の隊員と同じく、謎の人形の援護があって──ですが」


 生ゴミ体に喫茶店の壁まで追い詰められ、アサルトライフルを握る隊員を発見。

 吐瀉物を吐き出す前に上空から愛の人形が爪で上半身を上から斜めに切り落とし。

 丸い核を露出させチャンスを作れば、意図を汲み取った隊員は銃を構え、核を撃ち抜き破壊。

 どうやら……終わりらしい。こちらも限界らしく、召喚した人形や服は粒子となって消滅。


「はぁはぁはぁ……ぐぷっ、おえぇっ!!」


「た、隊長!」


「誰かタンカーを!貴紀さんを早く医務室へ運んで!!」


「お、おう!俺が持ってくる」


 酷い息切れを起こすも、市街地防衛をやり遂げた。そんな緊張の糸が解けたからか……

 突然強烈な吐き気に襲われ、その場で膝から崩れ落ちながら血の混ざったゲロを吐いた。

 声や足音は聞こえるのに視界は赤く染まり、意識が朦朧とし、吐き気も酷く気を失ってしまう。


「視界、戻ってます?」


「あぁ。けどアニマ、お前……呪いを抑え込めるのか」


 次に意識を取り戻した時、医務室で寝かされているのは理解出来たのだが。

 アニマの隣で椅子に座ったままベッドへ倒れて眠るライチとニーアを見て、今更な疑問をぶつける。


「少なくとも、今は協力関係ですので」


「そうかい」


 今は敵対関係ではない為、約束を守ってくれている様子。

 上半身を起こそうとするも、反射的に動きを止める程の頭痛と身体中の痛みに襲われ諦める。

 やっぱり、この激痛はあの絆回から通して来た無理でもあったか。


「隊長……良かった。でも許可が出るまで、安静にしてください」


「あいよ」


「左目や鼻の出血、魔力を限界近くまで消耗。回復には相当の時間が必要と予想」


 ベッドから動けず、どうしようかと思考を走らせる時。皐月とディーテが来て、念押しに釘を刺され。

 首だけを動かし、返事をする。するとディーテがこの身に起きた事、回復まで時間が必要と話す。

 生きてるだけ儲けもんだが、これはこれで失敗したな。少しでも早く治す為、目を閉じる。




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