未来へ
|オルタナティブメモリー《二者択一の記憶》……ねぇ。
そう言やあ、あのディーテとか言う全裸女ロボが、なんかソレっぽい事を言ってたな。
てか、ジャッジもディーテも破壊してやったのに、まぁ~った復活しやがったのか。
四天王の連中はドイツもコイツも、一筋縄じゃ倒せねぇ連中揃いだっつうのに。あぁ~……面倒くせぇ。
「先に言っておくわ。あの世界は遅かれ早かれ、滅亡は確実。勇者御一行とかいるらしいけど」
「邪魔をするなら始末しろ、か。流石は邪神様です事」
「ふふっ。もし、貴方が望むなら……」
副王から言われる事は大抵、解る様になって来た。
邪魔者は、利用価値が無ければ殺せ。自分が望むのであれば、引き入れろ。
だが、この『引き入れろ』……と言う意味が問題だ。
ハイリスク&ハイリターン。
つまりはそう言う事な訳で、場合によっては敵を懐に抱えたり、貴重な臨時収入になるかの二択。
「今回は慎重にさせて貰う。最初の旅は運が良過ぎた」
「あぁ……あの百鬼夜行ね。ま、幾らかが貴方のお嫁さん候補だったのを覚えてるわ」
「生憎、ハーレムは苦手なんだがな」
最初の旅──それは、平凡な生活から自らの意思で飛び込んだ幻想の地……無限郷での冒険。
幻想の地から漏れ出した力による異変を解決する為、何度か現世やら天界、あの世へも足を運んだ。
で……現地の住民に協力をして貰って解決したら、何時の間にやら百鬼夜行が出来てた、って訳だわ。
「ま、お陰でパラレルな未来も見れたから、私としては大満足よ」
「アンタはそうだろうよ……」
こちとら、それを何十回とループさせられて、体験したんだ。
幾ら自分とは言え……流石に異性を取っ替え引っ替えみたいなのは、精神的にキツいんだけどな。
「そろそろスーツ、脱いだら?」
「ん? あぁ、そうだな」
とは言ったものの……どうやって脱ぐんだよ。
向こうでは専用の機械や物が在って、それを使って着たり脱いだりしてたからなぁ。
さてはて、どうしたものか。
って悩んでたらそれを悟ってか「此処ではバックルの開閉だけで、着脱出来るわよ」とか言いやがった。
そう言うのはさっさと言え! 取り敢えず、聞いた通りにしてみると、スーツが自ら剥がれて何もない空間に消えた。
「ヘルメット、上下でセットなのな」
「彼女らしい発想よね。さて……あの惑星、結構厄介な上にとある理由で詰み状態」
あの時代で魔神王を何とかしたと思いきや、状況は詰み状態と言う悪化の一途。
……普通、大抵のゲームでも、幾らか救いはあるんだけどなぁ。大抵は……
「貴方には、数多くの過酷な運命が待ち受けている」
「うっへぇ。それは、随分と骨が折れそうだ」
「折れるどころか、粉砕レベルね」
数多くの過酷な運命、ねぇ。
自ら皮肉を入れても、その皮肉の上を行くレベル。そんな異変、無限郷だけでも腐る程あったわ!
初めてのボス戦がインド神のカーリーとか、死んであの世へ行ったら閻魔様から、お前の席ねーから。って現世に送り返されたり。
「ま、塵が残るだけ良いと思いなさい」
そんな自分に慰め……では無く、追い打ちの言葉を掛ける別の声が聞こえ。
声がする方へ振り向けば、此方へ歩いてくる人物は豊満な胸元が見えそうな。
修道服を着た女性が、宇宙が見える無数の球体、その一つから現れた。
透き通る碧眼、光を反射しそうな腰まで届く銀髪、日焼けを知らない肌、黒いハイヒールだ。
「……」
「お疲れ様。どうだった?」
「アンタの予想通り、終わったわ」
大抵の奴はコイツと対面した、眼を合わせただけで背筋が凍るだろう。
気圧され、恐怖に心を支配され、言葉すらもまともに話せずに。
此方を無視しては副王と対面し、何やら話し始める。
何か調査を頼んでいた様で、結果を訊ねれば予想通りの結果。
と短く言われ、納得した顔で小さく、そして不気味に笑う口元には、小さな八重歯が見えた。
「聞きなさい。貴方達が討伐に挑んだ魔神王、ソイツの生存が確認出来たわ」
「だろうな」
言い放たれる凶報、直視したくなかった最悪の現実。とでも言うと思ったか?
完全復活する前に討伐へ出た理由は、勝率を微塵でも残す為。とは言え、大抵ゲームでは悪手になる。
それだけ魔神王の力は絶大。そう予言されていたそうだ。
「アレは全てを喰らう。数多くの命や、如何なる星々さえも」
「で、勇者や正義の味方でもない、自分の出番だと」
「そ。好き勝手に破壊して欲しいの」
全てを喰らうモノ。大体、封印されてる連中ってのは、人類の手に余るのが多い。
別に、恐怖心を感じない訳ではない。怖いものは怖いし嫌いなものは嫌い。
運命を与える神様とやらに対し、憎しみや殺意、復讐心すら沸いてくるのは何時もの事だ。
「貴方には今度こそ、魔神王を殲滅して貰うから」
神へ対する絶望感、抗議の無意味さを痛感している最中。
これまた突然言い渡された、魔神王の殲滅。
「あいあい。了解ですよ」
「アレも期待してるからね?」
「アレは二度とやりたくない……」
とは言ったものの。やる必要がある時はやるのだ。
この中性的な顔が、優男な体つきが、アレをやるのには、何気に向いているのだから。
ふむ……もみ上げは頬まで、後ろ髪はセミロング位には、伸びてるか。
「今のアンタじゃ、雑魚相手でも勝率は皆無だけどね」
「ですよねぇ……」
超古代時代当時には、絶望的な相手である、魔神王を封印した存在がいた。
つまり殲滅も可能であるが、自分達がいたあの時代で技術の粋を集め造った、あのパワードスーツ。
これを遥かに上回る性能を得るか、強大な力を持つ仲間達を集める必要があるな。
「少なくとも、魔神王を殲滅出来る可能性が一番高い時代が、完全復活が近い時代って訳」
「早い話。貴方には仲間集め、自身とスーツの強化、魔神王の復活を妨害、殲滅をして貰うわ」
「それ。時間が圧倒的に足りんよな?」
まさかの魔神王を殲滅出来る可能性の一番高い時代が、完全復活の一番近い時代とは。
やる事は大まかに三つだが、時間が圧倒的に足りぬ中。
スーツも機械技術の粋を集めた品で修理、強化すら時間を大幅に必要とするし。
信頼出来る仲間や、自身の肉体強化も一朝一夕で可能な事ではない。
ましてや完全復活の妨害など、方法も知らなければ、達成可能かどうかさえも不明。
「だから貴方には少し、若返って貰うわ」
「向かう時代も、アンタの居た時代より遥か未来」
その不可能を可能に持ち上げる為、幾らか若返り。
元々住んでいた時代から、遥か未来へ飛ばすそうだ。
確かにそうすれば、可能性はあるかも知れない。
「ミッションは至極簡単。己を鍛えて仲間を増やし、魔神王を殲滅する。良いわね」
「言うのは至極簡単なんですがそれは」
気軽に言ってくれるが、完全復活した魔神王の力は未知数。
一度も戦った事が無い。と言うのもあるし、RPGゲームでよくある第何形態、の可能性も否めない。
最悪、成長途中での死、仲間が集まらない、早期完全復活の可能性すら考えれる。
どちらにせよ、分の悪い賭け。
賭け金は全ての命。勝利して得るのは生命の生存と、魔神王のいない未来。
「ま、出来なきゃアンタ達は絶滅。私達は暇潰しを一つ失うって訳」
「あいあい。精一杯、頑張らせて貰いますよ~っだ」
「何はともあれ。覚悟は良いかしら」
「あぁ」
やる、やらない。の問題ではない。必ずやり遂げるしかないの一択。
やらなければ絶滅するだけ。それも宇宙レベルで。
やる気ない自分の言葉を遮るように話し掛け、決断の有無を訊ねて来た。
そっと静かに眼を閉じ、今まで生きてきた時間を振り返りつつ、適当に答える。何度目だ、コレ。
「よろしい。それじゃあ未来の世界へ三名様、ご案内」
パチン、指を鳴らした音が聞こえた瞬間。
足元の足場とも言うべき感触が消え、宇宙空間とも思える広大な所へ落とされた。
「さて。彼は未来の世界へ飛んだわよ」
「……見てたから知ってるけど?」
わざと見せているのか、あちら側のやり取りや声が見聞き出来る。
副王は相変わらず、他者から眼が見えない様に帽子を被りつつ。
修道服の女を見上げ、ニヤリと笑みを浮かべながら顔を覗き込む姿が、何故か見える。
絶えず笑みを浮かべたまま、じぃ~っと相手を見上げている為、副王へ目線を向ければ目が合い。
頬を少し赤くしてそっぽを向いた後、もう一度目線を向けては……を何度か繰り返した頃。
「未来の事……事前に言わなくて良かったの?」
「貴女はゲームをする時、答えを聞いてから始めるタイプ?」
「別に。でも、世界観位は知りたい程度よ」
魔神王殲滅を任せ、未来へ飛ばした後に言うべきではない……だろうと思いつつ。
敢えて何故、飛ばした先の世界情勢や、状態を事前に伝えなかったのか。
疑問点を問い質すのに内心頷くと、未プレイのゲームに例えた。
「事前に知っていれば、対策は取れる。それが面白いかは兎も角……ね」
「成る程。全てを知っていては、面白みに欠ける。って訳か」
ごく最近既プレイ済みで、周回やニューゲームなら注意点、出来事を全て知っているが。
それを新規プレイヤーへ話してしまうと、面白みが半減して、退屈になってしまう。
その為、敢えて何も伝えずに送り出した。副王は自身の目と足で探索し、知って欲しいタイプか。自分もそのタイプだな。
「それでも十分危険なのよね。そ・こ・で。アナタ達にも任務を言い渡すわ」
麦わら帽子のつばを右手で摘まみ、深く被りつつ言うと、また不適な笑みを浮かべ。
その笑みを垣間見た女は、直感的に嫌な予感が浮かび、脱兎のごとく逃げ出そうとするも。
既に右腕を掴まれていて、外見的な体格差や力差も何のその。全く逃げれなかった。
「ま、あの子は押しに弱そうだし? 駆け引きを間違えなければ落とせるでしょ」
「それと……この服に何の関係があるんだか」
「任務とその他諸々よ。任務内容は袋の中に入れてあるから」
30cmも身長差がある自分を子供扱いし、内面的な弱点だろう部分を的確に突いた発言。
それと一緒に押し付けてきた袋を受け取り、言葉と袋の意味を訊くも。
任務達成に必要な物、と必要最低限しか伝えず。
先に落とした自分同様別の穴を開け、宇宙空間的な所へ落とした。
「さてさて。彼にお土産も送ったし、これで漸く退屈を凌げそうね」
一つ目の穴へ追加で虹色に輝く珠を落とし、再び指がパチンと鳴れば。
何も無い宇宙的な空間が一瞬歪み、戻ると──大層大きな純白の玉座がさも当然のごとく存在していた。
突如副王の体が浮かび上がり、玉座へ吸い込まれる様に飛んで行き……座り、くつろぐ。
「さあ、ゲームを始めましょうか。魔神王」
名前:新月サクヤ
年齢:21歳
身長:167cm
体重:56kg、専用軽鎧装着時86kg
性別:女性
種族:人間
貴紀と終焉のパーティー仲間
魔神王復活を阻止した三人の一人。
性別や種族故の力不足を知恵で補う。
貴紀が使えない魔法を扱い、私服と戦闘用軽鎧服を即座に換装する。
主な武器は日本刀、レイピア、銃。
魔力を纏わせる為、強度と殺傷能力は予想以上。トランクや鞄を持ち歩くが、中身は……
趣味は料理や音楽と貴紀に近く、任務が終わって落ち着いた頃、結婚式を挙げる予定だった。




