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ワールドロード  作者: オメガ
五章・corrotto cielo stellato
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新たな紋章

 『前回のあらすじ』

 桜花との一時的な協力関係を築き、戻ってきたのも束の間。突如ホライズンが現れ、怯える医療組。

 しかし彼が現れたのはエックスに全ての黒幕や、黒幕を倒すのに必要な情報を伝える為でもあった。

 漸く取り戻したフュージョン・フォンで仲間達を次元の狭間から救い出し、情報共有を行う一行。

 黒幕の写真を見せ、名前を伝えると仲間達は各々指を差し、自分達にも関係があると話す。



 人間誰しも、見たくないモノは沢山ある。それは恋人や伴侶の浮気であったり、死亡現場。

 酷く汚く散らかった自室とか、自身が起こしてしまった大きな失態等々……数えればキリがない。

 それは勿論、自分にもある。直視したくない現実、耳にしたくない真実、口にするのも躊躇う理想。

 勝利し、撤退し、何かをする度にソレは自分に寄り添い、何度も心に訴え掛けてくる。


「……メディカルチェック及びメンタルチェック終わり」


「漸くか。今回は特に長かったな」


 作戦会議が終わった直後、ニーアに引っ張られて健康・精神検査をさせられた。

 検査を再度受けるまでに色々あったから、情報の更新と言う意味もあるのだろう。

 寝かせていた体を起こし、仮ベッドに座りながら異様に長かった検査に対してぼやく。


「…………」


「……何?」


「いや──真剣な表情が頼もしく思えてな」


 真面目に、真剣にカルテへ結果を記載しては、恐らく前回の記録と思われる紙と見比べ。

 小さな違いすらも記載しているのだろう。そんな横顔を微笑ましく見ていると、流石に気付かれた。

 素っ気なく聞かれる問いに、少し言葉に詰まるも率直な気持ちを伝えたら。

 顔色一つ変えず「これが私の仕事だから」と言い、またカルテと向き合い記入を始める。


「ハッ──この魔力は!」


「っ!?何、この感覚……」


 そんなニーアだからこそ、夢を掴んで欲しい。そう思った直後、三つの魔力を強く感知。

 同時に、呼ばれているとも感じた為、三両車に向かいバイクを走らせる準備をしていると。


「私も一緒に行く。流石に護衛対象が多いと、一人じゃ護り切れないでしょ?」


「護衛対象が多い?」


 ライダースーツに身を包んだアナメがヘルメットを抱え、別のオートバイに乗りながら言う。

 気になってオウム返しで聞き返す中、救急箱を手に此方へ駆け寄っては。

 後ろの席にあるヘルメットを被り、後部座席に座るニーア。怪我人が出る可能性も考えれば……か。

 壁のパネルを操作し、起動したゲートに転移先を打ち込んで突入。外に出て、バイクを走らせる。


「流石に……これはキツい」


「ごめんね。無理を言っちゃって」


「さあ──ドンドン行くわよ!」


 より一層暗くなった車道を走っていると、歩道側で爆発が起きては、瞬間的に道を明るく照らす。

 現場が見えた時、白兎が水葉師匠を背負った状態で融合四天王・マジックから逃走する真っ只中。

 宙に浮き右人差し指の先に、体育祭で使う大玉級の火炎球を作り、追い掛けながら投げ付けている。


「っ……ニーア、しっかり掴まってろ。跳ぶぞ!」


「んっ!」


 あと少し、もう少しで追い付く。そんな時、前方に壊れたテレビなどの粗大ゴミが散乱しており。

 ガードレールが邪魔で歩道側に移れない。なので後ろのニーアに注意を促し、掴み直したのを確認後。

 アクセルを全開。マフラーから青炎が吹けば歩道へ急カーブ、レールと粗大ゴミを台に無理矢理跳躍。


「マジック、お前の相手は自分だ!」


WILD(ワイルド) ability(アビリティ)、No.03!! Brave(ブレイブ) Heart(ハート)ride(ライド) attack(アタック)!」


 勇猛果敢な発言に対し、本音は真逆。怖いし勝てるかも怪しい。けど、仲間達の為なら勇気を出せる。

 戦う意思に応じて腰に現れたバックル。勇気の紋章が光輝く左手で操作すると、バイクが緋色に輝き。

 声に気付き振り向く瞬間、バイクの突撃を決め、壁を突き破りビル内部へ押し込む手応えは十分。

 タイヤは胸骨柄から肋骨までの縦一直線を破壊し、激突から背骨や後頭部にも損傷はあると判断。


「残念ね……今貴方と戦う必要は無いの。その上、ここは撤退かしら──ね!」


「マズイ、間に合わない!!」


 心臓や肺に骨が刺さってる筈なのに、無理矢理押し込んだオフィスに仰向きで倒れ伏しているのに!

 コイツは何事も無い様に喋っては左手を動かし、壁を焼き貫く細く赤い光線を放ち。

 執拗に白兎と水葉師匠を狙う。自分もバリアを光線として撃つも……追い抜けず、速度が足りない。


「心優しき主よ、か弱き我らを御守りください──聖障白壁(ホーリーウォール)!」


「ヤナギ、ぶっ続けて悪いが俺と一緒に補強強化を」


「「勇ましき主の加護を我らに──ストゥレングスニング!」」


 俯瞰視点に切り替え、外の様子を視ると……いつの間にか駆け付けたフェイク一行が二人の前に立ち。

 女戦士の盾に防御系奇跡を付与。それを赤い光線に向けて投げると、白く光る六角形の障壁が展開。

 されど盾に亀裂が入るや否や、フェイクとヤナギの二人が追加で奇跡を詠唱し、障壁が分厚くなる。


「クソッ……俺達の全力が三秒で」


「いえ、その三秒は無駄ではない。無駄にはしない!ディフェンサー、魔力防壁展開!」


 が──それも三秒で盾諸共砕け散る。その稼いだ三秒の間にアナメがバイクで合間に滑り込み。

 バイクにあるパネルを操作をし、紫色のドーム防壁を展開するも光線は止まらず、また亀裂が入る。


「今度こそ……守るんだ。私に勇気と、やり直す切っ掛けをくれた──大切な人達の為に!!」


 そんな時だった。アナメの左手の甲が赤紫色に輝き、盾の形をした紋章が浮かび上がると。

 亀裂は修復され、ドーム状だった防壁も三角形に変わって光線を裂き、左右に受け流す。

 同時に自分の紋章も共鳴する形で輝き、新たに発現した紋章に関して教えてくれた。

 新しい紋章は『二つ』、アナメが得た守護の紋章と……後ろのニーアに発現した白き心の紋章。


「任務達成」


「消え……た?」


 訳が分からなかった。紋章の輝きを確認した直後、任務達成と言って消えたまでは理解出来る。

 が──飛び散った血まで消えるのは理解に苦しむ。分身……だとしても、ここまで遜色無い程精巧に?

 少し悩んだが──今は白兎と水葉師匠が最優先。即座に合流し、指定されたビルの三階へ。


「いやはや。久し振りに冒険をしたわ」


「水葉師匠。久し振りに会うなり、こんな展開は予想外ですよ」


「あっははは~、ごめんごめん」


 全く危機感の無い様子で喋る師匠に本音をぶつけるも、あっけらかんとした笑いを見せる。

 左足の皮膚が変色する程火傷し、ニーアから消毒液や手当てを受けてるにも関わらず、この余裕。

 いつも通りと言えばそうだけど……気が付けばウエストバッグの中を探り、紙と写真の束を取り出す。


「でも、君の力にはなれた」


「おいおいおい。この地図と写真は……電波塔と調律者の拠点……それに支援者の詳細な情報じゃねぇか!」


「フェイク、分かるのか?」


「あぁ、俺達の方が早く此処へ来て探索してたからな。これで勝率も上がって来た!」


 師匠がくれた情報は、横から覗き込んで来たフェイク曰く、滅茶苦茶有用なモノだった。

 冒険をした……とは、そう言う意味か。これなら戦力を分けて、別動作戦が出来そうだな。

 そんな中、詠土弥とローブで身を隠した人物が話す写真を見付けた──これは過去視してみるか。


『貴女が恩を感じる相手に──恩返し……しちゃいますぅ?』


『静久と同じ立ち位置になれる!恩返しが出来る!ん、する』


 当然と言えば当然だが空は今だ黒煙で薄暗く、表通りなのに人気の無い歩道。

 其処で交わされる、無知な者を詐欺ろうとする会話。この声と口調、それに取り出した筆。

 間違いない。コイツは魔神王軍の三騎士・コトハだ!クソッ……存在自体は理解していたのに。

 過去視を閉じ、今現在を視る。改めて何故、こんな力が眼に宿っているのか?と、疑問が浮かぶ。


「ゴミ捨て場……此処にも何かあるの?」


「都会から離れた場所にあるゴミ捨て場でね。過去に一度、其処からミュルって怪物が出たんだって」


「あぁ、その話か。夢見久遠(ゆめみくおん)リーダーから聞いたぞ。なんでも、ゴミの集合体だとか」


 再度写真の束を見ていく内に、広めのゴミ捨て場を発見。隣で見ていたアナメも気になった様で。

 水葉師匠に訊ねると、過去に自分達が倒した融合獣・ミュルの話だと分かった。が……疑問が二つ。

 一つ、フェイクの言うミュルが自分達の倒した個体か否か。二つ、リーダーの名前……夢見久遠。

 それは伏見の山小屋で見付けた日記と写真、その持ち主の子供なら、アイツら──の中に永久が?


「この写真……」


「あ~、それ?六甲山を観光中に見付けたの。こんな所に古代遺跡か~……な~んて思ってね」


 最後に見た写真には、ピラミッドに似た遺跡が写っており──場所は六甲山だと言う。

 有馬温泉は行った事はないが……賞味期限が五秒の煎餅を売ってるんだっけか。

 遺跡には十中八九、超古代人が残したロストテクノロジーが残っている筈。

 強い敵に対応出来るか分からん以上、何か対抗策は欲しい。特に、魔神王相手では力不足。


「ねぇ……これ。人類洗脳用人間養成計画って書いてあるよ?」


「これか。久遠リーダーのお姉さん、永久さんがアイドルにしがみ付く理由となったのは」


「悪い。その話、詳しく教えてくれ」


 紙束を分割し見ていたアナメとフェイク。二人の言葉に思わず口を挟み、話を聞いた。

 どうやら、この時代へ来る前に見せられた映画。アレが人類洗脳人間と言う計画の初期段階。

 なんだが……夢見姉妹。彼女達を担当していた男、欲森横旅(よくもりおうりょ)。名は体を表すと言うが。

 相当な横領行為回数に加え、何人ものアイドルに毒牙を立てた悪党の様だが……まだ生きてるのか。


「夢見永久……一度、面と向かって会う必要がありそうだな」


「何処で放送してるのかは、俺達は全く知らないけどな」


 妹の夢見久遠はレジスタンスのリーダー、姉は洗脳アイドルの一人。なんともまあ、正反対な事で。

 直接会って話す必要があると思ったが、何処に居るのかは不明。なら、桜花に直接聞くべきか。

 やる事は多そうだが、みんなの協力があれば行ける。有り難い事に、乗り物もあるしな。


「ただ、問題となる要因は……チラホラあるな」


「…………」


 それと同時に、問題も幾つかある。六甲山で発見された超古代遺跡の探索、夢見永久との対面。

 人工ナイトメアゼノ・バグの撃破、コトハと詠土弥の追跡にジャッジと決着をつける約束。

 可能なら、それまでにパワードスーツなどの強化改修もしたい。今後現れる強敵との戦いに備えて。




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