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ワールドロード  作者: オメガ
五章・corrotto cielo stellato
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花に潜む闇

 『前回のあらすじ』

 デトラの記憶を追体験する中で、第二次世界対戦の時に組織・終焉の闇と管理者勢力(アドミニストレータ)の襲来を知っていた。

 人類を救う為、自ら人類に敵対行動を取り、共通の敵として戦争を止める。それは、組織を抜け出す前の出来事。

 大型ゴミ箱の中で皐月に呼び掛けられ、目を覚まし、自身らを探す機械兵を奇襲の一撃にて撃破。

 しかし倒した機械兵は、人間を改造した起動兵器であった。彼ら彼女らが進む道は地獄か?はたまた奈落か……



 レジスタンスの拠点へ行く前に、バイクを先に回収。拠点まで手で押し歩きつつ、話が始まる。


「知ってると思いますが、今は2030年3月5日。世界の大半を調律者姉妹が支配した後です」


「世界の大半って……そんな!隊長は最悪の事態を防ぐ為に頑張っているのに」


「例え少数だけが素晴らしくても、その他大勢は集団心理によりその少数を嫌悪し、排除するんですから」


 今の年代や月日に簡単な情報。真夜の嘲笑う顔と言葉を見聞きし、何故今に至るのかを理解した。

 人類の首脳陣を丸め込んだか、飼い慣らしたのだろう。その後政府の判断として、国民へ呼び掛ける。

 調律者に全面降伏した為、暴動などで刺激しない様にと。後は警察や防衛軍などを麻痺させ。

 反撃能力を、反抗心を徹底的に挫けばいい。心を持つ知的生命体には、それが一番効果的だ。


「そのレジスタンスとやらは、一体どんな活動をしてるんだ?」


「まあ、テロ活動ですよ。サイバーテロにエコテロ……エコテロって、なんかエベレスト山脈ッ!?」


 レジスタンスの活動内容を聞けば、普通に教えてくれるのだが……途中で何かに気付き。

 再度口を開き喋っている中で言わんとする内容にいち早く気付いた為。

 ルシファーを厚紙ハリセンに変化させ、真夜の尻にフルスイングでセンシティブ発言を阻止。


「そう言えば、あの盗人はどうしたんだ?」


「直ぐに会えますよ。レジスタンスのメンバーですし」


「ま、真夜……さん?お尻、大丈夫ですか?」


 前のめりに倒れつつ、両手でお尻を押さえる真夜に、盗人女の行方を聞くも。

 レジスタンスのメンバー故、拠点で会えると言う。成る程、先に行ったのか。

 余りにもいい音が鳴り、酷く痛そうに震える様子を見て皐月が心配し、声を掛けると……


「ふ、ふふふふふ……新しいエクスタシーの扉を開眼する時が」


「開かんでいい!」


「ハワード・フィリップス!?」


 Mの扉を開く直前かつ、前のめりな姿勢と言うのもあり。お尻の左右にあるツボの一つ、環跳(かんちょう)を。

 両手の親指で左右からゆっくり圧を掛けつつ押すと、何故かクトゥルフ神話の創設者の名を叫んだ。

 まあ、新しい扉とやらは閉鎖出来たから良しとしよう。変態が増えるのは勘弁して欲しい。


「……調律者姉妹に降伏した人達は、どうなるんでしょうか?」


「そんなモン、決まってますよ。WHOが日本人を薬のモルモットにしようとした時と同じ結果ですよ~っだ!!」


「そ、そんな事が……あったん、ですか?」


「あぁ、実はな。その時はある一人の素晴らしい日本人の活躍で阻止されたが、今回は……」


 皐月が疑問に思った事を口に出すと、立ち上がり面倒臭そう顔で、分かり切った内容を言わすな。

 真夜の語る真実を聞き、自分に訊ねて来るので、幾らか昔の事実であると話す。

 ぶっちゃけた話。相手が弱気だと押し付ける輩は腐る程居るし、実験材料にしようとする奴もいる。

 優しさや誠実さに漬け込み、取れるだけ搾り取って棄てる野郎も、世間には山程居る。それが現実。


「所詮、人間なんて単なる欲望と身勝手の塊。自らのエゴで星すら食い潰す寄生虫ですよ」


「本当の事なだけに、ひでぇ言い方……ッ!」


「隊長!?」


 事実を突き詰めた正論なだけに、反論する気は微塵もない。そう思う辺り、自分は確実に……

 『人間』に近付いていると思った。論破は馬鹿のやる事。馬鹿の思考は現実を見ず、空想を見る。

 そう認識を改めていたら、ビルの間から此方を覗く調律者姉妹の妹、花が視界に入ると。

 奴は逃げる様に走り出す。言葉より行動、論より証拠。問い詰める意味も含め、細い道の奥へと進む。


「へぇ~……追い付けちゃうんだ~」


「答えろ。あのお前達調律者の技術とは思えない程の出来損ないはなんだ?」


 裏路地にある小さな空き地。其処で花は自分を待っていた。……追い付けるとは、どう言う意味だ?

 それも含めて恋月を抜き、銃口を向けながら問い掛ける。分かっていたが、怯えた様子すらない。

 寧ろ、不敵な笑みすら浮かべる始末。例え撃たれても、問題無いって言う余裕か。ならば!


「無駄だって、何で分からないかな~?」


「……成る程な。お前、そう言う事か」


 眉間目掛けて引き金を引き、魔力弾が狙い通りに届く直前──奴がウインクをした途端、弾は消滅。

 同時に……過去を視る左眼が桜の姿を看破。納得の行く本性に思わず銃口を下げる代わりに。

 静かに息を吐き。自分自身の行動を振り返りつつ、相手を睨み付ける。


「誹謗中傷。それは己が理想と現実の違いに苦しみ、自身の理想を押し付ける愚行」


「……常識的に考えて。それは他人が持つ自身とは違った常識を受け入れられない者が使う、否定の言葉」


「ふ~ん。覚えてるじゃ~ん」


 されど威嚇など全く意に返さず、目を閉じて口を開いたかと思えば、誹謗中傷に対しての言葉。

 それに続く形で、自分も人々が口にする「常識的に考えて」と返せば、ニヤリと笑って口を開き。

 覚えてて偉いな発言の後に「貴方が出来る事が私達に出来ない訳はないでしょ?」と言う。


「保険とスパイを兼ねて……か。無月闇納、お前の狙いは何だ?」


「それは勿論──調律者・桜の殺害。組織の頭を潰すのは基本中の基本。でしょ?」


 ある意味予想外と言えばそうだが。誕生元が同じオメガゼロである以上、出来てもおかしくない。

 一つは心情ゆかりに、もう一つは調律者・妹の花に自身の魂を植え付けていた様だ。

 狙いは姉の桜を倒す事……らしく、続けて「共通の敵を倒す為に手を組まない?」と、申し出て来たが。

 さてはて、何処まで信用して良いものか。頭の中で可能な限り思考を走らせていると。


(ぬし様よ。あやつの言葉に嘘偽りはない。無い……が、何か裏があると読める)


(それに関しては僕も愛の意見に同感だ。静久、君はどうだい?)


(ふん。答える前に……貴紀、後ろへ大きく跳べ……)


「ッ!!」


 愛達を宿した左腕を経由し、心に直接語り掛けてくる三人。嘘ではないが、裏があると読む辺り。

 警戒は必須。意見を求められた静久は分かり切った答えを聞くな。

 的な感じで答えつつ、忠告をくれた直後。魔力を感知し、指示通り後ろへ大きく跳べば──

 上空から汚水の雨……いや。地面に細い穴を開ける程の激しい雨が、調律者・花の周辺に降る。


「手を組む、駄目……っ!?」


「模倣されただけの出来損ないが……平伏してなさい!!」


 ビルの上から自分達の合間に降り立ったのは──静久と瓜二つの容姿を持ち、汚水を操る詠土弥(よどみ)

 しかし、交渉の邪魔が癪に触ったらしく。忠告をした矢先、降り注ぐ魔力に詠土弥が押し潰される。

 んだが……自分も受けている筈なのに体は普通に動く。微妙に動きは鈍くなってはいるけど。


「返答は次に会う時までに、考えておいてね」


「ふぅ~……詠土弥、大丈夫か?」


 調律者・花は言うだけ言って、手に持った小型転送装置で何処かへと消えてしまった。

 放送で真逆な内容を語る皐月の両親、調律者に反逆を試みるレジスタンス。

 そして──支配したのか?それとも分割した魂を持つ本人か分からない上、桜を倒そうとする闇納。

 予想以上に面倒な出来事に巻き込まれたと思いつつ、倒れ伏す詠土弥に手を差し出したら。


「余計な、お世話」


「そっか。それはすまなかった」


 差し伸べた右手を払い除けられた上、この言葉。自分は好かれてないと再認識し。

 謝罪の言葉で返し、生まれたての小鹿みたいに、手足が震えながらも立ち上がるのを待つ。

 震えている理由は十中八九。出来損ない発言に対する怒りと、圧倒的な実力差を痛感した恐怖。


「にしても。よくこの時代に来れたな」


「転移装置、ゲート、暴走してる。何度も、巻き込まれた」


「そうか。巻き込まれて、色んな場所へ飛ばされてたんだな」


 詠土弥との会話は相変わらず、個人的にやり難い。にしても……ゲートが暴走しているとは。

 原因が分からない以上、もしかしたら自分達の前にも、管理していないヤツが現れるやも知れん。

 何処へ繋がっているのか?何処へ飛ばされるのか。それも今後の参考に知りたいので聞いてみたら。


「一度目はトリスティス大陸。次がMALICE MIZERで、人魚と海月娘に会った。その後は……」


 話を聞けば聞く程、共通点が見えて来た。詠土弥が飛ばされた先は全て、自分が行った場所。

 トリスティス大陸、MALICE MIZER、ユーベル地方、フォー・シーズンズ、最後にこの現代。

 もしやあの色付きのデカい鍵は、転移先のロックを解除する物なのだろうか?


「それはそうと、どうして奴と手を組んだら駄目だって言ったんだ?」


「拠点に忍び込んで、話、盗み聞きした。桜花に戻る為、貴紀を利用するって」


「桜花?戻る……利用」


 改めて何故、花の話と交渉を妨害してまで手を組ませまいとしたのか?

 その理由を訊ねると、気になるワードがあった。桜花──確かディーテもその名前を言ってた記憶が。

 戻る為に、自分を利用する。桜の殺害に関する協力の申し出……まあ、そう言う結果になるわな。


「成る程。詠土弥、良い仕事をしたな……」


「んっ。話してた相手、凄く怖かった。さっきの奴、跪いた上、敬語で話してた」


「静久、また勝手に……まあいっか。と言うか、アイツが敬語で話す相手って、誰だ?」


 納得した瞬間。左腕から緑色の光が抜け出すと、静久になり詠土弥の活躍を褒めた。

 余程褒められたのが嬉しかったのか、胸を張るも……思い返した様に語る言葉の中には。

 疑問が浮かんできた。調律者・花の容姿をした無月闇納が敬語で話していた相手とは誰か?

 そもそもアイツが跪く上、敬語で話す?それこそあり得ん……そんな姿、一度も見た事もないぞ。


「何はともあれ……邪神達と合流して、レジスタンスの拠点に行くのが先決」


「だな。仲間達と連絡が取れない今、詠土弥と再会出来たのは戦力的にも大助かりだ」


「頑張、る」


 謎はまだまだ解けないまま。だが、予想外な増援が来てくれたのはありがたい。

 後は静久の言う通り、置いて来てしまった皐月と真夜の二人と合流し、レジスタンスの拠点へ行こう。

 この時代に来てから予想外な事ばかり。それでも、今は前に進むしか道はない。

 来た道を戻る途中、追い掛けてくれた皐月達と合流。そのまま目的地たる拠点へと向かう。




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