表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールドロード  作者: オメガ
四章・just believe in your eyes
228/384

ただあなたの瞳を信じて

 『前回のあらすじ』

 パワードスーツの改修を行うも失敗続き。暴走を阻止するも、内部温度にエックスは医務室へ運ばれる。

 様子見に来た仲間達を追い返し、ニーアから聞いた体の状態は普通なら即死しているレベルと断言。

 夢か幻か。不思議な舞台劇場でゼロ達に秘密を打ち明けた後、ベーゼレブルから外の現状を聞き目を覚ます。

 ニーアの体を張った制止、告白に真っ向から本音で答え、戦闘許可を貰いホライズンの下へ向かう。



 ゼロライナーから外に飛び出し、爆発音や振動の鳴り響く秋島の方へと走り出す。

 すると其処には──アナメとシュッツがアイ・アインスを除くオラシオンをライナーへ運ぶ中。

 ナイトメアゼノ・ホライズンに背後へ吹き飛ばされるリバイバーとサクヤ、真夜の姿が見えた。


「つ、強いなんてもんじゃねぇッ。今の俺達とじゃ明らかに、強さの次元が違う!」


「私が完全な状態なら。こんな敵、圧倒出来るのに……」


「例え圧倒出来たとしても、コイツを完全に倒せるのは──おわっとい!」


 背中から滑り落ち、敵の強さが身に染みた直後。追い討ちにと、連続で撃ち込まれる鋭く細い矢。

 螺旋を描く様に捻れたソレは、左右に寝っ転げて避ける三人の居た場所を、的確に抉る。

 その威力は地面を易々と穿つ辺り、生身で受けた際のイメージは……余り想像したくない。


限定リミテッド三位一体(トリニティ)融合(フュージョン)


 幸いにもまだ、紅葉の木々や茂みに隠れている此方には気付いていない様子。

 茂みに隠れたまま背後に回り込み、右腕に絆と第三装甲・一号を限定融合。

 右腕の紅龍ヘッドから銀の刀身を出し、繰り出す横一閃が見事、ホライズンの首を跳ねる。


「見・付・け・タ」


「──ッ!!」


 融合が解ける中、呆気なくも遂に殺れた。心の何処かでそう思い、油断していたのだろう。

 地面に転がる頭が此方を向き、見付けた……確かにそう言った。その言葉を聞いた時。

 背筋がゾッとして、二歩三歩と下がる。生きていた──なんて理由ではなく、まるで。

 夜の学校から帰る時。背後から肩を叩かれ、耳元で小さく囁かれた……そんな恐怖感に襲われた直後。


「貴紀さん?!」


「真夜!」


「私に命令すんなッ!!って話ですよ!」


 素早く落ち葉を踏む足音に気付けば、既にホライズンの体から鋭くも力強い右蹴りを胸部に受けた。

 その一撃はリバイバー達の声や姿が遠退き、意識を失わされ、体も後方へと吹き飛ばされる程。

 以前戦った……いや。遊び未満の時より滅茶苦茶強い。レベル、ランクを超えて次元が違う。

 一瞬飛んだ意識が戻った時。真夜が自分を羽交い締めの形で、キチンと受け止めてくれていた。


「真夜、スープレックスジャイアントスイング!」


「合点ッ、承知のすけ!」


 ホライズンが此方に右腕を向けていると知った瞬間。細かい説明を放棄し、プロレス技で説明。

 すると真夜は此方の意図を完全に理解。一撃必殺の矢が迫る中、羽交い締めから腰へ腕を回し。

 低い姿勢で弧を描く途中、眼前を矢が通過。頭が地面に当たるより早く両手を着け、受け身を取る。

 それが合図となり、今度は両足を掴まれ、姿勢を戻しながら横に大回転。そのまま奴に放り込まれ──


「自殺、行為……か」


「一瞬しか力が使えなくとも。自分には……いや、俺達には絆がある!」


「──?!」


 自殺行為と読み、此方に右腕を向けて矢を放つ。パワードスーツを着れない今、当然回避は不能。

 されど、放たれた矢は空振り。正確にはカーリタースから覚えた能力、トリックを発動させた。

 放り込む時に一瞬だけ投影。幻影はそのまま、俺自身は地面をスライディングで滑り懐へ潜り込む。


「深き闇に……」


「遅い!」


 呪文を詠唱し始めるも、俺は右指を擦り鳴らすアクションに魔力を込め。

 瞬間的な閃光で目を眩ませる。しかし通じない様で、叩き潰す意思を表す様に振り上げられた左腕。


「無駄──ッ?!」


「例えその言動が無駄だったとしても。人は、過ちを正して行ける」


「白兎……アナタが、どうして」


 振り下ろされると思われた左腕は、肘関節から切断されて地面に落ち。

 サクヤ達の所へ滑り落ちながら着地すると、首だけ振り向いてホライズンに対しそう言い放った。

 が……サクヤ達の言葉には全く耳を傾けず、返事も無い。俺は真夜の隣へ戻り、距離を空ける。


「──っ!?」


「深き闇に囚われし魂。浮世を妬み、生者を呪い焼く雨となれ」


「あ、あれは……じゅ、呪文?!」


 詠唱が始まった瞬間、俺達は三方向に分かれホライズンに攻め込む。

 だけど奴に届く直前。強烈な重力に体は地面に押し付けられ、全く動けなくなった。

 その間に呪文詠唱は終わり、地面から浮き上がってくる無数の黒い炎は空に昇り。

 一つになった次の瞬間──拡散して雨霰と言わんばかりに降り注ぎ、着弾と共に爆発を繰り返す。


「こげなもんッ!」


「私達も行くわよ」


 爆煙の中から俺とリバイバー以外の三名が、各々片腕を盾代わりに飛び出し。

 ホライズンへ向かう中、奴の全身が突然泡立ち始め、粘土を捏ねる様に変化する不気味さを見せるも。

 サクヤ達はそれすら意に介さず、各々武器や拳を叩き込む──その瞬間。


「うぁっ!」


「なんとぉー?!」


「コイツ……そんな能力まで」


 三人は瞬く間に反撃を受け、後方へ吹き飛ばされた。背中から落ちる白兎、顔面から落ちた真夜。

 滑り落ちながらも器用に着地し、嫌そうな顔でそう言うサクヤ。此方に振り向く奴の姿は……

 ゼロの肉体を借りている俺、紅貴紀の姿に瓜二つ──いや、完璧に俺そのもの。


「LOOK……この体──の、使い方。教え……て、やる」


「上等だ!」


「貴紀さん?!あぁ~もう……俺も行きます!」


 右手でピースサインを作り、両目の下あたりを指差し、見てろ的な挑発したかと思えば。

 続けてゆっくりと右手の平を上に向け、此方に来い……と手首を振り、言葉付きで挑発の上乗せ。

 っ……いいだろう。その見え透いた挑発──いや、挑戦に乗ってやろうじゃねぇか!

 苦しくなってきた胸を左手で鷲掴み、深い深呼吸を一つしてから駆け出す。


hand(ハンド) shot(ショット)


「技までっ、俺の真似か」


 挑発ジェスチャーをした右手を捻り直し、指先を真っ直ぐ俺に伸ばしたと思えば。

 黒い魔力弾を一発だけ発射。牽制技程度と思い、右手に魔力を瞬間的に込め、弾く。

 刹那──直感から逆に右手を弾かれた上、胸元を貫かれ即死する未来を見せられるも、時既に遅し。

 前へ踏み込んだ右足に力を込め、魔力弾に触れる箇所を斜め下に変更。同時に身を大きく捻り……


「うわっ?!」


Well done(素晴らしい)


 回した独楽(コマ)が勢いを失くし、ぶれる様な状態へ持ち込み、バランスを崩し右肩から転げ倒れ。

 後ろのリバイバーも間一髪左側に避けたら、次は直立姿勢で魔力弾をマシンガンさながらに連射。

 危険を感じ、屈んで頭を隠す様に右腕で耐え凌ぐ中……予想以上にも周囲に当たり、土煙が舞う。


「た──っ!!」


brainless(愚かな)。勇気と無謀を、はき違える……とは」


「勇気と無謀をはき違える程に愚かな……だって?」


you(あなたは) don't(理解) understand(していない)。彼と言う存在を」


 恐らく俺の名前を呼びそうになったが──心配より、信じて前に進む方が良いと判断したのだろう。

 駆け出す足音に対し、知ってか知らずか。ホライズンからの否定的な言葉に。

 リバイバーは兎も角、サクヤ……ではなく、何故か白兎までもが続けて答える。


「俺達は──信じてる」


believe(信じる)?」


「Exactly。だから我々は、貴紀さん……」


 言葉を耳にする度、倒れ伏した体が、指先が電流でも走ったかの様に……一瞬だけ動く。

 まだ動ける、まだ戦えると知らせる為に。言葉だけじゃない──何かが力を、手を貸してくれて。

 まだ諦めたくない、立って走れると。心を振るわせるソレがまた俺を立ち上がらせ、走らせる。


「ただあなたの瞳を信じて、共に歩むと決めたのよ!」


 真夜の言葉に続き、叫ぶサクヤの想いを聞いた時。懐から結晶を取り出し、鷲掴みで砕く。

 走行中にバックルを腰に当てて装備後、左斜めにある木へ素早く跳躍しつつ。

 バックルの左右を軽く引き、周囲からエネルギーを内部へ瞬間的に吸収。


WILD(ワイルド) ability(アビリティ)!!trinity(トリニティ)Heart(ハート) Destiny(デスティニー)!」


「お前達の暴走を止められるのは──俺達だけだ!」


 木に右足を着け、直ぐ様ホライズンに向けて力強く跳躍する最中。

 引いたバックルの左右を同時に閉じ、充填完了。今までとは違うゼロの台詞に違和感を覚え。

 リバイバーが攻撃の連続で注意を引く瞬間──左右に現れたアダム、デトラの姿が俺と重なり。

 此方に気付いたホライズンの胸元へ、右拳を押し込む様に叩き込み、奴の真後ろへ吹き飛ばす。


「やった……初めて、貴紀さんの攻撃が通じた!」


「馬鹿。喜ぶのは、まだ早い」


「全くですよ。攻撃が通じた──と言う事は、憎いあん畜生も本気を見せる可能性がアンデルセン」


 初めて奴の防御力を超え、通った一撃。その結果にやや遅れて歓喜の声をあげるリバイバーだが。

 白兎の言う通り、喜ぶのはまだ早い。攻撃が通じるってのは、敵と認識される可能性が高い上。

 今まで出さなかった技、本気をも警戒しなくてはならない。仰向けに倒れたホライズンを見ると……


「融合係数……85%、シンクロ率83%」


「その数値は!」


 何事も無かったかの様に起き上がると。殴り飛ばされた胸元を左手で触り、何かを確かめ。

 ポツリと呟いた言葉が……ソレだった。俺とリバイバー以外は何かを知っているらしく。

 大層驚いていたが。続くであろう言葉を、ホライズンの次なる行動で遮られた。


「な──なんだよ。この、背筋がゾワッとする感じは!!」


「Nexus……passing line。Go to the next stage」


「しまった!」


 物真似を止めて異形の姿へ戻ると、右手を上げて悪寒……寒気を感じる程の魔力を一点に集め。

 向けた視線の先がゼロライナーの方面だと白兎の言葉で気付き、撃つのを阻止ようと思うも。

 理解する。今の俺じゃ、発射は止められない。ならばどうすべきか?

 先回りをし、最低でも可能な限り被害を防ぐ。出来るなら弾き返す。その一心で飛び出す。


「trust me trust me」


 サクヤ達もうゼロライナーの方へ到着したのを見届けたからか?ホライズンは何かを呟いた。

 その意味は全く理解出来なかったし、マキナやニーアに言った守りたいと言う言葉を貫く為。

 必死に走っていたのもあり、みんなの方へ向け放った魔力……いや、ブラックホール擬きを見た時。

 右手を掲げて黒刃を召喚。魔力を拡散させ、無力化を狙うべく、ライナー前で突き出す。


「なっ──す、吸い込まれ……」


「貴紀、手を伸ばして!」


 迎撃した瞬間……擬きとは思ったものの、サッカーボール程度の魔力弾は十倍以上に膨れて口を開き。

 俺達は黒紫色の激しい渦の中へと飲み込まれ、分断を危惧したサクヤの呼び掛けを受け。

 掴もうと懸命に伸ばしてくれる左手に対し、此方も左手を伸ばし──離れない様に掴んだが。

 そんな希望を引き裂き、試すかの如く俺達は渦の中に消え……フォー・シーズンズを後にした。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ