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ワールドロード  作者: オメガ
四章・just believe in your eyes
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マキナ

 『前回のあらすじ』

 トリックを倒し、改めてワールドロード同士の戦いが苦しいモノだと痛感する。

 終焉の闇を倒すのに必要な三つの秘宝、その一つである無限鏡を入手。残るは勾玉と剣の二つ。

 楽園の創造主を倒され、民衆達から罵声と物を投げられるエックスを救ったのは……終焉とジャッジ達。

 終焉とは戦わなければならない。それを再確認した後、ジャッジと次のステージで決着をつけると言われる。



「あれは……」


 雨が止み、黒龍・月影の吐いた炎も消え、良好になった視界の先には──洋風の館が一軒。

 豪邸と呼べる館の門は自ら開き、自分達を招いていた。安全に脱出まで……残り二十七分。

 迷っている暇も無い上、離れ離れになった仲間達と合流する為、罠と知りつつ飛び込む。


「みんな、無事か?」


「私達は──ね。でも」


「やはり……罠……だったか」


 無事に入れたかどうか。皆に呼び掛けると、サクヤと静久は各々答えるも。

 門の出入り口を振り返り──私達は、罠だったか。そんな気になるワードを言う。

 四人の視線先が気になり、自分も振り返れば……其処には館の外で待機する白兎の姿が。


「少なくとも今、君達に正体を明かす訳には行かない」


「貴様……」


 白兎の言葉と姿に、自分自身の思惑・人類救済計画を重ねてしまい──

 今にも飛び掛かりそうな静久の左肩を無言で掴み、制止。されど納得行かない……そんな表情のまま。

 立ち去るまで白兎を鋭く睨み付け、警戒心を一切解かなかった。


「何故邪魔をした……!?」


「自分も、同じだからさ。正体を明かす時そのまで、素顔を見られる訳には行かないから」


「幾らか身バレした時もあったけどね」


 まだ怒りが収まらぬまま制止した理由を問われ、胸の内を明かす。

 サクヤに痛い所を突かれるも、本当なら計画の最終段階まで身を明かす事はしない予定だったが……

 何故か伝承やら言い伝えなどで看破され、人類史の表舞台に引っ張り込まれている。


「兎に角、先に進もう。脱出に残された時間は少ない──っ?!」


 早く探索を終え、天空島から脱出しよう。そう続けようとした途端。

 唐突にロビーの一階と二階の扉が全て閉じ。階段を上った先にある奥へと続く扉だけが、自ら開く。

 ……自分達を誘導している様だ。サクヤ達は一応の確認も含め、閉じた扉を調べるも開かない。

 観念して部屋に入る時──奇襲と言わんばかりの勢いで誰かに飛び掛かられ、驚きで対処が遅れ……


「ふっ!」


「うぐっ!?」


 気付けばサクヤが前に飛び出し、瞬く間に相手の腕を掴み。

 流れる様に床へ俯せに組み伏せたと思えば静久が腰に乗り、首に爪を当てていた。

 襲ってきた相手の顔をよく見ると……撤退したと思っていた三騎士が一人、シナナメ。


「不覚……此処から脱出、出来ると……思ったのに」


「此処から脱出?どう言う事だ」


 余程不服だったのか。低い声で不思議な事を言い出したので、思わず聞き返し得た情報は。

 この館内は特殊な条件(ルール)が敷かれた空間で、武器の使用や暴力が禁止されており。

 自分達と戦闘後、マキ──もとい闇の欠片たるマキナを連れて帰る筈が、今に至るらしい。


「成る程。だから相手を無力化する合気道や柔術が通った訳ですか」


「……念の為、拘束はしておく」


「好きにしろ……」


 此処での戦闘行為は出来ない。もしくは、何かしらのペナルティが発生するのだろう。

 相手が三騎士と言うのもあり。静久は両手首と上半身を水の縄で縛り、捕虜扱い。

 改めて部屋の中へ入る。其処には天空島のジオラマが部屋の中央に置かれていて。

 倒れたトリックや民衆達の駒や、館の周りに置かれた自分達の駒など……何か違和感を覚える。


「これは……やられましたね」


「どう言う事です?私にも分かる様、説明して欲しいのですが」


「全て、マキナの手の上だったんだよ。このジオラマと、マキナ自身の能力を使ったんだ」


 そのジオラマが何を意味するか?それを理解した自分とサクヤ、絆と静久は頭を悩ます。

 意味が分からず説明を求められた際、全てがマキナの手の上だったと遥に話した。

 孤独の創造主、ブレイブ・デウス・エクス・マキナ。その能力は……主に創造。

 創造物を使えば、今回みたく特定の人物をある程度は動かせる。反面──高い集中力が必要不可欠。


「それこそ、作品が完成するまで日常生活を放棄するまでの、己を死に至らしめる程の集中力が」


「成る程。それ故に、孤独の創造主……と言う訳ですか」


 彼女の能力を手短に説明し、与えられた二つ名の意味を遥が理解した時。

 ジオラマの手前にある床が開き、その中から現れるマキナは敵意が無いと示す様に、両手を上げる。

 とは言え、攻撃系ではない能力は使える。使えてしまう。そうされたら此方の敗け……


「マキナ──」


「このままじゃ……闇に喰い殺されるよ?」


 先にデトラであった頃の約束を破ってしまった件を謝ろう。そう思い、呼び掛けた時。

 予想外過ぎる言葉に、続ける筈の台詞は遮られ、言われた言葉の意味が頭の中を駆け巡る。

 闇……終焉の闇?自分達が終焉達に殺られるって事?何を意味するのか、全く分からない。


「すみません。主語が無くては、何を伝えたいのかが分かりませんわ」


「……それも、そうね」


「今一度、お聞きします。先程の発言は、どう言う意味なのですか?」


 龍神コンビが礼儀正しく問い掛け、聞き返すと……マキナは納得する様に小さく頷く。

 考え込む仕草をしながら俯き、少ししてから此方に顔を向け、再度口を開く。


「ジョーカー・エックス。君は、君達は何もかもを自分達でやろうと背負い過ぎだ」


「それは……」


「確かにそうね」


「サクヤさん!?」


 名指しで呼ばれた後。単刀直入気味に図星を突かれ、反射的に言うべき言葉を飲み込む。

 こう言えばあぁ言われる。どんなに説明しても、否定なり拒否され続けた日々から来る悪い癖だ。

 それを見抜いてか。サクヤは「伝えても否定されたり、怒られる恐怖心は分かるけどね」とフォロー。

 有り難さと驚きの反面、自分自身が情けなく思ってしまう。これも、悪い癖の一つだな……


「何事も抱え込まず、私達にも君達の荷物を背負わせて欲しい。それとも、私達は仲間じゃないの?」


 肩を落とし、気分まで落ちた自分に、涙目で話し掛けてくるマキナ。

 友達や仲間、家族だからこそ。伝えられない、伝え難い言葉もある。

 背負わせたくない、背負って欲しくない気持ちもある。それが本音。

 だから全部、自分で抱え込んでしまう。その行動が相手に迷惑を与える……と知っていながら。


「……大人になるって言うのはね?言いたい事を我慢する訳じゃないのよ」


「早く相談される方が、受ける側としても最善の手を打ち易いですし」


 サクヤと遥が言う事も……分かる。空気を読むのが暗黙のルールかも知れないが。

 敢えて読まないのも一つの手。それこそ、上の立場の人や友人知人が責任転嫁するのを指摘したり。

 相談せず、最悪のパターンになった後では、全てを失うばかりか、マイナスになる可能性も高い。

 話そうと口を開けば、胸の奥で不安が執拗に「止めとけ。どうせ理解されない。怒られるぞ」と囁く。


「ッ……分かった。実は──うおっ!?」


 自分自身の不安に負けたくない。その一心から左手で服の胸元を掴み、言葉を吐き出す。

 も……続く言葉を遮る様に館自体が大きく揺れ、何処からともなく爆発音すら聞こえてくる。


「予想以上に……っ、爆発するまでの時間が少ない、みたいです。マイマスター、ご指示を!」


「マキナ、仲間達は!?」


「とっくの昔にゼロライナーを地下に停車させて、乗り込ませてる。私の計画通りにね」


 大きな揺れの後は連鎖爆発故か、小刻みに揺れる。予想した爆発時間より、十分は速い!

 もしかしたら……そんな想いからマキナに呼び掛ければ、自分達がドンパチやっている間に。

 色々と手筈を済ませてくれていたらしい。マキナの計画と言うのも気になるが……今は!


「兎も角、脱出が最優先だ。マキナ、案内してくれ!」


「モチのロンさ。積もる話もあるからね。話は地上に戻ってからだ」


 命あっての物種。マキナに案内を頼めば、快く承諾し、出て来た地下へ続く階段へと進んで行く。

 伝えるべき事、教えて貰う事も沢山ある。細い空間の地下階段を降りて行く中、また爆発が起きて……


「しまった!」


「マイマスター!?今、お助けします!」


 最後尾を走っていた自分の前で天井が崩れ、みんなと分断されてしまった!

 絆が助けようと、目の前の落石を壊そうとするので、自分は──


「絆、先に行け!」


「しかし!!」


「先に行ってくれれば、自分も絆達の位置を把握し易い。そうすれば、瞬間移動で向かえる」


 先に行くのを説明も含めて促し、足音が遠くなって行くのを確認した後。

 落石を背に座り込み、目を閉じる。瞬間移動をするにしても……魔力と霊力が足りんからな。

 少しでも力を回復させて、向かわねば。そんな思いも虚しく、爆発音は徐々に近付いてくる。


「一か八か……左腕のライン、七本を胸部に移動!!」


 運任せ……いや、確信を持ち、左腕にある七本の線を胸部に移動。

 そうしてる間に、連鎖的に近付く爆発と落石──魔力や霊力でバリアを作るもそれは弱々しく。

 爆発と落石に砕かれて……そこから先は、覚えてない辺り……意識を失ったのかも知れない。

 ただ、分かる事は一つ。誰の助けも無く、逃げ道も無い。それだけは、確かだった。




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