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ワールドロード  作者: オメガ
四章・just believe in your eyes
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再戦・最狂の欠片

 『前回のあらすじ』

 身を挺してピンチに颯爽と駆け付けたのは、男勇者候補生(フェイク)のパーティーだった。

 女版トリックのカーリにそっくりな容姿を持つ、青龍のお面を被った子に本名と役職を言い当てられる。

 攻勢に出て、逆にフェイク達一行を助ける事に成功。自分達だけで倒すのを見届けて欲しい。そう伝えると承諾。

 問い掛け、返答し、ぶつかり合う中。黒き海へ引きずり込まれ、グラビトン・アーマーを装備し水中戦へ。



「バリアー展開──こっ、これは?!」


 上から無数に降り注ぐ魔力の砲撃を防ぐ為、両肩に装着されてあるエネルギーアンプに魔力を込め。

 薄緑色の球状バリアを張り防いでいる。のだが……攻撃を防ぐ程に穴が開き、素通りしてくる!

 分かったぞ。この砲撃の一発一発が、空間湾曲を引き起こす能力付与の攻撃なんだ。

 回避以外なら命中箇所に小さな穴を作り、命中する程相手の防御力を部分的に奪うって訳か。


「オレ……サマ、達。同じキョウグウ、子供──すくう!」


「やっぱり……カーリタース。お前は闇の欠片が一人、無垢なる道化師……!」


 潜行して来るのはトリック──ではなく、無貌にして虚空の存在・無垢なる道化師。

 両腕のタービンを真上に向けて高速逆回転。発生した渦で砲撃と奴を巻き込み。

 自身の技をぶつけようとするも……渦は奴を避ける様に左右へ分かれ、返した砲撃も予想外な方向へ。


「無駄……無駄無駄無駄無駄無駄オラオラオラオラオラァ!!」


「時を止める吸血鬼か……オラオラ高校生か。ハッキリしろ……!」


「ヒャッハッハッハッハ!!」


 上から降下しながら繰り出してくるラッシュ……だが、私との距離は優に三十メートルは離れている。

 声の振動が黒い液体を通し……此方まで響いてくるものの、ツッコミと対処が色々と間に合わん!

 届く筈の無い腕が伸縮自在に伸び、耳が痛くなる程の狂った高笑いと共に、砂埃が舞い始めた。

 しかし……これはチャンスだ。両膝を曲げ、脚のタービンを利用して砂埃の煙幕から高速で離脱。


「行け……シールド・ビット!!」


 背中のアームに繋がった、七枚の小さな長方形板を次々飛ばし、迎撃に向かわせる。

 ビットによる四方八方からの連携射撃、魔力刃を放出しての連携攻撃。

 まあ。幾ら攻撃したところで、攻撃の軌道を歪められて奴に直撃はせんがな……


「歪めて──守リ、助けル!その為の、ネバーランド!!」


「ストレス社会になった人類を救済する……その心意気は買う。だが……規模を、人数を間違えたな」


「救ウ、救う、救ウぅ!!全ての人類に呪いを、全ての歪んだ大人達に矯正をぉぉ!」


「コイツ……そうか。お前はそう言うオメガゼロと言う訳か」


 黒き海に溶け込み、連続転移を繰り返して此方の前へと接近し殴り込んで来た……

 私も負けじと殴り込み返すが──やはり左拳は軌道を歪められるも、高速回転するタービンだけは別。

 奴の叫びと共に繰り出される拳を次々弾き、返答する時間と勝機を見せてくれた。

 改めて痛感する……コイツもある意味、被害者側。その呪縛から解放する為にも……負けられん。


「お前は気付き、受け入れるべきだった……子を求める者、求めない者の存在を」


「許さん……赦さんユルサンゆるさぁぁぁん!何故僕達を産んだ?!どうして私達を虐げた!!」


 シールド・ビットを操り、再度四方八方から攻撃を仕掛ける。目的は──不利を押し付ける為。

 ビットで砂場を撃ち、砂埃を舞わせ……先行して歪む場所を見切り、両脚を開く形で屈んで回避。

 即時にタービンを回し、回転し足払い。続けてバックスピンの要領で腰・顔の順に蹴りを当て。

 腹に右脚を一気に振り下ろしフィニッシュを決め、即座に離れる……矢先。右脚を掴み、叫び出す。


「ジェノサイド……サンダーボルト!」


「こ、コイ──!!」


 頭部に魔力を集中させ、駄々子の様に頭を振りながら……黒と紫の稲妻を見境無く放電。

 以前は放電する本数が二本だったのに対し、今回は十本!

 左足で奴の顔を執拗に蹴り、離れるも暴れ狂う稲妻を全て避ける事は叶わず……三回、受けてしまった。


「放電……湾曲、歪め、放電!」


「くっ……ば、バリアー展開!」


「サンダーボルト・スプリンクラー!」


 少し痺れている間に、無垢なる道化師は放出する稲妻を湾曲させて自らに向けたと思いきや。

 更に横向きで高速回転させる様に歪め、そのまま再度放電して来た……っ!!

 文字通り、稲妻を四方八方へばら蒔くスプリンクラー。タイミング的にも避け切れん。

 此処はビットを戻してバリアを展開。防ぎはするものの……いつまで持つかどうか。


「収束、最大!」


「流石に、これ以上は……っ!!」


 バリアで防いでるのを確認した直後。私に向けて暴れ狂っていた稲妻を一本にし。

 最大出力で放射。此方も最大出力で十数秒は耐え凌ぐも……アンプが限界を迎え爆発。

 続けてビットを一点に集め、防いでいる内に左側面へ退避──した瞬間、ビットは全て爆発。


「チッ……アンプを二基、シールド・ビットを一度に全て失うとは」


 これで射撃武器の威力が大幅低下。バリアも使えず、ビットを使った遠隔行動も不可。

 残された武器は──四肢にあるタービン、右手と腰に装備したレヴィアタン・ユニット。

 護符や匕首などは現状、使えない。地上へ戦場を変える他、勝機は低いまま……か?


「俺達は──金づるじゃ、ない!」


「それを伝えるべきは……っ、私じゃ、ない」


「自分達にも、叶えたい夢と願いがあるんだ!」


 フェイントを含んだ連続転移で私に飛び掛かり、押し倒すと──

 先程までの猛攻が嘘に思える様な……力の弱い幼な子が懸命に体で意見する様に。

 握り拳も作ってない両手で、執拗に叩いて来た。それは……そうだろう。

 コイツは、この無垢なる道化師は──毒親に育てられたり、命を落とした子供達の集合体。


「世間ではそう言うのを……親ガチャと言う輩も居る。毒親の行動を、世間の常識と認識する子供も」


「だかラ、変えル!心や思考、言動すらも歪めて!」


「そのやり方はっ──お前達が忌み嫌う、毒親と変わらん!!」


 子は親を選べない。その言葉から派生したと思わしき、親ガチャと言う言語。

 毒親が毒親になる子供を増やす。それを阻止し、一般常識化を防ぎ、変えたいと言うも。

 お前の発言はもはや……負の連鎖。それだけでも、私は止めねばならない。

 左手で奴の顔を掴み寄せ、両肩の砲身を相手の両肩に押し付けてフルチャージ。


「この距離では歪めれまい……一か八かの大勝負。我慢比べと洒落混む!」


 最大まで溜めたエネルギーを直接ぶつけ、行き場を無くし──私達は大爆発に飲み込まれた。

 その対価に……砲身は両方とも損壊、第三装甲は中破。接射の反動で奴を斜め上方へ吹き飛ばす。


「この間に、地上へ──くっ、鎖!?」


「無駄な事を。このフェイトチェーン(因縁の鎖)かラは、誰も抜けラレない!」


 そろそろ、稼働制限時間が限界に近い。タービンを逆回転させ、一気に浮上……と言う時。

 暗闇の中から紫色の鎖が、私の胸に向け一直線に飛来。確かに刺さったのだが……痛みはない。

 道化師の言葉と右手より伸びる鎖から察するに、親子の縁や因縁を形にした鎖と見た。


「そして鎖を伝い、デトラの内側かラ引き裂け──メメント・ペイン(思い出の痛み)!!」


「こ、これ──はッ!?」


 鎖を伝い、私の心に直接流し込まれる……毒親に育てられた子供達の記憶、吐き出せなかった言葉。

 殴り蹴られ、火の点いた煙草を押し付けられたり、男や女を招いてる間は外へ放り出され。

 挙げ句に殺される。チェーンデスマッチの状況で、精神に直接攻撃を受けるのは……流石にキツい。

 ただ思い出を流すのではなく、心身的苦痛を対象相手にも与えてくるのかっ!


「水を、伝い……響け!!ハウリング・ペイン!」


「何も聞こえ──ギィィアァァァ!!」


 精神攻撃には、精神攻撃……今受けているダメージに私の被弾を上乗せ、特殊な音波を放つ。

 水の方が、空気の四倍から五倍の速度で伝わる。こうなったら、我慢比べの再開をするしかない……

 私の精神が砕けるか、奴がギブアップするか……持久戦に持ち込まれると、私の方が圧倒的に不利だが。


「嫌だ嫌だ嫌だぁぁ!」


「チャンスは今しかない……ストレイト・スピン!」


「歪め、歪め歪め歪め、歪めぇぇ!!」


 被害者の集合体故か、早くもギブアップとして技を解いた隙を狙い──

 白蛇の尻尾・先端パーツを高速回転させ、振り回して鎖を砕き。

 意識を尾に集中させ、先端部分で何度も突く内、奴は懸命に歪めようと能力を使うも歪まない。


「酸素が底を着く前に、一刻も早く浮上しなくては……」


 バイザーが酸素メーターの残量が少ないと、warning(危険)の文字で知らせてくる。

 右手に装備したレヴィアタン・ヘッドを足下に向け、水を噴射して一気に急上昇。


「戻って来たました!」


「やったの?」


「っ……ACSコール、アルト!」


 水圧が強過ぎたらしい……水面を飛び出し、地面に転がり落ちた。

 男勇者候補生パーティーの、女僧侶と女戦士が話し掛けて来たそうだが、今はそんな暇はない。

 フュージョン・フォンに音声入力で、別の第三装甲へのアーマー交換を申請。


「トリニティ・フュージョンも切れたか」


「安心しろ……私とこのユニットはまだ、やれる」


 アーマーチェンジと同時に、融合も解除されてしまった。もしかすると……

 担当する第三装甲以外は、融合が強制解除されるのかも知れん。

 とは言え、まだレヴィアタン・ユニットや静久はやれる。さて、古代の騎士(アルトリッター)でやれるかどうか……

 左胸に斜めで備え付けられた鞘から剣を引き抜き、黒き海から飛び出す相手に向けて身構える。


(違う、宿主様!アレは無垢なる道化師じゃねぇ!!)


 水面から真っ直ぐ上に飛び出したのは──紫色の魔力弾。上空で止まったと思いきや。

 風船に空気を入れる様に大きく膨れ、弾けると同時に地上目掛けて弾幕の雨が降り注ぐ。




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