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ワールドロード  作者: オメガ
四章・just believe in your eyes
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呪いvs心の病

 『前回のあらすじ』

 魔神王軍の配下・三騎士相手に苦戦を強いられるも、新技ハウリング・ペインで吹き飛ばしに成功。

 直後、本物の紅と黒の混血龍神族・混血仇が乱入し襲われるが……三騎士の邪魔をしたと判断され。

 龍神族の少女にされてしまった。そんな中、ウォッチのパーツを取り戻して変身した姿は──

 右半分だけ第三装甲を装備と言うもの。しかしその力は三騎士を軽々しく追い返す程であった。



 十分掛けて全ての小道具に仕込みを終え、コートの内側に収納しつつ、恋も回収。

 追加で十分使い、フュージョン・フォンで先程の半身強化っぽい状態やバックルを調べ終えた。


「そうか。自分はその場所で倒れていたのか」


「おう。さあ、スレイヤー!巴達が捕まってる場所へ向かうぞ」


「あぁ。けど、捕まっている場所は──!?」


 今にも一人で探しに行こうとする大将に、場所を伝えようとした瞬間──

 それを阻止せんと空間を大きく歪め、その中から伸びて来た細くも黒い手に捕まれ。

 そのまま歪んだ空間の中へと引きずり込まれ、着地したその場所はある意味、縁深い地……


「終焉の地……また此処か。確かに固形物にとっての終焉かも知れんが」


「何故だ?何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ!?何故俺様の人類救済計画の邪魔する、デトラァ!」

 

 何処からともなく聞こえてくる、怒りを含んだ男の声──に反応し。

 周りの地面から飛び出しては、此方に掴み掛かってくる無数の黒く細い手。

 自分達を求める気持ちは分かるが……此方としては、また取り込まれるのはゴメンだ。


「ライトニング──ラディウス!」


 両腕を交差させた状態で高速スピン。そのまま魔力を腕に充填したら放電。

 四方八方に放電を放ち、自身も雷を纏う。これもトリックとの戦闘で閃いた自己防衛技!

 黒く細い手の群れは稲妻に貫かれ、消滅。これは無理と判断したのか、文字通り手を引く手の群れ。


「此処に連れ込まれて、幾らか思い出した。トリック──お前は何故、生きている?」


「何故?何故だとぉぉ?!俺様は!!……あれ?なんで、生きてるんだっけ?」


(ちょっと待って。ねぇ、何を言ってるのよ)


 因縁と言うか、意味深いと言うか……何故か終焉の地と呼ばれている此処は、自分にも影響を与える。

 今までは理解出来ず、感知も出来なかったが──今は分かる。自分に訴え掛けているんだ、此処は。

 その悲痛な訴えから、自分はトリックに質問を投げ掛けると、奴は始めこそ怒るも。

 次第に地面から現れては頭を抱え、悩み出す。霊華も理解出来てない様子だけど、今は……


「この空間が自分に訴え掛け来る。お前に関する情報、欠けた記憶の一部を」


「黙れ!!ウチは正常や──っ!ま、まね(駄目だ)へじねぁ(苦しい)!」


(王……コイツ、方言ガ滅茶苦茶ダ)


 話し掛ければ話し掛ける程、頭痛は増している様子。まねは青森、へじねぁは秋田……

 少なくとも、この世界では方言は既に滅びて標準語がメイン。けど、個々それぞれ違うがな。

 さて……自分達の所から盗んだ万華鏡仕様の国宝、無限鏡を奪い返すとするか。


「今日こそお前が使ってる鏡、無限鏡(むげんきょう)を返して貰うぞ」


「んーにゃ、ちごよ!私んのや!」


 簡単に身構え、トリックに走り出すものの……知らない方言に合わせての性別変化も、調子が狂う。

 多分──いいや違うよ!私の物!と言ってるんだろう。思わず足を止め、溜め息を吐く。


「俺様に変われシバザクラ!くくっ……不必要な命がまた俺様、ロベリアに右眼も潰されに来たぜぇ!!」


「解離性同一性障害……心を守る為に多重人格を産み出す心の病とは聞くが、コイツは!」


(明確な悪意と敵意を持ったサイコパスっ?!今殺らなきゃ、此方が確実に殺られるわ!)


 交代した人格に合わせて身長・性別・声すらも変化させ、執拗に両手で右眼を狙ってくる。

 向けられる敵意・悪意・殺意。その全てが眼を通し、肌を突き刺し、心臓を握り絞める程に恐ろしい。

 慈悲や躊躇いは無く、有るのは過剰な程までの自己防衛意識。コイツ……どんな生活をしていた?!

 両腕を弾き上げて小さな隙を作り、足払いから攻めに転じようとした瞬間──


「うおっ!?」


「人肉、久し振り!!イタダキマース!」


(宿主様、今助けるぞ!!チッ、にしても……トリックに人肉を喰う習慣はネェぞ!)


(コレハ奇病ノ一種、ウェンデゴ症候群ダ)


 突如飛び掛かって来ては此方を押し倒し、足で両腕を固定したまま。

 物騒な言葉を吐いたと思いきや──首に噛み付かれ、血管諸共肉を喰い千切られそうな時。

 右肩から生えては伸びるゼロの右拳が、トリックの頭を強打し怯ませたら。

 続け様にヘソから左拳を素早く上に突き上げ、ピンチを救ってくれた。今のは……かなりヤバかった。


「ウェンデゴ症候群って確か──人間が徐々に食べ物に見え始め、猛烈に食べたくなる病気か」


「ルピナス……ニ、ク……おおぉぉぉ!!」


 トリックを打ち上げてくれた間に体勢を整え距離を取り、病を確認していると。

 猫の様に両手足で着地。自己紹介序でに飛び掛かっては、今度は部位を選ばず噛み付こうと躍起気味。

 男から女、女から男……幾ら視覚情報がそうとは言え、幼女姿で噛み付いてくるのは生理的に無理。


(私達が外に出て、一緒に手伝うべき?)


(止メトケ。今外ニ出ルノハ愚策ダ)


(だな。さっきみたいな時、救助も遅れちまうし)


 多重人格に精神を蝕む食人の病気持ち?!……仕方ない。自然再生するまで待つ予定だったが──

 人間達に掛けられた呪いを利用して、再生速度を劇的に飛躍させる他無い。

 左目の眼帯を外す最中、真正面から噛み付かんと迫るトリックの口にデカイ石を捩じ込む。

 大急ぎで取り外し、体を駆け巡る呪いを左目に集中。すると細胞が集まり、潰された左眼が完全に再生。


「左眼よ、奴の古き過去を映せ!」


 顎が外れるまで石を捩じ込んだ為、石を外そうと懸命に行わせる時間稼ぎは出来た。

 そうして復活した左眼に映った光景は──別の意味で人間の闇を視る事となる。



『お嬢ちゃん。どうしたんだい?村の中とは言え、こんな夜中に歩き回るだなんて』


『チコ……お母さんに言われたの~』


『言われた?あぁ、親御さんこんばん──』


 俺が加入する前の話。担当する村の住民達から受けた仕打ち……それはある意味、子供を利用した罠。

 年端も行かぬ子供で相手を引き付け、注意が逸れた瞬間。農具を持った村人全員で袋叩き。

 まあ確かに、挨拶したら袋叩きで返されるのはキツい。しかもそれは、大人の村人全員での行動。


『何が永遠の子供化計画よ。現実も見れない夢想家が!』


『ワシらまで子供になったら、誰が孫達を守るんじゃ!』


 吐き出される言葉は至極真っ当で、子供を守り育てる立場の意見。

 ただ……キツい言葉はまだいいとしても、暴力で訴えるのは大問題だ。

 倒れたトリックに大人達は、石を投げつけ杖で叩き、家畜の糞さえも感情のままにぶつける始末。


『誰も理解してくれないなら……否定するのなら……私達が理解し守ってあげる。貴方(トリック)を』


 自己防衛の末に産み出された別の人格。それに呼応する様に女のトリックが生まれ──

 その村は一夜も経たないまま、全滅した。村人達の因果応報と言うべき……なのだろう。

 されど、理解を求めて理解されたとしても。人と言う存在は理解される事に怒りを覚える。

 理不尽──まさにその通り。更には真実を自ら歪め、都合良く湾曲もする。それが……命。



(気が付いたか、宿主様。五分程意識が飛んでたぜ?)


(その間体を使わせて貰ってたけど……攻撃が歪められて当たらないのよ)


(ソノ上、コロコロ人格ヤ呼吸ヲ変エラレテハ、見切ルノモ一苦労ダ)


 意識が戻ったと思えば、女のトリックが振るうサーベルを真剣白刃取りしている真っ只中。

 何が何だか分からないが、このまま押し返そう足腰に力を込めて踏ん張──ッ!?


「酷いよスノードロップ。コイツを殺るならこのボク、セキチクにもやらせてよ」


(トリックが……二人?!もしかして、分身!?)


 踏ん張る瞬間、背後からチョークスリーパーを仕掛けてくる少年姿のトリック。

 突然の出来事に霊華の頭が混乱中。確かに分身は使うのは知ってるけど……

 性格や体型に身長、声すら全くの別人。前後からの攻撃、理解し難い現状を前に思考が纏まらない。


「ボク達の能力はペテンとかを意味する『トリック』、それにコレが加われば」


 背後で腕を使い首絞めを行っている少年、セキチクが右手の平を此方の眼前に向ける。

 その手にあったモノは……天井の(しわ)とかによくありそうな人の顔。だけど──

 人の顔だけ、と断言は出来ない。人や蛙にも似た顔には、腫れ物みたいなぶつぶつもあり。

 正直、グロテスクの一言。しかも……その顔達はニヤリと微笑み、意思を持つかの如く笑い出す。


(コレハ……人面瘡(じんめんそう)ダナ。妖怪ヤ奇病ノ一種トサレテイル)


「ボク達と言う別人格が活動する体を、増やす事が出来るんだよ」


 スノードロップと呼ばれた女のトリックが離れたと思えば、ソイツの胸から顔に人面瘡が移動。

 自ら地面へ飛び出して潰れた。そう思った矢先、潰れた人面瘡は驚異的な速度で。

 細胞分裂を繰り返しては骨や筋肉を構成し、瞬く間に三人目の男版トリックが誕生。


「遠い昔、抜け出したデトラを追い掛けて挑んだ際。惨敗して能力の一部を破壊されたわ」


「ボク達は魔神王様からギフトを貰った。その力は、破壊された部分を補修し強化してくれた!」


「だから、俺様達の命令を聞かねぇ不要な生命は──排除すんだよ。同じ轍を踏まない為になぁぁ!!」


 首を絞めるセキチクの腕を力尽くで引き離し、前方のロベリアに放り投げるも。

 受け止められ、背の高いロベリアから前に一列で並びながら話すトリック達。

 クソッ……一体幾つの人格があって、何人まで増えるんだ?情報が圧倒的に足りない。

 道具を使うにしても、相手の勢力と数は知りたい。同じ轍云々と叫んだ直後、迫って来──


「何だ……視界が、歪む?!」


「何も歪める力は、防御に使うだけじゃないんだよ~」


「さようなら、デトラ」


「セキチク、スノードロップ。そして俺様、ロベリアの三倍──ホロコースト・(大虐殺の)ボム(爆弾)!!」


 突然酷く歪む視界は捻れ、渦巻き、時には波を打つ。平衡感覚すら危うい中。

 三人の声が聞こえ、別れの言葉を耳にした後……歪められた視界の中に、無数の光球が迫る!

 逃げよう。避けようとするも千鳥足で上手く動けず、尻餅を着いてしまう始末。

 魔力障壁や霊力での結界──いや、防ぎ切れない。そもそも、視界がこれでは無理だ!!




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