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ワールドロード  作者: オメガ
四章・just believe in your eyes
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ハウリング・ペイン

 『前回のあらすじ』

 不思議な夢を夢を見た後、目を覚ませば桔梗が傍に付き添っており、まだ眠っている様に言われて眠る。

 桔梗との出会いを夢に見て思い出す中。本来は無い言葉を言われ、それが複製を作る行程だと理解。

 改竄しようとする匂いを破壊し、目を覚ますと今度は大将こと小山太郎に担がれており。

 巴を救って欲しいと頼まれ、原因の下へ向かう一行の前に、三騎士と複製達が立ち塞がった。



「此方ですわ!」


「くひひひっ!」


「邪魔……纏めて、斬る」


 三角形の陣を描き、連携のれの字すら見せない攻め方に予想は六割外れ、不意も突かれ。

 顔や体にはミミツから受けた小さい掠り傷。コトハやシナナメの攻撃は全て避けても。

 精神的な疲労を幾重にも積み重ねられ、体力を奪われる始末。


「マズイな……三騎士相手に武術が悪手とは」


(そもそも、端から連携する気が無い分、余計に行動が読み難いのよね)


 武器持ちとは理解しているが──文字を書かれたらアウトのコトハはまだギリセーフでも。

 斬られたらアウトのシナナメは、刀のリーチも当人の身長位長くて、迂闊に近寄れん!!

 その上味方を巻き込む攻撃も多く、互いに邪魔をし合ったり、連携に繋がったりで判断がムズい!


「此処で無駄な足掻きをする必要が、何処にあるんですの?」


「くひひひひっ!そうそう。所詮、百年ちょっとで死んじゃうんだから!」


「早いか遅いか……違いはその程度」


 次々と入れ替わる様に、時には邪魔のし合いを行いながら三方向から攻めてくる三騎士。

 そんな中、ミミツの──人外故の認識違いから来る発言や。それに続くコトハとシナナメ。

 二人の発言を聞いた途端……様々な年代の人々が、家族や友人との死別に泣く姿が脳裏に浮かぶ。


「ふざ……けんなっ!!」


(ふざけるんじゃ……ないわよ!!)


 心が……胸の奥が深い悲しみに締め付けられ、侮辱し嘲笑う言葉に怒り、声高に叫ぶ。

 その感情に呼応する様に、腹の底から吐き出した言葉が……ソレであり。

 悲しみと怒り。二つの感情が心の奥底にある何かに触れ、覚えた技を呼び覚ます。


「いつか訪れる結末を……心に響く痛みと怒りを思い知れ!ハウリング・ペイン!!」


 息を大きく吸い込み、足下へと向けて放つ叫び。地面を反射し、周囲全体に影響を与える。

 近くに居た三騎士は咆哮に吹っ飛ばされ、複製達も耳を塞ぎ、足を止めて踏ん張る程。

 同時に──周囲と標的の位置を把握したが……成る程な。これは思わぬ収穫だ。


「ッ……だから、どうし、た」


「影が掻き消されましたが──この程度、問題ありませんわ!」


「クッソ……三騎士相手にぁ、この技は力不足か」


 しかし、期待していた程の効果は見受けられず、少しの足止めが精一杯。

 だが……動きが若干遅くなっている。思い切りが無くなった。とでも言うべき感じだ。

 二人の猛攻を避け切った時。コトハが攻撃して来ていない事に気付き、視線を向けると……


「……ッ!!」


(あの子。震えてるっぽいわね)


 足を止めて、自身の体を抱き締めながら恐れる様に顔を歪め、震えるコトハ。

 もしやこの技は……そう言う効果か。使い方と相手を上手く選べば、予想以上の効果にもなる!


「見付けたぞぉぉおお!!侵入者めぇぇ!」


「この声は──ッ!?」


 怒号を孕んだ野太い叫び声が耳に届き、声がする偽の茜空を見上げれば。

 赤黒い龍神……突入時に倒した混血仇が此方に飛び掛かってくる。んだが……

 少し──老けたか?三、四十代位に見えるんだが。されどそんな考えを遮る様に肩を捕まれ。

 飛び掛かる勢いもそのままに押され続け、チラッと見えたモノの側で姿勢を整え巴投げ。


「運良く三騎士の陣形から抜け出した上、コイツを取り戻せるとはな」


 オトギリソウが咲き誇るエリアに投げ込んだ後。ウォッチとパーツを拾い、左手首に装着。

 ルーレット……まあ、ダイヤルか。ソレも拾うと裏面にも色があるのに気付き、見てみると。

 表面と同じ配色に加え──緋に頭部と胸、黄が右半身。青は左半身で紫に下半身が描かれている。

 試しに裏面で嵌めるも、問題なく入る。操作をし黄に設定するが、何も反応がない……どう言う事だ?


「下等な侵入者風情が!!この楽園を穢しに現れおっ──な、何故……だ?!」


「我らの任務……その邪魔をした」


「ふひひひっ。アンタ──うざい」


「それでは、仕上げは私が」


 花達を踏み付けて意気揚々と出て来るも、味方と思っていただろうシナナメに刀で斬られ。

 続け様にコトハに大筆で何か文字(呪い)を書かれ、トドメにミミツの影に取り込また……

 何度か三騎士とは戦っているが、こうして間近で能力を見るのは初めてだな。


「貴様の概念。私が斬った」


「ンははははは!!アタシ特製、精神と心を蝕む呪術をタァ~ンと味わいなぁ!」


「その醜いお姿、私が作り替えて差し上げますわ。誰にも思い出される事の無い恐怖を添えて」


 三騎士全員の能力を受け、呑まれた影から吐き出されて来たのは──幼い少女と言うべき存在。

 ……あれ?この子は何故、ミミツの影から吐き出されて来たんだ?取り込まれたのは確か……

 誰だっけ?記憶にモヤと言うか、濃霧でも発生したような感覚だ。思い出せない。


「な、何ですの?!この、か弱い姿は!」


adieu(アデュー)。貴女には、オニユリとキンセンカの花束を送り付けて差し上げますわ」


 何故か自身の姿に驚き戸惑う龍神の少女に、ミミツは二種類の花を包んだ花束を投げ渡す。

 意味は確か……前者が嫌悪、後者は失望と悲観。永遠の別れを意味するadieuと何故言ったんだ?


「次は──貴方の番ですわ」


「悪いな。キャラメイクは間に合ってるし、もう変える気は無いんだよ!!変──身!」


 影の魔女に指を指され、宣言されるが……それを真っ向から否定し、理由を言い拒む。

 フュージョン・フォンを右腰に差し込み、両手でバックルを左右に押し広げ、展開。

 バックル・ウォッチ・フォンが一斉に起動。パワードスーツと第三装甲が自動的に装着される。

 のだけど……第三装甲(フォックス)は右半身にのみ装着され、三位一体融合まで済んでいるのか。


「何なんだ?この、限定的な装着は」


「はっ、半端な装備でやんの!!ふっ、ふひひひひひっ!」


「例えどの様な姿でも。私達が手を抜く事はない」


 通常とは違い、最近の限定融合腕(フュージョンアームズ)を連想させる右腕だね。

 狐の頭部を真似たコレは、どう言った力を発揮するのか。それすら未知数……不安はある。

 けど、不安や周囲の声に呑まれてたら、ただ良いように利用されたり、巻き込まれて死ぬだけ。


「死ぬのは──嫌だなぁ。リトルボーイに焼かれたり、戦争に巻き込まれて殺されるのも」


「くひひっ!遂に頭がイカれたっぽい?」


「その発言は理解に苦しみますわ。戦意を失ったのであれば──えっ!?」


 死ぬのは……誰だって嫌な筈だ。それでも死にたい奴は、何かしらの理由があるんだろう。

 僕は……僕達は、生きたい。魔神王に会う理由があり、()を浴びても成すべき事がある。

 さて──と。言葉による足止めも済んだ事だし、仕上げと行こうか。


「さあさあ、お手を拝借。狐による狐釣りは、一本締めで幕引きと行こう。いよぉ~……ポン!」


「──ッ!!」


 三騎士に向けて両手を広げ、頭の上でケモ耳が動く仕草を見せてわざと気付かせる。

 三人が頭を触れば狐耳が、腰からは尻尾が生えれば仕込みは完了。

 一本締めで両手を叩けば、狐に化かされた三騎士は即縄に縛られ、身動きが取れずダウン。


「狐は狐媚(こび)狐狸(こり)が得意でね。狐と(きっつね)悪夢(たっぬき)の化っかし合い」


 (おど)けた言動で三人組の周りを飛び跳ね、右腕の狐頭──その口から出た大きな筆。

 跳ねる内に筆先から墨の代わりに狐火が零れ落ち、円形に並んで行く。

 狐火で作った円の真上に、狐尾筆で特定の陣を描けば……はい。狐と巫女の合同転移陣の出来上(でっきっあっ)がりっ!


「こ、こんな……戯けた輩に、影の魔女たる私が負けるだなんて!!」


「狐につままれた。と思って諦めるんだね」


「……次はあの悪魔、ルシファーとの戦いを望む」


「そうだねぇ~。それなら今度は一人で来るといいよ。お互いに邪魔されるのは嫌だし」


 余程悔しかったか、屈辱だったんだろうね。泣き喚きながら転移されて行ったよ。

 シナナメはルシファーと戦いたいっぽい。初めて戦った時の決着をつけたい……のかな?


「この術ッ──くひひっ、決ぃ~めた。巫女と狐のアンタ達は……絶対、アタシが呪い殺してやる!!」


 強制転移に抗い、僕と霊華に向けて呪殺すると宣言をした後──

 巫女堕ちコトハは僕達の前から姿を消した。……救うにしろ倒すにしろ、僕達がやるしかないね。

 バックルを閉じてフォンも取り外せば──よし。大将を助けないと……えぇ~?


「おう。そっちも終わったか!」


「たいっ、大将ぉ~……マジかぁ……」


 不確定要素と不利を乗り越え、やっとの思いで三騎士を退けたのに対し。

 大将は桔梗やシオリの複製達を無傷で捩じ伏せ、此方を観戦していたらしい。

 思わず落ち込んでしまったが……そんな事をしてる場合じゃない。立ち上がり、目標の所へ向かう。


「コレか?」


「あぁ。パッと見は他と変わらんが──魔力を感知すると分かる。根が他に比べて太い」


 無数の欲望の花が咲き誇る中。目立たない様に一つだけ小さく、弱々しい花がある。

 魔力を探知すると……かなり深い位置に株があるっぽいな。乱暴に茎を握る様に掴み──

 破壊のエネルギーを流し込む。根を辿り株へ届いた瞬間、大きな揺れに襲われた。


「ヤったのか?」


「一応な。後は大株から他の小株にエネルギーが行き渡れば、この楽園諸共崩れ去るだろうよ」


「なら、崩壊するまでの間に決着と救助をするだけだな!」


 これは感覚的なモノだが……欲望の大株。コイツ、この天空島を支える役割もあるっぽい。

 小株は大株からエネルギーを分け与えて貰ってるから、仮に根を切り離しても衰弱死は確定。

 後は大将が言う通り──桔梗達を救い、トリックをしばき倒し。マキともう一度、会うだけ。

 タイムリミットは恐らく……一時間が限度。それ以上は脱出に支障が出る。


「恋、大将!仕込みをするから、手伝ってくれ!」


 次は必ずトリックに勝つべく。コートを脱いで小道具をぶちまけ、恋も呼び出し。

 小道具全てに手分けして仕込みを行う。今回持って来た小道具は──匕首(あいくち)が十本。

 護符が二十枚、そこら辺で拾った小石が少々と、今しがた小さなゴミ袋へ詰めた砂が五袋。

 これに所持金と装備品で奴を攻略するしかない。……金貨は勿体無いから銅貨だけ使お。




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