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ワールドロード  作者: オメガ
四章・just believe in your eyes
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心配

 『前回のあらすじ』

 ニーアとヴァイスの後を追う中。ピッタリと横に付いて来る男版のトリック、タース。

 彼女達の下には女版トリックのカーリが……男と女のトリックが言う言葉はいずれも正反対。

 タースとタイマンで戦うも──左眼を潰されると言う結果になり、トドメとばかりに迫られるも。

 桔梗とシオリの機転で窮地を脱出。トリック・カーリの存在を伝える前に、意識を失ってしまう。



 晴天の青空を覆い尽くす様に、巨大な闇が広がって行く光景を……何故か覚えている。

 数々の不安を口に出し、周囲に当たり散らす女性達。絶望し、世界の終わりと悟る男性陣。

 皆既日食ではない。何故なら──闇から女性の声が聞こえたから。


『地球人類よ。汝らが抱える数多の苦痛、苦悩から救う為、我々は遠い宇宙からやって来た』


 開口一番、奴らはそう答えた。そして始まった……人類滅亡──いや。全人類救済の悪夢が。

 どれ程寝ていたのだろう?甘くて良い匂いに呼び起こされる形で意識が戻り。

 残された右目を開き、後頭部にある感触と視界に捉えて口に出した言葉は……


「……桔梗?」


「うん?何か用?」


「南半球がデカくて桔梗の顔が見えなイイッタイメガァァァ!!」


 恐らく、桔梗は膝枕をしてくれてる。呼び掛けると優しい声で返してくれた為。

 黒衣に包まれた双子の南半球の存在により、桔梗の綺麗な顔が見えない。そう言い切る直前──

 両手で眼を強く叩かれた……馬鹿正直に答えたけど、よくよく考えたらセクラハだわな。


「他のみんなは?」


「大丈夫。ニーアとヴァイスは治療に疲れ果てて隣で寝てるし、シオリは小屋の外で見張り」


 両目に手を置かれたまま、ふと思った疑問を投げ掛けると……

 諭す様な優しい口調で答えてくれた。変な夢を見たからか。

 安心の余り、長く大きな溜め息を吐き──ニヤリと笑いながら言葉を紡ぐ。


「懐かしいな。膝枕やこう言ったやり取りもそうだが……死に物狂いって言うのも」


「ふふっ。アンタがそう言う時は──何か閃いた?」


「おう。新しい技を幾つかな」


 潰された左眼を確認する様に、目の辺りを触ると……医療用の眼帯の感触があり。

 それが懐かしさを思い出させる。毎度戦っては傷を作り、瀕死の重症も多々あったあの頃。

 その都度……命の危機に瀕する度、技や攻略法を閃き、成長して来たのだから。

 新しい技──とは言え、想いや考えの違いから武力による解決しか出来ないのが悔しい……


「もう少し寝てなさい。まだ夜も明けてないし」


「それじゃあ……お言葉に甘えて」


 久し振りに感じる、桔梗の感触。懐かしくも落ち着く匂い。

 心から信用する相手が膝枕をしてくれる中、ゆっくりと目を閉じる。


「強がらず、泣けば良いじゃない。何度そう言っても、アンタは私達の為に強がるのよね」


 心の中で消えず、時を伺いながら燻るとある感情。勝てなかった……桔梗達を心配させた。

 そんな自分自身が許せなくて、悔しくて、泣けば良い。そう言われた時──

 思わず涙が溢れ出たのを理解した直後。そんな情けない顔を見られたくなくて。

 右腕で顔を隠しながら、心の中で泣き叫んだ。今度こそ……みんなの為に。




『何?アンタもオレに喰われる為に来たのかよ』


『宿主様、間違いなくコイツだ。人里で依頼された、人喰い妖怪って奴は!』


 夢にしては……懐かしい記憶。人喰いを行い、積み上げられた骸骨と死体の山に座る桔梗。

 彼女との出会いは──赤い月夜の浮かぶ夜。ゼロ達の協力もあり。

 幾らか顔や腕に傷を作りつつも、押し勝った。そしたら桔梗は仰向けに倒れたまま……


『殺せよ……オレは生きてる価値も無い上、人間を喰うんだぞ?!殺して英雄になってみろよ!!』


『自暴自棄……ダナ。王ヨ、コンナ阿呆ニ付キ合ウ暇ハ無イ。俺達ノ目的ハ──』


 ルシファーの言う通り。心が暴走し、希死念慮(きしねんりょ)を通り越して自殺念慮を抱いていた。

 死にたければ他人(ひと)様の迷惑が掛からない所で死ね。そう言う人は居るし、思う人も居るだろうよ。

 自分も同じだった。水葉先輩を失って、自暴自棄にもなった。だから、自分は桔梗を──


『お前は馬鹿かぁ!?誰が神社の御神木に縛れって言ったよ!』


『死にたきゃ今直ぐ舌でも噛み千切れ!!でもさ……死ぬ前に、君の話を聞かせてくれないかな?』


『……はぁ?』


 泊めてくれてる神社の御神木に縄でキツく縛り付け、そう言ったのを……今でも覚えてる。

 あの時、君は怒るのもアホらしくなる程、呆れ返ってたね。それから──

 少しずつ教えてくれた。自殺念慮を抱いた理由や、自身がどう生きたいか?何が苦しかったかを。


『これで全部よ』


『そっか。それじゃあ──是非とも仲間になってくれ。自分には、君みたいな仲間が必要なんだ!』


『ハッ……だが断る』


 心に抱えていたモノを全て聞いた後、仲間に誘ったが……断られた。

 まあ数日後。ベーゼレブルが異変やら事件を起こして、自分達は無実を晴らす為に動き。

 最終的には敗北イベント的な感じだったけど──無実を証明。

 名もない彼女に桔梗と言う名前を与え、人と妖怪が暮らせる集落を作り、共に過ごした。


『分かった分かった。オレ──私も心配だし、アンタの仲間。百鬼夜行に加わってあげるわよ』


 その後は集落の人間や妖怪達に背中を押されて、指輪やロケットペンダントを渡し合ったよな。

 その時。笑いながら二人で誓い合った夢も、まだ叶えられていない。

 その為にも終焉達や魔神王すらも倒し、百鬼夜行を完成させなくては!!


『だから──焦る必要は無い。アンタが足を止め続けても、誰も文句なんて言わないわ』


『そうだぜ、宿主様。時には昔を思い返し、懐かしさに心を任せて休むのも必要だ』


「退け……俺達の苦痛(記憶)を、改竄しようとするんじゃねぇよ!!」


 高らかに笑う表情から一転。不気味な笑みを浮かべ、口から上が暗く赤く光る眼が見える。

 そんな口から吐き出す甘い言葉。懐かしさを理由に休めと言うが……それは出来ねぇ。

 漸く分かった。懐かしい匂いが脳を刺激し、幸せだった頃を呼び覚まし永遠に引き留める。

 それが本体から複製(レプリカ)を生み出し続け、ネバーランドを構築するシステムか。


「だが、残念だったな。俺達は『一にして全、全にして一』の存在なんだよ」


ability(アビリティ)(ツー)attack(アタック)、メモリー・ブレイク。Are(準備は) You Ready(出来たか)?」


 その当時は持っていない、左手首に付けていないウォッチを操作し、起動。

 ウォッチから流れる破壊のエネルギーが右足に集中するのを確認した後、右足を上げ──

 力強く地面を踏み砕き、ブーツから解放された力が稲妻となり周囲を焼き払う。


「流石は宿主様!!俺達の切り札はやっぱり違うぜ!」


「相性の問題だろ。さて、今ので夢も覚めそうだし──この匂いの大元を潰しに行くぞ」


「はぁ~……匂いねぇ。俺にはサッパリだが、大元の位置が判明してるなら叩くに限るな!」


 そう言われるのは……ちょっと、こそばゆいなぁ。まあ相性もあってだし。

 お陰様で『懐かしい匂い』も思い出したし、目が覚めたらさっさと大元の所へ行こう。

 昔──無限郷時代の憂さ晴らしも一つは出来るっぽいしな。次第に視界が光に包まれて……




「お~い!!さっさと起きろ~!」


 聞き覚えのある男性に呼ばれ、目を覚まし逆さま視点で話し掛けて来た人物を見ると……

 ストレンジ王国で一旦別れて以降、会えなかった冒険者ギルドのマスター──小山太郎。

 愛称は大将。何故こんな所を走ってるんだ?もしやトリックの変装かも……警戒を続けていたら。


「倒れていたから心配したぞ……そうだ!!巴を助けてくれないか?!」


「巴さんが……どうかしたのか?」


「この町に連行されてから少しずつ、小さい頃みたいな言動を始めたんだ!」


 聞いた話を纏めると……別のゲートが連動する形で起動し、時間跳躍に巻き込まれ。

 複製の龍神族に捕まり、此処に連行された。幾日か過ごす内、懐かしい匂いに呑まれた訳か。

 そんで原因を探し回る内、倒れていた自分を逆エビ固め的な担ぎ方のまま走ってる……と。


「心当たりがある。指示する方向に行ってくれないか?」


「流石はスレイヤー!そうと決まれば善は急げだ!」


 思い出した以上、この匂いの根源は全滅させなくてはいけない。そんな思いもあり。

 大将に進む道を指示し、走って貰う。自分で走ると、またトリックに見付かる可能性が高い。

 辿り着いた場所は……洋風の庭園。其処であちこちに咲く白に黄色が僅かに加わった花。


「やはりコイツか」


「知っているのか?」


「あぁ。自分が知ってるのが品種改良された物か、それともオリジンかは知らんがな」


 この花の名前は……欲望(グリード)。無限郷時代、幻想の地にアパテーが持ち込んだ花。

 お陰で地域全体が大混乱。コイツの花粉を吸うと、全ての欲望が引き出される代物。

 けど今回のを見るに、効果の違いや効き目にも差がある。何はともあれ、処分だ処分!

 大将から降り、根源となる大株を探そうとする最中──奴らは来た。


「目標の生存を……確認」


「ふひひひひ!左眼をやられたって言うのに、懲りないヤツ~!」


「知れば知る程、戦えば戦う程。貴方様の厄介性を痛感しますわ」


 此方の行動を読んでいたのか。隠れていた葉の壁から姿を現し、身構える三騎士。

 大将を逃がそうと後ろをチラッと見るも、なんと桔梗やシオリの複製達が退路を塞いでいる。


「やるしかないな。大将、戦えるか?」


「あーたぼーよ!こんな奴ら、俺に取っちゃあ役不足だ。だからスレイヤー、正面の奴らを頼む」


 戦うしか生き残る術はない。大将が戦えるのか知らない為、問い掛けてみるも。

 筋肉質な体で何やらポーズを行い、自分と背中合わせのまま三騎士は任せた……そう言われ。

 無言のまま頷き、お互いに前後の敵へと突っ込む。


「スピラ火山で三度も遭遇したのを考えれば、此処が当たりか」


「どうでしょう。今回はもしかしたら、違うやも知れませんよ?」


「どちらにせよ、お前達を倒してから全てを聞き出すまでだ!!」


 三騎士は大抵、重要な場所に現れている。ならば此処も匂いの根源があると疑うには十分。

 此方が飛び掛かると三方向に分かれ、三角形の陣を作る。……慎重に対処しなくては。

 ルシファーとの約束もあり、ウォッチを回して交代しようとした瞬間──


「それを……待っていた」


「しまっ!?」


 起動させる為にウォッチを叩く時。シナナメが突然此方に飛び込み、クソ厄介な刀。

 冥刀・久泉(ちゅうせん)で繰り出す突きが、ウォッチのカバー部分である側面を直撃。

 根元から外れ、強烈な突きの衝撃で保護カバーと中身のルーレット的なパーツが飛び散った。


「くひひ!これでアンタは、何一つも能力を使えなくなった。ふひひひひ!!」


 言われる通り、ウォッチを通してじゃなきゃこの世界では能力が使えないのは明白。

 左手首に残った部分は、壊れた腕時計と何一つ変わらないッ……どうする?!どうすればいい!?

 何も変わらないが、最後の望みを込めて寧が直してくれたバックルを腰に装着。


「クソッ……やっぱり、そう都合良くは行かんよな」


 至極当然の結果。試しに覚える能力を使おうとしたが──不発に終わった。

 だが、能力に頼った戦いばかりをしてきた訳でもない。

 此処は人間が編み出した武術で、この窮地を切り抜ける他あるまいて!




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