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ワールドロード  作者: オメガ
四章・just believe in your eyes
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ネバーランド

 『前回のあらすじ』

 遂に発見した融合四天王・トリックの居城──天空島。其処で行われている、ネバーランド計画。

 緊急のメンテナンスも終え。寧が残してくれたバックルを受け取り。

 桔梗・シオリ・ヴァイスの三名を連れ、天空島へとダイブ。途中、終焉に仕える黒龍に襲われるも。

 遥と絆に任せ、次に来た混血仇を取り戻した幻想の力で返り討ち。湾曲空間を破り、ニーアも含め中へと侵入。



 何はともあれ。着地した先は運が良いのか悪いのか……予定地点から遠く離れた天空島の端。

 それもゴミ収集場。ゴミのクッションに寝転がり、白目を向く混血仇に近付くニーア。

 首や手首に触れて脈拍を計り、胸に耳を当て心拍数、口に手を近付け呼吸をそれぞれ確認。

 最後に目を開けて瞳孔の確認を済ませると立ち上がり、暗い顔で首を横に振った。


「うん……息絶えてる」


「貴紀。死体から素材を剥ぎ取る?」


 他者の死に心痛めるニーアと、狩人としての認識を持つが故か。

 ウエストポーチから携帯用ナイフを取り出し、確認目的で訊ねて来るシオリ。


「死体から剥ぎ取りって、何を考えてるの?!」


「仕留めた相手から剥ぐのが、相手への礼儀でしょ!?」


「……シオリ、今回は剥ぎ取りじゃなく物色だ。ニーア、環境故の相違だから変に食い付くかなくていい」


 前回はエリネと医療方法の違い故、口喧嘩になってたが……今回はシオリと環境故の相違か。

 二人の気持ちが分かるのもあり、会話に割り込んで口喧嘩を止め、ニーアに注意を促す。


「ニーア。生きるとは、良くも悪くも数多の命を使わせて貰う事だ。スマンが……理解して欲しい」


「まあ、無理にとは言わないわよ。それが私達百鬼夜行と──貴紀の間で決めたルールだし」


 自分の指示通り。混血仇の所有物を物色するシオリに軽蔑の眼差しを向けるニーア。

 サバイバルや極限状態を体験すれば、理解や納得も出来る……が、未体験ならそんな反応だろう。

 理解の有無は二の次。桔梗にフォローを入れて貰いつつ──体を起こした混血仇の頭部に向け。

 朔月を抜くと同時に、暗黙のルールを伝えつつ頭を撃ち抜き、確実に仕留めた。


「スレイヤーのスキルで仮死状態とは理解していたが……以外と行動が早かったな」


「知ってたなら……いや。変に言うとコイツが不用意に動かなかったか」


「何もそこまで……」


 仮死状態だと知っていたが故に、剥ぎ取りではなく物色を勧めた。が──

 まさか本当に動き出すとはな。幾ら紅一族と黒族の混血龍とは言え……うん?これは──

 二人と話してる内に、物凄い速度で死体が老化?シオリも此方を見て、指示を求めている。


「此処で一回目か。まあいい。出し渋るといつまで経っても使わんからな」


 ウォッチを回し、緋色でワンタッチ。覚える能力を使い、混血仇に何が起きているのか調べると……

 これは予想以上の予想外。確かにそれなら、永遠の子供と言えるかも知れんが。

 まさか奴らの技術力がそれ程とは……いや。調律者連中の技術を一部得ていたが故か。


「貴紀、何か分かった?」


「あぁ。シオリ、ソイツはレプリカだ。此処で自由に行動してる大半の生命体はな」


「複製って事よね?でも、どうやって?」


 自分が驚いた様子を見たシオリに訊ねられ、どうやって複製されているかを手短に話す為。

 幻影龍の中で見た出来事や、それを利用して複製されているのだと話した。

 言わば──対象者の懐かしい記憶を探り、その頃の自身を複製すると言った方法。


「だが、複製された連中の寿命は極めて短い。恐らく、一年か二年そこらだ」


「……それって、アンタ達オメガゼロ計画の被害者よりずっと短い寿命よね?」


「あぁ。ネバーランド(永遠の子供)計画とは、上手いネーミングだよ。全く」


 桔梗と話している間にも混血仇・レプリカの老化は進み……ミイラ・白骨・粉塵・消滅(ロスト)

 そしてまた複製され、過去の複製体がどうなったかも知らぬまま、過去を繰り返す様に過ごす。

 その上、仮に本体が衰弱なり突然死を迎えても幸せな悪夢が記憶し、永遠に複製を行う。

 これがお前の考えうる、最大最善の人類救済計画だとでも言うつもりか?トリック……


「兎に角。此処で考えてても仕方ないし、探索しない?」


「同感。アンタ達もそれでいい?」


 シオリと桔梗の会話に同感しかない。黙って聞いていたのだが──話を振られた為、頷いて返答。

 それに対し、ニーアとヴァイスは……精神的に効いたのだろう。俯いたまま、返事すら返せない。


「キツイなら隠れてろ。自分達が今から行うのは、複製(レプリカ)の全滅と、トリックの打倒だからな」


 変にトラウマを植え付けるべきではないと言う思いの他、好意を持たれない様にしたい。

 そんな考えもあり、突き放す様な口調と台詞を選ぶも──二人は首を横に振り、此方を見る。


「そんなの……私の方から願い下げ」


「ウチもや。こんな偽物の楽園なんか、ブッ潰さな気がすめへん!」


「同感。こんな命を弄ぶ行為、医師としても認められない」


 そんな自分の気持ちを押し返す様に、二人は顔を上げて胸の内を吐き出す。

 心の成長を微笑ましく思う気持ち半分。それはフラグじゃねぇかなぁ?と心配する気持ち半分。

 そんな自分の考えを知ってか。背後から肩に手を置かれ、振り向くと桔梗が微笑み。

 ──「人の成長は私達が思うより早いわ。だから、ちゃんと視てあげましょ?」そう言われ、頷いた。


「分かった。が……自分達全員で見て回るのは、流石に目立つな」


 全員での行動は目立つ上、此処は仮にもロリショタペド大好き野郎のネバーランド(子供達の土地)

 自分達高身長組が表通りを歩くのは、自殺行為に等しい。そうなると、調査隊の適任者が……


「……私が、私が見て回る」


「ウチも……一緒に行くわ!」


 言い渋っていたら、ニーアとヴァイスの二人が勇気を出し、自ら名乗り出した。

 確かに身長が百五十に満たない彼女達なら、早々に怪しまれる事はない。

 それに──運良くか悪くか、二人はトリックと一度も遭遇していない。ワンチャン、賭けてみるか。

 他の意見も聞こう。そう思い、桔梗とシオリに視線を向けてみたら……二人は頷いた。


「失敗してもいいからやってみなさい。もし何かあれば私達がフォローしたり、助けに行くから」


「ヴァイス。オラシオン候補生じゃなく、貴女自身の力を試す時よ。やれるだけやってみなさい」


 勇気を出したとは言え、恐怖心や不安感は拭えない。そんな調査隊の二人に対し。

 アドバイスを送る桔梗達を見て、感情を暴走列車の如くぶつけるにしても。

 事前にこう言った助言やフォローがあれば、ぶつかった後も幾らかは安心出来るのかもな。


「ちゃんと『視てる』から、変に緊張せず行ってこい」


 最後に自分からも、二人の背中を押してやった。魔神王の半魂として覚醒途中の今。

 自分が使える視点は日常生活で使う通常、第三者視点の俯瞰。最後に過去を視る視点。

 そう言う意味での視てる発言。過去視点はまだ扱い切れないけど、上手く使えば心強い。


(静久、聞こえるか?)


(聞こえている。当然……何を頼むかも──いいだろう。私に任せろ……)


 口や顔にはなるべく出さず、心の中で呼び掛ける。すると即応答に応え。

 かつ左腕に一体化してると言うのもあり、此方の考えを理解し、頼み事を快く引き受け。

 仕掛けるその時を待ってくれている。さて、ニーア達は出発したな。いつ頃仕掛けようか。


「桔梗、シオリ。此処を仮拠点とする。周囲の警戒と調査を行うぞ」


「「イエス・マイロード」」


 なるべく早く行動拠点の安全や欠点を見付ける為、二人に指示を出すものの……

 こう──なんか嫌悪感を抱く返事を返され、居心地が悪い自分を見て笑う辺り、確信犯だ。

 まあいい。その内やり返してやるから。そう思いつつ調査の傍ら、右眼で俯瞰視点を発動。


「なあ、二人とも。此処に棄てられたゴミを見て、何か思う事はあるか?」


「ネバーランドと言うだけあって、壊れた玩具やお菓子の袋が多いわね」


「私も桔梗さんに同感。でも、ゴミ袋の中身次第だと──何か変な臭いの物もあって、気持ち悪い……」


 先ずはゴミ袋を調べてみる。漁ると後々面倒臭い為、外見から見るだけ。

 幸いな事に透明なゴミ袋が多い上、量も少ない。大抵は壊れた玩具と、食べ終わった菓子の袋。

 されど中には、黒いゴミ袋も幾つかある。それらは共通して、嫌な臭いを放っている。

 男は慣れてる人も居るだろうが……処分する方としては、中々に嫌なスメル(臭い)


「シオリ、それは放って置け。後──『俺』はニーア達を追う。予想通りヤバいかも知れん」


「アンタが俺って言う一人称を使うって事は……本気でヤバいのね?」


 子供──と言う定義はどの辺りで括られるのか?法律的には十八歳か二十歳辺り。

 両親からすれば、いつまでも子供。つまり自分が本気でヤバい……と直感的に思ったのはソコ。

 最年少の出産記録は確か、五歳七ヶ月と二十一日。最年少の殺人記録は二歳から。


「あぁ。ちょっくら、本来の与えられた設定とは真逆なやり方をしてくる」


「……やり過ぎないでよ?」


「例えやり過ぎても、金太郎飴みたく新しいのが出て来やがるさ」


 性への目覚めは誤差こそあれど、最年少の性犯罪だと三歳児による女子同級生への行為。

 すっかり忘れていたが、この男性が持つアレの臭いが籠ったゴミ袋で理解した。

 おいおい……トリックよ。純粋なショタロリペトを好きになったのかも知れんが。

 コイツはお前の理想郷を破壊する爆弾だぞ?!其処まで目を向けてるか否かは──知らんがな。


「貴紀、急にどうしたの?」


「誰が来ても、警戒心だけは解くな。そう言いたいのよ」


 黒コートのフードを被り、先に行った二人の後を追い掛ける。

 最悪の展開になっていたら……十中八九、この天空島を下のフォー・シーズンズに落とすだろう。

 そうしない為、そうならない様。夕焼けが照らすネバーランド(子供達による地獄)へ忍び込む。


「クソッ……もっと早く気付くべきだった!」


 右眼は真上からの視点で、二人とその周辺を捉え続けている。

 間に合え、間に合ってくれ!裏路地を一歩一歩跳躍して進みつつ、そう願う。

 純粋──そう。子供は良くも悪くも純粋なのだ。残酷な程に無慈悲で、恐ろしいまでに。




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