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ワールドロード  作者: オメガ
四章・just believe in your eyes
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影響

 『前回のあらすじ』

 自身の精神世界でゼロ──改め、本物の紅貴紀と対面。過去の記憶を見せていたのは、彼だった。

 ちょっとした話をした後、挽回と言う力と言葉の意味を教え、虚無(ゼロ)と言う技を何故か此方へと撃つ。

 挽回の力を使い、野生を取り戻した紅貴紀の速度は凄まじく、対処出来ない程。

 されど此方も挽回の力を使い、辛うじて勝利。修行も終え、彼は目を覚ます。



 精神世界で本物の紅貴紀と……あぁ、今までゼロと呼んでたからか、違和感が凄い。

 後々確認を取って、なんと呼べば良いか聞いておこう。取り敢えずまあ……ゼロと色々あった。

 悪い意味ではないし、寧ろ心配してくれての行動故、有り難い。そんなこんなの後。

 教会で目が覚めると──視線の先に、ルージュの顔があった……膝枕をされているらしい。


「おっはよう!」


「……おはよう」


 低血圧に加え、気分が落ち込んでいたのもあり。元気の良い挨拶に対し、返事は控えめ。

 仲間を人形にされ、マキナは悪い意味で敵側に覚醒、面倒な女の闇納も復活。

 それに比べ、此方はパワーアップのパの字もない。焦りと喪失感が、心を覆っている状態。


「残念だが、落ち込んでる暇はない。早く動かねば、取り返しがつかなくなる」


「ベーゼ……レブル?」


「ドゥームが視た危機。それが今、実行されようとしている」


「なっ!?」


 そうと知りつつも、話に入って来るベーゼレブルは、疑問と驚きを抱く言葉を平然と吐くので。

 思わず起き上がり、奴の方を向く。何故ドゥームの名前や、危機の事まで知っている?!

 直接問い質そうとした瞬間──教会が大きく揺れ、寝ていた椅子から床に振り落とされた。


「今の揺れは……何?」


「遂に始まったか。トリックの……ネバーランド計画が」


 痛みに悶える間、ルージュが代わりに疑問を聞いてくれたが……

 まさか、ネバーランド計画まで知っているとは。にしても──始まってしまったのか!


「俺は奴らの居る所へ行くが──お前はどうする?」


「自分は……行く」


 何故、奴はトリック達の所へ向かうのか?それは知らないし、答えるとも思えない。

 けど、それが──足を止める理由にはならない。歩みを止めて良い理由にも、ならない。

 此処まで進んだ。数多の命を奪い、破壊し、叶えたい夢や願いも打ち砕いた。

 その屍と残骸の上に立つ以上、途中で降りれい。成し遂げるか、残骸の一つになるか……だ。


「はいはーい。ボクも行くー!!お供の彼も、居なくなっちゃってるし」


「決まりだな。道案内は俺がやる、周りの警戒は任せた」


「あいあいさー!ほらほら、行こう行こう~」


「お……おいおい!?道案内はベーゼレブルがやってくれるんだろうに!」


 元気良く手を振り、付いて来る理由を言う。成る程、ルージュにも、理由はある……か。

 何処へ行くのか分からなかったが、道案内をしてくれると言うので、目的地は困らない。

 とは言え、警戒は緩めれん。と……思った矢先ルージュに手を引っ張られ、協会の外へ連れ出された。


「目的地はスピラ火山の内部だ」


「いやいや。火口内部とか、体が持たねぇよ!!」


 行き先も分からぬまま先行していると、後ろから早歩きで追い付き、目的地を教えてくれたが……

 火山の内部は予想外も予想外。いや、何かあるかも……と思って探索したかったのも事実。

 されど、火山内部の温度は長く耐え切れん。その対策を寧達に作って貰う予定だったが──

 コートのポケットから人形と化した寧を取り出し、申し訳なく見詰める。


「龍神化すれば行けるだろ。俺と殺り合ってた頃のお前は、種族を切り替えてたじゃねぇか」


「アレは……方舟(アーク)があったからだ。今の自分に、方舟は無い」


「違うわ!融合があンだろ?!融合が!」


 曰く……ゼロ、紅絆の二人と融合し、種族を紅の龍神族へと変えろ──と言っているらしい。

 確かに熱に耐性や吸収能力を備えている紅一族なら、火山内部での活動も可能だろう

 吸収し蓄える魔力が限界に近付けば、エナジーバレットにすれば良い辺り、相性は抜群か。

 人形化した寧をポケットに直し、代わりに懐かしいロケットと指輪を取り出し、思い出に耽る。


「アンタ……それ、まだ持ってたの?」


「あぁ。だって、唯一向こうに置き忘れた品物だし」


 横からひょっこりと桔梗が顔を出し、覗き込んではそんな言葉をぼやく。

 向こう……ゼロの故郷に置き忘れてしまった、桔梗と結ばれた証の品。

 結ばれた──と言っても、副王の戯れにより時間が巻き戻り、四度目のループしてた頃の話。


「まあ……かく言う私も、持ってるんだけどね」


 その言葉に嬉しさ半分、照れ臭さ半分。まあ、色々と複雑な気持ちもあるんだけどね?

 凄く恥ずかしいらしく、そっぽ向くも耳まで真っ赤になった桔梗を見る度、此方も照れてしまう。


「……なんか、複雑な気分」


「嫉妬の余り、夜道でダチ公を刺すなよ?」


「そんな事はしないよ!!ただ、あの二人を見てると……胸の奥が苦しくなるんだ……」 


「命短し恋せよ乙女──ってヤツだな。悔しけりゃ、奪い返せばいいじゃねぇか」


 好いた惚れたがあって、守って守られての関係の末……自分達は夫婦になった。

 副王のタイムリープでやり直しはされたけど、以前の記憶を持って今回とは違う道(別ルート)へ。

 まあ……結婚した回数は三人位。他は恋人同士なり、友達以上恋人未満な関係が多かった記憶。

 ルージュには悪いけど、当時は必要だったとは言え、取っ替え引っ替えな事してたなぁ……


「ど~せヤってないんでしょ?戻ったら、久し振りにヤる?」


「まあ、余りヤってないけど……桔梗、そんなに攻めるタイプだっけ?」


 確かに禊は(みそぎ)、三ヶ月前のMALICE MIZERでやって以来、やってない。

 裸の付き合いが苦手……って理由もある。けどまあ、背中に豊満な胸を押し当ててる辺り、夜の方か。

 そんな肉食系だっけか?どっちかと言えば、甘えたいけど甘えれない姉なんだがな。


「まあ、これもネバーランド計画の一端なんだがな」


「それ、どう言う事?ナイトメア・コマンダー」


「勝手に変な名前を付けるな!イヴの器!」


 詳しい話を聞こうとしたら先に言われた上、口喧嘩を始めてしまい、聞くに聞けない状態。

 止めようかとも思ったけど……なんか終焉とサクヤの口喧嘩を見てる様で、懐かしくも微笑ましい。

 それに……何だかんだと言いつつ、スピラ火山まで到着して、登ってる訳だしな。

 それとは別に……桔梗?猫みたく甘えられると理性が飛んで襲うから、そろそろやめてくれると助かる。


「何故、スピラ火山周辺に三騎士が現れたと思う?」


「何故って……何故だろう?あの場所で戦っても、火山に心の闇を吸われるだけ……まさか!!」


 ベーゼレブルに問題を投げ付けられ、考えてみるも、あの場で戦うメリットが見えない。

 寧ろ火山が噴火する原因を生むだけ──と口にした時、ある事を思いだし、嫌な予感が閃く。


「奴ら……スピラ火山の性質を利用して、フォー・シーズンズ全体をネバーランドに!?」


「可能性は高い。その証拠に、人喰い妖怪や遭遇した龍神族は精神に何らかの影響を受けている」


「この計画を止められるのは……ボク達だけ!って事だね」


「場合によっては──お前はまた、人類から恨まれる可能性も大きいがな」


 フォー・シーズンズの近くで感じた不自然な魔力の流れ。アレは、この火山へ集められていた。

 確かに魔力ではある……が、龍神族達が抱える負の感情を少しずつ吸い取る役目もあったと予想。

 火山内部に何かしらの儀式なりを行い、増幅・変換させ、噴火と共に子供化を振り撒くんだろう。

 やる気に満ち、計画を阻止する気満々のルージュ。ベーゼレブルは自分に気を遣っている様子。


「嫌われたり恨まれるのは……もう慣れた。それに」


 目を瞑り、思い出せる過去の出来事を思い出しながら答える。そして……

 ルージュとベーゼレブルの肩に手を置き──「信頼出来る仲間、最高の宿敵がいるしな」

 そう答えた。万人に好かれるなんてのは無理だ。ならば、好きな相手を大切にすれば良いだけの話。


「全く……昔からそう言う所は変わらねぇな」


「弱い故の強さ、強い故の弱さもある。人間ってのは、そう言うモンだからな!」


 とやかく話している内に、妨害にも会わず火山口へ到着。中を覗いて見ると……

 凄まじい熱気と気泡が割れる音に出迎えられ、思わず屈んでしまう。

 改めて覗き込めば、内側に人が通れそうな道と穴がある事に気付く。

 この熱気に対策を取り、安全に降りる事が出来れば……探索は可能そうだ。


「この流れは……不味い!魔力の渦が内部のマグマに流れ込むぞ!」


「うわっとっとっと──おぉ~!?」


「ルージュ!」


 最悪なタイミングで、フォー・シーズンズ全体から集めた魔力と負の感情が火山へ注ぎ込まれ。

 再び起こる大きな地震。その激しい揺れに巻き込まれ、ルージュは火山の中へと落下。

 慌ててまだ抱き付いてる桔梗を引き離し、フォースガジェットを手に自分も火山の中へ。


「きゃっ!」


「間に合え、グラップリングビーム!」


 落下途中でルージュの手を掴み、右手に持ったガジェットから柔軟な青白い光を火山口へ発射。

 命中すると落下は止まり、ビームを巻き戻してゆっくり上昇。はぁ……間一髪だわ。


「無事か~?」


「何とかな。けど、そう長くは持た……ん?どうした、ルージュ」


 上から顔を覗かせ、安否の報告を済ます。そんな時、ルージュが空いた手でコートの袖を引っ張る。

 何事かと思い、訊ねてみると──火山内部にある通路。いや、何処かへ続いてる穴を指差していた。

 何か有るのだろうか?振り子みたく振れば、届く距離。……行ってみるべきか。


「悪い。ちょっと内部から外に出られるか、試してみるわ」


「……分かった。無理はするなよ?」


 仮に火山口近くまで登れても、其処から外へ出るのは難しい。

 ならば内部を探索し、壁の薄い所に穴をぶち開けて外へ出れば良いと判断。

 ベーゼレブルの言葉に頷いて答え、ブランコの如く大きく振って、通路にある穴へと飛び込む。




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