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ワールドロード  作者: オメガ
四章・just believe in your eyes
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人類救済計画/挽回

 『前回のあらすじ』

 無月闇納と激突するも、当然ながら力負けをしてしまう。

 起死回生の一撃を繰り出すも、軽く返された上に五倍にして返される。

 しかしこの土壇場にサクヤが駆け付け、返された技を吸収し力を回復。

 連携と人類に与えられた呪いを使い、退けるも……突然気を失って倒れてしまった。



 まどろみの中にある意識が目覚め始めた時、マキナの事を思い出し、閉じていた目が開く。

 確かに、其処にマキナは居た──居たが、周りに居る筈の人物や雰囲気が、全く違う。


「よし、全員集まったな。それでは、会議を始める」


 円卓も何もないウムケーレン城の一室。『七人分の椅子』に各々が座り、突然始まった会議。

 変に口を出してボロを出すよりは──ここは黙っていた方が無難に安全か。

 右を見ればジャッジ、フール、ドゥームの三人。左にはマジック、マキナ。

 カーリとタースだけは、二人用の椅子に座っている。そう、コイツらは二人で一人の……


「今回の議題は、未来視にて視た最悪な人類の辿る道。それを回避すべく各々の人類救済計画を話して貰う」


 ドゥームの衝撃的な言葉に俺を除く一同が、何やらざわついている。

 まあ、そうなるだろう。俺達が遂行すべき任務は人類の救済。……少しずつ思い出して来た。

 この頃はドゥームが救済計画を練っていたんだが──未来を視た結果、最悪の結果を視たそうな。

 そこで俺達七人の救済計画に賭けた。が……此処で既に、とある問題が水面下で発生していた。


「先ずは俺、フールから。未来で人類が異形にならぬ為、絶望せぬ様に何度もループさせるべきでは?」


「成る程。人類の精神年齢を引き上げる為、試練を与える……と」


「私とマキナは、人類を幸せな時間のまま停止させる……よ。そうすれば、誰も不幸や異形にもならないわ」


「ふむ。人類の進化も幸せも、永遠に止めてしまう計画か」


 無限往復による精神年齢の底上げ、命が持つ時間と進化の永久的な停止。

 どれも人類の意思を無視した、無理矢理な計画。前者は心を折り、後者は人類と言う玩具。


「俺様とタースは、人類が求める永遠の子供化計画だ」


「子供が大人を求めるなら大人にして、子供になった大人を世話するの。愛のある話でしょ?」


「徹底的に罪を裁き、罰を与えるべきだ!さすれば人類は悪しき風習や行為を止め、より良い未来へ続く!」


 双子の兄妹が言う計画は、大人と子供の逆転による破滅。MALICE MIZERで起きた事件そのもの。

 ジャッジの計画は一見、良い内容と結果にも思える。が……それは裁判と言う恐怖支配。

 例え死しても、その判決と恐怖支配は霊魂すら裁く。アイツの権能は生者や死者すらも裁くのだから。


「最後はデトラか。親友の君からは何か、あるかな?」


 そう言われて俺は目を見開き、周りの面々が集中する様に視ているのを確認してから口を開く。


「人類の白紙化。つまり──世界を七つに分割し、俺達が個別に人類を監視下に置いてやり直させる」


 これが、俺の計画。そして……俺、デストラクションが犯した最大のミス。

 何故この提案をしたのか?それは、俺達は七つの権能を与えられた者達。

 各々計画がある。だから──世界を七等分して、それぞれが人類を監視して導く。

 本音を言えば、人類に関わりたくなかった。自分勝手や戦争が目立つからな。その為の提案。


「よし!デトラの計画を採用しよう。各々、それで問題はないな?」


「デストラクションの癖に、良い案を出すじゃねぇか。見てろ、俺が人類を平和に導いてやるからよ!」


「馬鹿ね。不必要な苦難や試練は、人類を死に追いやるだけよ」

 

「左様。必要な時に裁き、必要な罰を与える。それ以外は無闇に干渉するべきではない」


 唯一無二の親友の案だから採用したのか?謎は残るも俺の計画が採用され、実行。

 分割する場所を決め、ドゥームの『ZERO』を操る権能により人類は──記憶と人の姿を失う。

 その後、七ヵ所に分かれて各々が人類を監視し始めた。そうして……人類は姿を変えて行く。


「デ~ト~ラ~!」


「なんだよ、闇納。No.01の隣がオメェの居場所だろ?」


 あれから、何十年と経過したのだろう?監視用の時計塔で、そんな事をふと思った矢先……

 俺と同じ身長の闇納が不服そうに、不満を声と体に乗せて背後から抱き付いて来やがる。

 無駄にデカい胸の感触もあるが、惚れても無いアウト・オブ・眼中の乳袋なんぞ、興味もない。


「だって~。ドゥームったら、ずぅ~~っとシミュレーションルームから殆んど出て来ないもん!」


「なんでまた……」


「理由を聞いても、救済計画を磐石にする為。そればっかり!手伝いも無用ってさ!」


 伴侶・ドゥームがシミュレーションルームから殆んど出て来ず、手伝いもさせない。

 その三日後。報告会が開かれ、俺は親友からあの約束を託された──四日後。

 全員が各々の監視地域へ戻る直前を狙い、大々的に組織を裏切り、基地にダメージも与え脱出。


「っ……待ってろよ。必ず、救ってみせるからな」


 琴音に匿われ、暫し傷を癒し、城を抜け出して魂のまま漂うアダムたるアインを捜索。

 後は……紅き光の根幹部分。────と、可能なら選ばれた器も探さなくては。


「お前さんが俺の本体が言ってた、────って奴か?」


「それがどうした。不法侵入者」


 何処までも青く、同時に茜色の空が半々にある荒野……いや。夢現のゴミ捨て場。

 スクラップの山から出て来た自分に話し掛ける、真っ白な人の姿をした奴。

 それが……自分とゼロの、正真正銘初めての邂逅。お互いに初見もあり、警戒心は強かった。


「話は聞いてるぜ?テメェ、紅い光の絞りカスで人類から呪いを受けてるらしいな」


「お前には関係のない話だ」


「しっかし……赤ん坊の心の中だから、真っ白な場所かと思えば。とんでもねぇ空間だ」


 正直に言えば、ゼロの第一印象は悪かった。まあ、ある程度の知識を持った赤子だしな。

 けどまあ、外側の体が幾らか自由に動ける様になり、(きた)る日が来るまで喧嘩ってのも嫌だし。

 でも、意見の衝突は続いた。人身売買されそうになった時や、クラスメイトの病院送り。

 殺人や一歩手前までやるゼロの過剰防衛に、自分は常に反発していた。


「何故命までも奪う!?」


「この世は弱肉強食。強者が弱者の命を握る」


 そんなこんなで意見は対立。器の年齢が二十歳を迎え、自分の意識が漸く表面に出始める時。


「おい。挽回って言葉、知ってるか?」


「失ったモノを取り戻すって意味だろ?知ってるさ」


「なら──テメェが『失ったモノ』って……なんだ?」


 唐突に投げ付けられた、今やもう慣れに慣れた乱暴な言葉。

 挽回……即ち、失ったモノを取り戻す。それは形の有り無しすら関係のない、そう言った概念。

 続けて、自分が失ったモノは何か?と、問われた。自分は……何かを失ったのだろうか?


「ほれ。あの呪いとも言えるゴミの山が原因で、自分が失くしたモノすら見えてねぇじゃねぇか」


 指を差す先には──山の如く積み上げられたスクラップや、第三者が見ればゴミと思うモノばかり。

 形のあるゴミ、形のないゴミ。渋々捨てたモノ、無理だと早々に決め付けて捨てたモノ。

 その高いゴミの山々が、自分の失くしたモノを見えなくしていると言う。


「テメェの叶えたい夢は何だ?何処へ行って、何をしたいか言ってみろよ」


「……」


 言葉が出なかった。紅い光の意思を継ぎ、敷かれたレールを進むのだと思っていたからだ。

 其処に……自分と言う個人の自由は無い。願いや欲望も、何もない真っ白なスケッチブック(未来予想図)

 筆はあっても、絵の具がない。何も思い浮かばない。言われて初めて、それに気付いた。


「取り戻せよ。テメェの、失くしたモノを」


「取り戻す……挽、回?」


「そう、挽回だ。封印したり失った何か!それをテメェだけのスケッチブックに描いてみな」


 描いてみな。その言葉に反応して自分の目の前に、台を含めた絵描きセットが一式現れる。

 パレットに赤・青・紫・黄・橙・緑・藍。七色の絵の具を出し、筆をバケツの水に浸し。

 心の奥底にある何かを描いてみる。塗っては筆を洗い、別の絵の具を着けてまた描く。


「出来た……」


「ふ~ん、良いじゃねぇか。七つの宝石が集まり、遠い未来へ虹の橋を架けるたぁ」


 七つの不格好な宝石達が円を描き、中央から虹の橋が遠い未来まで伸びている絵。

 これが……自分が取り戻すべき、失くしたモノ、なのだろうか?

 ただ……この絵を通して、一つだけ分かった事がある。これを実現させなくては、未来は無いと。


「人間の心は宝石の様に美しく、糞尿以上に汚い。それは生者も死者も関係ない」


「褒めてるのか貶してるのか、どっちだよ」


「両方さ。矛盾するからこそ無様で愚かしい。が……矛盾しなければ成長の余地も無い」


 褒めては貶し、どちらなのかと聞けば両方だと両手を広げ、自信げに言い放つ。

 矛盾が人間を愚者にするも、矛盾しない人間に進化の余地や道も無いと言い切った。


「上が下で右が左、左が上でもあり右でもある。覚えときな?正気と狂気の境界なんて、何処にもない」


 この時の言葉を、当時の自分は……全く理解出来ていなかった。それもそうだろう。

 一般常識と言うルールや、敷かれたレールに疑問も抱かないまま進んでいたのだから。




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