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ワールドロード  作者: オメガ
四章・just believe in your eyes
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Dタイム/ドリーマーの目覚め

 『前回のあらすじ』

 闇の欠片の一人、マキナの攻撃を辛うじて受け止めるも……No.01の伴侶、無月闇納(あんな)が現れる。

 闇納の口から衝撃の事実が出る。仲間のマキは闇の欠片、ブレイブ・デウス・エクス・マキナと言う事。

 自身は心情ゆかりに寄生し、復活の時を待っていたと。そんなピンチに駆け付けるナイトメアゼノ・アニマ。

 しかし、その実力は護衛のスカルフェイスを容易く倒す程。バッドコンディションのまま、闇納に挑む。



「っ!!」


 蹴り合った衝撃で左足のバランスを崩し、その瞬間を突かれ、大きく押し返されてしまった。

 流石に、まだ届かない……か。実力も大きく離されているんだ、無理もない。


(だがよ……やっこさん。今の蹴り合いで、相当苛立ってるご様子だぜ?)


(当タリ前ダ。一撃デ此方ヲ倒ス筈ガ、逆ニ予期セヌ一撃ヲ貰ッタンダカラナ)


(確かにさっき、押し返される時……苦痛に顔を歪めてたわね)


 押し返された勢いのまま前転。そのまま体勢を整えて振り返ると、酷く此方を睨んでいる様子。

 自分の思い通りに行かず拗ね、適切な言葉が出ないからと睨む……そんな印象を受ける。

 まるで、容姿に引っ張られる様に子供。いや……昔っから精神面は子供だっけか。


「一か八か……全力全開、緋想!!スカーレット・デーモンズ・ノヴァ!」


(貴紀!私達七人の持てる力も使って!)


 一つの賭けに出るべく、百鬼夜行に居る吸血鬼姉妹組と編み出した最大級技の一つ。

 両手を胸元で向かい合わせ、雷状の魔力と霊力をぶつけ合わせて球体を生成し増幅。

 跳躍し、半径十メートルの球を投げ付け、魔力の塊が、敵を押し潰そうと向かう。


「はぁ……全力にしては、見掛け倒しの子供騙しな技ね」


(いやいや、マジかよ!)


 緋色の爆炎球が止まった……と思った直後。闇納が右人差し指で受け止め、持ち上げた!

 足場に降り立ち、現実を目の当たりにするが……いやはや、指一本は予想GAIな展開だわ。


「それじゃあ──五倍の威力にして返してあげる!!」


 綺麗な緋色の爆炎球を黒い赤紫に塗り替え、そのデカさを倍にして軽く投げ返してきた。

 逃げ場は無い。例え避けても、爆風に呑まれて焼かれるのが当たり前。

 だが──元より逃げる気は無い。手早くウォッチを操作した後、両手両足を広げ、身構える。


「ふっ……ぬぅ!!」


「受け止めるとか、生意気過ぎ──よ!!」


「っ!?」


 ゼロ達の力を借り、受け止める事に成功。少し押されているが、全力で踏ん張れば止まる。

 後は当初の予定通り、装填の能力で吸収しエネルギーを回復させれば良い。と……思っていたら。

 急に球体が大きく膨れ上がり、勢いを取り戻し始めやがった!!

 両手の防護用に展開してる魔力と霊力を突破して、今にも焼けそうな熱が伝わって来やがる!


「ゼロ、ルシファー!」


(応!!)


 俺にゼロとルシファーを対象として、トリニティ・フュージョンを発動。

 記憶が戻る前のナイトメア戦と同じく、黒い西洋甲冑や籠手をリメイクして装備する黒化改め──

 オルタナティブ化。だが……それでも止まらない。一向に止まる気配を見せない。


「クソッ……これでもまだっ、足りないか!」


「まだ耐える?なら、もっともっと、苦痛と無力感を与えてあげるわ!」


「みんな……白兎、アニマ、マキ……」


 踏ん張り耐え続ける程、爆炎球に次々と追加の魔力弾が加えられ、威力と勢いが増して行く。

 脳裏を過る、仲間達や家族の笑顔。苦しむ白兎、悲しむアニマ。そして──闇の欠片となったマキ。

 表現し難い負の感情が渦巻く中──「潰れろ潰れろ!早く潰れなさいよ!!」と叫ぶ闇納の声。


「感じる……この空間に充満する死者達の無念、怨念。その感情──俺に寄越せ!!」


「それは……それだけは、行っては駄目!!」


 アニマの制止も振り切り、呼び掛けに呼応するかの様に無数の怨霊達が俺に集まっ──いてぇ!!

 怨霊達を吸収する前に、誰かに後ろから頭を叩かれて阻止され、黒化も解けて何事かと振り向くと……


「全く……目を離せば無茶ばっかりして。ほら、私達でアイツをブッ飛ばすわよ?」


「さ──サクヤ!」


 隣にはサクヤが立っており、一緒に爆炎球を受け止め──「今の内に!」と言われ。

 五倍にして返された爆炎球を凝縮。装填の能力で握り潰して取り込み、エネルギーを幾らか回復。

 自ら震え、右手に飛んで来た黒刃を掴み、白い鞘から黒い刀を抜くサクヤと二人で身構える。


「サクヤ……いや、黒き月ぃ!!表舞台から姿を消したかと思えば、唐突に現れおって!」


「表舞台で貴紀が暴れまわったお陰で、女勇者候補生として怪しまれず、あちこち探れたわ」


 如何にも憎々しい!と言わん鬼の形相でサクヤを睨んで言うも、その本人は気にしてない様子。

 って言うか、ルージュ・スターチスはサクヤだったのか!?普通に気付かなかった……声も違うし。

 クスッと微笑み──「それに、彼女とも合流出来たし」と闇納の背後、上空に闇が集まり……


「こんっ……の、クソッタレがぁ!!」


「奇襲をするんなら、黙ってやりな!!破壊者みたく──はぁ?!」


 ヤケクソ感溢れる愚痴と共に、闇が人と大剣の形を作り、降下に合わせて斬り掛かる。

 素早く気付き、左手で身の丈以上の大剣を軽々受け止め、駄目だし序でに俺の攻撃も右手で防ぐ。

 但し──囮で射った黒刃を。ご丁寧にバリヤーで防いでるが、両手が塞がったそこが狙い目!


「ゼロ!」


attack(アタック)all(オール)Are(準備は) You Ready(出来たか)?」


集技(しゅうぎ)虹の幻想(レインボーミラージュ)!!」


 左手に魔力を込めて七色の線を光らせたら、ウォッチを各色で止め、叩いて起動。

 ゼロが言い終わると同時に飛び出し、黒刃から抜いた白刃で、すれ違い様に胴体へ斬り込む。

 俺達四人と絆達も含めた、ワンテンポずれて繰り出される怒涛の連擊。今回はサクヤも含めた九連擊!


「っ……硬い?!」


「旧式のアンタ達は知らないでしょうね。アタシ達は新たに装甲の皮膚、装皮(そうひ)を得たのよ」


 着地し、次々と俺に重なり合う形で左腕に戻ってくるゼロ達七人。

 だが……手応えに違和感を覚える。刃が予想以上に通らず、金属が擦れる様な鈍い音も聞こえた。

 装甲の皮膚……か。此方へ投げ飛ばされた長い金髪の女性、桔梗も滑る様に着地しては奴を睨む。


「痛……くっ!?」


「言ったでしょ?あちこち探れた──って。装皮や対策・周知・経験共に済んでるわ」


 が……突然斬り込んだ左脇腹を手で抑え、苦痛の表情を浮かべる闇納。何が何だか分からずにいると。

 ──「貴紀の付けた傷に、後続の面々は的確に攻撃を叩き込んだのよ」と教えてくれた。

 一転集中による金属疲労だと思えば良い。とも言われ、理解は出来たが……馬鹿にされてる気もする。


「相変わらず、知恵と技量で無理を押し通すとこ……ある意味、貴紀にそっくりだわ」


「パートナーとして、当たり前の事よ。貴紀は良くも悪くも、夢想家だし」


「サァァァクゥゥヤァァァ!!」


 先程までの余裕は何処へやら。苛立ちと怒りを全面に押し出し、突っ込んで来る姿は獣そのもの。

 サクヤは気付いてるし間に合う。例え理解していても自然と体が動き出し、間へと割り込む。


(貴紀、強くイメージしなさい!夢に想い描くの!)


(想像ニ創造ヲ重ネ、現実ヲ凌駕シ、顕現サセロ!)


 しかし……今の俺に、闇納を止める力はない。そんな時、霊華とルシファーが心の中で叫ぶ。

 それは初めて、オルタナティブ化した時の発言。世界を塗り替え、無理も無茶も押し通す。

 子供から大人になるにつれ酷く失い、グレードダウンし易いモノ。人間として得た力──


「失ったモノを取り戻せ──挽回!!」


 祈る様に、胸元で白刃を構えて叫ぶ。すると足下から、荒野と青空の世界が広がり始め。

 悪夢の空間……ナイトメアゾーンを上塗り。右足を大きく下げ、机に身を乗り出す形で構える。

 球を打つ様に素早く、まだ距離の離れている相手へと切っ先を短く突き出せば──


「ちょ……っ!!」


「あの構え形って、確か──ビリヤード?!」


 闇納に何かが腹部に命中した何かに弾かれ、押し出される形で吹っ飛ぶ。

 そう。桔梗が言う通り、先程の構えはビリヤードと言うゲームで行う姿勢。

 長方形の机で専用の棒を用いて、白い球を打ち、白以外の球を多く落とすゲーム。


「アダムは超古代の人々から、多くの呪いを受けた。時代や戦争が許さなかった、夢と言う呪いを」


「夢が……呪い?」


「でも……貴紀はそれを自身の力として、旅の仲間として百鬼夜行に迎え入れた」


 標的をサクヤから俺に変え、先程よりも密度の濃い爆炎球をぶっ放してくるも。

 白刃と言う刀に、虫取網の概念を上乗せ。舞う様に球を網で掬い取り、一回転後に返す。


「っ……デストラクション!!アンタにもアタシ達と同じ、人類救済計画があるでしょ!?」


「確かに──俺には人類白紙化と言う、救済計画がある。だが、今は友と交わした約束を果たす!」


 返された爆炎球を受け、苦虫を噛み潰したような表情を此方に向け、叫ぶ。

 確かにある。が……最優先事項は友と交わした約束。その内容も、暴走中のお前達を倒す事だしな。

 そう言うと、また苦虫を噛み潰したような顔を見せた。十中八九、俺を仲間に引き入れる算段だろうよ。

 その時、何もない空間に闇が滲み出したかと思えば、予想外な人物も出て来た。


「そこまでだ、闇納。無断出撃に作戦無視と命令無視。どれも見逃せんぞ」


「終焉……くっ!!作戦がどうであれ、オメガゼロ抹殺は決定事項!それなら……」


「二度も言わせるな。戻るぞ」


 闇納の肩を掴み、終焉が話す言葉は組織としてはある意味──厳守する規則の違反ばかり。

 オメガゼロ抹殺と言う物騒な作戦も気になるが……終焉は間違いなく怒ってる。それも、冷静に。

 言葉こそいつも通りだけど、心情を映すかの様に魔力が勢い良く漏れ出してるのが見える。


「……本気で戦いたいのなら、最低でも今の五倍は強くなれ。でなければ、即死は免れんぞ」


「あぁ、仲間達と一緒に強くなってやる!だから待ってろ、終焉!!」


 先に闇納を闇に連れ込み、恐らく転移させたのだろう。

 それを確認した後、此方に振り向き……そう自分に投げ掛けた。今の五倍……か。

 一人では無理でも、仲間達となら──もっと強くなれる。指を向け、そう答えると。

 終焉は何か満足したような……そんな気がする微笑みを見せ、闇の中に消えて行った。


「後はマキナ。お前、だけ……だ……」


 残るはブレイブ・デウス・エクス・マキナ、ただ一人。そう意気込むも──

 意気込みに反して体は揺れ、視界もブレて真っ暗になった。倒れた際の痛覚を最後に……

 俺は……自分は、意識を手放してしまった。敵を目の前にして。




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