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ワールドロード  作者: オメガ
四章・just believe in your eyes
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Dタイム/衝・撃

 『前回のあらすじ』

 奇妙な飲み会も終わり、水無月水葉と別れる際に紙片を握り渡されつつ、第五の遺跡へ帰還。

 すると……闇の欠片、ブレイブ・デウス・エクス・マキナが復活し、襲撃中。

 白兎を返り討ち。貴紀も全く歯が立たず、危険を察知して飛来した自我を持つ武器・黒刃のお陰で。

 怒涛の反撃をする中──過去の記憶を垣間見て手が止まると、仕返しとも言う一撃が迫っていた。



 普通なら反応や思考が追い付かず、消滅して終わる。もしくは無駄と知りつつ奇跡を信じて避ける。

 それが、死を目の前にした一般的な反応……なのかも知れない。

 なら、今まさに死を目の前にしてる自分はどうか?回避も間に合わない。そんな状況で俺は──


「──!?」


「悪いな……俺の所為で、マキナを自殺に追い込んじまってよ」


 気が付けば……左手で紫色の球体を鷲掴みながら、マキナに謝罪の言葉を投げ掛けていた。

 刹那──直感的に分かる。掴む正確な位置・方法・タイミング。後はド根性と勇気を胸に、挑戦だ!!

 恐らく、魔力の放射寸前だった球体を無理矢理鷲掴んだ事で閃光は止み、握り潰して消滅。

 予想外な行動と結果だったのだろう。驚きを隠せないらしく、後ずさる様子もたどたどしい。


「だがな。復讐がしたいなら、俺一人に狙いを絞れ!他の連中に、不要な手出ししてんじゃねぇぞ!!」


 左手が熱い。手の平は焼け、甲は太陽を真似た紋章が心に反応しているのか、緋色に光輝いてる。

 挑戦や復讐なら真っ向から受け止めてやらぁ!けどな?他の連中を巻き込むってんなら話は別だ。


(今の……貴紀が受け止められる威力、超えてたわよね?)


(アァ、ダガ──受ケ止メタ。心ヲ燃エ上ガラセテナ)


(無茶も無謀も貫いて、知恵・勇気・力に繋げ、一つに纏めやがった……!!)


 とは言え……左手は使えず、対抗策も現状は無い。一時的に凌いだに過ぎず、まだ勝機が見えん。

 意地とド根性で痛みを堪えてるものの、いつまで隠し通せるかも不明。不利な事に変わりない。


「見ぃ~~つっけた」


 この緊張感漂う空間に響く、場違い感全開な幼い少女の可愛らしい声。だが……

 俺の耳にはその愛らしい声が、死神の死刑宣告にも聞こえ……振り向にしてもぎこちなく。

 全身に悪寒が走り冷や汗も流れ、掠れた声すら出ない。飛び交う思考は逃亡の二文字だけ。


「仕立て屋さんのマキナとぉ~……裏切り者のデトラ!ねぇねぇ──デトラ~」


「無月……闇納(あんな)


 此方を一人ずつ指差しながら、確認する様に名前を呼ぶ『終焉の姫』……俺と終焉がアダムなら。

 サクヤとコイツがイヴ。つまり終焉の闇版イヴ。No.01の伴侶、と言った方が正しいか……

 光闇戦争時代──闇納と何度も戦い、サクヤが漸く倒したって言うのに、まさか蘇るとは。

 いや、アバドンを喰ったベーゼレブルとの戦闘中に聞こえた幼女の声は、闇納だったが……まさか!


「あっ・そっ・ぼ!」


 無邪気に、そして俺を裏切り者と言いつつ無警戒に真っ直ぐな白い長髪を揺らし、駆け寄ってくる。

 闇納の身長は大体百二十センチ辺り。俺とは五十センチも離れてるから、第三者が見れば。

 歳の離れた兄妹にも見えるだろう。俺に触れようとする右手を咄嗟に左へ避けると……


「──!?!?」


「クッソ……やっぱり常時発動型か!」


 その『結果』を見て更なる驚きを隠す為、マキナは両手を口に押し当てて絶叫を飲み込む。

 避けた闇納の手が当たった先は、一般的な安物ベッド。なのだが……闇納は『床』に倒れた。

 本来ならベッドが受け止めるだろうが、そのベッドは存在が消え、平らな床だけが残った。


(これって……昔と変わらず、そう言う事よね?)


(アァ。二千年時代同様、無月闇納ニハ対抗策モ無シニ触レラレン)


(宿主様も使える、触れた全てを消滅させるアイン。それの常時虚無化発動状態……だっけか)


 チートも大概にしろ!!接触と言う条件付きにしても指一本でも触れる、触れられたら消滅。

 存在・概念・無機物有機物問わずに──だ。故に、装備系統は持てないし、服も超特別製。

 黒装束に赤い袴……正統な巫女の真逆とでも言いたげな服装センスには正直、何とも言えん。


「デト……ラ?」


「えぇ~い……No.01の伴侶だっつーのに、相も変わらずNo.02の俺に懐きおってからに……」


「だって……No.01、遊んでくれないもん」


 キョトンとした表情には、何んで避けたの?と言いたげな雰囲気を感じたが……

 人間がゴリラやチンパンジーの握力に敵わない様に、俺とお前とじゃ、子供と大人の差がある。

 何故俺に懐くのかと聞けば、No.01が遊ばない為と返答。いや、組織のトップは忙しいのよ。

 全く……No.01も鏡合わせみたく、何でもかんでも真似やがって。面倒見きれんなら産み出すなっての。


「と──言うかだな」


「なぁ~にぃ~?」


 肩の力を抜き、深い溜め息を吐きながら話し掛けると、無邪気そうな返事が帰って来た為。

 キリッと奴を睨み付け、己が首を絞める覚悟を決め……深呼吸後、真剣な表情で口を開き。


「そんな三文芝居をしてないで、さっさと本性を表したらどうだ。合法ロリ巨乳」


 言い放つ。そしたら──「やっぱり、デトラに効果は無いかぁ~」と、残念そうに一言。

 先程までの幼女声から一転。ニヤリと笑い「アタシの猫なで声もなかなかのモンでしょ?」と続けた。

 その声は驚くべき事に……琴音と瓜二つ。視覚と聴覚で得る情報の違いに、頭が混乱中。


「そ・れ・と──No.03を覚醒まで保護してくれた事、感謝するわ」


「はぁ?!それはどう言う……ま、まさか」


「えぇ。そのまさか……よ」


 突然放たれた言葉──No.03、覚醒、保護。マキの本名と孤独の創造主のフルネーム。

 突然の高熱、それに関するゼロやルシファーの発言、最近左眼が見せて来たあの映像。

 バラバラだった点同士が線で繋がり、信じ難い一つの答えを導き出す。それは……

 マキが……終焉の闇No.03、ブレイブ・デウス・エクス・マキナ本人だと言う事実。


「ほら。自らひれ伏し、悔し涙を浮かべながら惨めに命乞いをしなさい?」


 何かを言い始め、目を大きく見開いたかと思った次の瞬間──身体中にのし掛かる重圧ッ!!

 四分の一以下の魔力で対抗するが……抗い切れず、徐々に膝を着き、次第に四つん這いへ。

 頭を上げる事すら出来ない……闇納は無駄な努力と知ってか、クスクスと笑い声が聞こえる。


「まあ──私達を護りながら戦ってくれたお礼に、苦しまないよう、逝かせてあげるわ」


「マキのッ、他に……まだ、いるのか!?」


「このアタシ、無月闇納は──心情ゆかりの魂に寄生していたの。アバドンの復活も、アタシの計画」


 無駄にプライドが高いお嬢様宜しく、ご機嫌な口調で喋り出す闇納。

 複数系の言い方が気になり、抵抗の合間に訊くと……どうやらゆかりに寄生してたらしい。

 これは予想だが、マキナの覚醒と復活の時期を合わせ、一気に俺達を叩く計算だろう。

 畜生……してやられた!!副王もマキを仲間に入れる時、わざと含みのある言葉を使った訳か!


「けど、終焉やマジックも何を焦ってたのかしら?復活まで程遠いのに、切り離しちゃうし」


(切り離す……もしかして、MALICE MIZERでゆかりちゃんと出会えたのって!!)


 俺の背中を踏みつけながら、終焉達の行動に疑問を持ち、不思議がる闇納だが。

 逆を言えばこれはまだ、微かながらも残された勝機が見えてきた!!まだだ、まだ勝てるかも知れん!

 今は流れに身を任せ、全ての力を温存する時だ。チャンスは必ず来る……今は辛抱強く待つ時。

 四つん這いからうつ伏せ状態へ。目を動かして見てみると、右手から黒刃が離れている。


「まあ、此処で消滅するデトラには、関係の無い話だけど──ね!!」


 此処で仕掛ける!そう意気込む俺とは裏腹に闇納とマキナ、白兎がお腹を抱える様に苦しみ出す。

 しかし俺は何ともない。何故?何が起きている?そんな疑問を晴らす青い炎が複数現れ。

 揺らめき、天井で円陣を描く。次第に周囲の景色は歪み、全く知らない空間へ塗り替えられた。

 別の円陣。その中心から出て来たのは……究極の女子供特効のコトリバコ、その擬人化。


「彼に関係が無くとも……私には、関係が、あります……のよ?」


「ナイトメア……ゼノ・アニマ」


「はい。私達の王から命を受け……やって参りました」


 独特な喋り方。骸骨を集めた赤い鎧──では無く、闇納と同じ身長で、黒髪ポニーテールの幼女。

 紅い瞳からは悪寒を覚え、服装は黒のインナースーツ……に、王とやらの性癖か?白いブーツと白服。

 ただ服はボタンが無く、丈が脇腹辺りしかない上──水滴を落とし弾けた様な血痕が八つ。

 イヤリングの木箱に壱と弐、四肢の鎖に繋がった箱に参から(ろく)、髑髏ネックレスの箱に(なな)とある。


「呪い風情がぁ!!お前も──!!」


「今回、は……私の警護に、みなごろしを……頼みました、のよ?」


 成人男性には向けられず、女子供にだけ与えられる想像を絶する苦痛。

 酷い激痛に余裕を無くし、激情するが……突如左右横に現れた、ナイトメアゼノ・スカルフェイス。

 二体が巨大刀と棍棒で闇納を切り刻み、叩き潰している。……もしかして、おはぎに使う用語?


「マジまんじ、万丈も豚……と言いますし?」


「人間万事塞翁が馬、な?」


「太古の言葉……とても、難しい」


 賢いところを見せたかったのか。ことわざを自慢げに口にするも、一文字目から早速ミス。

 意気消沈し、足下で文字のをイジイジと書いている様子を見るに、精神年齢、低いのか?


「鬱っ陶しい!!って、言ってんのよ!」


「スカルフェイス!?」


 やや黒い赤・青・紫の歪んだ空間に響く、闇納の怒号と爆発音。

 少し遅れて、スカルフェイスを構成する骨が飛散し、アニマは今にも泣きそうな表情。

 床か地面かも分からない。そんな足場を力強く踏みつけ、苛立ちを隠す事なく此方へと歩いてくる。


「やるっきゃない……」


(デンジャラスタイム……だな。宿主様)


 残る少量の魔力を使い、この場を切り抜けるしかない。チラッと黒刃を見て、奴へと駆け出す。


「大幅に弱体化した姿で、アタシに挑もうなんざ。一億と二千年経っても足りないわよ!」


「──!!っ……生憎、それ程時間は残されてないんでな!」


 即死級の攻撃が来ると直感が訴え、それに反応し左足を強く踏み込み、身を捻る。

 闇納も同じく身を捻り、俺と全く同じタイミングで蹴りを繰り出し──

 俺の残る魔力を込めた全力の右踵と、闇納の強化無しの左踵が激突。

 ぶつかり合うお互いの足と轟音。何もない空間に衝撃波が広がり、一つの風を起こす。




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