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ワールドロード  作者: オメガ
四章・just believe in your eyes
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Wの顔/仕立て屋と破壊者

 『前回のあらすじ』

 体調を崩したマキの下へ向かうも、部屋に居たニーアは機嫌を直していないらしく、必要最低限しか話さない。

 ゆかりからマキの体調を教えて貰い、自身の無力さを痛感。水葉からお誘いメールを受け、気分転換に承諾。

 現場たる居酒屋に着くと、後から予想外な来客。融合四天王のマジック、トリックの二名が、居酒屋に来店。

 ちょっとした昔話をし、エルフの森で盗まれた剣を返されるも……刀身は無く、マジックは意味不明な言葉を残し消えた。



「……勝てそう?」


 最強の魔女と変態が完全に去った後。水葉先輩は恐らく、素朴な疑問を投げ掛けてきた。

 嘘でも気休めにある!と言う方がいいのかも知れないが……見栄や虚栄を張る必要はない。


「現状、勝率は最大で一割ってところッスね」


「へぇ~、一割は勝てる見込みがあるんだ~」


「まだ不死の秘密を解いてないンで、勝率は単なる目安ですよ」


 健全な試合で言えば、勝率は一割。命の奪い合いとなったら、更に下がるのは明白。

 序でに言えばこの勝率一割。運がデタラメに良く、必要最低限の物があって漸くこの数値。

 不死にも色々ある。死なないだけ、肉体再生付きの不死、肉体と魂をも再生する不死。

 体感的に、二番か三番辺りの気がするんだよなぁ。それ次第では攻略法も変わる……と話す。


「一言に不死って言っても、色々あるのね」


「不死はその長所を逆手に取れば良い。永遠の肉体的、精神的な苦痛と孤独……とかな」


 ベーゼレブルも不死の体を持っている。だから一度、太陽に蹴り込んでやった。

 けど、第三者の介入で救助され、今現在も殺り合っている。次は炊飯器にでも封じ込めるか?


「それじゃあ、また何処かで会おうね。貴紀」


「はい。水葉先輩も、お元気で」


 何の変哲もない会話。此方の右手を包む様に握手をし、元気に駆け出して行く先輩。

 ふと気付けば、手に握らされていた紙片が一つ。先輩の姿が見えなくなるまで見送り、自分も帰還。

 教会の地下通路を通り、反転世界・第五の遺跡へ。通路を歩く最中、紙片に書かれた文字を読む。


「悪夢の発生源となる、トリックの計画を阻止せよ……奴の計画と悪夢には、どんな繋がりが?」


(それじゃあ、貴紀に一つ問題。子供だけの世界で起こりうる出来事は?)


「ふむ……喧嘩、食糧不足、医療や様々な技術不足」


 紙片に書いてあったのは、トリックの子供だけの世界。即ち──ネバーランド計画の阻止。

 されど、問題点が余りピンと来ない。そんな自分に対し、問題と言う名のヒントを出す霊華。

 何が、何処まで子供になるのか?と様々なパターンで考えると、出るわ出るわの問題点。


(例えば仕事を機械がやってくれるとしても、人間ってのは良くも悪くも慣れちまう)


(次第ニ子供時代モ飽キ、大人ヘ戻リタイト願ウ連中モ出テ来ルダロウ)


 様々な環境下で生き残る為に得たであろう、慣れると言う最大の特徴。

 仕事に追われる日々なら、休みが欲しい。休み続きだと仕事を求めたりする……

 ──「本当、贅沢な悩みよね」とは、母・霊華の言葉。まあ、その言葉には同感だが。


「……変だな。遺跡に戻って来てから、誰とも会ってない」


(まぁ~った白兎が現れて、別の所に避難させた~。とかじゃねぇの?)


 ふと気付く。幾ら遺跡の中が広いとしても、邪神の二人は此方に気付き、構ってちゃんになる。

 ゼロの発言も、正しい様な気がする。前回があった以上、その線も拭い切れない。

 制御出来る様になった右眼の力・俯瞰視点を使い、見渡すも……本当に誰も居ない様子。


(こんな所に人形……?)


「この人形、寧にそっくりだ」


(コノ気配……気ヲ付ケロ、闇ノ欠片ガ潜入シテイルゾ!)


 通路の少し先に、寧と瓜二つな着せ替え人形が落ちているのを、霊華が発見。

 手に取りじっくり見ていると、頭に直接語り掛けて来る感覚を、僅かながらに感じる。

 感じ取る事に集中しようとした矢先、ルシファーの言葉に気を引かれ。

 フィギュアをコートの外ポケットに入れ、身構える。闇の欠片が……潜入しているだと?!


「けどさ、ルシファー。魔力や霊力、力の根元たる何かすら感じ取れないんだが……」


 そう、何も感じ取れない。最近、ちょくちょく現れるタイプとして、増えて来つつある。

 単にレベル……いや、ランクが違うのだろう。立てる舞台が違うって言うのも、あると思うが……


(何かが此処へ転移して来るわよ!)


(身構えろ、宿主様!!コイツ……同じ欠片でも、無垢なる道化より格上だ!)


 言われて身構えるよりも早く、ソレは来た。気付けば既に吹き飛ばされた後で。

 何処かの部屋にドアを押し倒す形で、仰向けに倒れ──自分の上に白兎が俯せでのし掛かっている。

 知覚が追い付かず、反応すら出来なかった。その上、今現在も何が起きているのか、分からん。


「気を……付け、て。孤独の創造主が……」


「し、白兎!?孤独の創造主──遂に目覚めたのか」


(言ッテル場合カ!!目ノ前ニ来ルゾ!)


 白いパワードスーツの合間から赤い血が溢れ出し、声は苦痛により途絶えつつ、息も絶え絶え。

 体を起こし、何とか白兎を横に退かし起き上がるも──目の前で空間が捻れ、現れる孤独の創造主。

 機械仕掛けの神、デウス・エクス・マキナの名を冠するだけはあり、外見は機械人形。

 閉じた両目の端から、涙が頬を伝う様に赤い線が入っている。


『──て』


「今、何──かぁぁっ!?」


 フォースガジェットを取り出し、両手で構えた途端……強烈な力が体に掛かり、壁に押し付けられた。

 辛うじて動くのは頭と脚。それからフォースガジェットを落とし、手ぶらになった両手だけ。

 脚と言っても、ブーツを履いてる部分は動かない。ほぼ体の自由を奪われたも同然の状態。


「コイツの力は……っ!!超能力なのか?」


(多分だけど、違うと思うわ。超能力にしては、押さえ付けてた部分が全体じゃないもの)


 体内の魔力を一時的に外へ放ち、不可視の拘束を強制解除。疑問を口にしつつ、変身。

 追加で三位一体融合も行い、フォックス・アーマー改め、ミラクル・アーマーを装着。


『──め……──は、駄目』


「な──っ?!」


 寧とは違う声が頭に響いた途端。体が急激に重くなり、俯けに倒れて動けない……

 かと思えば軽々と宙に浮き、部屋の壁にぶつかってはバウンドを繰り返し、再度床に激突。

 自分で『対抗策を持たない存在は着せ替え人形や玩具も同然』とか考えてたけど!

 予想以上に強い……何か、何か対抗策を見付けなくては──殺られる!!


「逃げ……て」


「──!!」


「貴方、だけでも……」


 ほぼ虫の息なのに、白兎は自身より、此方の心配をしていた。自分だけでも、逃がそうと。

 実に戦闘に置ける正論だ。弱者や病人が囮となり、傷付いた者を逃がし再びチャンスを与える言動。

 だけど……俺はそれを拒む!!人ひとりも助けれなくて何が最強だ。それはただの──敗者だ!


「──っ!?」


「アレは……」


 俺の心に反応したのか。遺跡の壁に一直線の穴を空け飛来するは、自我を持つ武器・黒刃。

 孤独の創造主の周辺を出鱈目に飛び回り、掠り傷だが……ダメージを与えている。

 そうか。違う次元のモノなら攻撃が通る!そう理解し右手を伸ばせば、黒刃は手元へ飛来。

 撹乱されて意識が此方から離れていた為か、自由に動く。そのまま起き上がって駆け出し──


「一気に、決着をつける!」


 繰り出すは振り下ろし、薙ぎ払い、振り上げ。基本的な三つの連続攻撃。

 攻めて攻めて攻め続け、反撃の機会を与えない位このまま一気に、執拗なまでに押し通す!

 そんな時、左眼が何かを映し出す。けど、このチャンスを逃す訳には行かない。


『……何?』


『いや?相変わらず手先が器用で、細く綺麗な指だな~……と思って』


『そう』


 机を挟んで向かい合う形で座り、話し掛ける過去の俺と……黒いローブを深々と被った女。

 女は此方に興味がないらしく、小さな服を縫いながら手短な返答しか返さない。いや、関係ない。

 今は孤独の創造主を倒すのが先決だ。こんな光景を前に、攻撃の手を緩める訳にはイカン!


『……見てて、楽しい?』


『あぁ、楽しいぞ。全く違う物から、完成品が出来上がって行くのはな』


『……変わってるわね。貴方』


『よく言われる』


 少し太めの短い枝を小型ナイフで削り、形を整形して行く女。

 次第に指・手・腕と、可動出来る様に細かく作っている。今で言うアクションフィギュア。

 他愛のない会話を続ける中、女の口元が嬉しそうに微笑んでいる。


『なあ──No.03・シュナイダー(仕立て屋)。いつか、俺と一緒に旅へ出ないか?』


『貴方の事だし、当てのない旅なんでしょうけど……良いわ。貴方の服、仕立ててあげる』


『それは嬉しい提案だ。マキナ』


 いつの日か、何気なく交わした約束。その時に見せた、アイツの満面の笑みは……とても眩しく。

 この先の未来に、希望を持った顔だった。けど──俺がドゥームと約束を交わし、実行した。

 俺の記憶は此処まで。だが、左眼は更に続きを見せてくる。結末を知れと、言わんばかりに。


『タース。シュナイダーは……どうだった?』


『自ら頭を吹き飛ばして、自害してたわ……カーリ』


『クソッ……あの裏切り者め!!自分がシュナイダーにとって唯一無二の存在だって事も分からんとは!』


 マキナの部屋から出て来た金髪の女・タースは、自身の兄であるカーリに事情を話、室内を見せる。

 薄暗いものの、奥の壁に赤い血が叩き付けられ……床には頭の無い体が横たわっていた。

 その場に居ない俺に向けた言葉を吐くカーリ。それを見聞きした途端──


「俺……」


 唯一無二の親友との約束が、マキナを死に追いやった。その事実が重くのし掛かり……

 攻撃の手は止み、呆然と立ち尽くしてしまう。アイツは……俺を大切な存在だと思ってくれていた。


(どうした、宿主様!!)


(精神攻撃デモ受ケタノカ?!)


(動かないと不味いわよ!?)


 黒い影が俺を囲んで……来るな来るな来るな来るな来るな!!みんなして俺を責めるな!

 頭を強く左右に振り、よく分からん幻覚を振り払うと──目の前で膨れ上がる紫色の球体。

 魔力か霊力かも感じ取れんが、攻撃技って事と……回避や防御も間に合わんって事は理解。

 それを悟った瞬間──球体は更に大きく膨れ上がり、眩い閃光を発した。




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