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ワールドロード  作者: オメガ
四章・just believe in your eyes
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紅一族

 『前回のあらすじ』

 瞬間移動で一人爆弾を抱え、スピラ火山へと転移し爆発を受ける貴紀。

 そんな彼の前に現れ、語り掛けるサクヤの夢幻。入れ替わる様に姿を現す白兎。

 問い掛ける質問を次々と先に答え、留守番組が無事だと伝え、証拠を出しては立ち去る。

 駆け付けた真夜と紅瑠美を連れ、留守番組と合流する為の次なる目的地、春島を目指す。



 足に魔力を込め、スピラ火山を北北西の方角に向けて、ジョギング感覚で走る。

 フォー・シーズンズは十字に四季が分かれており、北西にフリューリング()アイランド()、北東のゾマーアイランド(夏島)

 南東にはヘルプスト(秋島)アイランド。最後に──現在の拠点、南西のヴィンターアイランドの四つ。


(久し振りに旦那の故郷に来たけど……此処だけは、変わらないわね)


(そりゃそうだろ、此処は紅の領域。幾らほぼ絶滅したと言っても、領域内じゃ仕掛けは働くからな)


 そう、スピラ火山は紅一族の領域。何故、危険極まりない火山地帯を住み家にしてるのか?

 その理由は……紅一族は熱を自身のエネルギーに変換する常時発動技能(パッシブスキル)を所有しているから。

 半分紅の血が混じったこの体も、通常の半分だけ同じ能力を日常的に使える。魔力・霊力回復がソレ。

 お陰様で融合獣や終焉の闇とか言う化物勢力を相手に、いつも背中を支えて貰っている。


「まあ紅一族の血や魂を継ぐ者であれば、何も問題は無いんだけどな」


(今や、宿主様と紅絆しか生きてないけどな)


(マテ……何カ来ルゾ!)


 遠い空で一瞬煌めいた次の瞬間、漆黒の戦闘機と紅の機械龍が此方の上空を猛スピードで通り抜け。

 背後から自分の左右をオートバイが走り、後部を振ってブレーキ。更に変形して足になり直立。

 先程の戦闘機が戻って来ては、白銀の人型ロボが飛び降りてオートバイ・戦闘機・龍が変形合体。


「久しいな。人と龍神の子よ」


「相変わらず、派手な登場しか出来んのか……アンタは」


「何、ロマンの塊の体と機能を貰っているんだ。こう言う気持ちは、共有するモノだろう?」


 そうして完成する、融合四天王・ブレイブ。確かにその主張や気持ちも分かるけど。

 変形合体や変身は好きだよ。元の形から別の形に変わるとか、そのプロセスとかも。

 でもまあ、ロマン武器とか変形単体も大好きだけどね。パイルバンカーとか、最高じゃん?


「少年……やるの?」


「ブレイブが望むのなら──な」


「少し話をしてからだ。俺は戦闘狂って訳でも無く、成長を確かめたいだけなんでな」


「相変わらずですねぇ。そんなんだから、子離れが出来ないんですよ」


 先程まで黙りだった紅瑠美が真剣な表情で口を開き、尋ねてくるも自分の回答としては、相手次第。

 四天王の中でもブレイブとマジックは、何故か此方の成長確認や道案内的な行動が多い。

 まあ、結局はバトルんですけどね。それは兎も角──例の件を聞くとするか。


「単刀直入に聞く。アンタら『紅一族』とアルファの目的はなんだ?」


 手短に、されど核心を突く様に尋ねる。相手かロボ故に表情は読み取れないが、意外そうな雰囲気。

 まるで、もう既に分かっていると思っていたんだがな……とも言いたげにも思え──いや、どうだろう?


「新聞記者が残した遺留品。アレは調べなかったのか?」


「調べた。マリスミゼルでベーゼレブルの言った、∞:||に込められた、別の意味も理解したさ」


「ならそれが全てだ。我々は紅一族復活の為、我らが子達に全てを託す。ただそれだけの話よ!」


 話から察するに、わざと此方へ情報が流れる様に仕向けていた様子。

 それも全ては、紅一族の復活。恐らく、ブレイブが魔神王軍(レヴェリー)に属する理由。

 しかし、エンドレス・リピートとは……そう考えると、アナメ達やナイトメアゼノ・メイト達。

 その結果が変わった事実にも、永遠の舞台劇から降りる事が出来た。って訳か……


「もっと戦い、もっと傷付け!! お前は綺麗な展示品では無く、ジャンクと呼ばれ棄てられるのがお似合いだ!」


「変身──っ!! クソッ……ドイツもコイツも、ジャンクジャンクとうるせぇな!」


 喋りながら突然繰り出される、怒濤の連続パンチ。虚を突かれたのもあり、反応が遅れたが為。

 変身から両腕で守りを固め、これを受けながら言葉を返す。ただ拳を受ける度、左眼が何かを映す。


『密会の為とは言え、国王の誘拐とは……随分と派手に報道したな』


『これ位せねば、奴らに感知される危険性が高い。早速だが、そちらはどうだ?』


『問題無い。先にこれを渡して置く』


 これは……魔神王軍がヴォール王国に襲撃を仕掛けた時の映像──残されたボイレコと同じ内容だ。

 この二人がこれ程までに警戒する奴らって、誰の事を差してるんだろう? 大分、カットされてるな。

 そう言えば副王は、ギルドでの会話を嫌がってたな。アレは警戒……かは不明だけど。

 アルファがブレイブへ渡したのは、一本のUSBメモリ。受け取ると直ぐ自身の胸元に挿入。


『ふむ。いい感じの敗北率だ』


『あぁ。これなら破壊者は、俺達の計画通りに進むだろう』


 一国を襲撃し国王誘拐を報道してまで行われた、大規模な密会。

 行った受け取りはUSBメモリ一本。峰平歩に撮影、録音された……いや、させてまでもやった意味は?

 自分の敗北率が、二人の計画に必要? ますます分からん中、左眼の視界は元通りに。


「ちっ……くしょうめがぁ!!」


「成る程。成長率の伸びに、パワードスーツの機能が追い付いてない。力負けするのはそれが原因か」


 守りに徹しても勝てないと読み、右拳を片手で掴むも軽く押し負け……意地になって両手を使うも──

 押されるのが少し緩やかになった程度。命の危機に瀕してない為、火事場も不発。

 終いには此方が解析され、原因まで特定される始末。力じゃ勝てない……となれば!


「受け流して──斬り込む!」


 両手に込めていた力をわざと抜いて受け流し、空振りへ持ち込む。

 がら空きの懐に飛び込み、右肘に付いた刃で斬り込んだ直後……鈍い音が辺りに響く。


「良い判断と踏み込みだ。だが……自身が出来る事は、相手も出来ると言う可能性は棄てぬ事だな」


「少年……もう、打つ手がない」


「まだです。まだ、貴紀さんは諦めていません」


 拳は通じないと読み、ブレードで胸部へ斬り込むも、グラビトンと同じくバリアを体に纏い。

 鈍い金属音と共にへし折られ、刃が宙を舞い地面に突き刺さる音が聞こえた。

 だが……まだだ、まだ諦めない!! 一つが駄目だったからと言って、諦めるのはまだ早い!


限定リミテッド三位一体(トリニティ)融合(フュージョン)!」


「限定三位一体融──何っ!?」


 左腕に愛とゼロ、第三装甲・四号(インフェルノ)を限定融合。同時に、ヘッドパーツに形状変化!

 狼の大型大砲となった左腕を直ぐ様ブレイブの腹部に押し当て、愛と俺の魔力を凝縮させて発砲。

 踏ん張り切れず、強烈な反動と冷たい黒煙の爆風に押されて、背中から滑る様に吹き飛ばされる。


「ハァ、ハァ、ハァ……クソッ!」


「直撃を受けずとも、爆風だけでそれ程の影響力を持つか」


 起き上がろうとするものの、前髪やまつ毛、挙句の果てに体が軽く凍り付いて動き難い。

 爆風だけでこの凍結力。接射を受けたブレイブ本人は胴体と下半身が凍結状態。

 俺個人としても、この威力と効果は予想外過ぎる。それに……左腕だけで米俵を担いでるが如く重い。

 十中八九、重みで重心がズレたんだろう。でなきゃ、全身氷付けに出来た筈。


「ほぉ~……ユーベル地方のオルタナティブメモリーは、夢幻(むげん)の力を内包した物でしたか」


「夢を見続ける事が、私のファンタジー……」


「空想夢想を現実に引き出し、勝利する。無茶かも知れませんが、無理じゃない理論ですね」


 色々とツッコミたいが……今はそんな余裕すらない。

 ギコチなくも立ち上がり、右手で左腕の砲身を支えながら構える。いつでも撃てるぞ……と。


「そうだ、それで良い。空想や夢想をする事は、決して悪い事ではない」


「ブレイブ 」


「鉄の塊の列車・飛行機・船も、昔の人からすれば夢物語も同然な訳ですが」


「でも……そう言われた人達は、無茶だ無理だと言う批判を跳ね退け……実現してみせた」


 空想や夢想を馬鹿にする訳でも無く。認めた上で肯定し、諭す様な喋り方に──良い父親を感じた。

 その言葉に真夜と紅瑠美も肯定。高い目標や夢を叶える事は無茶かも知れないけど、無理じゃない。

 最後まで諦めず、立ち向かう心。それを持ち続ければ、夢にだって手は届く。

 でも、無茶と無謀を履き違えてはいけない。人として知恵と力と勇気を持たなければ。


「世界を壊し、世界を繋げろ。その先に、故郷へと続く道が切り開かれる筈──っ!!」


 話している最中。何かに気付いたブレイブは自ら拳で氷を砕き、突然自分を抱き締めて屈む。

 その後、爆撃でもしてるのか?! と言いたくなる程の爆発音が鳴り続けた。

 それは数十秒かも知れないし、数分やも知れない。見えるのは、機械の胸と腕だけ。


「ふむ……もう大丈夫か」


「ぶ、ブレイブ!?」


 音が鳴り止み周囲の状況を確認後、手を離し立ち上がるその姿が(紅心)に見え。

 驚きの余り、思わず声を掛ける。いや……確かにブレイブは紅一族、全ての魂を宿す器。

 そう見えてもおかしくはない。でも、さっきの行動からは……子を想う親心を感じ取れる。


「──ッ!!」


 それと同時に──被弾箇所がやや欠けている姿を見て、背筋と心が酷くゾワッとした。

 喪失感や怒り、悲しみ。それらが混ざり合う感覚。それを感じ取った瞬間──

 気付けば一切の迷いや躊躇も無く、ブレイブの背後上空に居る敵へ向かって、砲身を向けていた。


「耐久卵から孵った最近の龍神族は、礼儀や礼節も知らぬ輩が増えたのか?」


「他人の領土に土足で入る侵入者。ましてや、下等種に礼儀や礼節など、不要だろう?」


「……成る程。紅一族が居なくなってパワーバランスが崩壊。結果、龍神族の質も落ちた訳か」


 けど……機械の右手が撃つな。と静かに砲身に触れ、冷たい左手が頭を優しく撫でてくれて、我に返った。

 振り向き、空を見上げて語り掛ける相手は──フォー・シーズンズへ突入した時。

 突然襲い掛かって来た、あの赤黒い龍神。俯瞰視点でも視たが……やはり、西洋の竜だ。

 東洋のは蛇みたく細長いタイプ。西洋はデカイ図体に手足と翼が生えたタイプ。


「違うな。コイツらも人類と同じく、歴史から何も学ばず、同じ過ちを繰り返す阿呆共だ」


「確かに。それも一理あるな」


 何はともあれ、コイツ……いや、コイツらは自分達に明確な敵意を持っている。

 増援、後続。赤黒い龍神の後ろに並ぶ、四色の龍神族。

 成る程な……コイツらが遥の言ってた、若い龍神族の集まり。過激派って訳かい。




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