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ワールドロード  作者: オメガ
四章・just believe in your eyes
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夢幻と縁と邪神と

 『前回のあらすじ』

 スピラ火山から冬島へと帰還する調査組を襲い、水底へゼロライナーを沈める目玉の怪物。

 原因究明に出た貴紀に襲い掛かる怪物、問い掛けるノイエ・ヘッツァとアニマ。

 二体に汝は何者かと問われ、レギオンと返答。拠点へ戻ると、倒れている青空遥。

 しかしそれは、予期せぬ罠だった。隣に居たニーアを突き飛ばし、貴紀は爆発に呑まれる。



 隣の芝生や空も青い……当たり前となった心情と景色。

 自分が持ち得ないモノはとても魅力的に見え、欲しいと言う一時的な欲望に支配され易い。

 例え、今後不要となるモノであっても。自分が持つモノの魅力や大切さに気付くのはいつの世も──

 失った後。それは物であり、誰かであり、己の人生である……感情が暴走したモノだとしても。


「あぁ~……毎度毎度すまん」


(アァ、本当ニナ)


(全く……今回も無茶苦茶な事をするわね)


(宿主様らしいと言えば、そうなんだがな)


 傀儡が大爆発する直前。自分としても不思議な位、頭が普段以上にフル回転のトップギア。

 調査で来てたスピラ火山を強く思い浮かべ、瞬間移動(テレポート)で跳躍。

 結果、仲間達への被害はゼロ。自分は霊華達が防御してくれたお陰で、微量のダメージで済んだ。


「人の心は常に揺れ動く。退屈と言う苦痛から逃れる為に。例えその結末が、破滅への道だとしても」


 体を起こすと、懐かしい声が聞こえて横を振り向く。其処には──サクヤの姿が。

 けど、本人じゃなく幽霊……もとい夢幻。語る言葉は的確に的を射ており、命の醜さを思い出す。

 スリルを求めて万引き。見えてる結末に気付かず、はたまた理解した上で犯す犯罪の数々。

 守られた平和に飽き飽きし、退屈と言う苦痛を晴らす為自ら危険に……破滅の道を進む。


「本来、人類の選択に干渉してはいけない私達が本当にすべき事は──何なのかしら?」


「サクヤ……」


「役目を終えたら、勇者や私達は……消されるしかないの?」


 夢幻のサクヤが言う様に、本当は……人類の選択に、干渉してはいけない。

 人類が進むべき道は、その時代の人類が決めるべき事。自分達は人の姿こそしてるけど──

 だからこそ、ヴルトゥームを倒す最後の一手だけは、人類であるアナメに譲った。


「多くの力を得た今の人類は、超古代の人類と同じく、人間と呼べる数は減ったな」


 沢山の力を得る事が当たり前になって、人の心は……無意識の内に暴走しているのかも知れない。

 多くを手に入れ過ぎて、身近にある大切な何かを見落とし、優しさや他者を慈しむ心を棄てている。

 桔梗が言ってたな。誰よりも鬼らしく、悪魔に近いのは──人間だって。


「仲間を置いての単独行動か。褒められた行動ではないな」


「……白兎」


 深く考え耽っていたらしい。白兎に声を掛けられるまで、全く気付かなかった。

 確かに言われる通り、単独行動は褒められた行動ではない。特に、成果を焦った単独行動は。

 これで声を聞くのは二度目だが……ハスキーボイスって言うんだっけか。そんな感じだな。


「アンタに聞きたい事が──」


「君の仲間を拐ったか否かと言う質問であれば、答えは否。……ボクにメリットは無いからね」


 質問をする前に出端を挫かれ、答えや理由まで即答。

 何処からその情報を得たのか、気にはなる。そもそも、その言葉を直ぐに信じれる訳でもない。


「その言葉を信じるに値する、他の根拠や証明……おっと」


 言葉を言い切る前に、白いスマホを投げ渡された。画面を見るに、通話中と表示されている。

 自身の証言よりも、通話してみろ。って意味だろうか? 白兎から目を離さず耳に当てると……


『貴紀君、聞こえる?』


『たっくん、聞こえてるんでしょ!? データが届いたけど、どんな扱い方したのよ!』


『貴紀殿か。すまぬ、一時的に避難する以外の時間が無く、連絡が出来んでのぉ』


 寧、マキ、ベビド。他にも代わる代わる話を割って入ってくる面々に、思わず苦笑い。

 同時に安心と幾らかの信頼はあった。取り敢えず今は、信用しても良さそうだ。

 トリックの線も考えたが……アイツは最大でも二人だ。昔、能力に傷を付けてやったからな。


「分かった。此方も様子を見てそちらに──合流出来そうだ」


 話している最中、白兎に視線を向けると此方の意図を理解したらしく、ゆっくりと頷く。

 通話を終え、手渡しで返そうとするも……一定の距離を保つべく後ろへ下がってしまう。

 何か事情でもあるのだと認識し、渡された時同様に投げ返せば受け取り、右太股に収納した。


「アンタ。闇の欠片に従ってるのに、何故自分の手助けをする。それも命令だと?」


「別に従っている訳ではない。受けた恩を返す為、依頼を二つ程引き受けたに過ぎない」


 話してみて、少し分かった。白兎の行動は全て、自らの意思で判断した結果。

 何処へも所属しておらず、行動自体も恩返しに繋がるモノだと、直感的にそう思った。が……


「最後に一つ、教えてくれ。君は敵なのか、それとも味方なのか?」


「……ボクは、誰かの味方になる気はない。少なくとも、今はね」


「そうか。可能であればスカウトしたかったんだがな……まあ、それは今後の縁次第って思っておくよ」


 敵か味方かの有無を聞くも、今現在は中立だと言う答えしか返って来ず、残念ではある。

 トリスティス大陸、マリスミゼル、ユーベル地方。その全てで、協力的な行動を取ってくれたから。

 スカウト出来る。と思ってたんだが、やっぱり現実は甘くない……まあ、今後に期待か。


「何故、素性を隠してる……こんなボクをスカウトしようとするんだ?」


 立ち去ろうとした時、呼び止める形で質問を投げ掛けられ、足を止め振り返って答える。


「君が良い人間に思えたからだ。それに、素性を隠してるのは此方も同じだしな」


「……一つ、助言をよう。君が抱えている爆弾とはもう一度、戦う時が来る。覚悟をして置く事だね」


 此方の答えに対し、意味深な助言をくれた。だが……自分が抱えている爆弾とは、何を指している言葉だ?

 身に覚えがあるモノか、それとも無いモノかで、対処も変わってくるんだがな。

 それを伝えるや否や、白兎は驚異的な脚力で立ち去った。あの脚力で蹴りとか……絶対に受けたくない。


(爆弾……ねぇ)


「基本的に、爆弾は抱えっぱなしだからな。どの爆弾か位は、教えて欲しかったな」


 この体や寿命もある意味、時限爆弾だ。爆発する前に、成すべき事はやり切らなくては……

 そう言う意味でも、みんなが向けてくれる好意に応える訳にも行かない。

 昔の旅……桔梗達はその事実を受け入れた上で好いてくれたけど、いつまでも甘えてられないしな。


「追跡!」


「ストーカー……」


「「いずれも~……マッ──ハウマッチ!?」」


 シリアスな空気へ知らぬ間に紛れ込んだ、シリアスブレイカーにしてカオスな異物。

 某ライダーの真似事をする真夜と紅瑠美。そんな二人に、ハリセン二刀流で叩き伏せる。

 後、追跡・撲滅な? ストーカーされるのは正直、もうこりごりだ。


「これぞまさに、アタックチャン──スモー!?」


「自分のツッコミは基本的にその場の空気次第じゃい。それと、その番組はもう終わっとる」


「にゃんと! 宇宙世紀コズミックなイラではまだ続いていると最優先事項でユートピアファーム宮古島ぁ?!」


「なんでやねん!」


 ここぞとばかりにボケ倒して来る真夜。てか、混ぜ過ぎて言語的なツッコミが追い付かん!

 こら紅瑠美。ハリセンでツッコミを受けるの良いな~……的に指咥えて羨ましそうに見るんじゃない。

 菌が口内に入ったらバッチいでしょ!! って自分はオカンか!


「少年。内心ボケツッコミが……見えるよ」


「刻が……見えるよ。みたいに言うんじゃありません!! てか、人の心を読むな!」


 イカン……この二人が揃うとボケ倒されて、ツッコミしか出来なくなる。

 いやまあ、ツッコミを入れてくれる、理解してくれるのが嬉しいんだろうけどな?


「さて、気晴らしに遊びましたし──消えた面々と合流しに行きますか」


「場所、分かるのか?」


「モチのバーチャロンです。先程、光の速さで一足お先に確認して来ましたから」


 気晴らし……アイの姿で居るのは気が滅入る事なのか。

 通話してる時に居場所を聞きそびれたが──どうやら現地に行き、確認して来たらしい。

 ……懐かしいネタには突っ込むべきだろうか? 突っ込んだら負けな気がするんだが。


「まあ、あの面々に正体がバレるのも面倒ですし。此処はさっさとチェ」


「チェンジ・エレメント……!」


「ちょっ、クトゥグア!! あーた、人の台詞を奪うたぁ、失礼千万ハリセンボン! 言語道断、横断歩道ですよ!」


「ネタが多い!」


 ネタを挟まないと死んじゃう病か何かなんだろうか……コイツらは。取り敢えずまあ──

 ハリセンでツッコミを入れつつ制止。後で一時間程正座させた上で、説教でも食らわせてやろうか?


「ほら、さっさと合流しに行くぞ。で、肝心の場所は?」


「じっちゃんの名に賭けて、事実はいつも一つ! 比較的安全な春エリア、フリューリングアイランドです」


「流された末に辿り着くのは……ai・藍島」


 場所は分かった。が──懲りてなさそうなので、お仕置きに拳骨を一発ずつ。

 冬拠点から春エリア側の全員に合流すべきか。はたまたその逆か……とりま、先に行ってみるか。

 そんで、どうするかを決めてからでも良いだろう。最悪、片道だけなら瞬間移動も使えるし。


「さあ、此処からが本当の戦いですよ! D・C・Zで超融合!! SをEXデッキより特殊召カンパネラ!?」


 強引、暴力的、なんと言われようと構わん。こうでもしなきゃ、コイツは止まらん。

 取り敢えずハリセンで、尻にフルスイング。道は知ってるので、身悶えしてる真夜を置いて先に行く。

 ど~せ、ハァハァ……一秒差で私の勝ち。とか抜かしそうだし。何処のマラソンマンだよ。

 とは言え……もう一度瞬間移動する魔力や霊力は無いから、此処からは徒歩か跳んで行くしかあるまい。




 『スキット・利害の一致』


 徒歩で春島へ向けて進む中……私、クトゥグア は少し……気になっていた。

 この星の命達は、空気を読む……空気に文字でも書いてるの? それは兎も角、少年に聞いてみる。


「少年。ニャル……真夜とは、どう言う関係?」


「どう言う関係も何も、ボケとツッコミ。もしくは利害の一致──だな」


「邪神と少年の利益と損害が……一致?」


 邪神と淡く小さな命。何故、一緒に居て、仲良くしてるのか……が、私の疑問。

 それに対して少年は……利害の一致だと答えた。かく言う私も、稀にある……

 私なら、ニャルの邪魔をする為に呼ばれる事も……けど、召喚側の力不足で使い魔が呼ばれて星を滅ぼしたり。


「自分はメンタルやこの体を壊したくない。真夜もそれは望んでないし、損害としては同じ」


「ニャル……真夜は少年とのスキンシップで崩壊を防げて、少年は崩壊の阻止とメンタルの維持……」


 意外……だった。ニャルは自他共に嘲笑う、頭のおかしい奴……それが、私達共通の認識。

 それが……一つの命に一目惚れ。恋をしたとか言う、尚更頭のおかしな発言を聞いた。

 でも、今なら分かる……ニャルと少年は相思相愛。黒く深い愛と、紅く温かい愛……

 多分。他の邪神達も、その未知なる愛に引かれて少年の下へ訪れたり、力を貸したりするのかも……?


「まあ──そう言う意味では、紅瑠美にも散々助けられてるけどな」


 あぁ……成る程。少し、理解した。この温かく満たされるも……何処か物足りなく、寂しさを抱く感情。

 時に甘くて酸っぱく、苦くて辛い。ニャルはこれを求めて、少年に協力している……多分、私も。




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