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ワールドロード  作者: オメガ
四章・just believe in your eyes
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赤黒い龍神

 『前回のあらすじ』

 誘拐された仲間と最後の融合パートナーを探すべく、次なる目的地をフォー・シーズンズと決めた一行。

 全滅を防ぐべく会議を開き、自由に意見や主張を言い対策を決め合う。

 会議を終え、差し入れをくれるニーア。エリネは貴紀の異性に対する態度に吼える。

 三車両・倉庫に設置されたゲートに、コンテナの中で見付けた緑色の鍵を差し込むと──眩い光と衝撃波に呑まれた。



 ゲートの発する閃光と衝撃波を受けて、どれ程意識を失っていたんだろうか?

 重い瞼を開けど、視界に映る光景は変わらない。ゼロライナーの食糧や武装を収納する倉庫の三両車だ。


「みんな……無事か?」


(アァ──俺達ハ無事ダ)


(何はともあれ、現状確認が最優先だな)


 寝ていた体を起こし、呼び掛けるといつも通りの返事が帰って来て内心、安堵の溜め息を吐く。

 車内を調べ、約一名を除き全員居る事を確認した後。汽車から降り、外の景色を見回す。


「余り……変わった様子は無いな」


「えぇ。スピラ火山へ集中する、不自然な魔力の流れを除いてね」


 ポツリと呟いた言葉に補足をする形で隣に立ち、同じくスピラ火山を眺めて喋るアイ・アインス。

 螺旋を描く様に、火山へと何かをゆっくり集めている。魔力や霊力ではない……けど。

 極僅かに、されど確実に、自分からも何かが吸い出され始めている。


「アイ、感じるか?」


「勿論。どうやら今回も、相当厄介な異変が起きてるみたいね」


 此処で突っ立って居ても、何も解決しない。

フュージョン・フォンを取り出し、現在地を確認。

 どうやら幸いな事に、フォー・シーズンズの近くらしい。まあ、近くと一言に言っても。

 足の早い乗り物を使えば──の話。当初の予定通り、ゼロライナーで突入する他ないんだがな。


「行くんでしょ?」


「当然」


「なら、早く動かしなさい。説明は私がしておくから」


 此方の考えを察知したのか。話し掛けられるも他に選択肢は無く、言葉を返す。

 そっと背中を押す様に言い、面倒を引き受けてくれたアイ。もとい……這い寄る混沌に頷く。

 操縦席へ座り、各種スイッチを入れ、レバーを引いて出発。煙突から蒸気を噴出し、汽車が走る。


「加速完了。フォー・シーズンズまで七百……四百……百、突入開始!」


 加速を始めたゼロライナーは目的地への距離を一気に詰め、侵入者探知用結界を突破。

 これで各龍神族の長に、出入りした者が居ると報告が飛んだ筈。問題は此処から──っ!?

 突然大きく汽車が揺れ、小型流星群でも降り注いでるのか!? と言いたくなる程の連続した爆発。


「たっ……貴君。て、敵襲!!」


「琴音、志桜里、防御展開! エリネ、蒸気の煙幕を出ると共に屈折の準備!! ヴァイス、敵は何処だ!」


「敵数は一つ。この反応……真上!?」


 操縦室のマイクから聞こえる、揺れ動く車内からヴァイスの報告。それは、予想通りの襲撃。

 急いでマイクを取り、車内放送で各々に指示を出す。幾ら何でも、龍族の攻撃はそう何発も受けれん。

 何処から攻撃を受けているのか、敵は何処か聞いた直後。先程より強い振動が汽車を揺れ動かす。


(一体だけなら俺とルシファーが出る。宿主様、良いだろ?)


「あぁ、頼む。俯瞰視点、起動……高度千二百メートルから降下中。色は──赤黒?!」


(なンにせよ。叩き落としてやンぜ!)


 ウォッチから発せられるゼロの言葉に頼もしさを覚え、右目で俯瞰視点を発動。

 フォー・シーズンズ全体を斜め上から俯瞰。相手の高等と行動、色を確認。

 ……ちょっと待て。何故高度が分かった? それは兎も角、汽笛を鳴らす紐を強く引き、音を鳴らす。

 同時に蒸気を最大噴出。煙幕を作り、紫と青の光が左腕から飛び出す援護と、エリネへ向けた合図。


「煙幕か。だが、その速度では直ぐに煙幕を突き抜け──!!」


「やれやれ。これだから無駄に年若い龍神族は……」


 俯瞰視点を絞り、東洋と言うより西洋の竜らしき赤黒い龍神と、ルシファーを視認。

 突然の出現に虚を突かれた様で、身動きを止めたその上空から、クロスチョップの構えで降下するゼロ。

 一瞬反応が遅れ、首に直撃。姿勢を変え龍神の首へ両足を巻き付け、空中大回転しながら地上へ落下。

 汽車すら揺れる程の振動を起こし、フィニッシュを決めた様子。右人差し指を天に伸ばし大満足な様子。


「一・二・三、ダァー!!」


「今の試合、どう思いますか。解説のルシファーさん」


「不意打ちで怯ませ、大技で決める。仮に立ち上がれても、特に首は相当キツいだろうな」


 勝利宣言なのか。満足げに某プロレスラーを真似て吠える姿を眺めつつ、ルシファーの隣へ立ち。

 実況紛いをしてる辺り、いつ頃から慣れてしまったのかな? なんて思ってしまう。


「しかし……赤黒い龍神族とは。混血の新種、もしくは病魔に犯された個体か?」


「ンな事より、宿主様。さっさと離れようぜ」


 確かに、赤黒い龍神族を昔は見なかった。知る限りじゃ紅・青・緑・黄・黒の五色だけ。

 でも紅は……二千年より前に絶滅している。確認出来てる限りだと、純血は紅絆ただ一人。

 考えられるのは──まあ何はともあれ、さっさと移動すべく、ゼロライナーへ乗車&出発。


「にしても……予想より損害や敵の数が異常に少なかったわね」


「偵察の可能性も、捨て切れないけどな」


 操縦室にアイとヴァイスが入って来たから、ちょっとした意見交換を行っている。

 予想では最低でも四体、最大で一師団だったが故に、拍子抜けって気持ちもあるけれど。

 もしかしたら会わない内に、戦術とかを変えた可能性も否定出来ない。


「なぁ。龍神はんって、みんなあんな感じなん?」


「短気や狂暴な奴がいる様に、龍神族も一枚岩じゃないのよ」


「同じ種族でも、問題は起き続ける。そう言う意味では、何処も一緒さ」


 種族間は違えども、起きる問題は大抵何処も似たり寄ったりが多い。

 まあ、異文化コミュニケーションとかになると、お互いにカルチャーショックはあるし。

 それが原因で戦争やら何やらってのも、割りとあるある過ぎて笑い話にもならん。


「取り敢えず予定通り、青が住む冬エリアへ向かってるけど……ヴァイス」


「なんや?」


「乗組員全員に防寒装備着用と徹底した戸締まりを伝えた上、貴女の目で確認を」


「はいな!」


 名前を呼ばれて首を傾げたり、指示を受ければ姿勢正しく元気の良い返事を返す辺り。

 子供っぽくも素直で良い子だよ。願わくば、君の人生が輝かしく素晴らしいモノであって欲しい。

 ヴァイスが出て行ったのを見送り、少し間が空いた。別に幽霊が通ったとかじゃ、ないんだがな。


「龍神族の件、貴紀はどう見る?」


「数の低下、もしくは現在進行形で何か起きてる……が妥当じゃないのか?」


 龍族はエルフの上位・ハイエルフよりも長生きで、出産数もエルフ系統よりは上。

 でも人間に限らず、魔族も龍種の卵を狙う傾向にある。食用やペット、乗り物として育てたり──な。

 そう言う意味でも、龍が一部の命を除いて嫌ったり襲ったりするのも、納得が行く話ではある。


「もし前者なら、人類の大多数には滅びて貰うとして……後者の場合は、どうするの?」


「首を突っ込む他あるまい。少なくとも龍神・紅一族の関係者だしな」


「それは構わないけどね。仮に龍神族と戦う場合、貴方達の対抗策が少ない事。重々理解しておいてね」


 何気なく物騒な発言はあれど、これも種族間や認識などの違いから来るモノ──否定はしないけどな。

 それはさて置き。今の自分達は龍神族と対峙した場合、対抗出来る面々がほぼ居ない。

 蜥蜴人(リザードマン)を超える硬度の鱗、属性を宿した厄介なブレス。飛行能力に様々な魔法。

 数えれば切りがなく、英雄譚などに出るのも納得。人間やそこら辺の種族が勝てるって方がおかしい。


「まあそん時ゃあ、序章で終わった改造兵士・レベルⅢが如くやりゃあ良いんですよ」


「あぁ、脊髄引っこ抜きか。確かにアレなら効果はありそうだ」


 マニア向けの話をする中。仕事中(オラシオン)の姿からオフ(真夜)の姿に戻ってる事は……敢えて突っ込まない。

 そんな話をしていたら、急に冷えて来た。そろそろ青い龍神族の領域・ヴィンターへ近付いてる様だ。

 正直な話、ガッデム(くそ)コールド(寒い)。寒いのは苦手だ……メンタルも不安定になるし。


「報告と戸締まりの確認完了や! 貴君にもな、オーバーコートっちゅうのを持って来たったで~!」


「ナイスタイミング。そら、見えて来たぞ。青き龍神族の都・ヴィンター()アイランド()だ」


 猛吹雪が窓に叩き付けられる度、ワイパーが動いては雪を退かす先に。

 遠目ながらも僅かに見える広大な湖と、其処に存在する三つの島々。

 持って来てくれた防寒着に急いで着替え、雪が積もった土地と言うのも含め、早めにブレーキを掛ける。


「ちょちょちょっ!? 止まるの早ない?!」


「寧ろ遅い方ですよ。この先、下り坂ですから」


「仮に止まれても、下り坂の先は道が無いんたが──な!!」


 真夜の言う通り、少しブレーキが遅かった。三車両目までもが急な下り坂を降りていて。

 重量に引っ張られる形で急流滑りの如く降りて行く。この猛吹雪で飛行は無理、坂の先は湖。

 ゼロライナーに水中潜行装備は無い。仲間達の命を優先し、脱出を指示しようとした時……

 突然車両が浮かび上がり、ヴィンターアイランドへと運ばれて行く。


「も、もしかして……ウチら、侵入者として捕まったンやろうか?!」


「ハッハッハ。まあ、そん時ゃあそん時ですよ」


「仮にそうだとしたら自分。人類、ドワーフに続き三回目なんだがな」


 未知なる体験と不安から目を回し、ややパニック状態になってるヴァイスと。

 対極的にカンラカンラと笑う真夜。自分も愚痴を言う辺り、腹括って観念してるのかもな。




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