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ワールドロード  作者: オメガ
三章・alternative answer
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賭け -テイク・ア・チャンス-

 『前回のあらすじ』

 得物の大斧でヴルトゥームに奇襲を仕掛け、断つ事に成功したジャッジ。貴紀に何故王を裏切ったのか問うも。

 如何なる返答でもバトルは回避不能と理解済み、かつ内容は誰にも言わない約束を果たし、互いの善悪をぶつけるバトルへ移行。

 ミラクル・アーマーを使い挑むも、攻め切れずピンチに陥る──が、アナメはファウストに変身し、駆け付ける。

 ジャッジは狙い通り地下に潜むヴルトゥームを引き釣り出し、後は貴紀達に任せ、終焉の下へ戻るのであった。



 強く握り締めた拳を解き、深呼吸を一つ。一人称まで変わる程とは……心が熱を持ち過ぎている証拠だ。

 ……よし、これで霊力も少しは抑えれそうだ。知恵と勇気を振り絞り、奴を攻略しなくてはね。

 二人揃ってヴルトゥームへ一直線に駆け出す。予想しうるパターンは七つ!


「馬鹿正直な突貫とは……進歩の無い奴め!」


(来るわよ。左右から私達を貫く形で、前方へ直線に!)


 奴が左人差し指を上向きに曲げる直前、霊華からスキル・戦巫女の直感で予知を教えてくれた為。

 アナメに簡単な手振りで指示を出し、一歩大きく後退。すると助言通り、前方に向けて飛び出す木の根。

 先端が鋭利に尖ってる辺り、殺意は高いね。視線を奴に戻すと……居ない?! ありがちな真上かと思い見上げる。


「反応が遅いわ!」


「うっ!?」


「このっ!」


 が……既に背後へ回り込まれており、背中を強く蹴り飛ばされ、尖った根っこへダイブさせられたが──

 間一髪、根っこの隣へ瞬間移動に成功。再び視線を奴に戻すと、此方へ吹っ飛ばされるアナメをキャッチ。


「大丈夫? アナメ」


「う、うん。でも、恐ろしく強いよ……アイツ」


 外的損傷は無いけど、内的損傷の有無も無さそう。精神的には分からないから聞くも、問題は無さそう。

 とは言え……強い。前回は力に全振りだけど、今回は違う。速さもそうなんだけど、何かが根本的に。


「おやおや。大幅な弱体化から回復中と話に聞いていたが……もしや、わしの方が強くなり過ぎたかぁ?」


「アナメ──行こう」


「うん、了解!」


 幾ら外見を綺麗にしようと、君の下衆さは隠し切れん様だね。性根の悪さが顔に出てるよ。

 大層な慢心から出るその挑発と、鼻っ面をへし折ってやろうと思い、呼び掛けて一言話すと。

 彼女は理解したのか、元気良く頷き立ち上がる。幸か不幸か、君に与えられた力を上手く使えば!


「成る程のぅ」


「何が成る程っ……よ!」


「なん……だと!?」


 第三装甲に残された霊力を使い、分身を展開して四方八方から一斉に、時間差の二つを利用して挑むも。

 奴はこれを器用に捌き、体内から放出した魔力で僕達を纏めて壁に吹き飛ばした。けど──分かったぞ。

 地中に核が複数あったのは、昆虫の胸腹部神経節や、ゴキブリの様に胸へ脳を増やす為か。

 とは言え──頭部、胸部、手足関節に頭脳となる核を配置するのは……流石に卑怯じゃないかい?


「第七世代の体に昆虫の神経節、脳の役割を果たす複数の核。確かにコレは、僕達を優に越えるね……」


「毒をもって毒を制す。貴様が終焉の闇に対応すべく調整された様に、わしも終焉の闇勢を利用したんじゃよ」


 ミラクル・アーマーの透視能力で奴のチートを暴いたまでは良い。良いんだが、一番の問題は……


「あっ──オメガゼロ・エックスさんの鎧が!!」


「そして今、最大の脅威も言える第三装甲・三号も制限時間を迎え、貴様らの拠点へ帰った。更に!」


「まさか……破壊者君の!?」


 限界を迎え、強制的に拠点へと転移されるミラクル・アーマー。制限時間の短さは今後の課題として……

 続いてパワードスーツの制限時間がカウントされ始めた。そろそろ決着をつけないと敗けは確定。

 他のを連続着用したいが……一度試してみて無理で、原因も分からぬまま。試したいが──賭け過ぎる。

 そんな俺に対し奴は最新型や各種ディーテを召喚。自己分離したディーテが奴の体に装着される姿は──


「貴様の使う第三装甲もこの通り。わしの技術なら強化再現、量産化なども容易い話よ!」


 自慢げに見せびらかした。かと思えば、目にも止まらぬ速度で動き回り始め。

 俺とアナメをお手玉の如く弾き飛ばし、もう飽きた。と言わんばかりに動きを止め。

 俺達は何度も壁にぶつけられた末、漸く地面へ落下。ちょっと……ボールの気持ちが分かった気がする。


「最低限の身軽な装備から換装を行い、様々な戦況に対応する。なかなかに良いアイデアじゃわい!」


「あぐっ!!」


「アナメ!」


 手も足も出ず、打つ手もない。倒れ伏したアナメの腹を強く蹴り、背中を踏みつけるヴルトゥーム。

 疑似・ファイナルフュージョンが使えれば良いんだが……何故か反応しない。条件でもあるのか?

 そんな時、聞き覚えのある音色が聴こえて来た。未来でライチとレイシが奏でていた、曲名・森のリート。


「なっ、何だッ!? このっ、耳障りな酷いノイズはぁぁ!!!」


「ノイ……ズ? こんなに、綺麗な音色が?」


 優勢だったヴルトゥームは突如両手で頭を抱え、酷く苦しみ始めた。原因はこの音色らしいが──

 アナメの言う通り、綺麗な音色をノイズと認識する奴が分からん。だが、これはチャンスと立ち上がる。

 すると、何処からともなく汽笛の鳴り響く音が耳に届く。こんな地下空間にSL(蒸気機関車)の……汽笛?


「こ、今度は何──だぁぁぁあああっ!?」


「は、ははは……リグレットの奴、とんでもねぇ事をやりやがる。アナメ、ライチ、コイツに飛び乗るぞ!」


「了……解。ふう、ちょっと失礼するよ?」 


 此処と外の空間を繋ぎ、でかい穴を開け走って来る黒いSLが、ヴルトゥームに衝突しそのまま穴の中へ。

 虚を突かれたのもあり、乾いた笑いと感想が出た。何はともあれ。

 二人に大きな声で呼び掛け、SLへ強引に飛び乗り、空間の穴を抜けて地上へ出るのに成功。


「夜は……まだ明けてない、か」


「ハァ、ハァ、ハァ……っ!! 貴様ら、八つ裂きにして──ぬおぉっ!?」


「今のは……」


 空を見上げ夜が明けてないと知ると、奴の声を耳にし振り返れば……ボロボロな姿で出て来た。

 正面に貼り付けられてたのか、お前。相当頭に来たらしく、強い言葉を述べた瞬間──

 頭の側面に何かが強く命中したらしく、瞬く間に転倒。倒れた方向から逆算し振り向けば、其処には……


「リグレット!」


「はい。リグレット・ナッシング、現時刻を以て戦線に復帰致します!」


「クソがっ!! たかが人間の小娘一人増えたところで──ぐぉっ!?」


「今のはリグレットじゃない。だとすると……」


 頭や腕、腹部など巻かれた包帯が目立つ金髪ポニーテールで蒼眼の女性。

 リグレットが先頭車両から、スナイパーライフルを手に戦線復帰を声高に宣言。

 怒りのボルテージが上がり、言葉遣いも酷くなり始めたヴルトゥームに対し、口止めと言わん一撃が命中。

 的確に眉間を撃ったのは角度的に、リグレットじゃない。慌てて真後ろを振り向くと──


「どう、して?」


「……」


 奴の作り出した悪魔の木の実、ヴェレーノ。その花粉だか粉末を受け、魔女の姿に変異したルージュ。

 敵側になったと思っていた彼女が、自らヴルトゥームに牙を剥き、槍の様に長いライフルを構えていた。

 彼女の得物は自らの身長に近い長銃なのに、伏せもせず直立姿勢かつ片手で撃っていたらしい。

 だが……俺はそんな疑問より、何故仲間割れをしたのか? それが気になり問うも、彼女は答えない。


「新装備です、隊長!! 後、我々も援護しますので、思う存分攻め込んで下さい!」


「感謝する! 但し、無理はするな。命あっての物種だ」


 投げ渡された固い長方形の物は、形状から察するに恋月や朔月に装着するアタッチメント。

 銃身に嵌め込むと、マグナムからショットガンへ早変わり。使い方に疑問を抱くよりも早く援護宣言を言われ。

 感謝と命優先の指示を出す。奴の第三装甲には亀裂が入っている……攻め落とすなら、今しかない。


「破壊者君。残り魔力や霊力は大丈夫そう?」


「ギリギリの大博打。賭けだが──take(一か) a chance(八かやってみる)。リスクや危険を承知の上で何かをする事は、何も悪い事じゃないさ」


 脈を打つ音と共に明滅するパワードスーツの魔力経路が、残り稼働時間三分を知らせる。

 一か八かの大博打。可能か不可能か……再び第三装甲を呼び出すべく、フュージョン・フォンを操作。

 下っ側にある四つのボタン。赤・黄・青・緑の内、青を押してバックルへ差し込む。


「北欧の冥府より我が下へ駆け付けろ!! 来い、第三装甲・四号!! インフェルノ・アーマー!」


 右手を天高く掲げ、叫ぶ。正直格好付けてるだけだし、来なかったら来なかったで黒歴史待ったなし。

 すると──大樹にある木の根。地下へ続く穴が青い光を放ち、氷の如く青白い下半身。

 灰色の上半身を持つ四号専用のエイド・マシン。フェンリルが飛び出し、着地するや否や遠吠え。

 それに反応してか。汽車の二番後部列車が文字通り開き、カタパルトで射出した何かは俺目掛けて降下。


「トリニティ・フュージョン!!」


「ば、馬鹿な!! 四番目の第三装甲は、まだ未調整で使い物にならないと……」


 融合対象に愛とゼロを選択。俺を媒介にパワードスーツとフェンリル、第三装甲・四号を融合。

 腕や肩には青い狼の前足、脚には青白い後ろ足。手足の甲には足と爪が装着され、腰には尻尾。

 胸部は青と青白の二色が、挟む形で鎧と成す。仮面も狼ヘッドに変更。匂いが……変わったな。


「いや、わしは怯えなどせん!! 何故ならわしは今、貴様らの技術で更に強化しておる。全てがのう!」


「……弱い者程五月蝿く飛び回り、力を見せびらかしよる」


「オメガゼロ・エックスさんのお声が……変わった?」


 己の怯えを否定し、恐れを払うが如く力を振る舞う。実に……弱者の行動じゃな、ぬしよ。

 それに、ぬしの悪臭は覚えておるし、姿も見えておる。ならば、天狗と化した鼻をへし折るとせん。

 少し駆け出した──筈が、気付けば既にあやつを通り抜け、木にぶつかる始末。ぬぅ……もう少し、速度を落とさねば。


「リグレットさんリグレットさん! アレ、どう言う事!?」


「インフェルノ・アーマー。全第三装甲の中でも軽量で、高速戦闘向き。今はまだ、最終調整が済んでない未完成品」


「つまり……本当の意味でtake(一か) a chance(八かやってみる)


 未完成品……ふむ。確かにわっちはこのアーマーの試着や試験をしておらぬが故、仕方がありんせん。

 力に振り回される事は、善や正義とは言えぬ。制御してこそ真価を得るものじゃ。

 暴れ馬上等。このアーマーを使いこなせた時、わっちは──更にレベルアップしておる訳じゃからな。

 行くぞ、贋作(第七世代)を操りし望まれぬ来訪者よ。今度と言う今度こそ、終幕を下ろす時じゃ!





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