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ワールドロード  作者: オメガ
三章・alternative answer
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反撃 -カウンター-

 『前回のあらすじ』

 剛力阿修羅に対抗し、力自慢のゼロと交代するも記者会見のフラッシュ、追加で背中から四本の腕を生やし対抗され。

 ルシファーに交代し優位を取れば、相手も此方を真似して交代。変化阿修羅・ロキの変化に苦戦を強いられる。

 しかし素顔を晒した結果、優位を奪われ魔王と交代。後出しじゃんけんさながら、お互いに優位を取り合う。

 霊華と交代し、ウォッチの交代回数は残り一回。更に一回目から二十四時間経たねば、残り回数は回復しない。



 何かを決意した霊華は、強く握り拳を作り魔王を鋭く睨む。

 その表情は殺意や覚悟と言うモノではなく。寧ろ、悪い道へ進む子を叱る母親──にも見えた。


「恋、行くわよ!」


「承知した。さあ、反撃開始と行こうか」


 恋に呼び掛け、返答が返って来るや否や、右腕限定の三位一体融合を済ませる。

 どうやら、霊華達でも自分を中間に挟む事で、恋達との限定三位一体融合が出来る様子。

 ただゼロの時みたく、相性が存在しているっぽいので、恐らく自分とは違い、特定の誰か限定だろう。


「正義の為にも、邪魔者は消えろ──消え失せろぉぉ!」


「口調からもっ……感情を制御する余裕は、消えてるみたいね──ハッ!」


 ゲリラ豪雨と落雷が降り注ぐ中。激しく振り回す頭を両手で抱えつつ、腹の底から吼えれば。

 魔王の心に魔力が反応してか。大小問わぬ硝子の破片が浮かび上がり、此方へ一直線に飛んで来るも。

 両手を正面へ向け張った、やや白いバリアに次々と刺さる硝子。それをバリアごと後ろへ投げ捨て──


「セイント・エンチャントはまだ、効果が続いてる……よしっ!」


 両腕を包む白い光はまだ、効力を失っていない。その事を目視と体感で確かめ、深呼吸を一つ。

 両頬を力強く叩いて気合いを入れ直し、地面を蹴って魔王へと駆け出す。


「琴音。滅茶苦茶痛いけど、我慢しなさい──よっ!!」


 進路を遮る様、的確に目前へと降り注ぐ落雷──を、霊華は何故か走りながら避け続けている。


「なんで!? なんで当たらないのよぉぉぉ!!」


「先行放電が視認出来れば、誰だって見切れるわ!」


「いや……普通は無理なんだがな。相変わらず滅茶苦茶な巫女だよ、君は」


 落雷が当たらない。その事実に焦りを見せる魔王。その心情に反応して、落雷の落下速度が上がるも……

 先行放電。即ち、事前ポインターが見えていれば、避けられると言う無茶苦茶な回答。

 まあ、それを実際にやる辺り、高位の存在と戦闘経験や直感が実を結んでいる。と言う訳なんだがな……


「なんで……なんで何でナンデ何で!! いつも飄々としてるアンタが! そんなにも強いのよぉぉ!!!」


「真の強者こそ心に余裕を持て。それが、ウチの──家訓だからよ!」


 遂には落雷を全て避け、飛ばしてくる瓦礫や標識に看板。そう言った物全て避け、受け流し──

 懐へ飛び込むと同時に、悲鳴さながら疑問を叫ぶ魔王に対し答えつつ、胸の中央へそっと手を当て。

 静かに足を踏み締めた……直後。魔王は後方にある民家の残骸へ吹っ飛び、崩れ落ちた瓦礫の下敷きに。


「本当の意味で強くなれば、イジメや争いは減る。それが私の信じる正義、願い」


「そんなモノ……ただの夢物語や幻想。心を惑わす悪に過ぎねぇな!」


「──ッ!? ……でしょうね。だからこそ、私達が道を切り開く。例え、後続がいないとしても!」


 握り拳を作り、己の信念と信じる正義を語る霊華。だがそれを否定し現れたのは──

 疑似阿修羅・第二の顔にして、霊華の心情に漬け込む為、紅心に化けた悪神ロキが飛び掛かる。

 のだが……一切の躊躇も無く、顔へ食い込む右拳を一発。そのまま腕に力を込め、瓦礫の山へ押し返す。


「人は夢を叶え、実現出来る。そこに善悪の区別は何もない。あるとすれば……勝者や周りが残す、身勝手な善悪の概念と区別だけよ」


 尻餅を着いている偽者の紅心を睨み付け、そう語る。思い返せば、確かにその通りかも知れない。

 携帯電話や義手義足、飛行機や宇宙船。その全てが昔の人からすれば、無理難題の夢物語。

 無理だなんだと言われ続け、それでも実現して見せた数多くの偉人達。

 正義や悪ってのは、心の持ち方と個人の認識や常識で変わってくる。結局は言い掛かりに近い。


「……で、貴女はいつまで傍観者気取りで居る気かしら?」


「貴女と戦うのは、任務の対象外」


 振り返らず、何処かの誰かに話し掛ける。すると、背後からシナナメが現れ、任務には無いと話す。

 此方……と言うより、霊華とは戦う気が無いらしい。ルシファーはウズウズしているが……


(アノ……霊華?)


「駄目に決まってんでしょ!? 何余計な手間を増やそうとしてるのよ!」


(イヤ、デモ……ハイ。ナンデモナイテス)


 余程戦いたいらしい。おずおずと話し掛けるルシファーには申し訳ないが──今回は諦めて貰おう。

 と言うか……人間の巫女に圧を掛けられて、負ける悪魔王って……それはそれでどうなのさ?

 あれ? そう言えば会話に意識が向いてて気付かなかったけど、あの魔王・阿修羅は何処へ?


「と言うよりも。気持ちが早まり過ぎ──よ!」


「ッ……げふっ!!」


 敵意も無い相手に背を向け、自分達と話していたら……振り向くと同時に右拳による裏拳。

 それが誰かに命中。踏ん張るも勢いを殺し切れず、そのまま押し込まれた後、膝を着き顔を押さえ。

 シナナメの外見が頭から崩れ落ち、鼻から紫色の血を流すロキの姿へ。……余程効いたんだな。


「何故だ、何故……見破れた?!」


「姿形や声は真似れても、巫女の直感までは欺けないみたいね」


「魔王と変化が効かぬのならば──」


「剛力で押し潰す。確かに、『私が思う剛力』に対抗する術なんて、一つも持ってない。そこが弱点」


 鼻血を右腕の袖で拭いながら、何故見破れたのかを聞く。いわゆる、種明かし。

 けど、種明かしも何も、巫女の直感と言う曖昧な返答だけ。更に魔王や変化も通用しない。

 疑似阿修羅に残された手は──剛力のみ。霊華もそれを見抜き、自身の弱点だと言ってしまった。

 瞬間、奴はニンマリと笑った。十中八九、小馬鹿にした嘲笑い。コロッと顔を歌舞伎顔へ。


「自ら弱点を口にするとはぁ~。あっ、愚かな奴よぉ~!」


「まあ、アンタがそう思うのは勝手よ。但し──」


「あっ、そのか細くぅ~、二本しかない腕ではっ、我々が持つ六本の腕には対抗出来まいてぇ~!」


skill(スキル)・ゼロ。Attack(アタック)Are(準備は) You Ready(出来たか)?」


 攻略出来なかった霊華の弱点を知り、好機とばかりに態度すらデカくなる疑似阿修羅。

 六本の腕で襲い掛かろうとする中ですら、霊華は話しつつも淡々とウォッチのダイヤルを回し、起動。

 二本の腕では、四倍の腕には敵うまい。覆い被さる形で襲われた──のだが。


「力任せに近接戦を挑む阿呆には勿体無い手だけど……まあ『リベンジ』には丁度良いかしら?」


「き……貴殿はぁ──あっ、誠に人の子かぁ~?!」


「えぇ、人間よ。但し──『這い寄る混沌』の精神寄生型と共生してる、逸脱した人間だけどね」


 剛力阿修羅と同じく、黒髪に隠れた背中から腕が生え、互いの腕が組み合って均衡状態に。

 まあ違いと言えば……腕の数──だろう。奴は両手と背中を合わせて六本。

 けど此方は、背中から生えた黒い腕は八本。対して奴は文字通り手は塞がり、足も固定済み。


「こ、この腕はぁ~、一体ぃ~!」


「俺様は人の形のみならず、こう言う形態も取れるのさ。まあ、宿主様は好まねぇけどよ」


 此方のスタイルを真似、対抗する為に産み出 された魔人・阿修羅。まあ、それは良い判断だよ。

 でもなあ、奥の手に取ってある手札は、一枚じゃない。複数枚は残す、慎重なタイプなんでね。


「敵を知り、己を知れば百戦危うからず。まあ、今回の戦闘は……ッ、私達にも良い経験だったわ!」


 霊力を手に纏い、魔人・阿修羅の胸部に両手を突っ込み──核を三つ、抉り出す。

 糸の切れた人形さながら崩れ落ちた阿修羅の処理と、八本の腕は集いて大きな名状し難き獣へと変化。

 そのまま……もぬけの殻である阿修羅を一口で捕食。味わいつつ、飲み込むと背中の中へ帰還。


「社会や不正者への憤りと怒り。愛する者への妄想、最愛の相手との再会。辛味と酸味に……しょっぺえ味」


「そりゃそうよ。心……感情ってモノは、常々味を変える調味料なんだから」


「核はどうするよ。まだ俺達、核から元に戻す手段を知らねぇんだけど」


「寧達の下へ置いて行く他ないでしょ。にしても、琴音を失った戦力ダウンは痛いわね」


 色も味も無い、真っ白な心に──喜怒哀楽と言うスパイスが、代わる代わる振り掛けられて行く。

 甘く辛く苦く酸っぱい。他にも沢山の味付けがされ、マイナスやプラスエネルギーを産み出す。

 融合獣や魔人、ナイトメアゼノ……奴らも、結局は感情や夢から生まれる、自己投影した怪物(悪夢)

 それは兎も角──ヴルトゥーム討伐前に、琴音を失った痛手はキツい。まあ、これも奴の狙いだろうけども!


「兎に角急ぎましょ。余計な時間と労力を使った以上、此処でのんびりする暇は無いし」


「残リ一回デ王ト代ワレ。後ハ俺達ガ運ンデヤル」


「乗り心地は保証しねぇけどな。少なくとも多少は魔力や霊力、疲労は回復出来るだろうからよ」


 ヴルトゥーム──奴に下手な時間を与える訳にも行かず焦ると、ルシファーとゼロから提案を受け。

 本日最後の一回で自分と交代。二人が飛び出し、側面に四本の手が生えた……気色悪い棺へ。

 恋達三人を回収後、正直嫌だけど……気色悪い棺へ入り、頑張って眠りに着こうと努力する。

 乗り心地は──微妙。イメージとしては棺が四足歩行で、犬みたく走ってる感じだった。





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