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ワールドロード  作者: オメガ
三章・alternative answer
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黒き王、再び

 『前回のあらすじ』

 ケンプファーやディーテの量産型ρ(ロー)の大隊を相手にゼロと交代し挑むも、物量に押し潰されてしまう。

 そんな時、新しく完成した第三装甲であるフォックス・アーマーを使用。超能力パワーで大隊を一気に倒し。

 ケンプファーにもダメージを与えるも、使用制限時間が短く、トドメとまで行かず終わってしまった。

 しかしもう一つ完成している為、連続トリニティー・フュージョンがどうなるかも試す意味も込め、変身を行う貴紀であった。



 ……幾ら身構えても、何も起きない。もしやこの土壇場で、ボタンを押し間違えてしまったのだろうか?

 そんな焦りが湧き上がり、フュージョン・フォンを取り外してもう一度入力。


「トリニティー・フュージョン!」


 二人が見守り、ケンプファーが空気を読んで手を出さずに居てくれる中。

 バックルに差し込んで叫ぶも……やはり何も起きない。故障? それとも、連続使用は出来ないのか?


「他にどんな力を得たのかと期待したが……もういい」


「貴紀、危な──きゃっ!!」


「魔王さ──うわっ!!」


 何度繰り返しやっても、何も起きる気配がない。それに痺れを切らしたケンプファーが動いた次の瞬間。

 誰かに突き飛ばされ、気付けば先程まで居た場所で琴音が掌底を受けて突き飛ばされ、続け様にルージュも……


「クソッ! 何でだよ!? 動け、動いてくれ──あぐっ!?」


「貴殿の進化は此処までか。我らが王は大変、残念な御様子だ」


 何度差し直しても、叩いてみても全く反応しない。二人がやられているのに、助ける事も出来ない……

 無力感を感じていると胸元を強く踏みつけられ、起き上がる事すら出来ない始末。

 我らが王と言う言葉に釣られ、ホライズンの方を見る。表情の変化の有無は分からんが、哀れみを向けているのは──ッ!?


「どうやら我らが王はこの国諸共、貴殿らを滅するつもりの御様子。さらばだ……弱き者よ」


 ケンプファーが足を退けたのに、体が重くて動けない……この感じ、ホライズンが発する圧倒的な魔力だ。

 琴音とルージュの他に、ディーテの量産型も動けない状態。文字通り、捨て駒として切り捨てる気か!

 焼け泡立つホライズンの左手に魔力が集まって行くと、徐々にだが──体が軽くなり、立ち上がれる。


「全てを喰らう闇の嘔吐……」


「アレは──ヤバい!!」


 周囲に無数の黒い穴が現れ、中から勢い良く飛び出す黒い小粒。それが集合し、球体となって行く。

 漸く動ける様になったのに、あの黒い球体に『引き寄せられる』のに抵抗して踏ん張ると、動けない。

 球体が膨張し、呑み込まれると視界は真っ暗闇。もし何か抵抗をするのなら、此処が最後のチャンス。

 小さな光が次第に大きく膨れ上がる……此処でウォッチのダイヤルを俺自身に向け、三回叩く!


ability(能力)(スリー)Are(準備は)You Ready(出来たか)?」


「スターダスト・ノヴァ」


 ゼロの声が聞こえた瞬間──襲い掛かる膨大な熱量から起きる大爆発。

 ……を胸元に集め、左右から白い光を纏った両手で掴み、可能な限り握り潰す。


「駄目だ、宿主様! 流石にキャパオーバーだ、アインを使って無力化を……」


 実は言われるよりも早く、装填の力に加えて無の領域・アインを使っているが……

 今の俺が無効化・装填出来るキャパシティを幾らか越え、至近距離で大爆発に飲み込まれ──


「己が身を盾に仲間を救うその姿、敵ながら見事。とだけ言って置こう」


 バイザーの文字以外、何も見えない……思考にノイズが混じる……耳も、耳鳴りが酷くて殆んど聞こえない。

 第二装甲……パワードスーツの各所に亀裂が入って危険だと、警告の文字がバイザーを埋め尽くし。

 全身から力が抜け、倒れた。ドーム状の障壁を張り直撃と後方への被害は多少防いだが、この有り様。


「……」


「畏まりました。王の攻撃に抵抗出来た貴殿の命は残し、娘二人の命を頂く。新たなる悪夢を産む母体として」


「畜生……体が……ッ!?」


 ある言葉を喋ったらしいホライズン。倒れ伏す琴音とルージュを、新しい悪夢を産む母体にする……だと!?

 二人が永遠の悪夢に犯され、泣き叫ぶ姿が生々しく目に浮かぶ。それを拒絶する様に、体が動く。

 二人に近付くケンプファーとホライズンを止め様にも、全身が悲鳴を上げ、少しでも動くと激痛が走る。


(デストラクション、僕を止めてくれ!! あの日、君と交わした約束を果たす為にも!)


「この──声、は……」


 頭に響く、ドゥームの懐かしくも必死に助けを求める声。

 そうだ、立ち上がらなくては……そう想えば想う程、左腕にある七本の線が強く反応し始める。


「あぁ……そうだ。僕には、立ち上がらなくてはならない理由が──ある!」


「古き親友・ドゥームと交わし、わっちに託された、果たすべき約束」


「終焉の闇……その力に飲み込まれ暴走した時、その暴走を食い止め、破壊すると……私は約束した……」


「だから、こんな場所で這いつくばってる暇は──ない!」


 橙・藍・緑・青・紫・黄・緋の順番で光り、その順番に応じた面々が俺と同じポーズで隣に現れ。

 俺が思っている言葉を、次々と繋げて行く度、身体から魔力と霊力が沸き上がり……外へ吹き出しては。

 噴火の如く天に昇る紅い光柱。そして──叫べと言わんばかりに心の中へ響く一つの言葉。


「疑似・ファイナルフュージョン!!」


 心が求めるままに、力強く叫ぶ。六つの光球が左腕から飛び出し、叫びに応じて来た四つの第三装甲や。

 白蛇・黄狐・藍狼のサポート……いや、エイド・マシンと一体化。第三装甲はパワードスーツと融合し再構築。

 全体的な色は黒のまま、装甲・重量・魔力経路の増加。エイド・マシンは尻尾・脚・腕に装着──

 最後に専用の仮面が頭に装着、クラッシャーが展開。後頭部の黒髪が伸び、外へ展開されて完了。


「疑似・ファイナルフュージョン……だと?」


「破壊を司る、黒き王……」


「アレが……王が唯一無二と認めた、古き友。されど、今や太古の骨董品!」


 心の奥底から溢れて来るこの力……当時の力には劣るが──継ぎ接ぎ人形共を倒すには十分過ぎる力だ。

 我が親友の心を閉じ込めた操り人形よ。必ずやその殻。俺に与えられた名の通り、破壊してくれる。

 継ぎ接ぎ人形が俺の頭部に右回し蹴りを繰り出した様だが……


「届いて……ない!?」


「お前の蹴る力より、俺から漏れ出る魔力と霊力が作る、ジェネシス・オーラが勝っているだけだ」


 そう。俺とドゥームは己の体に収まり切らない魔力と霊力が、常時漏れ出している。

 貴紀の魔力が常時駄々漏れで、消耗が激しかったのはその名残。

 左腕で奴の右足を軽く掴み、ホライズンへ向けて一気にぶん投げると──躊躇無く右腕で弾きやがった。


「アイツは仲間じゃないのか?」


「仲間……我々、ナイトメアゼノに、仲間意識は──無い」


「あぁ、そうかい」


 俺と奴は互いに近付きながらも話し合い、拳が届く距離で立ち止まった。

 そして会話が終われば、やる事は一つ。単純明快、シンプルな答え。


「ッ!!」


「ははッ!!」


 お互いに顔面をぶん殴り、答え合わせを終えれば──楽しい楽しい戦闘だ!

 右腕の刺突や斬擊は避けるか弾き、左拳は捌くか殴り返す。そんで時には、人間が生み出したコイツも……


「ガードが疎かだぜ?」


「な──ゴホォッ!?」


「山突ィ、ティー・カウ・コーン! オマケのォ~……鉄・山・靠!!」


 両手で同時に顔面と腹を突く、空手の山突の直撃を叩き込み虚を突いたら、相手に近付き。

 後頭部へ両手を回し、ムエタイの回し膝蹴り。畳み掛ける形で奴の足を引っ掛け──そのバランスを崩し。

 力強い踏み込み、震脚と共に背中から強烈な体当たりを叩き込み、吹っ飛ばして建造物へぶつけたやった。


「……やはりな」


 何事も無かったかの様に立ち上がる姿は、ダメージの欠片すら残っていない。

 それは俺の予想を裏付けるには、十分過ぎる結果だ。初戦で貴紀が無茶をして追い詰めて尚、回復した理由。

 そう言う事か……破壊を悪と見立てる訳か、調律者共は。そして創造者である自分達が正義だと。

 倒せなくはない──が、不完全復活故に現状を維持出来る時間が全く足りん。


「例え最強の破壊者が現れたとしても」


「我々は不滅。調律者の技術力は、機械生命体の無限再生を可能にした」 


「その力と技術力を我ら悪夢の糧にし、改良を加え、全てを永久の悪夢へと誘う」


「データと同じく、コピーからの完璧な複製と再生。その力は破壊者の行う破壊速度を常に越える」


 俺の周囲にケンプファーとρ(ロー)の複製軍団……か。

 大隊と言う程は居ないが、仲間を連れて撤退するには──些か邪魔だな。

 ならば俺が進むべき道は、破壊して切り開く。不完全であろうとも、尻尾があるのなら!


「テール・ツール!」


 尻尾の一部を分離させ、右腕に装着させる。長さは尻尾の四分の一。

 その先端に黒刃だけを装着。天に掲げ、ジェネシス・オーラだけで黒刃を最高速度に至るまで回す。


「ジェネシス・クラッシャー!」


 高速回転する黒刃から赤と黒の稲妻が放出され、辺り一面を無造作に走っては地面や敵を焼き尽くす。

 今度は稲妻を先端に集中させ、雷の波紋としてこの国全体に拡散させる。

 そうすれば機械兵器達は内部から勝手に故障し始め、動きを止めて停止。神獣の雷に絶縁対策など無意味。


「本当はテメェを破壊してやりたいが……タイムリミットが近い。悔しいが、またの機会に、だ」


「我らが王の為にも、貴殿は逃さ」


「逃さねぇのは、俺も同じだ。貴様だけは、貴様の核だけは──確実に、今此処で抉り出す!」


 本音を言えば、ホライズンは此処で討ちたいが……まだ目を覚まさん二人が巻き添えを食う可能性が高い。

 故に撤退を、と思ってはいるがな。貴様の方から来てくれるのは有り難い話ってなモンだ。

 ジェネシス・クラッシャーは尻尾に戻し、俺を掴もうとする両手を払い退け。

 逆に俺が奴の胸と腹に手を突っ込む。何故パワードスーツの指が尖っているのか……それは、敵の核を抉り取る為だ!


「や、やめ……」


「フンッ!!」


 制止の言葉なんぞ、俺と言う破壊者には届かん。ケンプファーの核を二つ共抉り出す事にも成功。

 男が白で、女が赤……か。テール・ツールにでも収納して、黒刃の稲妻が焼き尽くしたρ(ロー)や。

 ケンプファーの複製がまた現れん内に二人を拾って、今日は撤退だ。次は龍を見付けて、タイムを増やさなければ……

 こうして俺──デストラクションはストレンジ王国に居る仲間全員を連れ、他の仲間が待つ遺跡へと帰った。





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