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ワールドロード  作者: オメガ
三章・alternative answer
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醜悪な正義

 『前回のあらすじ』

 イエッツト城の封印されていた部屋にて、ホイヒェライ博士の話を聞くも……眠気に負けてしまい、起こされる。

 超古代の人類が犯した、人であるが故の過ち。それはオメガゼロ・エックスと終焉の闇を人類に無理矢理組み込んだ事。

 それが原因で封印されていた終焉の闇が復活し、オメガゼロ・エックスが再度封印。これの繰り返しを悪と見る博士。

 世界を救う願いを受け、新しい第三装甲やアップデート機能を貰い、更なる激戦に向けて準備を始めるのであった。



 新しい第三装甲を作る為、寧達は城に残って貰い──峰平進と自分、恋はストレンジ王国へ来ている。

 理由としては、追加で必要な電子部品の購入と……王国で普段見掛けない人物を見た。と言う──

 峰平進の情報を信じて……だ。町中は新聞を(じか)売り、店で号外と大声で販売している老若男女のみ。


「普通はこの昼頃って、飲食店が賑わってると思うんだが……此処は違うのな?」


「ストレンジ王国は新しいものを積極的に取り込む国……だったんだがな。調律者様達が降りて来てから、変わってしまった」


 ふと思った疑問を口にすると、峰平進は教えてくれた。新しいものを積極的に取り込む──か。

 確かにその発想は悪くないし、受け入れるのも良いと思うんだが……『何を取り込む』か、が問題だろう。

 調律者達の技術や話を鵜呑みにし、実行済みとしたら──この町は滅びるだろうな、間違いなく。

 購入した様々な部品が入った紙袋を抱えつつ、そんな事を思ってしまう。


「確かにこのカメラや携帯電話。遥か昔の機械技術は取り戻しつつあるんだが……」


「だが──どうしたんだ?」


「俺はこれ以上、機械技術を受け入れるのは危険だと思っている」


 そう思っていると、突然人混みの中で首から紐でぶら下げたカメラを掴み、何故か震え出す。

 何事かと思った恋が話し掛けると、掴んだカメラに力を込めつつ、更なる機械技術の導入に危険だと呟く。


「ッ──ご主人様、速く何処かへ隠れよう。敵の新型が此方へ来る」


「アレは……っ、建物の中へ入るぞ!」


 右肩を掴み、軽く揺すられて指差した方角を俯瞰視点で見ると──居た。幾らか改良されているが……

 間違いない、ディーテだ!! あの滅茶苦茶硬くて厄介な全裸ロボ子が、もう量産されているとはな。

 まだ此方に気付いてはいない様子。このまま突っ立って被害を生むより、隠れて余計な戦闘は回避する方が優先だ。


「それならこっちだ、早く!」


 手を掴まれ、止まらない人混みの流れから、乱暴なまでに引き込まれた先は──


「ようこそ。俺達、新聞記者の本社へ!」


 よりにもよって、嫌いな新聞記者達が忙しく駆け回る姿が見える場所……マスコミの本社。

 耳を傾ければ──夜になるとカンテラを手に徘徊し、顔をもぎ取る死体や住人が現れた~……とか。

 ローブで姿を隠した宗教家が、住民達に布教している~なんて話が聞こえる。顔をもぎ取る死体って何さ?

 そんなこんなを思いつつ、非常用階段を登り辿り着いた三階建て本社の一番上。


「俺達の仕事はいち早く情報を住民達に伝え、少しでも多く危険から引き離す事だ!」


「全く……こう言う人間が僕達が戦ってた時代に多く居てくれたら、良かったのにね?」


「それはそれで、喧しそうだけどな……」


 本当に……何故、こんなにも馬鹿正直な人間が増えないのだろうか?

 いや、馬鹿正直過ぎても問題だが。と言うか、此方だけで話している間も何やら熱血──いや。

 感情が爆発した暴走状態で延々と喋っとる。アレだ、オタクが好きなものを早口で喋る時にそっくりだ。

 好きな事やモノに対する愛が溢れて、誰かにその魅力を伝えようとして歯止めが効かん状態だわ。


「こらっ、進兄さん。連れて来たお客さんを無視して、一人で盛り上がらないの!」


「いてっ!」


 一人で喋っていた峰平進に後ろから丸めた雑誌らしき物で叩き、正気に戻したのは──高校生位の男性。

 この手付き……相当慣れてるな。長年付き添った相棒(バディ)か、それとも巻き込まれて慣れたか?


「あ、えー、と初めまして。私は峰平歩(みねひらあゆむ)と言います! 進兄さんはまた暴走してましたが、どうか温かい目で見ていただけませんか?」


「これはこれは、ご丁寧に……自分は紅貴紀。此方の連れは天皇恋」


 此方に向き直り、深々とお辞儀をして自己紹介をしてくれたので、此方も軽く自己紹介を返す。


「ほぅ。君は兄君(あにぎみ)と違って、随分と落ち着きのある人なんだね?」


「兄さんは熱中すると暴走しちゃうからね。私がブレーキ役にならないと、誰も止められないからさ」


 どうやら、相反する性格の峰平歩君に興味を持ったのか。恋は親指と人差し指で顎に触れ──

 観察している。しっかし、自然界って本当に凄いよな。必ず天敵やら相反する存在を生むんだから。


「貴方が……紅貴紀さん。お話は彼女達から聞いています」


「彼女、達?」


 気付けば峰平歩君は此方をジィーッと見ており、何かあるのか。はたまた、既に正体やら預言が?

 なんて思っていたら、彼女達から聞いていた──と言う複数系で言われ、正直頭の中は?マークで一杯。

 付いて来てください。と口で言わず、手招きをするって……何か喋ると厄介な事にでもなるのか?

 疑問を抱きつつ、彼の後ろを追って正面と左右ある部屋の内、左側の部屋へと入った其処には──


「坊主か。悪いな、合流が遅くなった」


「なんで大将と、旅の女医が!?」


「俺達だけじゃねぇ。一人娘の巴も一緒に飛ばされたんだが……此処の連中、正気じゃねぇ」


「喋らないで。余計な傷口が開くから」


 正面の横長ソファーに腰を降ろし、全身に湿布が貼られ、上半身に包帯を巻かれ痛々しい姿の大将──

 を魔力や奇跡の力も無しに、治療をしている旅の女医さん。巴も一緒らしいが……姿は見えない。

 右側の同じソファーに寝かされ、顔が青く腫れているのは……まさか、リグレット・ナッシングか!?


「顔が青く腫れた彼女は、私が住民達から匿ってるんだ。正義の為だと言っても、ここまでやる必要は無いだろうに……」


 リグレット・ナッシング、彼女は自分の大切な仲間だ。時代遅れだと罵られてもSLをこよなく愛し。

 寧達が作った特別な蒸気機関車を操り、自分達を遠くまで運び、避難誘導や逃げ遅れた人達を助ける。

 そんな心優しいリグレットを──よくもっ、人間のなり損ない共が!! ……いやいや、落ち着け自分!

 全く関係のない峰平歩君までもが、怒りで震える程に握り拳を作ってもなお、怒りを留めているんだ。


「そう言えば……進兄さんって事はつまり、君は弟って事かい?」


「あ、はい! あんな兄ですが何処までも真っ直ぐで、しっかりした凄い兄なんですよ? ……時折暴走するのは何度も見てきましたけどね」


 幾らか経った今更気付いた。彼は峰平進の弟なんだと……返事を返してくれる彼は苦笑いをしてる辺り。

 過去に相当暴走してたんだな。その都度さっきみたいに止めてたんだ、と思うと本当にご苦労様と言いたい。


「それで大将、巴さんは何処へ?」


「調律者とやらを崇める連中に連れて行かれちまった……流石に何十人と攻め込まれちゃあ、無理だった」


「もしかして全員の動き、変に統率が取れてたりした?」


「あ、あぁ。まるで機械を相手にしてるみたいでな。気味悪かったぜ……」


 巴の行方を聞けば、調律者の信者達に連れて行かれたと言う。ベビドの時にも同じ事があったが……

 恐らく、それと同じ手口だろう。指令に忠実なまでに従い、任務を遂行する。だが、何故拐う?


「彼女達は生命体を信用しない。信じるのは信号こそ絶対順守の機械だけ」


「女医、さん?」


 突然会話に参加し、調律者に関しての情報……と思わしき言葉を発する。魔力や奇跡に頼らない。

 そんな治療法を取る彼女なら、機械技術の導入は賛成派だと思う。械技術で人命も救えるし。


「確かに機械は人の生活を楽にしてくれる。でも、それは使い手が正しい判断が出来てこそ」


「その通りだ。どんな力も、それを使う者次第で善にも悪にもなる。心だってそうだろ? 坊主」


「あぁ。包丁も食材を捌いて料理に仕上げるのは善、人殺しに使えば悪。一般的な常識で言えばな」


 女医さんと大将は、今の醜悪な正義で心を満たした人間が機械を使うには、危険だと判断したんだろう。

 日常的に使う代物でも、使い方を変えれば結果も変わる。物を掴む箸も、突き刺せば目潰しにもなる。

 それを善や正義と見るか。偽善や悪と認識するか──でも変わる。まるで万華鏡だな……


「何処へ連れて行かれたか。大体の予想は付いてるから、追えると言えば追えるんだけど……ね?」


「警備兵を倒すか、潜入しないと駄目。って訳か?」


「うん……でも、ただの警備兵じゃない。最新型と量産型の機械兵DT。対・破壊者用兵器、Delete tortureなんだ」


 流石はマスコミ、新聞記者。調律者すらマークしているとは──けど、そう簡単には行かないのが常。

 どうやら先程外で見掛けたあのディーテ、その新型と量産型が警備をしていて、中に入れないそうな。

 オマケに対自分用かよ、アイツら。どうりで手強い筈だわ……まあ、そんな事を言ってもしょうがない。


「場所を教えてくれ。ちょっくら行ってくる」


「それならぁッ!! 当然俺も付いて行くぜっ!」


 真剣な顔で弟君に予想する場合を聞いていたら、熱血が再燃した兄の方が付いて行くと言い出す始末。

 こんな五月蝿い奴を連れて潜入なんて無理。恋の方を見ると大将から何かを受け取り、袖に収納していた。

 本当は連れて行きたくないが──現地人のナビやらサポートがあるのは正直助かるので、連れて行く。


「私の兄が犬は餌で飼え、人間は金で飼える。って、何とも皮肉の効いた言葉を言ってた」


「君と君のお兄さんの名前は?」


「私の名前はニーア・プレスティディジタシオンで、兄はイリュジオン」


「否定に魔法・手品・奇術と幻想──か。君は一族で酷く嫌われていたんだろうね。本当、醜悪な正義だよ」


 そう──動物や家畜は餌で飼え、人間は金で飼えるし買える……酷い事にね。

 女医さん。って言い続けるのも悪いし、お兄さんの名前と一緒に聞いてみたら──恋はニーアに同情。

 哀れみの眼差しを向けるも、彼女はそれを全く気にすらしていない。いや、眼中にない?

 そらは兎も角。巴や捕まっているかも知れないルージュを救うべく、自分達は峰平歩に位置を教えて貰う。




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