人であるが故に
『前回のあらすじ』
機械兵達を倒し、改めてイエッツト城へ入った二人。内装は外から見た通りボロく、城と言うよりは神殿向き。
壊された強化パーツらしきマフラー。熱血取材をする峰平進を放置していたら、突然誰かにぶつかってしまう。
それは世間から預言者と呼ばれる裁定者・アンパイア。催促され、固く閉ざされた石扉を開かせるギミックを解く。
我先にと突っ込むも、結界に阻まれ峰平進は感電。アンパイアも来ないらしく、一人で進んだ先で貴紀は、寧やマキ達と合流に成功する。
ホイヒェライ博士の話は昔話から始まり、最初こそ過去に何があったのか、どう言う出来事が起きたのか。
そんな好奇心と渋めの緑茶、やや堅めの煎餅と揃ってたから、幾ら平気だった。のだが──
「と言う事があってな」
惚れた相手との馴れ初めとか、個人的にクッソどうでもいい会話があちこちに混ぜられて。
知らない間に眠っていたらしい……気が付けば目の前は何も映らない。集中力が切れて、俯瞰視点が解除されてた。
「おい、聞いているのか?」
「ふぁ~っ……すまん。寝てた」
「全く──では肝心な部分を話してやる。耳の穴をかっぽじってよく聞け?」
もう一度、意識を自身の内側にある力へと集中。感覚的に瞼を閉じ、ゆっくりと開く。
よし、見えた。俯瞰と言うだけあって、上から覗き見る感覚がどうにも慣れん。
「オメガゼロ・エックス。お前はこの星の言葉で言う来訪者であり、本来は人類に干渉せず立ち去らねばならん」
「でも紅さんはこうして、人類に干渉していますよ?」
「話は最後まで聞け、カダベル!! だが、俺達の超古代から今現在まで続く人間の、根深い欲望が貴様らまで絡め取ってしまった」
そりゃまあ、この星とは違う場所で生まれ、奴を追って遥か遠くから来た概念的な存在だしな。
それが今や肉体を持ち、何か起こる度に呼び出されては、人類の尻拭いを繰り返しやらされる始末よ。
人類側の言葉で言えば、問題解決専門の派遣社員かつ、仕事そのものがサービス残業……って、ちょっと待て。
「人間の根深い欲望は分かるし、絡め取られたのは理解出来る。が……自分達って複数形なのは、何故だ?」
「貴様が封印した終焉の闇。奴を利用しようとする馬鹿共が、我々人類や星の外から現れてな」
「ちょっ──なんで人類まで!?」
「何故? そんな事を理解する頭まで力と一緒に放出してしまったのか……貴様は」
気になったのは、何故人類側にそんな破滅願望を持つ奴らが? って部分。
そんな疑問を投げ掛けたら、なんか凄い馬鹿にされた様な気になる返答を返された……ちょっとムカつく。
けど、此処でその発言に噛み付いてもグダるだけってのは、馬鹿でも分かる。悔しいが、その言葉を飲み込む。
「ご主人様。人は少しでも多く楽をし、欲を満たしたい存在だ。つまり──人類の歯車に組み込もうとしたんだ」
「正解だ、狐娘。そしてあの馬鹿共はあろうことか、貴様と終焉の闇を人類のシステムに組み込もうとした結果」
「そうか! 自分は抑止力としてこの星に縫い付けられ、奴は定期的に戦争を起こす為に……」
横から話に割って入り、教えてくれる恋にホイヒェライ博士は指を差し、正解だと力強く発言。
そんでもってまあ。生存へ対し変に余裕を持ってしまうと、別の事へ知恵を働かせてしまうと聞くが……
ウイルスとワクチンって事かい、終焉の闇と自分達は。でも確かに、ウイルスだけじゃ価値はないからな。
命を奪う現象に対し、それを阻止する何かがなければ意味をなさない。
「全く……未来ばっかり見る馬鹿や阿呆共のお陰で、助け合いと言う言葉は本来の意味を歪めるばかりか」
「心にある闇の種を育てさせ、終焉の闇復活に貢献してしまった──ってところかな?」
「Exactlyだ、狐娘!! やはりお前はオメガゼロ・エックスの知能、その大部分だな」
今の人間にも、同じ事が言えるのかも知れないな。未来に目を向ける余り、今現在や市民の生活や──
認識のズレが大きく離れ、支持率やら目に見える成果のみに目が向いている様にすら、思えてしまう。
生命の危険から生きる延びる為、動いていた欲望。それが今や生存以外に向けられ、人類は自ら闇を育てた。
それに気付き、早急に手を打とうとした時。闇を撃退出来る自分に白羽の矢が立った……か。
「確かにオメガゼロ・エックス、奴のお陰で一時的な平和は迎える。だが、俺はこれを悪と見ている!」
「ど……どうしてです? 脅威が去って、平和が迎えられるならそれは良い事じゃないですか」
ホイヒェライ博士に噛み付くムート君。他人の言葉を鵜呑みにせず、意見を言うのは良い事だ。が……
その考え方は余りにも『今』しか見ずに滅びた、このイエッツト城下町と同じだぞ。この町は今を重視した余り……あれ?
自分は何故──此処が滅びた理由や記憶を持っている? 今を幸せに、精一杯生きる。
そんな理想と希望を抱いた、イエッツト城下町が──地獄絵図の如き、業と欲望の焔に焼かれて滅びたと。
「自分達はやりたい放題。その罪と罰は他人に受けさせ、使い捨てる奴らを正義と呼ぶか?」
「それ……は──」
その言葉はイジメをしていた子供が犯罪を犯し、罪と罰を親や第三者に擦り付けた挙げ句。
大人になり、産まれた子供にイジメは駄目だと、自分の仕出かした事を忘れた上、棚にあげて教えるものだ。
反省も謝罪もしていない愚者が、ヘラヘラと誰かにその愚かしさを伝える。それを正義とは呼べない。
「そもそも、俺達七人は反対だったんだ。だが俺達が反発する最中に漬け込む形で、奴は尖兵を送り込んだ」
「調律者……か」
「あぁ。奴らはヴルトゥームの花をこの星に持ち込み、その花粉で俺達に幻覚を見させた。その結果がこれだ」
七人の科学者、七つの鍵穴、七つの……遺跡。自分に向けて作られた強化パーツとスキル。
にしても……超古代の時代に調律者が何故現れる? もしかして、ゲートを通って……いや、違うな。
アレはオルタナティブメモリーのある時代、救いを求める時代を探知し、運んでいる。それに……幻覚を見せる花!?
アレは無限郷時代に同じ異変と問題を起こしたから、根っこから燃やし尽くしたが──アレが何故超古代に!?
「オメガゼロ・エックス……いや、破壊者よ。人類を救わなくても構わん。その代わり、世界を救ってくれ」
「奴ら、三勢力へのリベンジのオマケで良いなら……な」
外見子供博士のホイヒェライ博士が頭を深々と下げ、頼んで来た。元々、世界を救う為だけの旅が故。
散々人の邪魔をしてくれる三勢力。奴らにリベンジを叩き付け、地に伏させたオマケで良いなら。と言うと……
世界を救う依頼である以上、細かい要望は二の次だ。と言う辺り、人類側なのに人類を救う気がない。
「そこの将来有望な小娘二人、お前達には俺の研究データをくれてやる。破壊者がこの暴れ馬を扱い切れれば、多少は力になるだろうさ」
カプセルの蓋から青い直線の電波が放たれ、寧とマキの携帯に送信される。……何故自分宛じゃないんだ?
すると今度は頭上で浮いている蓋が回転し始め、何かしらのデータが自分の体に、浸透してくるのが分かる。
「す、凄い……このアーマー!! 私とマキちゃんが設計したのより出力増加して装甲は薄く重量も軽い!」
「最高速度は──音速!? 反面、武器と装備は必要最低限に抑えた代わり、殺傷能力は高め」
「一つ目は野性的で、二つ目は服装や武器も和風……モチーフは狼と狐ってのもいいね!」
「当然だ! 何せこの俺が窮極の門を通った上で設計し、人類の馬鹿共に一泡噴かせる為のアーマーだからな!」
何の事かさっぱり分からんが、分かる内容は幾つかある。久し振りに音速の壁をぶち破らなきゃならん。
と言う事だ……着せられる前にバリアーを使える用にしよう。でなきゃ、幾ら肉体強化しても砕け散るし。
と言うか──ホイヒェライ博士よ。アンタ、窮極の門を通ったのかい……ヨグ=ソトースに遭遇して、よく生きてるな。
「破壊者には──アップデート機能を与えてある。正確には、外へ漏れ出す穴を閉じる補助機能だ」
「成る程。どうりで少し体が火照り始めた訳か」
「燃費の悪さや威力も改善され、魔力防御も少しは上昇しているぞ? 最後に……グラップリング機能だ」
要はエネルギータンクの修繕だ。穴の空いた部分を直し、漏れ出ていた分を使い攻撃と防御力の上昇。
グラップリング機能って言うと──引っ張ったりする紐とか何かだったっけか。
「それじゃあな。後はお前達に任せた」
それだけを言って彼は消え、タイムカプセルから離れると再使用を恐れてか、崩れ落ち。
バラバラに分解されてしまった……多分だが、このパーツも使え。そう言う事だろうな。
寧とマキを見ると──既にパーツを拾っており、先程貰った設計図通りに作ろうとしているんだろうな。
自分も自分で、何の用途で使えば良いのか分からんグラップリング機能。これを使いこなしてみよう!
投稿が遅れてしまい、申し訳ございません!
ちょっと動画製作に集中する必要があり、小説の方を疎かにしてしまった上。
予想外過ぎる予定を組み込まれましたが、漸く落ち着いたので次回から投稿時間を可能な限り、守って行きます!




