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ワールドロード  作者: オメガ
三章・alternative answer
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死んだモノ

 『前回のあらすじ』

 本来のルートとはイベントが起きる時間、出来事も変わっており、困惑するも其処に助けようと現れたのは──ただの人間、ムート。

 彼のお陰で危機を脱し、本来ならば魔人・フルヒトと戦う中央広場へ向かうと……其処には四天王・ブレイブと白虎のお面を被る子供が居た。

 二人から話を聞き、今回がこの星に襲来し根付いた侵略者を討つ最後のチャンスだと教わり、名前を聞く時──

 夜空から真夜が降下し、地面に激突。火星の都市が滅びた事、仲間が第四の遺跡に居ると聞いた後……ムートや姉妹が居る民家が燃えている事に気付く。



 サキとルナ。姉妹が住む二階建ての民家が焼け崩れ落ち、次の日の朝を迎え瓦礫を退かして探すも

 姉妹や二人を守る様に頼んだムート君の遺体さえ見付からない。単に探し方が悪かったのか。

 それとも遺体が完全に焼けてしまったのか。遺体確認出来ずってのは生存フラグとは言え、心配だ。


「貴紀さん。聞き忘れてましたが……何故犯人と思わしき人物を、追わなかったんです?」


「本当、なんで追わなかったんだろう?」


 何となく──理由は分かっていた。この時代で狼の森を、ひいてはこの惑星を救う為とは言え。

 奴を倒す為に犠牲となった少女──ライチ。彼女の最後を──森の一部と共に燃え尽きて行く光景を思い出したから……だろう。


「……さて。無駄な時間を浪費しましたので、修行も兼ねて途中にある城下町を経由し、第四の遺跡へ向かいましょう!」


「あぁ──了解した」


 無駄な時間……浪費。そんな事、いったい何処の誰が決めるのだろう? 自身の意見や知識を押し付ける。

 そんなモノ、正義とは言えない。一個人の正義ではあるんだろうが、他人に押し進めるモノじゃない。

 愚痴にも似た思考を走らせつつ、第四の遺跡へと向かう事になったんだが……修行は分かる、聞いてたから。

 でも、このカエルみたいな格好は何? これで走れって事? 何の意味があるのか分からんのだが……


「なぁ、この格好に何か、意味はあるのか?」


「モチのロンです。寧ろこの走り方が出来ないと、筋力不足で詰みます」


 あぁ、この格好で猫や犬みたく走れって事。成る程成る程……って、あんなに素早く走れるか!

 でも──もし狼の俊敏さと馬の如く力強い走りが同時に出来るのなら、今以上に強くなれるかも知れない。

 ……走るイメージは何が良い? やっぱり二秒で最高速に到達するチーターの走り方かな。

 牧場を後にし、普段する事の無い獣走り……とでも言う走り方で不器用ながらも走ってみるが……やはり転ける。


「貴紀さん。先ずは両手でボクシングのワンツージャブ、次に足でも同じ様に!」


「いや……言うより見本が欲しいんだが」


 言う側は自身の分かる言い方で説明するが、聞く側が理解出来るとは限らない。

 仮に分かっても、それを実行出来るか否かは全くの別物。言うだけ言って、見本を見せない奴と同じだ。


「成る程成る程。それなら、丁度見本になる奴が二匹程居ますので、引っ張り出すとしましょう!」


「なっ、何をす──るぅっ!?」


 座り込んだ自分に近付き、左腕を掴んで来たと思ったら腕にある六本線──が七本に増え、その内。

 藍・橙の線を指で軽くなぞり、絡め取った二色の光を後方へと放り出すと……


「これ程無理矢理かつ、強引な呼び出しは初めてじゃ……」


「あぁ、全くだ。とは言え、こんな芸当が出来るのはご主人様を除けば、這い寄る混沌位だがな」


「愛……それに、恋も!」


 先程の光がアーチを描き、地面に落ちると狼娘の愛と狐娘の恋へと姿を変え、愚痴をこぼす。

 二人の名前を呼ぶと、頷いて答えてくれる二人。ふと気になって左腕の線を見たら──

 藍と橙の色が消えている。と言う事は……残りの線には霊華やゼロ、ルシファーに静久が宿っていると?


「まあ、話は聞いていたから説明は不要だ。僕達の走り方を学びたいんだね? いいとも、是非学んでくれ」


 そう言うと恋と愛の二人は、獣の姿へと早変わり。相変わらず大きいし、ふわふわのモフモフ。

 毛繕いとかスキンシップをしてやりたくなるんだよなぁ……けど今は修行に専念する時。

 二人曰く『前後の足は左右どちらが先でも構わないが、地面を蹴るのは後ろ脚だけ』で、腰と背中をバネにするんだとか。


「狼と狐の癖に、チーターの走り方をしてるんですねぇ……」


「ベースはな。じゃが、わっちらは其処に自己流のアレンジを加えた走り方じゃ。這い寄るストーカーよ」


「ほほぅ……喧嘩を売るなら買いますよ?」


「君達は馬鹿なのかい? まあ、ご主人様。先ずは基本となる走り方を頭、体の順に覚えさせよう」


 そして相も変わらず、愛と真夜は仲が悪い事で……お互いが言葉で挑発し合ってるし。

 そんな二人を蔑む様な目で見、言葉を吐き出した後──此方に振り返り、走り方の見本を見せてくれた。

 最初は手足の運び方、次に足で蹴った時の姿勢。成る程……後ろ脚で蹴った直後、腰と背中をバネにって、そう言う事ね!

 見て聞いて多少は覚えた。後は実際に体を動かしてみて、教わった走り方が出来る様に練習あるのみ。


「そうだ、ご主人様。前足……手足の運びは水を掻く様に、されど後ろ脚だけは一気に蹴って体を伸ばす」


 教えて貰った走り方は、慣れてみればかなり速い。普通に走るよりも風の抵抗は少なく──

 まるで、空気を裂いて走ってる様だ。まあ一番の問題点と言えば……普段着使わない筋肉を目一杯使う事かな?

 早い話、両腕と肩に加え太股の後ろ側、背中が筋肉痛です……はい。そのままボロく崩れた門を潜り城下町へ入ると。


「ようこそ、貴紀さん。イェッツト城下町へ!」


「城下町って言うか、この廃墟感──城下町跡って感じなんだが……」


「えぇ、まあ。第四の遺跡は城の地下に在りますからね。上が滅びようと無問題(もーまんたい)です!」


 こう言う所が、やっぱり力を持つ者と持たざる者の違いなんだろうな~……とは思ったよ。

 ゴーストタウンも同然に崩れ、哀愁感だけを残したイェッツト城下町。今……とは、何とも皮肉だな。

 そんな想いを察してか、愛と恋は人の姿へと戻る。俯瞰視点で見てるけど──何処もボロボロだわ。


「クソっ、駄目だ駄目だ、駄目なんだ! こんな死んだ風景写真じゃ、何も伝えられない!」


「なんと言うか……熱血馬鹿、とでも言う程に暑苦しい先客が居たもんじゃな 」


 廃墟で遠くに見付けた、一人の男性。カメラマンか、はたまた新聞記者か……周りの風景を撮りつつ愚痴る。

 ただ、彼の「死んだ風景」や「何も伝えられない」と言う言葉には、共感出来る点が幾つかあった。

 情報は生き物だ、鮮度が一番だ。と、何度か耳にした覚えはある。にしてもこの廃墟……少し変だな?

 苔は無く、代わりに植物の蔦が至る所にあり花もあるが……琴音に教わった花と全く一致しない。


「おや……珍しいな。君達は観光にでも来たのかい? だが残念な事に、此処は見た通りただの廃墟だ」


「恋、愛。どうする? 観光客として振る舞うか?」


「いや、他の大陸から来た一行──としよう。何やらあの笑みに、僕は警戒心を覚えるんだ」


 此方に気付き、流暢な喋りと身振り手振りを使い、話し掛けながら近寄って来る男性。

 時代が時代なら、計画的な誘拐犯か殺人犯がやりそうな手口に見えてきた為、二人に意見を訊ねると。

 恋もあの男性を警戒しているらしく、下手に話を合わせる事は控えるべきだと、遠回しに言われた。


「貴方こそ、こんな廃墟で何を? 観光客でもなければ科学者でも、歴史家ですら無さそうですが」


「これは失礼。俺は峰平進(みねひらすすむ)、二十三才のベテラン新聞記者だ。君達は?」


 これ以上の接近を止めようとした時、真夜が突然話し掛け、歩を止めさせ、情報を引き出す。

 本当か嘘かは兎も角、二十三才でベテラン新聞記者って、相当な実力者じゃなきゃ無理だぞ?

 いやまあ、マスコミやら新聞記者とかは大が付く程に嫌いだから、別にどうでも良いんだけどさ。

 此方の事に関しては、相談して決めた内容を自己紹介も交え、話した。


「そうかそうか。わざわざ遠い別大陸から御苦労様だな!」


 可能ならこれ以上、近付いて欲しくないのが本音だが……下手に警戒し過ぎると面倒臭い事に成りかねん。

 特に情報をかき集め、発信するマスコミや新聞記者って奴らはな。奴らが敵に情報を売ったお陰で、仲間が何人も殺られてるんだ。


「それ以上近付くな!」


「おっと……紅君、だったね。どうしたんだい?」


「マスコミや新聞記者には、間接的に仲間を何人も殺されているんでね。それ以上近付くなら……殺る」


 が、やはり警戒心と恨みが勝り、彼を言い止める。当然止められた事に疑問を抱く表情をするが……

 自身に敵意は無いと示す為、両手を上げ苦笑いを浮かべやがった。本人に悪意は無いんだろうがな。

 その顔が一番嫌いなんだ。仕方なかった、どうしようもなかった。そんな自己保身にしか見えない顔が!


「確かに、俺達は上層部の命令で記事を書き替える事はあるし、それで意図せず貶めてしまう時もある」


「視聴率、購買部数を増やす為……ですか。まあ所詮、自分の命は何よりも耐え難く、可愛いモノですからねぇ」


 アンタ達のお仲間に、自分達の仲間を何人も殺された旨を話すと──峰平さんは暗い表情になり。

 事実を認めた。個人的にはそれを理解し、二度と同じ事をしなければそれで良かった……のだが、真夜は更に言葉の刃を突き刺す。


「だが、俺はそんな事はしな……」


「誰が証明出来ます? 貴方は大好きな人の目の前で仲間が何人も目の前で殺され、惚れた人が泣き崩れる姿を見た事があるとでも?」


「それ、は……」


 反論すべく、刺さった言葉の刃を抜こうとした瞬間──追い打ちの言葉と零れ落ちる一筋の涙。

 自分は他の奴らとは違う。例えそう言ったとしても、それは何の証明にもならない。

 仮に証明し続けるとなれば、常に批判や否定が付き纏う人生になるだろう。信頼を勝ち取らない限りは……


「他人の不幸はさぞかし、極上の蜜の味でしょうよ。まあ、私が言えた義理ではありませんがね」


Ev'ry(誰かの) Smile(笑顔) Ev'ry(誰かの) Tear()……誰かの不幸は誰かの笑顔とは、何とも皮肉だね」


「just believe(ただあなたの) in your eyes(瞳を信じて)──を信条に、わっちらはぬし様と共にある」


 世界に置ける事実であり、人類に平等と言う偽者の正義しか無いと言う仮初めと、個人的に有り難いお言葉を頂けた。

 琴音との勉強はまだまだ沢山残ってるけど、愛が此方に振り向いて言った言葉は何とか分かるし、嬉し涙も出る程有り難い。


「物は壊れたら修繕出来る。でも命や心は一度壊れてしまえば、二度と元通りにはならない」


「それは……理解している」


「ならっ!! 壊された者の言葉にも耳を傾けろよ。壊された者にしか分からない事、沢山あるんだからさ!」


 壊された廃墟や自分の胸に身振り手振りと手を向け、修繕が出来る物と替えが効かず修繕出来ないモノがあると。

 死んだモノは帰って来ない、二度と元通りにはならないと訴え掛けた。

 けど──加害者が良い意味で変わらない限り、命有るモノが変わらない限り、歴史は繰り返され。

 悪夢の螺旋階段を下り続ける事になる。郷に入っては郷に従う……これが出来ない、理解しない者も沢山居るのだから。


「一度は被害者になって、痛い目に遭ってみろ。そしたら自分達が発信してる情報がどんな影響を与えてるか、嫌でも分かるさ!」


 一方的な発言って位は、重々理解している。この人に幾ら言ったって、何も変わりはしないって事も。

 そんな自分自身に嫌気が差し、この場から早歩きで城側へ立ち去る。筋肉痛の痛みより、憎しみが勝るとはな……

 まだまだ、精神面での修行も足りてないみたいだ。もっと精進しなくては──






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