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ワールドロード  作者: オメガ
三章・alternative answer
149/384

一方的な

 『前回のあらすじ』

 ケーフィヒ牧場へ入った貴紀達三人。けれど、牧場の関係者は誰一人として居ない現状を説明する様に現れた終焉。

 曰く、調律者姉妹の機械兵に連れ去られたと話、貴紀と終焉は話をする中で、終焉達を全員倒す意志を見せ。

 心意気の褒美にと終焉はなんと、現在進行中である調律者姉妹の計画を記したUSBメモリを渡し。

 攻略して見せろと言い立ち去る。ネロのお陰で解読出来、貴紀は人類を破壊(救う)する為、悪道を進む。



 表示された地図を覚えた恋は、白い大狐の姿へと戻ると自分達を乗せ、牧場から飛び出し、駆け出す。

 ケーフィヒ牧場でゆっくりと体を休めれなかったものの、少し休憩出来たのは、幸いか。


「お父さん。この与えられた情報が、調律者姉妹の罠とは……思わない?」


「信じたい気持ち半分、相手側の罠ってのが半分。それが正直な気持ちだな、どう考えても」


 信じたいからこそ疑う。一見、矛盾しているようにも思えるだろうけど──

 自分達は何度も信じ、裏切られた経験がある。故に仲間や家族も間接的、直接的も危険に晒す以上。

 リスクを可能な限り避けて、不適格要素は取り除く。……そりゃあ完璧には、無理だけどさ。


「それで……ネロよ。僕達が今向かうべき目的地とは、何処なんだ?」


 途中、無言になりつつも走り続けていた恋は空気を読んでくれたのか。目的地について訊ねる。


「数ヶ月前まではブルート牧場と呼ばれていた場所。今の名前は──人間交配繁殖専用牧場。略して人間牧場よ」


「……ネロ、訂正部分がある」


「訂正部分?」


「ブルート牧場には地下空洞があり、人間牧場を経営していた。つまり、今も昔も大差変わってない」


 質問に答えてくれた言葉を聞くと、当時あった出来事や記憶が、次々とフラッシュバックして来て。

 思わず間違っている部分を指摘し、不思議がるネロに真実を伝える。根本的に、何も変わってないと。


「成る程。此処の人達は都合の悪い事には蓋をして、無かった事にするのね」


「見ざる言わざる聞かざるって言葉はあるが、悪い意味で使うとこうなる。そう言う例だな、これは」


 人は弁解するように、これは善意だ悪意だと騒ぐ時もあるが、その行為そのものが無自覚な悪意。

 と気付くのだろうか? まあ少なくとも、自分がその行為を無自覚な悪意。と認識してるだけだがな。

 結局は個人の認識次第。なんだろうけど、それを押し付ける行為は、少なくとも悪意だとは思う。

 自分が伝えたい事も、気付いてないだけで無自覚な悪意かも知れん。だとしても、自分自身の目指す悪の道を進むがな。


「そろそろ着くぞ、ご主人様。何か作戦や事前に決めておく事はあるか?」


「作戦なんて上等なもん、自分に期待するだけ無駄だ。良くて最悪の展開を予測する程度だ」


「ふふっ、ならばこう言い直そう。ご主人様が予測しうる最悪の展開は如何なるものや?」


 遠目に見えて来た牧場。ただし普通の牧場とは大きく異なり、防衛機能として鉄柵やらネズミ返し。

 監視カメラにサーチライトまである、旅立つ前に観た映画の監獄とすら思える。脱出を阻む構造らしい。

 前回来た時は警備員が複数人いたから潜入して、某ステルスゲーみたく、段ボールで隠れたっけ。

 頭の良くない自分が、十分足らずで作戦なぞ思い付くか! なので、言い返された通り、最悪を話す。


「全員で牧場へ入る、誰か一人を外に残す。これは絶対に避けるべき自滅行為だ」


「当然だね。全滅だけでも免れないと、救助も不可能になる」


 思い付いた最悪の予測・展開を話す。他にもあるにはあるが、その全てを対処するのは不可能だろう。

 故に要点を大きく絞り、二つだけ。それに関して、二人から他の意見は無く静かに、短く頷く。

 自分とネロは大白狐姿の恋から降り、人の姿へ戻り衣服のズレを整え終わるのを待つ。


「だから此処は、自分が一人で潜入する。恋とネロは周囲の物影に隠れ、警戒と──」


「警戒と撤退する準備だけは事前にし、予定時刻を迎えたら自分を見捨てて逃げろ……でしょ?」


「……ご主人様、僕達は此処で待ってる。戻って来ない時は、僕達の誰かが助けに行く。それが条件だ」


 続く言葉を先に言われ、内心驚いていると、最悪の展開を打ち破る。と言わんばかりに、恋は言う。

 自分勝手で都合の良い解釈をすれば──もし捕まったとしても、仲間達の誰かが助けに行くから。

 失敗を恐れずに行こう、か。いいだろう。所詮、俺に残された道は無間地獄(むげんじごく)への片道切符のみ。


「分かった。だが周囲の警戒と索敵だけは怠るな。逃げ道は最低でも三つは残せ、追撃を撒く為にもな」


「「Yes,(イエス) Your(ユア・) Majesty.(マジェスティ)」」


 まるで俺を王に見立てるかの如く跪き(ひざまづ)頭を(こうべ)下げる恋とネロの二人。

 普通の民を導く王ってのは無理でも、身勝手な正義やら悪を討つ王には成れる……か。それも良いな。

 人間牧場へ行こうと踵を翻す時、恋が献上品です。と言わんばかりに苦無(クナイ)と細い紐を差し出す。

 持って行け、と言う意味だろう。有り難く受け取り、苦無(クナイ)はコートの右ポケットへ、紐は右腰側へ。


「ありがとう。それじゃあ、行って来る」


support(サポート)、ゼロ。Are(準備は) You Ready(出来たか)?)」


 感謝の言葉を伝え、サーチライトや監視カメラの動く警備網へ突入。

 ウォッチを回してゼロの力を借り、影の中を素早く移動して無事に室内へ潜入。

 此処からは最悪の展開を想定し、ゼロの魔力を温存すべく、影の中から出て地下へ続く階段を降りる。


「宿主様、気付いてっか? 恋の髪が白くなってたの」


「流石にな。アレは魔力や霊力が底をつくと起きる現象だ。本来の姿へ戻る時は、要らんそうだがな」


「つまり私達と合流する前に、彼女にはソレが起きる出来事があったのよ」


「噂ニ聞ク預言者カ。ハタマタ調律者姉妹……他ニモ候補ガ多クテ絞レンガナ」


 治療を受けてから今の今まで、喋りもしなかったのに突然喋りだす三人。

 今までも何度かあったので、責める事はせず髪色の変わった恋に関して話すも……合流前に何かあった。

 としか、誰が相手か~程度の予想しか出来ん。長い螺旋階段を降れば、今度はアミダくじ通路のお出まし。


「露骨に……いや、試されてる?」


「宿主様。コレに関しては、余り余り深く考えねー方がいいぜ?」


 と、思いきや──赤い矢印が此方に行け。そう言わんばかりに一部の壁や床に張られており。

 正直、馬鹿にされているのか、それともガチなのか。矢印や張っている意味と疑問を考えてしまう。


「ねぇ。フュージョン・フォンで周囲を調べたり出来ないの?」


「確カ出来ル筈ダ。何セ技術者組ハ自身ラ、無能力者モ使エルヨウ、開発シテイルカラナ」


 言われてズボンの左ポケットから取り出し、操作してみると……あった、判別機能付きの探知機能。

 判別条件を同機種と打ち込み、開始。効果は自身を中心に半径一キロ。反応は……矢印が示す方向。

 念の為、少し進んでは苦無(クナイ)で前方の床を小突いたり来た道に向け線を書く。帰還時に道忘れました~はマジ勘弁。


「重々しい鉄の扉の中は……特定こそ無理だが、結構沢山居るっぽいな。悲鳴と罵詈雑言の嵐だぜ?」


「……仮に当たり部屋として、奴らの狙いはなんだ? 牧場へ閉じ込めた人間達に俺達の存在を知らせる事か?」


「成ル程。ソレナラバ、捕獲シタ人間達ノ希望ヲ絶望ニ塗リ変エルノモ容易イ」


 あれこれ考えつつ、格好付けて片手で開けようと押すも……微動だにしない。

 今度は魔力を四肢に込め、踏ん張って押し込む、引っ張っても開かない。全く、難儀な扉だな。

 内心愚痴りながら、取っ手の上に両腕を乗っけて対策を考えようとすると──


「ホゥ……コレハ珍シイ。下ゲル扉トハ」


「観察してる場合じゃないでしょ! 貴紀、大丈夫?」


「宿主様。此処からは俺達、下手な誤解を招かねぇ為に黙ってるからよ」


 普通、扉って押すか引くかの二択やん。シャッターでも普通は上げて開けるのに。

 下ろして開ける扉とか……何考えてんだ、此処の設計者。腕と顎の落下による痛みは我慢して、真っ黒な部屋へ入る。


「これは……成る程。ある政治家の男性が女性に、フェミニスト達が男性に言う射精係って言葉を実行した訳か」


 目の前に広がる光景は──人間を家畜として扱う牧場や、人間を動物の代わりに入れる人間動物園。

 調理する精肉場、脳にチップを埋め込むインプラント……他にも複数ある各モニターに映っているが。

 其処は割愛。何はともあれ、何がどうなればこんな時代を迎えるのやら。やはり、調律者の存在か?


「どうかしら。人間達の発言を現実に仕立て、私達が管理し、調整している世界は」


「個人的には息苦しくて反吐が出る。これがテメェらの支配する世界予定図って訳か?」


 部屋の中に響く、憎らしい少女の声。スレイヤーのスキルで暗闇も見えるが……その対策に。

 一部屋真っ黒に染めるとか、何を考えてんだか。そんな思いが通じてか、正面斜め上の黒い板が動く。

 其処にはガラス越しに此方を見下ろす、調律者姉妹の姿が──


「久し振りね。世界の破壊者にして悪魔、オメガゼロ・エックス。でも、随分と遅かったわね?」


「この世界はもう、アタシ達が殆んど支配してるもんねぇ~っだ!」


 なんと言うか。背伸びしてる子供に思えて、相手にするのが馬鹿馬鹿しく思い始め。

 やる気も落ちて対応に困っていると、それに気付いたらしく、此方を指差して……


「私達は人類の生存・繁殖・平和と言う願いを叶える為、全世界を支配する」


「その為にも、私達の邪魔になる貴方達。古臭いガラクタは早々にその力だけを置いて、消えちゃえばいいんだ!」


「人類の願い? それに……破壊の力が目当てって訳か。残念だが、この力はオメガゼロ専用だ」


「えぇ。知ってるわ、そんな事。だからこそ、私達はあの計画を終焉の闇勢力に送り、実験させた」


 人類の願いを叶える為に……とだけ聞けば、素晴らしいと思えるかも知れんが、その結果がコレだ。

 地下シェルターを牧場やら動物園にして出産数や歩むべき人生、何もかもが全て管理される世界。

 その為に俺の力を置いてけ? 扱いも出来ん癖に。そう思っていたら、正面奥の扉が開き現れたのは──

 青白いブーツと籠手を付けた、灰色の長ズボンに同色のコートを着た男。パッと見、二十歳位の平均的な見た目。


「確認。桜様(さくら)(はな)様。この第一世代を抹殺すれば、ワタシの願いは……」


「えぇ、勿論叶えてあげるわ。重症で身動きの取れない妹さんを、必ず救ってあげる」


「ステータス、安堵。ターゲット、ロック……第一世代の旧式オメガゼロと設定」


 けどハッキリ言って、危険な奴の一言に尽きる。非常に強い魔力を感じるのだが……これが異常。

 ナイトメアゼノ・メイトと、俺達オメガゼロの魔力を持っている。直感も戦闘は危険と警報を鳴らす。


「宣言。第一世代の旧式にして、試作型であるアンタに、ワタシ……名前、ケンプファーは倒せない」


「戦士、闘士を意味する名前……だったか。てかなんだ、その喋り方は。まるでディーテだぞ?」


「否定。ワタシは、機械兵にあらず。ワタシは──何処にでも居るただの、一人の人間だ!!」


 自らをケンプファーと名乗った男の喋り方はヴォール王国で戦った、ディーテそっくり。

 そこを指摘するも、表情一つ変えず澄ました顔で否定、機械兵ではなく人間だと主張した後。

 コートを脱ぎ捨て、白い半袖姿で此方へと走って来る。それはいい、別に構わない。

 けどその走る速度は生身の人間が、車の最高速を叩き出すレベルだと、奴は気付いてないのか?!






名前:賢狼 愛(けんろう まな)

年齢:不明(本人曰く、歳など数えておらん。との事)

身長:166cm

体重:48kg

性別:女性

種族:神狼(魔狼)

設定


 一人称などに古風な郭詞(くるわことば)を使う狼娘。一人称はわっち。

 やや幼さ残る顔に藍色の瞳、頭部には獣耳と腰まで届く茶色い長髪。服装は貴紀を真似たのか。

 黒いハーフパンツの少し上から尻尾が飛び出し、少しヘソの見える白く生地は薄めの長袖服。

 上着に藍色のコートを着ており、背中には太極図が描かれている。本人曰く、これには意味がある。


 趣味は貴紀にして貰う毛繕いと、日向ぼっこ。実は寂しがり屋な性格で、構って欲しい時は貴紀の近くに居る。

 果物などの甘いモノが大好きで、苦い・辛いモノは苦手。白い大狐姿の恋と同じく、感情の上下で尻尾や耳が動く。


 戦闘スタイルは俊敏を生かした戦法が得意な反面、重量級や鉱物系などの敵は苦手。

 武器は四肢に装着する鉤爪。敵によっては自らの牙で噛み付き、喰い破るなど、野性味溢れている。

 仲間内で一番嗅覚と聴覚が優れており、追跡や罠を察知可能。但しそれを逆手に取られると、一番弱い。

 因みにバストはやや小振りのBカップ。本人はもう少し欲しいのか、Cカップの絆を見て悩んでいる様子。



 スキル&技


・神喰らいの狼Lv10

 神々を完全に喰い殺す力を持ち、神性のある相手は彼女の攻撃に対し、治癒や再生などは二度と出来ない。


・疾風怒濤Lv8

 風の流れを読み、魔力強化無しでも瞬く間に最高速度へ到達出来る他、風の抵抗を受けなくなり。

 同時に風を纏う為、通常攻撃の速度UPに加え、鎌鼬が付きリーチもPU。射程距離だが……

 薙ぎ払いが一メートル、突きは五メートルと、突きの方が長い。理由は一点に絞るから、だとか。


・魔狼

 狼王フェンリルとしてのスキル。神喰らいの狼と直結しており、同時に狼としての威厳にも繋がる。

 そんじょそこらの狼や犬なら、吠えるより睨み付けるだけで逃げ出し、仮に吠えれば音量次第では、吠えられた側が絶命する可能性も。


・格闘術Lv6

 基本的な攻撃方法が近接戦になる為、自然と身に付いた。しかし拳法と言った型にハマったモノではなく。

 どちらかと言えば我流。直感的に動く為、データに無い戦法が次々繰り出される事もしばしば。


・紡ぐ友情の太極図

 静久・恋が持つスキルと同様、効果不明の謎スキル。いつ発動するのかさえ、全く謎だらけ。

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