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ワールドロード  作者: オメガ
三章・alternative answer
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集う者達

 『前回のあらすじ』

 二代目終焉との決着も終え、遺言に従い調律者の姉妹を追い掛けるも、返り討ちにあった記憶を夢に見る。

 しかし全く知らない出来事まで夢に見、姉・桜とアルファのやりとりの他。

 二代目終焉に仕えていた元融合四天王・ブレイブの忠告や、意味深な台詞が、貴紀の頭を混乱させる。



 次はどんな夢を見るのだろうか? 真っ白い空間で大人げなく、変にワクワクしている自分。

 子供が好きな学校行事に胸踊らせ、寝付けないのを思い出す。

 そんな期待に応えてか。あれやこれや唐突に、走馬灯を見ているのか疑問に思う程、流れは早い。


「ッ……なんだ、このっ、頭の中にある……異様な違和感は!」


 同時に頭の中を駆け巡る激痛と、自分じゃない誰かが勝手に記憶を覗き見、弄ろうとする違和感。

 けれど何も見えない、何も感じ取れない。視覚や触覚に加え、魔力探知にすら引っ掛からない!

 ヴェレーノの実に潜むインサニアの仕業か──と一瞬思うも、あの実を食べた記憶はない。

 解決せずに増える疑問。そんな時、自分を見下ろす景色が視界に映り、其処には……


「記憶……湾曲。認識、改編。精神……支配」


「頭上にっ……退け!!」


 自分の頭上にピッタリと張り付き、クラゲの様な半透明の触手で頭に触れ続けるのは……

 クラゲだか円盤か分からない、奇妙な黒い物体。触られていると、精神的に嫌悪感を覚える。

 聞くからに物騒な言葉を吐く為、両手で掴み追い払おうとするも──掴んだ感触は無い。

 気付けば正面向かい側に浮かんでおり、此方に接近して来る様子や気配もなく、不気味だ。


「友好関係を築こう。って奴の言動とは思えんが一応、名前と目的は聞いてやる」


「名──前? ……ディファレント、ディメンション……マリオネット?」


「でぃ、でぃふぁれ……んと?」


 正体不明。されど頭部を潰せば殺せる、などの殺し方が見える辺り、生命体の枠組みで良いだろう。

 名前を言おうとするも途中、意味を理解できていないのか。変に間が空いたり、疑問符で言われる。

 ディメンションとマリオネットは分かる。けど、ディファレント……って、何の意味だ?


「ディファレントディメンション・マリオネット。その意味は──異次元の操り人形」


「その声は……もしかして!」


 背後から聞こえる幼い声の後。奇妙な円盤目掛け、縦に回転しながら飛んで行く大きな桃色扇子。

 それに気が付き、振り返ると──桜の花弁が描かれた薄紫の袴を履き、肩の空いた白装束を着て。

 ニコッと微笑む白髪の少女が一人。ハッキリ言えば会いたかった様な~……そーでない様な。


「其処に存在すれど、此処には存在せず。表側であり、同時に裏側でもある為、見る事も感じる事も不可能」


「何故……見え、る?」 


「その答えは至極簡単。私達は、全てを俯瞰して視る事が出来る。だから、貴方の存在も、丸見え」


 目の前に存在するけど、実は存在しなくて。表に見えるけど、裏側でもあるって……どう言うこっちゃ。

 そう言う発言は他人を混乱させるから、止めなさいって言ったのに、相も変わらず続けてるのな。


「ネロ。わざわざ会いに来てくれたのか?」


 向き合ってから彼女の名前を呼ぶと、幾度かまばたきした後。両手を広げて胸元に抱きついて来た。


「半分正解、半分ハズレ。でも……また、お父さんに会えて良かった」


「あぁ……確かに再会出来て嬉しいけど。ネロは六軸移動した先、可能性の未来の存在なのに、どうして」


「う~ん……お父さんは分からないと思うけど、聞く?」


 可能性の未来で生まれた自分の娘。その一人、ネロ。彼女は自分の眼を──世界を俯瞰する力。

 俯瞰視点を受け継いだ唯一の子。そして母親の頭脳も受け継いだ為、滅茶苦茶賢く、どうして?

 と言う疑問に答えてくれるも……残念な事に自分が何一つ理解出来ず、眠気に誘われる始末。


「まあ要するに。可能性の軸が大きくブレて、お父さんとの世界軸に触れてるって認識よ?」


「そうか……そうなると、何が原因か明らかにして、一刻も早く元通りにしなきゃ駄目だな」


「それは私も同感。もしそうなったら、二つの世界が終わってしまう」


 言うなれば、左右バラバラに大きく揺れる二本の線、それがぶつかり合うようなモノ。

 限りなく同じで、異なる世界が混ざり合う危険性が……そうなれば最悪、滅亡から破滅に変わるだけ。

 そう話つつ、床に刺さった扇子を片手で引っこ抜く辺り、幾らか肉体も受け継いでるのな。


「それより、早く起きた方がいい」


「な──ッ!!」


 何が原因か考え込むも、言葉で思考を妨げ、起きるように言うネロに何故か問おうとした時。

 俯瞰視点は別の情報を見せる。冒険者ギルドの頭上を見下ろす視界。其処に降りてくる、緑色の影。

 マズい……早く目を覚まさなくては! 焦る気持ちから両手で頬を何度も強く叩き、覚醒を促した結果。




 目覚めると共にベッドから慌てて駆け出し、コートを掴み取っては窓に向かって走り。

 魔力で防御力を増したコートを盾に窓へ飛び出し、突き破り外へ出た次の瞬間──

 先程まで居た冒険者ギルドは、自分が寝ていた部屋を中心に真っ二つ。切断し着地した際の風圧に押され。

 向かい側の民家に背中から激突し、地面に俯けで叩き付けられる始末。痛みに耐え、起き上がると……


「ジューダスゥゥ……やはり、此処に居た!」


「融合四天王・ジャッジ……昔、(まな)と協力して倒したのに、まだやる気か」


 人の事を裏切り者と連呼する狂戦士(バーサーカー)の登場とは。相変わらず重装甲を纏った髑髏か。

 けど、(ふち)や細かい所は色々変わってるな。武器は金の紋様と線のある赤い大斧……アレで叩き斬るって訳かい。


「裏切り者、判決の王にして、天秤たる俺が、裁く!」


「生憎、今は裁かれてやる暇はない。そんなに裁きたいなら、全部を終わらせてから行ってやる!」


「否、断じて否ッ!! 今、この時こそ、裁く時ィィ!」


 余程自分を……いや、俺を今此処で裁きたい様子。コートの右ポケットへ手を入れ。

 ガジェットを取り出し、槍モードで左右から緋色の棒が伸びる。出力調整で長さ調節も出来そうだ。


「待ちなさい!」


「「──!?」」


 ジャッジが振り上げた大斧が振り下ろされ、それに対処する瞬間。

 知っている声が俺達の間に割って入り、動きを止めさせ、何事かと思い声の主の方へと顔を向ける。

 とは言え、俺達の間に割って入って来たのは……情報収集から戻って来たと思われる小山巴。


「何故、止める!? 俺、善悪の基準にしたがって……」


「善悪の基準にしたがって? それなら──私達の家を壊したのも、善悪の基準に従った結果なんですか?!」


「それ、は……」


「ハッキリしない方ですね!! 弁償代やら全部、キチンと耳を揃えて払ってくれるんですか?!」


 なんと言うか……シュールだった。何の異能やら力も持たないただの女性、小山巴に言い責められ。

 しどろもどろになっているジャッジ。アイツを見ていると、似た経験した故か……全く笑えん。


(今がチャンスだな)


 装備や調子も万全でない今、ジャッジと真っ向から殺り合うのは愚策でしかない。それに……

 奴との再決着は(まな)が一緒でなくては意味がない。と言う意味もあり。

 此処は逃げるべく駆け出し、細い裏路地へ潜り込むべく走る。逃げ出す瞬間、奴の顔を見た。

 当然此方の逃走を止める為に動く。と思いきや重鎧を着た骸骨が、自分の背後を見て震えている。


(大将がどうかしたのか?)


 野次馬の中ですら目立つ、大将のスキンヘッド。まだ太陽は頭上にあるから、反射でも受けたのか?

 疑問を抱えつつ野次馬の中へ飛び込み、裏路地を目指して進んで行く。その途中──

 誰かが自分の両手を掴み、進路変更とばかりに引っ張られ、裏路地から離されていると気付いた。

 野次馬やら人混み辛うじて抜け、漸く手を引っ張っていた人物の姿が見た時、自分は……


「ネロッ……それに、(れん)も!」


「裏路地に行ったら、洗脳されてる人達に捕まっちゃうよ?」


「そう言う事だ。もう少し注意力を養って貰わないと、僕達の苦労が増すんだけどね。ご主人様」


 背中に届く真っ直ぐな白髪と狐耳。黄色い瞳に大人びた顔、機動性重視の着物も相変わらずだな。

 嬉しさ半分、自責の念半分の心情を抱き。涙で滲んだ視界のまま、二人の名前を呼ぶ。

 二人からの話では、自分の行動パターンの大半、調律者やレヴェリーの連中に読まれているらしく。

 あのまま裏路地へ行ったら罠に掛かったが、今回は運良く二人に会えて難を逃れた……本当、有り難い限りだ。


「この街にも預言者の魔の手は着々と伸びている。一刻も早く、僕達を匿ってくれている拠点へ行こう」


 自分の手を引っ張る恋は態度や表情こそ落ち着いているけれど、焦っている様にも見え。

 周りへ視線を向けると……ヒルフェ城下町で体験したあの魔女狩り紛いが、此処でも行われてるのか。

 個人差はあれど、人は実体験より、見聞きした情報を信じるのだろうか? もしそうだとしたら……

 テレビや新聞で得る情報を全て、鵜呑みにするんだとしたら──それはかなり、ヤバいな。


「拠点って何処だ?」


「お父さんに取って、懐かしい場所。まあ、あの出来事はお互い、掘り返すべきじゃないと思うけど」


「あの場所にご主人様と何かしら縁があるってのは、匂いの染み付き具合からも僕でも分かるよ」


 先導するネロに導かれ、無駄にデカい門を潜り、ヴォール王国から出た自分達三人。

 拠点と呼ぶ場所はどうやら、自分と縁がある場所らしく意味深なワードが妙な位、頭に引っ掛かる。

 あ~……いや、分かった、あの場所か。確かに掘り返すべきではない。そんな出来事もあったわ。


「恋。今まで何処で、何をしていたんだ?」


「僕が生きている以上、ご主人様も確実に生きている。だから以前の仲間を探し、手助けも少々だね」


「天狐の若狐助け。あの小狐さん、後三千七百年後には美人の妖狐になると思うな~」


 別行動中、何をしていたのか好奇心から訊いてみた。すると当時の仲間を探すついでに。

 手助けもしていたと言う。誰の手助けかと疑問に思うよりも早く、若い狐を助けていたと話すネロ。

 具体的な年数まで言う辺り、それも俯瞰して見たのだろう。後で俯瞰視点の使用を咎めるとしよう。

 徒歩での移動中。後悔は無い人と乗り物も見付け、後は修理さえ終えれば動くとネロは言う。


「でも、修理に必要な材料や技術者も不足してるから、当分動きそうにないかな~」


「僕が彼女を見付けた時はもう、虫の息だったけどね。今はとある医師に見て貰ってるんだ」


 以前使っていた乗り物と言えば、バイク。でもリグレット(後悔は無い人)関連なら……あの大型か。

 今は医師に見て貰う程重症らしいが……クソッ。回復は応急手当てが精一杯の自分じゃ、役に立たん!


「ほら、見えてきた。あの場所が、この時代で私達を匿ってくれている拠点」


 そう言いって指を差す方角へ目を向ける。其処には木製の大きな看板が出入り口の役目を果たし。

 ようこそ、ケーフィヒ牧場へ! と書かれていた。何となく予想はしてたけどさ……うん。

 思い出した記憶にある年月だと、立ち去った年月からちょっとしか経ってないんですが。

 うぅ~む。どう言う顔を見せたら良いのかね? 忘れ物に気付いて~とか、気さくな感じか?






『エネミーファイル』


名前:ジャッジ・ロード

年齢:666歳

身長:195cm

体重:素体=22kg

鎧装備時=262kg

鎧&大斧装備時=362kg

性別:男性

種族:怨霊

説明


 かつて、まだディストラクション(分裂した赤き光の一つ)が組織・終焉の闇に仕えていた頃、及び離反した際の話を知るモノ。

 二ツ名は『判決の王』で敵味方問わず、適切な判断を下す『天秤』の役割を与えられた、デトラ離反当時に死んだ者達の怨霊。

 基本的には肉体を持たず、浮遊するだけの存在だったが……二代目終焉こと、無月終焉から専用の鎧と髑髏を与えられ現在に至る。


 そのパワーは圧倒的で、無月終焉を護る四天王や三騎士内でも最強の位置に立ち、終焉の指示でレジスタンスなどの断罪(処刑)も行う。

 終焉の右腕に価し、忠実な部下で成績や評価も高く、問題点も色々と目をつぶれる程だが……どうしても見逃せない問題点が一つだけある。

 初代終焉を倒し、二代目終焉から離反したジューダス(裏切り者)が関わると、酷く理性を失い狂戦士(バーサーカー)となってしまう点。


 一度は二千年代(無限郷)で貴紀と愛に倒されるも、滅びぬ無念は魔神王を名乗る終焉に再度鎧と髑髏を与えられ、復活。

 リベンジも兼ねて裏切り者と愛に判決を下すべく、今か今かとチャンスを待ち、自らの理性を保っている。

 鎧は重装甲で、基本的にやや黒く濃いめの緑、(ふち)は金で統一されており、和と洋を上手く合わせているらしい。


 武器は金の紋様と線のある赤い大斧。この大斧は常人では重量100k故に持てないが、ジャッジ本人は軽々と振り回す。

 必殺技は大斧に魔力(怨念)を限界まで込め、振り切った方向に物理的攻撃と怨霊をばら蒔く最大の一撃、『ジャッジメント』。

 なお、このジャッジメントを受けたモノはナイトメアゼノはアニマ以下なら例外無く滅びる。それは肉体的、精神的のどちらか、もしくはその両方の意味で。

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