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ワールドロード  作者: オメガ
三章・alternative answer
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remember

 『前回のあらすじ』

 MALICE MIZERから戻って来た少し後の出来事を夢に見て、南方にあるストレンジ王国が近隣かつ中立地域のアルファ村へ占拠しようとした。

 目を覚ますと見知らぬ女医に治療された後で、彼女はオラシオンNo.Ⅳのエリネを酷く危険視している様子。

 ギルドの大将から必要なモノを聞かれ、答えると大将と一人娘の巴は武器と情報を揃えるべく部屋を出て行き、貴紀は謎の激痛に意識を手放す。



 この景色は……そうだ、思い出した! 二代目終焉と決着をつけた時、散り際に残した言葉。

 その言葉の通り、後々現れた調律者を追い掛けるべく副王の協力を得て、時空の穴へ飛び込み。


「ぐぅっ!!」


 奴らと直接戦った。最初こそ攻め込めたものの、逃がすものかと先行してた為。

 案の定一対二で押し切られ、開いた次元穴から地面に放り出された直後……


「あら、仕留め損なったみたいね」


「ねぇねぇ。今日こそ後から続く奴らも含めて、滅茶苦茶にしても良いんだよね? お姉様!」


「えぇ。誰一人とて逃さず、原形すら残らない程滅茶苦茶にしてあげなさい」


 終焉を倒した後に続く更なる脅威。自らを調律者と名乗り、白いフードローブを深々と被った──

 身長百三十cm程度の身長で、世界を自分自身等が思う通りに支配しようと潜んでいたロリ姉妹。

 漁夫の利を狙い、自身らの邪魔となる自分と終焉が本気で戦い、消耗する時をただひたすら待った。

 実行に移した今、左手から放つ光で自分の左胸を貫き、後続も滅茶苦茶にしようと計画し、嘲笑う。


(チャンスは……今しかない。後に続く仲間達が、狙われない為にも!)


 当然……邪魔者は例外無く見逃す気は無い。そんな姉妹が勝利を確信し、手を取り合って踊る最中。

 満身創痍の体へ鞭を打ち、魔力を右人差し指一本に集中させ、爪楊枝程度に細い魔力を放つ。


「あら。その程度の策、見切れないと思って……えっ!?」


 余裕綽々。慢心と分かる表情で顔だけ振り向き、左手を向け、此方を包み込む程の魔力を放つ……が。

 一点突破の魔力は反撃に撃った魔力諸共姉妹の背中を纏めて貫く。反面、自分も直撃を受けて仰向けに倒れる。

 確かこの後、調律者姉妹の姉が此方に近付いて来たと思ったら屈み、自分の顔へ右手を向けて──


「貴方と言う存在が消滅するまで、力と記憶を可能な限り頂くわ。この世界を支配し作り替える為にも」


「……」


「何よ、その顔は。敗けた癖に!!  なんでッ……勝者である私を哀れむ様な眼で見るのよ!」


「可哀想だな。ずっと周りから憎まれて、一人寂しく泣いているなんて」


 世界を支配し作り替える為、力と記憶を貰うと言い向けた手が、動けない自分の体から。

 抜け出て行く緋色の光。でも調律者姉の桜を可哀想な表情で哀れみ、深く眠ったんだったか。

 八割程力を吸い取られた辺りで、桜の右手は黒紫色の闇に勢い良く弾かれ、自分を包み込み消えた。

 倒したとは言え、逃した獲物。敗者から勝者たる彼女へ向けられた、深い哀れみの眼差しと言葉。


「お姉、様?」


「アイツ……っ、始めるわよ。この愚かで存在価値も無い世界を、私達で作り直す為に!」


 俯き強く歯を噛み締め、拳を作る姉に恐る恐る呼び掛け覗き込むと一瞬、荒々しい顔付きで消えた場所を睨み付けていた。

 今にも噴火しそうな怒りを深い溜め息で落ち着け、吸い取った力と記憶へ己の力を加え、一つの光玉を生成。


「行きなさい、破壊者の記憶に残りし悪夢達よ」


「こんな不完全でつまんない世界なんか、ぶっ壊しちゃえ~!!」


 光玉から暗雲漂う空へ噴火する様に、意思でもあるかの様に自ら世界中へ飛んで行く無数の光。

 世界中に飛び散った光は自分の記憶から、無数の怪物を産み出しては元々在った文明社会……いや。

 西暦三千年の文明を滅亡させ、緑溢れる木々が硬いコンクリートを次々と突き破る。

 調律者姉妹は人類へ無条件降伏する様に呼び掛けるも当然、人類はこれを拒否。

 数々の最新鋭機器や核兵器等で対抗するも、SFや創作でしかなかった魔力と言った力や能力の前に完全敗北。


「いいよいいよ~。もっともっと無駄な抵抗を続けて、最後は絶望して私達にひれ伏すまで楽しませてよ!」


「アルファ。私達の力や恐ろしさ、抵抗する無意味さを、愚かなる人間達に知らしめてあげなさい」


「イエス、マイ・ロード」


 ある国は迎撃にと撃つ予定だった核ミサイルが、発射直前に怪物の襲撃を受けて爆発し自滅。

 数多くの国は白い衣服を着、頭を覆う白仮面を被った調律者姉妹の右腕。アルファに敗れ、全滅。

 それから一年の間……この星は調律者姉妹に遊び感覚で支配され、地形等も元々とは大きく異なり。

 生態系も大きく変わった。世界の裏側こと、幻想側が表世界を呑み込み、人間と人外の住む世界となった。


「救世主様。アルファ、ただ今任務より帰還致しました」


「ご苦労様。それと、二人っきりの時は名前で呼びなさい」


「はっ。失礼致しました、桜様」


 遥か雲の上に大型拠点、空中都市を浮上させた調律者姉妹。

 その中でも一際目立ち、ど真ん中へ建てた立派な城塞内部。玉座の間へ任務を終え、帰還した従者は。

 主を前に跪き、階級名で主を呼ぶも、二人っきりの時は名前で呼ぶよう注意され言い直す。


「それで、最果ての地は見付かったのかしら」


「いえ、一年前と変わらず不明のままです。しかし何故、最果てなる地をお探しに?」


 玉座の間はとても広く、天井も高い。もし此処で争い事が起きても、余程巨大でなければ。

 縦横無尽に動き回る事が出来る。出入り口扉からずっと奥へ続く赤い絨毯の先に在る。

 玉座へ座っている調律者姉改め、桜は最果ての地が見付かったか問うも、見付からないと返す。

 何故そこまで、最果てなる場所へ拘るのか。その理由を聞く様子を眺めていると……


「一年前、アイツが勝った私へ向けて哀れんだのよ。そして、破壊者が蘇るとしたら其処しかない」


「成る程。故に破壊者が蘇った時の為、仕えていた者達を私めに調査させ、情報を収集させていたのですね」


 一年前に向けられた表情、言葉が余程彼女の神経を逆撫でしていたらしい。いや……マジですまん。

 蘇る可能も考えて復活前に発見し、復活出来ないようしたかったそうだ。随分と執念深いな、おい。

 しかし見付からなかった場合を計算に入れ、仕えていた龍と狐と狼、蛟の調査及び。

 自分と対峙してた者の魂と、本人を回収する任務を受けていたらしい。普通、そこまでやるか!?


「アイツは必ず蘇るわ。私達の計画を食い止め、失ったモノを取り戻す為に。アルファ!」


「承知しております。死神アルファ、終わりにして始まりの破壊者を必ずや、打ち倒してみせます」


 彼女は自分の復活は確定で、計画を阻止した上。奪った力と記憶で作った怪物や自身が狙われると判断。

 その為の貴方よ。と言わんばかりに名を呼べば、アルファは執事の如く礼儀正しくお辞儀をし答える。

 奴の役割は死神。敵対者や裏切り者を討ち、命令とあらば味方さえも躊躇無く始末する、主に絶対服従する部下。

 主以外は敵味方も彼を信じない。故に、任務遂行時はいつも一人。……なんで知ってるんだ? 自分は。


「彼女は?」


「何時も通り、気ままに下界を散歩しております。呼び戻しますか?」


「いえ、放って置きなさい。ただサクヤ、彼女が出て来た時等だけ指令を下すわ」


 彼女なる人物の行方を問うと、自由気ままに地上を散歩中。呼び戻すか聞き返すも、これを拒否。

 呼び戻すのはサクヤが現れた時や、緊急の時と言う。信用してるか、それとも扱い難い存在か等は不明。

 ただ……あの調律者・姉が苦虫を噛み潰した様な表情で、頭を悩ませる程度には苦労している様子。


「では、次なる任務に向けて休息を取る為、失礼します」


 話もそこそこに部屋から出れば、深く赤いカーペットが敷かれた廊下を歩き。

 窓から見える、青く広がる光景を見ながら歩いていると──見るからに人型の合体ロボが壁に凭れ。

 腕を組んでいた。こう言っちゃ、ロマンも何も無いけど。ガチガチのロボが腕組みって出来るんか?


「奴が消えた場所に残った所有物、全て処分したんだってな」


「元融合四天王ブレイブか。当然だ、我らが(あるじ)に楯突く輩は全て、排除する。命令とあれば、貴様もな」


 場違いなロボを丁度通り過ぎた辺りで声を掛けられ、一旦足を止め、素っ気ない態度で返答する。

 アルファからすれば、主へ反抗する存在は全て排除対象。故に幹部として迎え入れられ。

 終焉の下で四天王を勤めていたブレイブも、主の命令とあらば即排除すると付け足す。


「主様から誘われたとは言え、貴様は何故、此方側へ来た」


「約千百年前、俺達の娘と交わした約束の為だ。その約束を果たす為、此処を利用しているに過ぎん」


「貴様、我らが主を利用する気か!」


「俺だけじゃない。お前が回収し連れて来た連中もそうだ。己が欲望の為、利害が一致しているだけに過ぎん」


 しかし、疑問だったんだろう。ブレイブは調律者・姉、桜が直接出向き誘い交渉したとは言え。

 そう容易く元主の終焉から離れ、此方へ来た理由が。首を傾げる様子から、そんな雰囲気を感じる。

 今話しているついで。と考えたのか、理由を聞けば、娘と交わした約束と答えた。アイツに娘って、いたっけ?

 その為なら手段も場所も問わないとさえ付け足して。当然、主を利用する等許しがたい行為だが。

 アルファが任務で集めて来た連中も、利害が一致した為に手を貸すだけであり、利用し合う関係とも。


「それと二つ程、忠告してやる」


「忠告だと?」


 もう話はいい。そう思い自室へ戻るべく歩を進めた所で忠告してやると言われ。

 足を止めて振り返り、聞き返す。本心を言えば主から幹部と言う席を与えられた新参者が何を……

 と思ってそうな中。敢えて口には出さず大人しく聞く辺り、落ち着いてて精神的に大人だな~と思う。


「貴紀。アイツから武器や力、記憶を奪ったそうだがな。それはお前達が行った、最大のミスだ」


「ふん。何かと思えば……奴に勝てなかった負け犬の遠吠えか、くだらん」


「まぁ、今はそう思っておけばいい。後悔するのはまだ先だからな」


 自分から調律者姉妹が率いる支配組織、管理者(アドミニストレータ)が行った力と記憶を奪い、所持品も処分した行為は。

 最もやってはいけない行為、ミスだと発言。でもアルファは忠告を負け犬の遠吠え、と一蹴。

 実際、自分達はお互いに勝った事は一度も無い。故に負け犬の遠吠えと言われても、ブレイブ本人に異論はないのだろう。


「それで、もう一つの忠告とはなんだ?」


「アルファ。貴殿の信じる正義は、他の誰かの悪であると考えろ。盲目的な信頼は、悪でしかない」


 最後の忠告は終焉達を相手に駆け抜けた、ループする激動の一年を体験し。

 見て来た者なら誰でも分かるモノだった。信じると言えば聞こえは良いが、盲目的では意味がない。

 自ら考え、疑い、行動によって見聞きした上で信じなければ、責任の擦り付け合いにしか発展しないと。

 信じたいからこそ疑い、考える。何が正しくて、何が間違っていて、結果としてどうなるのかを。


「くだらん。誰が何を正義と捉え、悪と認識しようとも、俺はあの方に忠誠を誓い続けるだけだ」


 忠告に対し、そっけない態度と言葉で返答。そのまま廊下を歩き続け、曲がり角で見えなくなった。


「やれやれ……また死に物狂いの旅になりそうだな。我が亡き弟の息子よ」


 言う事を聞かない子供に呆れる親。と思えるような声でそう言った後、妙なワードを言うブレイブ。

 我が、亡き弟の息子? なんのこっちゃ……てか、ロマンの詰まった合体ロボの癖に、娘やら弟の息子?

 あ……もしかしたら製造番号とか型式って形の意味か。だとしても、その言葉を向ける相手って……?

 もっと過去を夢に見れたら、何か大切なも思い出すかも知れない。思い出すって、英語でremember(リメンバー)、だったよな。






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