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ワールドロード  作者: オメガ
二章・Ev'ry Smile Ev'ry Tear
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真実神社

 『前回のあらすじ』

 パンドラに拠点へ戻り、必要物資を持って来て欲しいと伝え向かわせるも、なんと一向に戻ってないのだが。

 アンノンウン・白兎から必要物資を与えられ、攻略に必要なアイテムは揃う。しかし事情を知る為に溢れる愛情。

 その想いを新たな技に乗せて放ち、アンビバレンスを浄化。協力してくれたメイトも、巴から貰ったチョコを食べ限界を超え浄化して消えてしまう。



 ナイトメアゼノ・メイト、アンビバレンスの二体を完全に浄化させ、なんとも後味の悪い勝利を得た。

 何も知らぬ第三者から見れば、敵対勢力を倒せて良かったね。で済むのだろうが……事情と正体を知る自分達からすると。

 なんとも言えない気持ちで、もし自分一人だけだったなら、海に対し馬鹿野郎! と叫んだだろう。


「メイトの奴……ちゃっかり、置き土産までして行きやがって」


 光となって消滅したメイト。其処に落ちていたモノは──メイト達との初戦で失った右腕。

 それを右手で拾うと、ゼロは気を効かせてくれた様で、自分の中へ戻る序でに接合してくれた。


「クソッ……いつもそうだ。仲良くなった奴が敵だったり、狙われて命を落とす。だからわざと人間を嫌って、遠ざけてたのに」


 本当は人間が大好きだ。畏れや不安を抱きながらも、数多くの困難や苦難に立ち向かうあの姿が……

 だから何度も呼び掛けに応じ、護って来た。なのに、人間はそれを当然だと認識し始めた為。

 自分は灸を据え、傷を癒す意味も込め一定期間は現れない事に決めた。そしたらこのザマとは……呆れて言葉も出ん。

 立ち上がり辺りを見渡すと、仲間達や白兎は空気を読んでか、自分を一人にしてくれたらしい。


「歩ける位には力も回復したし、ぼちぼち店へ戻るか……んお?」


「上玉! せっかく勇気の(ブレイブ)魔法薬(ポーション)を飲んで練習と思ったのに、見掛けないから探しましたのよ?!」


「ヴェルか。あぁ、すまん。かなり疲れててな……のんびりと戻ってる所だよ」


 静かな一時から一転。元気に走ってくる人間・ヴェルに言葉攻めを受け。

 ウンザリしつつも言葉を返す。生憎まだ、口喧嘩を出来る程、体力や魔力・霊力は戻ってない。


「ねぇ、私達に教えて?」


「何ですの? この顔を隠した子供は」


 それでも顔を上げて歩く気にはなれず、やや俯き気味にゆっくり歩いていると。

 向かい側に誰か、青い着物と言うか……和服を着て草履を履いた子供を発見し、足を止める。

 すると何を思ったのか。青龍の面を被った子供は、私達に教えて──と尋ねて来た。


「人を愛するって……何をどうすれば、本当に相手を愛する事へ繋がるのかな?」


「自分個人の意見だけど……自己犠牲を厭わず、時には相手を信じ、悪い事をしたらキチンと手順を踏んで叱る。そう言った、今や面倒臭がられている、当たり前の行為だと思う」


「そう。今や当たり前の事を面倒臭がり、行わない人は多い。中には、誰かを利用して犯罪を起こす人も」


 自分も、何度か他人を愛した経験はある。その度、何度も繰り返し痛感する。

 一度成功したからと言って、何度も同じ愛し方が別の誰かに通用するとは限らない。

 けれど、土台となる部分は大体同じ。それでも己を押し通そうとする者、愛し方を知らぬ者。

 愛情を向けるべき子供より己の都合を優先し、問題を起こす親がいるのも確かな話だ。


「なら、聞き方を変えるね。君は──人類を、人間を愛しているの?」


「昔は愛していた。けれど今は、正直迷っている。自分の判断や、心に」


「上玉? 一体何の話をしていますの?!」


「もし君が望むのなら、連れて行ってあげる。嘘偽り無く真実(まこと)を映す、真実神社へ」


 人類や人間を愛しているか? そう問われても正直、断言出来る程の答えは残念ながら持ってない。

 ハッキリと言えば、対立する感情を同時に持つアンビバレンス状態。まさに好きも嫌いも紙一重。

 内容を理解してないヴェルは放置しつつ、話を進める中で、望めば真実(まこと)神社なる場所へ連れててってくれるそうな。

 自分自身の答えを見付ける為にも、無言のまま深く頷き、お願いした。


「それじゃあ、合図をするまで目をつぶって」


 ヴェルにも指示通りさせ、聞き忘れた合図を待つ。

 体感時間で数十秒か一分程した頃、注目を浴びようと強く手を叩く音を聞き、驚きの余り目を開く。


「こっ、此処……は?」


「真実神社、その本殿。でも、本当に君は凄いんだね」


 視界に飛び込んできた光景──それは一般的な学校のグラウンドと同じ位の広さに在る大きな神社。

 周りは水のカーテンで覆われ、上の水は落ちて来ない。好奇心で下を覗けば足場は宙に浮いており。

 底では渦巻いていると言う、とても幻想的な光景に我を忘れ、目を輝かせ見て回る最中、あの子の言葉に足を止めて振り向く。


「上玉が凄いって、それはどう言う意味ですの?」


「言葉の通りだよ。天野川静久……いや、蛇神・八岐大蛇(ヤマタノオロチ)に気に入られているとはね」


「静久が……八岐大蛇?!」


 どう言う意味か聞こうとしたら、先に言われて返答を聞いていたら──予想外な言葉に驚きを隠せず。

 思わず聞き返してしまった。それに青龍の面を被る子供は深く頷き、ヴェルを指差し……えぇっ?!


「ヴェル。いや、なんでムピテが、此処に?」


「此処は真実を映す場所。ほら、君の体も」


「上玉ッ、その体は一体全体、どうしましたの!?」


 なんと一緒に来ていた筈のヴェルはムピテに姿を変え、言われて自分の体を全体的に見てみると……

 左腕は青と灰色の狼になり、腰からは白い蛇の尻尾が生えている。恐る恐る触ると、本物っぽい。


「遥か遠い昔。闇を封じた光は力を七つに割き、それぞれ違う方向へ飛んだ。その一つが」


「鬼として有名な酒呑童子の父親、八岐大蛇に取り憑いた訳か」


「正確には、辛うじて生きていた八岐大蛇に、だね。彼の生を望む純粋な願いに応えたそうだよ」


「ちょ、ちょっと待って下さいまし! そうすると上玉に引っ付いてたあの狼も……ま、まま、まさか」


 どうやら七つに割いた力。その一つは生まれ変わった八岐大蛇改め、天野川静久と言う。

 かく言う自分もこの肉体。死産寸前の赤子を救うべく一体化した為、人の事はどうこう言えん。

 恐怖心で恐る恐る言うムピテの言葉にも、子供は頷いて答える。まあ、そうなるわな。


「彼女は狼王・フェンリル。でも何の因果か、食べた神の力を宿した状態である意味、狼神と呼べるね」


「あぁ~……(まな)の奴。嫌いな連中を鋭く睨み付けたり、嘘を聞き分けれるのはソコからか」


「余程、自分自身の慢心が許せなかったみたいだね。まあ、その気持ちは分かるけどさ」


 いやはや、そう聞くと残る恋と絆も似た動機で憑依した系なのだろうか? と思ってしまう。

 まあ、二人の前世だか正体を知ったところで何も変わらん。いつもと通りに接するだけさ。

 そうこう噺をしたり、これからも普段通り付き合って行くとこころに決めた時、本殿の扉が開き。


「貴紀……すまなかった、突然姿を消して」


 中から巫女服を着た静久が現れ、右手に矛、左手に剣を持っている。

 矛は恐らく蛇神兼水神としての物として、あの剣……話の通りなら八岐大蛇の尾から出て来たと言う、天叢(あめのむら)雲剣(くものつるぎ)


「そうだな。せめて一言、言って欲しかったかな」


「言うな……流石にあの戦いで不完全状態では限界でな。今さっき、完全になったばかり……」


「あ、あわわわわ。へ、蛇神様だとはいざ知らず、生意気な口を……」


 少しぶりの再会に、本音をぶつけてみると予想していたのか。

 小さい溜め息を一つ吐き、細目で理由を話した後。ニヤリと微笑んでから、残る言葉を言った。

 さっきからムピテが静かだと思っていたら、下半身魚の癖して器用に土下座をし、何やら謝っている様子。


「どうした。いきなり土下座するとか」


「じょ、上玉はよく平気で話しますわね?! お相手は神様なのですわよ!?」


「神様ねぇ……大体は自分を悪魔だの何だの言って喧嘩吹っ掛けてくるから、返り討ちにしてるしなぁ」


 どうやら神様と言う格上の存在に恐縮し、頭を下げているらしい。

 自分はなんか嫌われてるらしく、あれやこれやと喧嘩を吹っ掛けられ、そう言った感情を持てない。

 でもごく少数は自分を気に入り、力を貸してくれる。……何故か、邪神には特に好かれているんだよな。


「私は本来の力を取り戻した。他の奴らも同様に神社を見付け、本来の力を取り戻させれば良い……」


「そうすれば、ホライズンの奴にも勝てるのか?」


「当然。その為には貴紀……お前自身もオルタナティブメモリーを砕き、本来の力と姿を取り戻せ……」


 融合面子の四人に四つの神社──か。蛇・狼・狐・龍、そのどれもが神の名を貰ったモノとは。

 そしてオルタナティブメモリーはやはり、自分が砕くべき物だったか。本来の力と姿……少し、怖いな。

 失くした全てを取り戻した時、自分と言う存在は力に呑まれて消えたりしないだろうか?

 そんな不安さえ、この胸に溢れては、顔に出てしまう。


「何を恐れる必要がありますの。上玉、貴方はワタクシの依頼を果たす為にも、本来の力を取り戻すべきですわ!」


 そんな表情を見てか、そんな事を言い出すムピテに思わず静久共々、顔を背けて笑いを堪える。

 そうだったな。メイト改め、パイソンの約束もまだ一つ残ってるし、残った約束や依頼をやり切らなきゃな。


「ふぅ。そうだな、この海を繰り返される悪夢から解放してやらなきゃ、目覚めも悪いモンな」


「残る奴は幽霊魚のゲミュート……だったか?」


「その通りですわ。ですけれど、全く目撃や遭遇もしていない奴ですのよ」


 何度も繰り返し見る悪夢ほど、嫌なもんはそうそうないだろう。そんで幽霊魚は行方不明……と。

 そこも問題よな。今までの出来事を振り返っても、向こうから攻めて来る訳でもなく、ただ遭遇しているだけ。

 攻略法の一つも見付かってない、不可思議な奴だ。そんな話も終わり、自分達は地上へ戻された。






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