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ワールドロード  作者: オメガ
二章・Ev'ry Smile Ev'ry Tear
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動き出すモノ

 『前回のあらすじ』

 グラビトン・アーマー完成に必要な超重力(ブラックホール)を獲得した貴紀は、拠点へ戻り寧から渡された容器に移す。

 強い絆と信頼感で結ばれた二人の仲に嫉妬するマキ、自身が何気に使う言葉を死語だと言われ焦る真夜。

 二人の関係性や視る必要性、貴紀の使う能力に関しても語られ、マキは強制的に貴紀とリンク状態にされていると告白した。



 今回の夢──と言うには(いささ)か現実感溢れる何処ぞの光景は……恐らく、夜の浜辺だな。

 左右均等に砂浜へ突き刺さし、赤々と燃え盛る二本の松明に照らされ、中央に座る黒いドレスを着た三騎士の内の一人……ミミツだ。

 何か狙いでもあるのか、座ったまま動こうとしない。その時、海辺の方からミミツへと近付いて行く人物が二人。


「待たせたなぁ、お嬢。よぉ~やく心を決めてくれたんでな、気が変わらん内に連れて来たぞ?」


「ご苦労様。貴方様の方も、破壊者達に気付かれていない様で、何よりです」


 その人物とは……生死不明、行方不明状態の海賊船・スカルスネーク号の船長、パイソン──と。

 陸上歩行出来ない為、抱き抱えられている、お嬢様口調の人魚。居眠りクラゲ娘もとい、リートは一緒じゃないのな。


「あぁ、そうそう。お喋りは駄目よ? まだ破壊者が起きてる頃だから、返答は頷くか首を振るだけ」


 左手人差し指を口元で立て、注意を促すミミツに向けて人魚は短く頷き、同意。


「破壊者の様子はどう?」


「あぁ、マジックの奴が洞窟の中へ連れていった。あの洞窟は負の感情入り乱れ、反響もしている。今の内だろうよ」


「あら。あの方も来ていらっしゃるのね。それなら、幾らかは大丈夫ね」


 二人の発言から日時を逆算すると……ナイトメアゼノ・ハザードをマジックと共に撃退した五日前か。

 クッソ……よく単独行動する奴だから今回も~と思ってたけど「此処で行う私の役目も終わり」って、そう言う意味かよ!! 

 目が覚めた時、この記憶を覚えているか否か不明だからこそ、今の内に悔やんでおく。


「貴女の望みを叶えるに相応しい、素敵で適切な容姿にしてあげますわ」


 人魚をミミツの前へ置き、大袈裟な程に距離を空けた途端──ミミツのスカートは突然砂浜を黒く染める。

 奴から広がる黒い液体に松明は兎も角、強い不安と恐怖心に駆られた人魚は助けを求め手を空へ伸ばすも、包まれて黒い人形へ。

 魔力探知は……駄目だな。やっぱり夢の中じゃ機能してない。何も出来ず、ただ結果を見守るだけ。


「相変わらずだな。その個人専用固有能力は」


「あら。この程度、当たり前ですわ。何せ私……『影の魔女』ですもの」


「呑み込んだ対象の肉体を完全に溶解、魂だけを残し、再構築する。素晴らしい能力だ」


 二人の会話から、新しい情報を得た。三騎士・ミミツは影の魔女。

 名前から察するに、影を自在に操る存在……だと思う。自身限定か、それとも他人の影も操れるのかは不明。


「だぁ~が、しかし。残念な事に、俺様の計画へ組み込むには魂すらも再構築出来ねぇとな」


「貴方様の辿り着くべき目標──『ネバー・ランド(永遠の子供)計画』でしたわね」


 ネバー・ランド。昔読んだ本に、そんな話もあった。でも多分、それだけじゃないと思うんだ、その計画の根本は。


「心して待っていると良い……『全ての大人達』よ。その叶わぬ望み、この俺様が実現してやるぞ!」


 そして確信した。パイソンだと思っていたコイツ……あぁそうか、だから第三の遺跡から帰還した日。

 自分の前に現れた訳か! 何時からだ。何時からパイソンと入れ替わっていた! それとも初めからお前だった訳か?

 それに、興味の範囲はペド・ロリ・ショタ限定かと思っていたのに……『全ての大人達の叶わぬ望み』とは、一体。

 判明・疑問の入り乱れる中、何処かから聴こえる女性の声。あぁ、そろそろ起きる時間かと理解した次の瞬間、眩い光に包まれ──


「紅君。そろそろ起きないと、作戦会議、始まっちゃうよ」


 肩を揺すられ、目覚める。もうそんな時間か……(まな)と静久を揺すって起こし、自分も立ち上がる。

 眠ってた間の記憶もある。愛用のコート──は、女勇者候補生に貸しっぱか。代用品のローブを身に纏い、地下室から一階の店側へ向かう。


「みんな揃ったね。それじゃあ──」


「おぉっと~おぉ? 揃いも揃って一体全体、こりゃあ何の話だ?」


 各リビングのテーブルを囲う様に座っており、自分と心情さんの着席を見て、寧から作戦を語られる時。

 その声を掻き消す様な、渋くも聞き覚えのある声が聞こえてきた。一同揃って声の方へ視線を向けると、其処には……


「船長?! 今まで何処に……」


「いやぁ~、スマンスマン。ちょいっと海底散歩で迷子になってしまってなぁ」


「もう良い、かな。うん、改めて作戦会──」


 心配する心情さん、対応するパイソン、少しタイミングを見て再度話し出そうとする寧。

 先に心の中で悪いと謝りつつ、右手を上げて挙手。可能な限り避けたい注目を一身に浴び、席を立つ。


「パイソン。ちょっと確認したい内容があるんだけど、良いかな?」


「おう、良いぜ。なんだ?」


 内心ドキドキのハラハラ。こう注目を浴びるって言うのは、何度やっても一向に慣れないものだ。


「自分とパイソンで約束した取り引きの件だ。生憎、このドタバタで内容をスッポリ忘れちまってな」


「成る程。取り引きの内容をもう一度、確認したい。って訳か。良いぜ」


「すまんな。じゃあ、三つの目的を教えてくれ」


 会話の中に自分達『二人しか知らない内容』と言う、一つ目の餌をばら蒔く。

 此方の意図に気付いてか否か、アッサリと承認し、パイソンは丁寧に一つひとつ答えて行く。

 一つ、この海(マリスミゼル)を支配する異形と生み出す根元を倒す、つまりは敵討ち。二つ、海底に眠る沈没大陸にあるお宝の回収。そして最後、三つ目──


「どうした? 早く三つ目を答えてくれよ」


「あぁ~……いや、その~……」


 言葉に詰まった。これはどっちか、判断は難しい。なんせ三つ目は『個人的な願望』って位しか、自分も知らんのだから。

 人前で言うのは恥ずい内容か、それとも……(まな)の耳は嘘を検知してない。よし、次で決めるとしよう。いざ勝負!


「スマン。個人的な願望って言ってたな、コレは除外してくれ」


「あぁ……そりゃ助かる。で、これで満足か?」


「勿論。そう言えば、あの日の夜は『恋愛の話題』をしたよな」


「あぁ、あの夜か。この手の話は『破壊者』たる『貴様』位しか話し相手が……」


 二人の取り引き話題を乗り越えた安心感、安堵からか続けて『第三遺跡を脱出した日の夜』と言う。

 限定的な餌付き釣糸を垂らした直後、見事に食い付いた上、ボロまで出した。パイソンは自分を『坊主』呼びで『破壊者』とは呼ばない。

 奴自身もそれに気付き、近付いていた心情さんの首を右腕で絞めて人質にし、勢い良く席を立つ。


「全員動くな!! 動けばこの女の命は保証しねぇぜ、破壊者」


「あ、ぐ……せん、ちょ……」


「……分かった。寧達はそのまま席に座っててくれ。それに『(まな)も』行儀良く座っててね」


 一般人である心情さんの身の保証、安全を最優先にすべく奴の要件を飲み、寧達や(まな)は動かない様伝え、自分も動かない。

 すると奴の周りを二枚の長方形鏡が三周程回ると……


「いやはや、何時から俺様だと気付いた?」


「いやなに。ご都合主義な展開宜しく、虫の知らせならぬ夢を見たのさ。それと──」


 パイソンの姿から四天王・トリックへと変化。成る程……他人にも化けれるのか。これは何か対策をしないとな。

 そんなこんなを思いつつ、気付いた理由を話して浴びたくもない注目を集めたところで、続く言葉を発する為に口を開く。


「歳関係無く、正当な理由も無しに女性(レディ)へ手を出すのは止めときな。でなきゃ……痛い目見るぜ?」


 自分も女性へ対し、手を出す時はある。されどそれは『叱る』と言う明確で正当な理由あってこそ。

 まあ、それを相手が理解するかどうかは不明だけど。その言葉を引き金に、トリックの右腕は的確に水で撃ち抜かれ、手を放す。


「ッ、真下から……まさか、マイプリンセス!?」


「ひゅー、ひゅー……」


 真下へ視線を向ける先には──音も無く近付いていた蛇形態の静久が、トリックへ威嚇しており。

 酸素を求めて呼吸する心情さんは、かなりギリギリだった様子。もう少し遅ければヤバかったな……


「何はともあれ。先に手を出したのはお前だ」


「ハッ、しま──」


「打ち上げ花火の如く、天高く吹っ飛べ。リボルビング……インッ、パクッ、トォォォ!!」


 行儀悪いと叱られるのは後回し。テーブルへ乗り出して一気に懐まで跳躍、左手で首根っこを掴み。

 床へ足を着けたら続けて、右腕へ六発の弾丸に成形した魔力を装填。奴の顎へアッパーカットを打ち込む。

 すると魔力強化の打撃に加え、打ち込んだ凝縮魔力の追撃六連発が順次解放され、文字通りトリックを夜空へ打ち上げて行く。


「と~は~言~え~……この程度でくたばる変態でもないしな。いずれ決着をつける時は静久と一緒に、だな」


 左足から胴体、首へと巻き付きながら自分の体を上って来る静久に、ご褒美とばかりに下顎を撫でつつ話す。

 トリックを倒す時は奴の掲げるネバー・ランド(永遠の子供)計画……そんな馬鹿げた計画と一緒に墓場へ叩き込んでやらねば。

 そんな矢先、地下室から鳴り響く緊急警報。その音量は一階にも届き、何事かと寧・マキの二人は地下室へと駆ける。


「次から次へと、一体どうしたって言うんだ」


「……こ~りゃ、実にヤベーイ! な展開になって来ましたよ、貴紀さん」


「上? 上を視て一体何……マージマジマジーで!?」


 四天王・トリックと三騎士・ミミツに関する夢、起きて作戦会議かと思いきや、パイソンに化けたトリックの乱入。

 それを退けたら今度は緊急警報。息も吐かせない展開に嫌気すら感じていたら、遥か上空を視て何を言い出すかと思い。

 フォースガジェットを単眼鏡モードに切り替え、真夜の視る方向へ自分も視線を向けたら……思わずネタを挟みつつ驚く。


「貴紀君、みんな!! 予想時刻より三時間も早く衛星兵器の成層圏突入を確認! 準備を急いで!」


 爆弾を抱えた衛星兵器・マスドライバーの落下予想時刻は今夜の午前二時、その予想を大きく越え。

 もう降ってくる悪夢。その知らせをこの場に居る全員へ伝え、一刻も早い準備を──と急かす寧。

 トワイや戦える者は地上に残り、非戦闘員は安全の為に地下室へ。自分も早く地下室へ行き、まだ自動装着機能の無いグラビトン・アーマーを装着しなくては!





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