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ワールドロード  作者: オメガ
二章・Ev'ry Smile Ev'ry Tear
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恋愛

 『前回のあらすじ』

 沈没大陸に在る超古代遺跡内部で、運悪く聴こえる融合海獣・スプリッティングの足音から逃げる途中、少女二人の幻を視る貴紀。

 ノエルとデルタの導きに寄り、タイムカプセルのある部屋へ駆け込む。到着と同時に現れたホログラムより。

 Dr.パシオンからグラビトン・アーマーなどのデータと素材を貰い、この時代の事実を語って貰った後、テレポートで何処かへ飛ばされた一行は……



 突然起こったテレポートに巻き込まれ、転送された先は……夜空広がる墓場(セメタリー)島の砂浜。

 直ぐ様フュージョン・フォンを取り出し、寧とマキに連絡を入れ、遺跡で受け取ったデータも送信。

 海賊船が迎えに来るまで店へ戻って晩御飯を食べ、風呂にも入り着替え終えてから一人、海辺の砂浜へ腰を下ろす。


「……何やってんだろう。真夜中の砂浜へ誰も連れずに歩くとか、ホラー系なら自殺行為だよな」


 出来る事はやれている……と思う。とは言っても、自分に出来る事なんざ数少ない。

 雑用・戦闘・探索。パッと思い浮かぶだけでも精々これっぽっち。そんな風に思いながら、優しく吹く夜風に目を閉じる。

 夜の海は静かで、波も穏やか。波の音に耳を澄ませて聴いていると、知らぬ内にウトウトしていた。


「おぉー……ヒーローさんだー……」


「この声は……リート!? あぁ、此処へ流されてたのか」


 不意打ち気味に真っ正面の海から呼び掛けられ、眠気に負けていた意識は次第に覚醒し始め。

 海面から人間の上半身を晒す彼女に対し何故此処へ?

 と思うも、そう言えばゲミュートの通った余波で流されていたな……と思い出す。


「ムピテは一緒じゃないのか?」


「はぐれたまんまー……」


「そうか。はぁ……どうしたもんかねぇ」


  友達と言っていたから、大体は一緒に行動してるモンだと思って訊いてみたものの。

 はぐれたままで、合流していないらしい。相も変わらぬダウナーな口調にも、幾らか慣れており。

 脱力感と言うか、気が抜ける様な感覚はもう無い。深い溜め息を吐くと、リートは不思議そうな顔をしていた。


「ムピテにようじー?」


「まあ、そうだな。直接会って話したかったんだけど」


 用事と言えばそうだが、ムピテからすれば小さな親切大きなお世話でもある為、正直言うか迷う。


「ヒーローさんはさー。れんあい、ってしたことあるー……?」


 迷って黙り込んでいる間に話題は終了した、と誤解されたんだろうな。

 リートから話題を振られ、巡り会った彼女達との記憶をふと思い返す。


「あぁ、あったよ。酸いも甘いも、苦く(つら)い思いも繰り返し噛み締めて、な」


「そっかー……たとえば、どんなのー?」


「そうだなぁ。兎娘と月の女性に興味を持たれた結果、月へ行く事になって敵にブロンズ像にされた……とか?」


 返答をすると、興味を持ったのか否かは不明だけど、話に食い付いてきたので。

 紫髪の兎娘と、月の住人だった白髪女性との恋愛話をした。

 まあ、まさか月で遭遇した終焉の闇勢にブロンズ像にされるとか、予想外過ぎたけどな。

 月の住人達や兎娘達のサポートもあり、復活して奴らを追い返し、ベーゼレブル・ツヴァイと一度はケリをつけた。


「おぉー……ほかにはー?」


「ほ、他!? やけに食い付くなぁ。他、誰との話をしようかな?」


 興味津々な子供のように、話の続きを聴きたがるリートに急かされ、悩む中。

 ふと銀髪メイドの微笑む横顔を思い出した。彼女、彼女か……『恋愛事態は』普通、だったと思うな。


「幼い容姿の悪魔姉妹に一時的に仕えてた時の話でも良い?」


「いいよー……」


 一応こんな話でも良いか訊ねると、気だるげな口調ながらも肯定されたので、思い出しつつ語る。

 終焉の闇勢から放たれた刺客、ドラゴンガール(竜娘)との戦闘で断片的な記憶喪失に陥り、意識を失う前に辿り着いた場所は──

 悪魔姉妹と仕える者達の住まう館。門番の女性と銀髪メイドに拾われ、見習い執事として働く中で。

 妹の遊び(殺し合い)相手で何度も死に、銀髪メイドの特訓(的役)に付き合わされ半殺しにされた。


「うーん……それってー、れんあい?」


「女性だけで、他に男性は居なかったからな。珍しかったんじゃないかな?」


「そっかー……」


 投げ掛けられる疑問。一応姉妹は興味津々かつ、人間の男性について全く知らなかった様だし。

 けど──都市伝説のドッペルゲンガーや女神アパテー達が館の在る幻想の地・無限郷で暴れ始めたのを切っ掛けに。

 姉妹やメイド、小悪魔に魔女、門番と降り掛かる火の粉を払う内に絆を紡ぎ、恋仲まで発展したと話す。


「まあ、お陰でルートを四回程やり直すハメにもなったけどな」


「んんー……?」


「いやいや、こっちの話。で、銀髪メイドと結婚して女の子を一人、授かった訳よ」


「おぉー、おめでたー……」


 ルート云々はギャルゲーとかやってれば分かるけど、知らない相手に説明とか面倒なので説明放棄。

 首をかしげるリートに娘を授かったと話せば、オットセイの様な拍手をしてくれた。


「名前は千の夜と書いて千夜(ちよ)。母親に似て、とても良い()だったよ」


「だったー……って、そのこはどーしたのー?」


「さぁってね。六歳位までは無理を言って居続けさせて貰ったけど、それからは知らないんだ」


 母親に似た銀髪、可愛らしい容姿に自分と彼女の眼の色を受け継いだ赤と黒のオッドアイ。

 ルート違いとは言え、巫女の()と合わせて二人目だったけど。喧嘩をしたり助け合いもして。

 お互いの過去を慰め合い信じ合える幸せな恋愛を経験した。でも──自分の旅は彼女達と紡ぐ幸せがゴールでは無い。

 故郷へ帰る為の旅路、約束を果たす力を取り戻す寄り道、副王に時間を巻き戻して貰い続けた。故に、子供達三人の行く末は知らない。


「まあ酷い父親だった。って言うのは理解してるよ」


「んんー……?」


 彼女達と恋愛をして絆を紡ぎ続けたお陰で、自分は人として大切なモノを取り戻せた。

 恋愛の形や価値は人それぞれあれど、自分はとても良い恋愛を出来た。と思っている。


「こう言う話を訊いてくるって事は、リートは恋愛に興味があるのか?」


「んーんー……きょうみ、ない……よー。ぐぅ……」


「そうか。もう夜も遅い、ゆっくり海の中で眠りな」


 ……かなり無理をしてまで起きていた様だ。しかし何故そうまでして、自分から恋愛話を訊いていた?

 疑問は次々と浮かぶ。けれども、先ずは俯せに眠ってしまったリートを海側へ押し込み沈めた後。

 左手をローブの内側へ入れ、素早く振り向くと同時に体の捻りも加えて白い柄の短刀を奴へ投擲。


「テメェの仕業って訳か?」


「ハッハッハ、流石は裏切り者の破壊者。半分正解、半分不正解な答えだなぁ」


 視線の先に立つ相手──長身男性姿の四天王・トリックへ向けて言い放つ。

 美意識が高いのか、コンプレックスでもあるのか。相も変わらず世間一般的に美形と言う顔立ちで。

 眉間狙いで投げた短刀を、人差し指と中指の二指だけで悠々と受け止めていた。


「おっと。今回は遊び(殺し合い)に来た訳じゃあ、無い。俺様から裏切り者へプレゼントを、な」


「……お前に何のメリットがある?」


「俺様の計画にも必要不可欠な事なんでな」


 殺る気で睨み付けると自ら両手を上げ、敵対意思や戦う気は無いとアピール。

 受け止めた短刀も此方へ軽く投げ返され、受け取り懐へ戻す中、プレゼント云々と抜かす。

 何かしら奴自身にもメリットが無いと話す意味は無い筈と読み、理由を問うと……さも当然の様に言い放つ。


「この切り離された区域は元々、様々な種による恋愛の盛んな場所だった。闇の欠片が降り注ぐまでは」


 奴は手品の如く、宙に魚人(ぎょじん)や人魚、人間達の人形を踊らせて語り始めた。

 奴を注視し、常に気を張り巡らせろ。コイツはトリックと言う名に相応しい、恐るべき道化だ。


アフェクション(愛着・愛情)の島は愛憎、ステイブル(安定した)海上集落はクーラ(不安)へ歪み、アモル()の名を持つ大陸は沈没した」


「成る程。元々あった島や集落の名前は歪んだ結果反転し、大陸は爆弾の件もあり沈没したと」


「ふふふ。人間もそうだろう? 恋愛とは互いに愛し合い、夫婦(めおと)へなる行為。それも今や……」


「女は身の丈に合わない理想を男に押し付け、男もそんな女に嫌気を覚え恋愛や結婚を拒む。確かにそうだな」


 奴は敵でありロリペド愛好家と言う変態なれど、次々語る言葉には共感しかない。

 恋愛とは求め・与え・認め・愛し合うモノだと自分は認識している。けれど今は……一方的な高い理想を押し付け気味、と感じている。

 男女で脳の作りは違うし。それはある意味、認識も真逆じゃないか? とすら思っている程だ。

 男脳は理性、女脳は本能。水と油。故に双方共に男女脳を修得し、理解し、認めるべきだろう。


「話が逸れたか。まあ良い、俺様の話に付き合え楽しく思えるのは破壊者、貴様だけだからな」


「そりゃどうも。此方としても男女の恋愛云々で遠慮無く話せるのは敵味方含めても、お前だけだ」


 悔しい事に、素面(しらふ)で恋愛やら結婚関連の愚痴を本気で言い合える相手は、コイツ(トリック)だけ。

 酒でも飲めれば口や気分も軽くなり、愚痴り易いんだろうけれども……生憎、煙草(たばこ)や酒は接種しない主義でな。

 精々料理に酒を使う位か。だからだろうな。宴会の時は自ら隅っこへ寄り、チビチビやってるのは。


「さて……物理無効の肉塊は冷凍してやれ。甲殻類なら圧倒的な暴力で砕け、中身は知らん」


「知らんて……お前なぁ」


「亡霊魚に体重は無い。俺様から言えるヒントは此処までだな」


 攻略ヒントを三つ教えると、トリックは自身の能力で出した長方形の鏡に入り、消えてしまった。

 冷凍に関しては、トワイ・ゼクスに頼むとして。圧倒的な暴力……ゼロだな、正しく筋肉の見せ所か。

 亡霊魚に体重は無い。何も奴に優位な土俵で戦う理由は無いしな、何とかして地上へ引きずり上げてみよう。


「ってなると……色々作って仕掛けないと。後はどうやって呼び寄せるかも」


 よしよし。纏めて相手にするのは愚の骨頂、可能な限り各個撃破を狙いたい。

 とは言え、最悪の事態もキチンと想定して出来る範囲で対策を立てよう。此処では食料は確保できても。

 高品質な武器や水薬の(ポーション)補充は望めない。どうしたものか……

 その辺りも考えつつ明日に備えて寝る為、精神を集中させ魔力探知で周囲の確認を終えてから店へ戻った。






『キャラクター紹介』


名前:パイソン=キク

年齢:35歳

身長:192cm

体重:96kg

性別:男性

種族:人間

設定


 二章の舞台となるMALICE(マリス ) MIZER(ミゼル)の海を駆け巡る最後の海賊にして船長。

 一人称は俺様。二人称は男の船員達へは基本的に野郎共、貴紀達は名前呼びや○○嬢ちゃん呼び。


 貴紀と出会う前は、仲間の船員達をナイトメアゼノシリーズや融合海獣に殺された仇を討つ為、沈没大陸に在る超古代遺跡のお宝を狙っていた。

 出会った後も敵討ちや遺跡のお宝は狙っているものの、本気でお宝を求めているのか疑うレベルで単独行動を取っている。

 曰く顔は強面(こわもて)、体は筋肉質、声は渋く怒ったり問い詰める時の声は脅迫にも思えるとか。

 頭も冴えており貴紀と同じスキル・直感を持つ。武器はクイーン・アン・ピストルとカトラス。

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