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ワールドロード  作者: オメガ
二章・Ev'ry Smile Ev'ry Tear
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愛と正義の行方

 『前回のあらすじ』

 目的地である島へ上陸するも、幻聴や幻覚に悩まされる貴紀。サクヤの幻覚を追い、山頂へ登ると──

 村を発見。遠くから単眼鏡や双眼鏡を使い、様子を見るもありふれた光景しか見えない。協力者を探し足を踏み入れると。

 自らを愛と正義の魔法少女と名乗る、パンドラを発見。村人の耳打ちでか、貴紀達を敵と認識し襲い掛かる。



 視界は良好。パワードスーツも相変わらず頭部を避け、黒い装甲で守られているし。

 四肢や胸部は追加装甲。スキャンは──自動的にしてくれるのか、これは有り難い。


「成る程……それが貴方の本性と言う訳ですね。いいですよ。僕の手で、浄化してあげるから!」


「何を勘違いしてるんだか。さぁって、準備運動位はしないとな」


 とは言え、此処は村の中。上手い事動き回って、戦闘のどさくさに紛れて村人達や村中を探るか。

 この島へ上陸した時に感じた心身的な違和感の謎も、是非調べたいしな。そんな思いを胸に秘め、パンドラへ挑……ん?


「なんだ、この赤黒いメーターは」


(宿主様、二人を急いで撤退させろ!)


 徐々に上昇して行く、謎の数値と赤黒いメーター。突如としてゼロから二人を撤退させろと言う。

 言われて二人を見ると同時に腹部へ異常を示し、両手や片手で抱え苦しみ、吐血し始めている。

 大慌てで村から離れろ、船へ戻れとジェスチャーを行う。それを理解してか撤退する二人を背に、パンドラと向かい合う。


(なんて村だ。人間の持つプラスの感情も方向性次第で此処まで捻れ、歪み、悪影響を与えるのかよ)


「撤退なんかさせない!」


「悪いな。させて貰う」


 村から何か、良くないモノを感じたらしいゼロ。自分は──と言うと。

 二人の背に向け放たれた追い撃ち一撃、ハート型魔法弾を右拳で真正面から打ち砕く。すると抵抗・邪魔と言う行為が頭に来たのか。

 連続で撃ち込んで来た。避けれない、ならば真っ向から対処する。両手に魔力を纏い、魔法弾を側面から殴って弾く。


「フン。例え屈強な奴でも、側面からの攻撃には弱いってな」


 これは確かな答えだ。例えボディビルダーや巨漢デブだろうと、予期せぬ側面からの攻撃には弱い。

 巨大な相手ならば、足を集中的に狙え。ユウキはそれを自分に教えてくれた……強制的に体験させる事でな。


「っ、魔法弾を弾くなら」


「そう。物理攻撃へ移──え?」


「もっと巨大な、愛を込めたハートで!!」


 コイツ……もしや馬鹿か? 村の中で、自ら被害を拡大させる様な選択肢を連続で選びやがった!

 さっきの魔法弾は左右へ弾いたものの、数件民家の破損と言った被害は出ていた。なのにコイツ。

 また「愛と正義の名のもとに!」とか言いつつ、何倍もデカい桃色のレーザーを撃ってきやがった。流石に避け切れん。どうする!?


『リンクシステム、起動。同調(シンクロ)率六十八パーセント、解析開始……完了!』


「マキ、お前──っ。切り裂け、魔閃衝!」


 仮面を通して聞こえる突然の通信に驚くも、目の前に迫る現実は止まらず、マキの解析した最適解を行動に移す。

 右肘のエボル・ブレードに魔力を込め一気に振り上げれば、正面に発生した緋色の刃は相手の魔法(レーザー)を左右に切り裂く。


「どうして邪魔をするの! 不安と絶望が募るこんな世界だからこそ、愛と正義を示す必要があるのに!」


「確かにな。けど、お前の言う愛と正義も、他の連中と全く同じとは限らねぇ」


 平和は人を腐らせ、戦争は人を殺す。どの道世界には不安と絶望は募るもの。

 しかし愛も正義も、個人で全く形や意味すら異なる。虐待を愛と認識する奴や、略奪を正義と思う奴だっている。

 チラリと視界に映る子供をスキャンすると、右手人差し指の先が無い。それに体内反応のこれは──もはや愛やら正義とは言えんぞ!?


「マキ、見るな!! リンクをカットしろ!」


『えっ……ッ!!』


 忠告と催促も時既に遅く、小さな男の子は残念な事に全身を内側から無数の触手に引き裂かれ。

 周りの人間を串刺し、人体を汚染。最悪な結果として村人達は各々ナイトメアゼノシリーズに再誕。

 お兄ちゃん()お姉ちゃん(パンドラ)を呼ぶ声はとても子供とは思えない程異質かつ濁り、苦痛に満ちて悲しげで見ていて気持ち悪い。

 変貌を遂げた大人達は「これこそ私達の愛の結晶、正義の証」と感動に満ちている様子。


(どうするよ宿主様。これまでの融合獣化なら救う手はあるけど、これは流石に無理だぜ)


『ラプターとメイトの他に新種が一体。これは──融合獣・ヘンカァ(死刑執行人)!?』


「こうしてナイトメアゼノシリーズや融合獣を増やしてるって訳か。ッ、胸くそ悪い」


「こんなの……愛でも正義でも、何でもない……」


 取り込まれるタイプならまだ救い様はあったけど、これはゼロの言う通り……無理だ。

 人の顔を残したまま、異形となった三本の爪で俺達に襲い掛かるラプター達。

 不気味な顔で「愛と正義を受け入れましょう?」と言い、新種は「愛情(切り刻む)正義(断罪)を受け入れよ」ってくる始末。

 全く──愛と正義の行方もこれだけ歪み切ってりゃ、知れたもんじゃないな。


「愛も正義も、所詮は形無きモノ。それを人間が決め付け、形へ押し込めたモノに過ぎませんのよ?」


「ハッ。嫌なタイミングで、嫌な奴の登場とはな」


 何処からともなく聞こえる幼き女の声。すると青い炎が円陣を作り、現れる赤い髑髏を纏った存在。

 ナイトメアゼノ・アニマ。まさかこんなタイミングで現れるとは……遂に運すらも使い果たしたか?


「愛と正義の魔法少女。それも所詮、形に嵌め込んだ理想。儚い人の夢幻」


「例え……例え夢幻だとしても。僕は──スラッシュ!!」


「馬鹿、止めろ!」


 とても冷静かつ落ち着いた声で、魔法少女と言う存在を人間の作った理想、夢幻だと切り捨てられ。

 激情したパンドラは魔法のステッキに魔力を込め、静止も聞かず真っ正面で振り払って斬撃を放つ。


「不安も、絶望も、全部人類が自らの手で生み出した災厄。そう──未来永劫続く自業自得、ですの」


 けれどアニマは右手だけで受け止め、俺達へ見せ付けるかの如く容易に斬撃を握り潰し。

 パンドラの発言。不安と絶望云々で愛と正義を示す必要を、人類の自業自得とあっさり切り捨てる。


「力無き正義は無力で、見返りを求める愛は愛と呼ばない。真理とは無慈悲なモノですのよ?」


「魔力が髑髏に集まって……クソッ、あの時のか!」


「人類に必要なのは愛でも正義でも無く。無慈悲な真理の唱える答え、絶滅ですの」


 続けざまに言う言葉はどれも正解で、現実。幾ら正解を唱え、掲げようとも力無き正義は無力。

 見返りを求めた時点でソレは愛とは呼べず、寧ろ恋やら利益の類い。

 話している最中でもアニマは髑髏の目や口に魔力を集中させ、人類が本当に必要なモノは絶滅だと言い放つのと同時に。

 髑髏の穴と言う穴から眩い閃光を放ち、俺達や仲間である筈のラプター達諸共村中を攻撃し始めた。


「ッ……おい! ラプターやメイトはお前の仲間じゃないのか!?」


「仲間? それは違いますの……彼ら、彼女らは働き蜂。幾ら倒されようと、代わりは幾らでも作り出せますの」


 仲間すら巻き込む攻撃に文句を言ってやった……んだけど、予想外過ぎる回答に思わず絶句。

 人間が倒すのに苦労するラプター、物理無効なメイトすら代えの効き、幾らでも作り出せる働き蜂。

 そうなると、女王蜂は一体誰なんだか。懸命に動き回り、閃光を避け終わる頃には息切れを起こして足も疲労で震えていた。


「でも……貴方だけはどうしても、何度繰り返しても出来ない。だから、私は貴方が欲しい」


「残念だったな。俺はお前達側へ行く事は無い」


「えぇ。ですから……今回は新しく生まれた新種とコレの回収だけの為に、顔を見せに来ましたのよ」


 ナイトメアゼノシリーズも、オメガゼロを作ろうとしてるのか。欲しいってのは、サンプルとしてだろうな。

 それは兎も角、目的は新種と壊した蔵にある小型の箱の回収らしく。追撃やら追い打ちも無く、アッサリと引き返す。

 此方としても最早、調査も出来ない状態となってしまった以上、無理に残る必要は無く。一応パンドラを連れて船へと戻る。






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