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ワールドロード  作者: オメガ
二章・Ev'ry Smile Ev'ry Tear
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幽霊船

 『前回のあらすじ』

 セメタリー島へ戻った貴紀達。ゲートを通り現れたのは、オラシオンの一人、トワイ・ゼクスだけ。

 オメガゼロ・エックスや冒険者スレイヤーの正体を察しているらしく、協力はしてくれるらしい。

 パワードスーツの改修は終わり、元々の仲間であった賢狼愛も再加入し、戦力は徐々に取り戻しつつあった。



 ──夢を見た。集った仲間達が魔族や人外なる存在に次々と倒れる中、次は自分自身だと言う恐怖心に駆られ。

 逃げ出して行き。そして自分も──進む道を遮るモノ達や妨害するモノ、終焉達や調律者姉妹との戦いで、身体中から血を流していた。


「……テメェらか。俺の家族を、此処まで傷付けたのは」


 後ろには互いを守ろうと抱き締め、横たわる瀕死の金髪と銀髪の少女。泣いているサクヤ……恐らく素人目でも分かる出血の酷さから。

 一時間と持たないと知ってだろう。嘲笑う敵達、汚物でも見る様な目で見る人類へ向け、憎悪と殺意を込めた眼で睨み付ける。

 ふふ、フハハハハ……そうだ。こんな人類を守り救う価値なんて無い。世界平和? あぁ、叶えてやるよ。この惑星の生命体を皆殺しにしてなぁ!!


「ハァ、ハァ、ハァ……」


 憎悪と殺意の赴くまま女子供も関係なく、命乞いすら踏みにじって殺戮(さつりく)蹂躙(じゅうりん)を繰り返す。

 人の痛みなど、他人には分からないし関係無い。理解出来たとしても、全てではない。殴り潰す頭から噴き出す鮮血。

 返り血を全身に浴び、夕焼けの見える丘で数多の死体を背に一人立ち尽くす。そんな俺に話し掛ける麦わら帽子の少女は、こう言う。

 「また殺ってしまったのね。でも──えぇ、とても楽しい余興だったわ。オメガゼロ・エックス」……と。


「──ッ!!」


 その言葉を言われ、俺はむせび泣く。仲間や家族へ注いだ時間と愛情。こんな結果になるなら、これ程傷付くなら。

 友情や愛情など要らない。心なんか要らない!! そう強く何度も繰り返し心の中で叫ぶ。

 そんな時、真っ白になって行く景色の中で、耳を塞ぎたくなる様な音を聴く……


「ぬし様、ぬし様!?」


「うん……(まな)か。どうした、そんな顔して」


 目蓋を開くと、視界いっぱいに映る今にも泣き出しそうな(まな)の顔で自分を呼ぶ光景を見て。

 思わず何か悲しい事でもあったのか、問い掛ける。全く……心配性なんだから。


「うむ、様子を見に来たら酷くうなされておってな。幾ら揺すっても呼び掛けても起きぬから……」


「あぁ、ちょっと。悪い夢を見ただけだよ」


「そうか。それだけなら……」


 あぁ、そうだ。思い出してきた。新しい装備品の靴と単眼鏡を装備し、数日分の食糧も船に詰め込み。

 セメタリー島から出発したのが、確か今から二日前。寧と静久、トワイも同行してくれてるんだったな。


「他のみんなは?」


「グッスリ眠っておる。なんせ、夜中の二時かつ、人魚の歌声響いた後じゃからな」


「人魚? 歌声……敵襲か!」


 人魚・歌声と言う単語から、今更思い出す。人魚とは伝説でも歌を歌い、航海者や船乗りを惑わし破滅へと導く存在。

 ならば響いていたのは魅了、もしくは子守り歌のどちらか。慌てて装備を整え、揺さぶられる中、甲板へ出向くと。


「ッ……酷い、豪雨だな」


「う、うむ。幾ら雨と言えど、この勢いは(ひょう)と変わらぬ」


 空は暗雲に包まれ、雷鳴轟くゲリラ豪雨の降り注ぐ海域へ突入していたらしい。自分達の他に、誰も居ない。


「この魔力……もしかして上玉? 上玉、其処の船に居ますの!?」


「少なくとも名前で呼べ! と言うか、船員を歌で眠らせたのはお前か!?」


「そうですわ。けれど、アレを直接見せない為でもありますのよ」


 と思った矢先。海から聞き覚えのある声に呼ばれ、覗き込んで見れば──此方の船と並んで泳ぐムピテを発見。

 少し言い争いをするも、突然指を差し言う『アレ』に視線を向ける。あぁ、確かに常人なら発狂するな。とは個人的に思う。


「幽霊船……映画とかでもチラホラ観るけど、遭遇して直接見るのは初めてだな」


「わっち等はこう言うのを見慣れておるが。相変わらずどう言う原理で動いておるかは、未だに不明じゃな」


 此方へ迫って来るボロい木造船には、青白い炎が幾つも浮かび、骸骨の船員も武器を片手に飛び移る準備も万端。

 まさしく幽霊船と呼べるだろう。ゲームなら倒せば終わりになるも、この手は操るモノを倒さなければ無意味。

 とは言え、操る本体は青白い炎の死霊、怨霊の類い。物理的な力は通用しない。なら、塵も残さず消滅させるか?


「ふふふ。会いたかった、会いたかったぞ? お嬢、奴こそ我らが宿敵にして裏切り者、終焉の破壊者」


「ほう。珍しいな、ロリとショタにしか興味を示さんトリック。テメェがソイツに付き添うとは」


 幽霊船の骸骨船員達に紛れ、金髪ツインテかつ股間の金色結晶目立つ変態(トリック)は付き添いらしき黒い人物と前へ出て来る。

 黒いドレスを着る巨乳の女性らしき人物へ、濡れぬ様黄色い傘を差して話している。おかしい……身長も平均的な大人の女性位はあるのに。


「お初にお目にかかります。三騎士の一人、ミミツと申します」


「三騎士……トリスティス大陸で会ったコトハやヴォール王国へ攻め込んだ奴の仲間か」


「えぇ、その通りです。けれど、貴方様達のご活躍により撤退を余儀なくされておりまして……ぅぅ」


「ぬし様よ。奴の言う事は信じるな。アレは嘘じゃ」


 礼儀正しくお辞儀をし、水色の瞳を向けて話し掛けてくる。当たり前の礼儀、それだけでも第一印象は良く見える。

 聞く前に自ら三騎士を名乗り、質問にも答えてくれるミミツは次第に背を背け、泣き始めてしまう。

 確かに三騎士の内、コトハと剣士は撤退させた。活躍と言って良いのかは兎も角な。話を続けるか困っていると。

 左側へそっと近付き、耳元で助言を伝えられミミツの方を向けば、此方をチラッと見ている事に気付く。


「誠に残念ですが、今回は顔合わせだけ。次回以降からは、お手合わせをお願い致しますね。それと」


「なんじゃ。わっちに何かあるのかや?」


「賢狼愛……さん、でしたか。四天王の皆々様方も、貴女達との決着を心待にしておりましたよ?」


 嘘泣きとバレてか、向き直り堂々と話し掛けて来た。話の中、(まな)の顔を見て嘘の有無を確認すると、嘘は無いらしい。

 同時に四天王達の狙い、静久や愛達との決着も──嘘ではないとの事。トリックは静久を求め、ジャッジは自分や(まな)との決着。


「悪夢の異形に襲われて災難と思いますけれども、私達のお相手も、宜しくお願い致しますね」


「また会おう、破壊者。今度はマイプリンセスの所有権を賭けて」


 言いたい事を好き放題言って、奴らと幽霊船はスカルスネーク号より離れて行った。本当に顔合わせだけ、だったのだろうか?

 って言うか、テメェみたいな変態野郎に静久を渡してやるか!! そもそも、本人の気持ちすら無視する様な輩になんぞやらん。


「幽霊船は立ち去った様ですわね」


「あぁ。乗員してた内の二人は、いずれ倒す奴らだ」


 奴らとの会話に混ざって来ない。と思いきや、ずっと水中に潜っていたらしく。幽霊船の撤退後に現れ、安堵していた。

 取り敢えず、船は守れたし破損箇所も無い。されど海面は荒れに荒れ、暴風も強くなる一方。

 なんだけど……船は暴風の影響を受けず、目的地である島の方向へ猛スピードで進んでいた。何がなんだか分からず、海面へ視線を向けると。


「この感じは──ナイトメアゼノ・ゲミュート!?」


 海面に浮かぶ一つの巨大な影。それをゲミュートだと理解するのに苦労は無かった。

 何故目的地の島へ導こうとするのか、それは全くもって分からないけれど。今だけは──素直に喜ぼう。

 どうやらムピテを置いてけぼりにしてるっぽいし。まあなんと言うか、あのお嬢様口調って言うの? どうにも苦手だったしな。


「ぬし様。少しずつ見えてきたぞ。あの島こそ協力者の居る島じゃ」


「そうか。空も回復して来て、波も落ち着きを取り戻しつつある。早朝に乗り込むぞ」


「うむ」


 ゲミュートのお陰で予想よりも早く、目的地へ到着。しかし夜中は流石に協力者も出ては来れない。

 早朝を狙い、今夜はグッスリと眠って、鋭気を養えるべく。自分達はベッドへと戻って行った。






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