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ワールドロード  作者: オメガ
二章・Ev'ry Smile Ev'ry Tear
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片鱗

 『前回のあらすじ』

 遂に海上集落へ到着した貴紀達は、ムピテより桃色珊瑚を貰う。

 少し遅れて到着して二人に近付くパイソンは何やらやや怒り気味に、二人を海賊船・スカルスネーク号へと連れ戻し、料理当番に任命される。

 海上集落クーラはナイトメアゼノ・ゲミュートの縄張りらしく、長居すると精神面で生死に関わる被害を受けると説明を受け、補給の意味も込めてセメタリー島へ戻る。



 次なる航海に向け食糧や飲み水の調達をする為、セメタリー島へと戻った自分達。

 パイソン達海賊組は他にも何かやる事があるらしく、船から降りた後は別行動に。四日振りに店へ戻り地下へ降りると──

 青い光球が行き場に迷う場面に遭遇。左腕を曲げてウォッチを見せ付ければ、此方へ飛び込んで来た。


(宿主様よぉ。あんま目立つ怪我すんなよな。本体に怒られんの、俺だぜ?)


「そうは言ってもなぁ。ゼロ達抜きで融合獣とナイトメアの同時相手じゃ、割りとこんなもんよ?」


 ゼロと合流後。此方で起きた出来事を話しつつ、壁際に設置してあるソファーへ視線を向ければ。

 横になって熟睡している寧を見付ける。所々黒く汚れた白いシャツ、某配管工兄弟でよく見るオーバーオールを着。

 目の下に(くま)を作っている。もしかして自分達と別行動中、ずっと徹夜で作業をしていたのだろうか?


「全く。女の子がお腹丸出しな上、だらしない顔で寝るもんじゃないってぇの」


(なぁ宿主様。他に誰か、ゲートを通ってくるっぽいぞ?)


「──ッ。この感じ、トワイ・ゼクスか」


 緊張感やへったくれもない、無警戒な顔で熟睡する寧に毛布を掛け、労いの意味も込めて優しく頬を撫でる。

 次の瞬間。足下に冷気を感じ、ゲートのある方へ向き直り小声でゼロへ右腕に擬態させ、他人に聞こえる会話はしないよう話す。

 すると「本当に良いんだな?」と何かを確認する様に言われるも肯定。少ししてゲートより現れたのは、トワイ・ゼクスだけ。

 此方と周りを見回した後、スケッチブックとペンを取り出し何を書いたのかと言うと──


『やはり伝承・伝説に残るオメガゼロ・エックスと冒険者スレイヤーの正体は、貴紀様でしたか』


「……」


 伝承や伝説に関しては現状、先祖代々伝えられているパターン故に知るものは極一部。

 冒険者スレイヤーも協力者や言っても大丈夫だと信頼した相手にしか話さない。にも関わらず、トワイは此方の正体を二つとも察している様子。

 これは……危惧(きぐ)していたスパイ? だとしても逃げる素振りも無ければ堂々としている。さてはて、どうするべきか。


(どうする、宿主様。秘密保持の為、此処でこの雪女を始末するか?)


 物騒な事を言うな。とは言い切れず、確かに今此処で倒せば守秘義務的なモノは守れる。反面──

 スパイでは無く、他言無用を貫き協力してくれるなら……三勢力相手に氷属性と言う強力な手札(カード)を得れる、か。

 トワイは殆んど常時ポーカーフェイス状態、言葉も発せず冷静に文字を書くだけ。そうなると嘘を見抜く技術も通用しねぇ。


『ご安心を。琴音様より釘を深く刺されていますので』


「……なんて言われたのさ?」


『もし貴紀様に牙を向く行為や思考を一瞬でも行おうモノなら一つか二つ、祈り(オラシオン)の空席は覚悟しろ。と』


 疑心暗鬼が抜けず押し黙る中。トワイからスケッチブックを見せられ、疑問を投げ付け返事を見れば。

 察していると事前に気付いていたのか、琴音からドデカい(脅迫)を深く打ち込まれていたらしい。


「琴音を信じて敢えて言うけど。自分は害虫(心無い人間)を救う気は微塵も無いし、英雄や勇者に成る気も無いぞ?」


『構いません。私は罪滅ぼしの為──人間ではなく、世界を救うと決めていますので』


 書き見せられる文字を信用仕切れないけど、琴音ならそう言いそうだ。と認識した後。

 信頼出来る彼女(琴音)の名前を信じて内心を話す。するとどうだ、表情などは一切変わらないにも関わらず。

 トワイの書く文字の中に何か片鱗を感じた。でも、これは自ら話してくれるのを待つべきだろう。下手に踏み込むべきではない。


『それに嘘を吐き、欺こうとすれば──今頃私は彼女達の牙やその右腕に殺されていたでしょう』


 『彼女達』や『その右腕』と言う言葉に内心驚くも、反対に三人は殺る気な様子。一人は天井に三つある照明の内。

 電気の点いてない階段から真正面奥の照明器具へ逆さま状態で睨んでる静久。二人目は右腕に擬態中のゼロ。

 最後、三人目。照らされていない階段から青い瞳を光らせ、何時でも飛び掛かれる体勢の相棒──狼娘・賢狼愛(けんろうまな)


「安心せよ、ぬし様。あやつは嘘を()いておらん」


「そうか。相変わらず良いタイミングで来てくれるな、(まな)は」


「ぬし様は色々と抜けておる故、わっちらが付いておらんと心配でな」


 抵抗する意思は無いと見てか、(まな)は自分の隣へ歩いて来ては、哀れみを込めたジト目で此方を見る。

 やや幼さ残る顔に藍色の瞳、頭部には獣耳と腰まで届く茶色い長髪。自分の服装を真似たのか。

 黒いハーフパンツの少し上から尻尾が飛び出し、少しヘソの見える白い服、上着として藍色のコートを着ている。……背中の太極図はオシャレか?

 言い返そうにも図星過ぎて正直、何も言い返せず苦笑いしか返せない。静久は降りて来る気配を見せない辺り、警戒は解けない様子。


「話は静久から聞いた。まぁ~た厄介で面倒な事に巻き込まれておる様じゃな?」


「はははは……はぁ。本当、面目ねぇ」


 お節介焼きな幼馴染みの如く詰め寄り、痛いところを突かれ笑ってやり過ごそう。

 そう思い実行するも、そんな自分を情けなく思い深い溜め息の後、反省の意味も含め肩を落とし謝る。

 こっちの心情を知ってか知らずか、左手を取り(まな)は自身の頭に乗せて撫でさせて満足していた。


「女──ぬし様の許可無く動くな」


 スケッチブックに何か書こうと手を動かす瞬間。二人の雰囲気は一瞬で変わり、トワイを睨む。

 融合パートナーの面々は各々、呼び方が異なる。名前で呼んでくれるのは静久だけ。(まな)花魁(おいらん)言葉でぬし(あなた)様。

 (れん)はご主人様、絆はマイマスター。それは兎も角、こらこら、本気の片鱗を見せるんじゃない。


「まあ、攻略に手を貸してくれるなら動いても構わん」


『分かりました』


 本当は素直か! ってツッコミたかったけど、あんまり素を見せると伝承やら伝説に残るオメガゼロ・エックスの印象変わりそうで。

 ワンテンポずらし、気持ちを整えて交換条件を提示したら、これまた素直な返答が返って来たのには草生える。


「……貴紀。少し話がある……」


 照明器具から降り、此方を呼ぶ静久の元へ向かう前に再会を喜び、愛情を込めてペロペロと顔を舐められているんで。

 全身全霊の愛情を込めて頭・首・耳を撫で返す。何気に融合パートナー全員、個人差はあれど甘えん坊の寂しがり屋なのよね。

 スキンシップを終え、静久の方へ向かうと──ムスッと拗ねていた。多分、羨ましかったんだろう。


「……これを見ろ」


「もしかして、コレ全部?」


 無言のままパソコンへ向き直り、席に座ってキーボードを打って行き、第二装甲と波長の図面を出す。

 どうやら寧は、連日徹夜でパワードスーツを改修してくれていたようだ。波長の方はメイト達との戦闘データらしい。


「リンク後、貴紀は『現状の全力を僅かに』出し……体に異常を起こした」


「あぁ。って事はこの部分か」


 スーツは改修完了済み、問題は上下に波打つ波長の方だと言う。理由としては──

 肉体とスーツの動きを同調させる波長(シンクロ率)が両端へ擦り付ける様な台形(だいけい)になっており、セーフティに引っ掛かったそうな。

 簡単な話。息の合わないモノ同士で二人三脚をして転け続けている様なもの。


「トリスティス大陸では現状で良かった……反面、奴らと戦う内に貴紀の成長に元の設定値じゃ反応し切れなかった……」


「あぁ~……以前はリグレットも居たから毎度点検して、調整出来てたんだよなぁ」


「全く……強敵との戦いで負けず嫌いがパワーを上げるとか……ゲームだけの話と思っていたら」


 スキル・負けず嫌いってそう言う効果なの!? 戦わなければ生き残れない、的な?

 まあ、最終目標達成には自分自身の強化も必要事項だから、スーツの全面的な調整と改修・強化も小まめに必要って訳か。


「狼と偵察を繰り返した結果……この時代でヴェレーノらしき大樹と実を見掛けた」


「レヴェリーの領土だったトリスティス大陸だけ、じゃなかったのか」


 戻って来るまでの間に、二人で情報共有と入れ替わりで偵察を行っていたらしく。

 レヴェリーの持つ失敗作。ヴェレーノっぽい物がこの時代にも存在しているそうで、見掛けた場所は。

 セメタリー島から北北東、丁度海上集落クーラから東部に在り、次なる目的地とする島・アフェクション島。


「ただ……あの島へ行くのなら、上陸するのは貴紀と例の海賊だけにしておけ」


「そう言えば、パイソンも一方的かつ一方通行な酷い事云々とか言ってたな」


「アレは生命体に必要不可欠であり……同時に腐らせ、破壊するモノ。正気も狂気も関係ない場所……」


 アフェクション島へ調査へ向かうなら、自分とパイソンの二人だけにしろ。

 と忠告され、海賊船内での話を思い出す。曰く生命体に必要不可欠でありつつも、ソレは腐敗や破壊にもなるモノなんだとか。

 一方的かつ一方通行な酷い事、生命体に必要不可欠、正気も狂気も無い場所。……駄目だ、謎なぞはどうも苦手なんだよ。


「其処で協力者を見付けた……反面、これまたどうにも面倒臭い変態の魔法少女だった。発言には気を付けろ……」


「えっ、変態?」


 ヴェレーノらしき物の発見と、協力者も見付けてくれたそうだ。けれど、これまた面倒臭そうな輩らしい。

 協力者は変態の魔法少女だと言われるも、どう言った変態かさっぱり分からん。と言うか、魔法少女で変態って……

 滅茶苦茶な性癖の、って意味だろうか? かつて居た女の仲間に、NTR属性持ちがいたけれども、寝取られる立場を好んでたな。

 彼氏作って、別の男に寝取られる光景・シチュエーションを最高の絶景と豪語していた。あの変態女、どんな最後を迎えたのかな?






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