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ワールドロード  作者: オメガ
二章・Ev'ry Smile Ev'ry Tear
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奪われたモノ

 『前回のあらすじ』

 予期せぬ津波に呑まれ、海中を沈む貴紀へ救いの手を差し伸べたのは──紫音真紀とムピテだった。

 バブルラッパの効果で作ったシャボン玉に入り、海底にある里へ向かい手荒い歓迎で出迎える調律者に仕える者、アルファ。

 戦闘も無く任務を終え跳び去るアルファを見届けた一行に話し掛ける旧支配者のクトゥルフは、貴紀の提案を受けるのであった。



 無事に海上集落・クーラへと辿り着いた自分達三人。ムピテから小さな桃色珊瑚を貰い、別れた。貰った物はマキの鞄行き。

 初めて此処へ来た個人的な感想としては、幾つも連結させたイカダの上に作った民家の集い場。……滅茶苦茶空気、悪いけどな。

 運んで貰っている時も思ったんだけど、この海──場所によって海水の色が違うっぽい。現在地の海水はやや黒い青色。


「この辺りも、暗雲に包まれてるのか」


「波は穏やか。だけどね」


 ムピテと出会った海域は光すら差し込まない暗雲に包まれ光源は雷雲の閃光だけ、海も大荒れ状態。

 二度この海に浸かって、分かった事が一つだけある。それは──レヴェリー(魔神王軍)の関係者や高位魔族の使う魔法。

 終焉の地にとても似ていた。体の自由を奪う様に絡み付き、犠牲者を……仲間を増やそうとする無数の意思を感じた。


「……もしかして、この海」


「オイオイオイ。俺達より先に到着してるとはなぁ。まだこの集落で何も食ってないだろうな?」


「食べてないよ。丁度此処に着いたばかりだし」


 普通とは異なる海を見つつ考え事をしていたら、マキにずっと見られていて。

 視線に気付いて振り向くと、海に目を向けて話し始めた──矢先此方に近付き話し掛けるやや怒り気味の渋い声に出端(ではな)を挫かれる始末。

 声の主はスカルスネーク海賊船の船長、パイソン。怒ってるっぽい理由は幾つか頭に浮かぶも、どれか分からず素直に答え。

 話を中断されたマキを見ると頬を膨らませ、そっぽ向いており妹みたいで可愛らしく、思わず微笑んだ。


「さっさとスカルスネーク号に戻るぞ。余り此処に居るべきじゃねぇしな」


 最低限話すと有無を言わさず来たであろう道を戻り始める為、自分達はどうするかお互い顔を見合わせた後。

 パイソンの後を追い、停泊している海賊船へと帰還。フュージョン・フォンを開き時間を見る。

 現在時刻は午後八時ちょっと。あ、今気付いた。防水性機能高いな、この携帯電話。で、今は何をしているかと言うと……


「魚のつみれ鍋、完成。マキィ~──は無理せず少し休んでな?」


「う、うん。ちょっと休憩、したら、また手伝うから」


「あはは……紫音さん、ずっとキッチンと食堂を往復してますもんね」


 大人数の料理を台所で作っていた。何故かって? 津波に呑み込まれて心配掛けた迷惑料と。

 それを追い掛けて自ら海へ飛び込み、チームワークを乱した罰で料理当番だってよ。まあ、自業自得だから二人して文句の一つも言えねぇ。


「あいよ。魚のつみれ鍋でござぁ~いっ」


「オホォ~ッホホホホォォッ!! コイツは実に良い香りをしている! しかも──あぁ、コレも予想通りに旨い!!」


「てか、鍋デカ過ぎて調理や持って来るのも大変なんだが」


「気にするな、坊主! 大所帯では最低限、これ位なくてはあっと言う間に空っぽよ!」


 持って来た大鍋を長方形のテーブルにそっと置き、蓋を開けるとパイソンや船員達は漂う香りを楽しみ。

 船長が一口食べるまで待つ。いやいや、父親優先の家庭かっつうの。取り敢えずまあ、お口に合ったようで何より。

 感想を述べたのを合図に、話している間に我先にと鍋の中身を掬い出しては頬張って行く船員達。

 その光景を見て言われた通り、普通の鍋じゃ数分足らずで空っぽになると予想出来た。因みに大鍋のサイズは、通常の四倍の大きさ。


「次は傷み易い果物や野菜系にするよ?」


「おう。こんな旨い飯ならどんな品でも大歓迎だ!」


 普通に鰹節とか醤油とか有ってそれを使ったのに、それを旨い飯って……普段どんな飯を食ってたんだよ。

 そうこう思いつつ食堂を出て右へ二つ目の部屋である台所へ戻る。それからどれ位経ったのか、台所へ誰かやって来た。


「ホッホオォ~……コイツは意外だ。てっきり金髪嬢ちゃんの手料理かと思っていたら」


「何だよ。男の手料理じゃ駄目ってか?」


「いやいや。逆だ逆。どうも料理は女の仕事って認識が強くてな」


 恐らく、誰の手料理かと見に来たんだろう。生憎マキは料理をさせたら、全く別の品を完成させるからな。

 魚を焼かせてつみれを完成させた時には思わず、なんでやねん! って突っ込んだよ。で──

 まだそう言う認識の人、いるんだね。最近は料理をしない女子も増えてるしなぁ~、そんな幻想を夢見るのは止めるのも一手だよ。


「もしかして、追加の注文?」


「いや。アイツら、好き放題飲み食いして馬鹿騒ぎしたら寝ちまってなぁ。故に、話をしに来た」


 追加注文かと思いきや、船員達は酔い潰れて眠ったらしい。で、暇潰しに話に来たと。

 今作ってるジャガイモと人参の皮フライ、骨煎餅やらは自分達の飯に回そう。まだ食えてないし。


「船へ戻る道中、集落の連中を誰か一人でも見たか?」


「いや、少なくとも自分は見てないな」


「うん。私も、見てない」


 そう言うとパイソンは椅子に座り、ビールジョッキを片手に「だろうな」と言った後、グッと一気飲み。


「あの集落は、此処より東部に在る島から逃げて来た連中の溜まり場だ」


「逃げて来たって、何か酷い仕打ちでも受けてるんですか?」


「あぁ、受けている。一方的かつ一方通行。普通の精神じゃあの島での出来事は、かなりキツいだろうな」


 曰く、海上集落はとある島より逃げた人の流れ着く先であり、此処へ辿り着いた者は酷く悔やみ死ぬんだとか。

 ショッキングな出来事の起こっている島。近寄りたくはないけど、絶対に行かなきゃ駄目な予感。ゲーム的な展開だとそうだし。


「此処に長居する連中は全員、奪われちまうのさ。色んなモノをな」


「連日続く嵐でやむを得ず停泊してた時、船員さん達は……」


 話を纏めるとこうだ。海上集落・クーラに居るのは別の島から逃げて来た連中であり、何かを奪われ最終的に死ぬ。

 脱落した複数の船員達は生きる意欲、勇気を奪われて投身自殺。でも死体は残らない。何故か──


「此処はな。ゲミュート(心情・情意)って化けモンの縄張りなんだよ」


「超巨大で、半透明で、蛇みたいな体の……」


「貴紀君。それって」


 ナイトメアゼノ・ゲミュートの縄張り故に、とは。もっと言えばオルタナティブメモリーを持ってて。

 他二体の仲裁かどうかは知らんものの、自分まで巻き込んで海へ落とした奴じゃん!


「たまにな。完全に異物感漂う奴も見掛けるんだわ。まるで別の生き物を継ぎ足したような奴だ」


「──!?」


「紅、くん?」


 名前こそ出て来なかったけれど、何を伝えようとしているのか。それだけは、嫌と言う程と分かった。

 それと同時に背筋が凍り、心臓を鷲掴みされるような感覚、絶対的恐怖に襲われた。奴には勝てない、シオリの様な犠牲者を出してしまう、と。

 クソッ。自分もじゃないか、大切なモノを奪われているのは!! ……もう一度、奴と本当の意味で向かい合わなきゃ駄目だ。

 ナイトメアゼノ・ホライズン──待っていろよ。今はまだ無理でも、必ずお前と同じ舞台に立ち、決着をつけてやる。俺達の力で!


「……頑張ろうね。私達みんなの力を合わせて、ホライズンに勝とう」


 事情を知っているマキは此方の心情を察し、微笑みながら励ましの言葉を言ってくれて。

 パイソンと心情ゆかりは全てを理解出来てないけど、名前と勝つと言う言葉からある程度は察した顔をしている。


「さて──これからどうする?」


「うぅ~ん。自分達は此処へ情報収集に来たんだけど、誰も居ないっぽいしなぁ」


 今後の行動を聞かれるも、此処で情報収集と言う出端を挫かれたのは痛く、ポロッと喋ってしまう。

 すると「ゲミュートの餌になった後っぽいからな」そう言われ、ある意味選択肢も奪われていると錯覚する始末。

 行ける場所と時間、食糧と飲み水の問題。これは何度もあの島(セメタリー)を行き来し、この海を色々と調べる必要がありそうだ。


「先ずは食糧と飲み水の調達に向かおう」


「ほう。何故そう思う、坊主」


「飲み水も食糧だって、まだ数日分は持ちますよ?」


 提示した提案は、飲み水と食糧問題の解決。椅子の背凭(せもた)れに体重を乗せ、テーブルの裏面に爪先を当て安定させ続く言葉に興味津々な船長。

 確かに心情ゆかりの言う通り、まだ数日は持つ。地獄への片道切符ならそれで十分だ、けどそうじゃない。

 特に一番問題なのは、新鮮な果物や野菜不足から起きる壊血病(かいけつびょう)だ。コイツは体と精神を蝕む。それを説明したら──


「ハッハッハッ! その通りだ、坊主。俺様は一度それで失敗してな、大切な船員を多く失った」


「台所に立ち、料理を振る舞う。それも誰かの命を背負い助けれる仕事なんでな」


 船長は説明を認めるように笑った後、真面目な顔をして自身の失敗を話した。

 船長や指揮官など、他人の命を預かる役職って個人差はあれど強いプレッシャーを受ける。

 けど、自分自身としては料理人も誰かの命を背負い、預かる仕事だと思っている。調味料や食べ物一つで死んでしまう人間は特に……な。


「よぉ~し。セメタリー島へ戻るぞ」


「そ・の・ま・え・に、コレ飲んで」


「紅くん。これ、余ったオレンジの?」


 席を立ち行動しようとする船長を呼び止め、一杯のコップを手渡す。中身は余ったオレンジを使い、作ったジュース。


「なんだ、ジュースじゃねぇか」


「料理当番になった以上、此処は自分の戦場だ。酒飲んだ後は必ずそれを飲んで、少し休憩してから動く事!」


 普通の戦場は殺すか殺されるかの二択。でも自分の思う台所と言う戦場は、生かすか殺すかの二択。

 食べ物や飲み物も言わば薬であり、毒。救うモノと奪うモノ。それなら少しでも、毒としての要素を取り除きたい。

 心情ゆかりにも理由を説明し、三人でパイソンを説得して、その日は無理矢理にでも休ませ、まかない飯を平らげた。






 装備紹介・No.Ⅲ


 第二装甲・エックス(未知の)アーマー


 最初から装備しているパワードスーツであり、戦闘と生存に対して必要最小限の機能を備えたアーマー。

 五つのパーツ(胸部・四肢)と、内側に着込むサヴァイブ(生き残る)スーツによって、外部からのダメージを最小限に抑えている。

 第二装甲単体で着込んだ際の弱点は高温や低温、サヴァイブスーツを着ても超高度や水圧に対処出来る機能が無い点。

 安全措置として、全身にリミッターが備わっている。カラーリングはサヴァイブスーツと同じく、全体的に黒で統一。


 スーツ内を冷却、暖房など出来ず装着者に多大な負荷を与え、超高度や水圧などには第二装甲が対処出来ない。

 その弱点を補う為、第二装甲の機能を一から見直し強化パーツとして製造されたのが、第三装甲。

 因みにこのパワードスーツは、作中で何度も改修など何かしらの際にデザインや細部・一部構造が変更されている。


 初登場は序章・第九話『滅亡への序曲』この時は身長百九十cm、緑色の逆三角形バイザー、黒いスーツの上に赤・青・白の第三装甲・一号装備済み。

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