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ワールドロード  作者: オメガ
序章・our first step
1/384

プロローグ

<R15>15歳未満の方はすぐに移動してください。


この作品には 〔15歳未満の方の閲覧にふさわしくない表現〕が含まれています。


苦手な方はご注意するか、ブラウザバックしてください。



 世界と言う概念が生まれ、宇宙に沢山の星々と命が生まれた後。星そのものが煮え滾るマグマで赤く、無数にひび割れた大地を流れていた。

 暗雲漂う真っ暗闇の中。青い稲妻が地表へ何度も降り注いでは、幾度となく亀裂まみれの大地へ落ち、鼓膜を破らんとする雷鳴が轟き落下地点を黒く焦がす。

 そんな時だった。分厚く雷鳴轟く暗雲の遥か上空から流星の如く突き破り、生命が住めない星へ二つの球体が争い合いながら、舞い落ちて来たのは。

 一つは真っ赤に燃える紅い光、もう一つは気味の悪い黒紫色の闇。


「やれやれ。こんな辺境の星まで追い掛けてくるとは……」


「君が行うその行為を、私は許す事は出来ない」


 遥か遠く離れた星まで執拗に追い掛けられ、闇は呆れ気味の気だるげな男性の声で言い放つ。

 そんな闇とは対照的に、光はやや若い男の怒り気味な声で言い、闇がやっている行為を否定する。


「俺が行う行為を……ねぇ」


「俺が行う行為は食事だ。それを罪と言うか」堂々と言い、自身に罪が無い事を主張。

 話を聞くだけだと、何の罪も無さそうに思えるし、光が悪くも思える。生命体にとって、食事とは生きる為には極々当たり前に必要な行為。

 これが罪だから罰する。ともなれば、待ち受けるのは死と言う概念だけ。


「その食事の為に、星が幾つ消滅したと思っている」


「さて、な。それに……だ。俺が行う食事は、全ての命にとっての救済となる」


「私は聞いた。君に呑み込まれる星々、命の悲鳴を」


「なんだ、そんな事か」


 ただの食事……と思いきや。食料はありとあらゆる生命の他に、惑星も含まれ。

 一口で惑星と其処に住む生命全てを丸呑みにし、自身と同化させる行為を、光は見た。

しかし幾ら言っても「それは一時的な悲鳴、後々歓喜の声になる」

 自信満々にそう言われるも、光はその言葉に納得が出来なかった。


「命は弱い。それが故に完璧や永遠を求める」


 闇は知っていた。命は弱く、自身とちょっと違うだけで嫉妬し、求める。

 だからこそ愚かしくも完璧を求め、死を恐れる余り醜くも永遠の命を求め、肌色や生まれた故郷が違うだけで差別する事を。

 ならば完璧と永遠の命を得、差別を無くす方法はどうすればいいか?

 闇が導き出した答えは至極簡単。己と融合し同化すれば良い、それで全て解決すると。


「君の答えは……間違っている」


「間違ってなどいない。俺こそが救世主、そして俺が与える救済こそ、宇宙に必要だ」


「命は確かに弱く、儚い。だからこそ」


「己の欲望の為に他者を蹴落とし、遂には己が母星をも滅ぼすぞ」


 ぶつかり合う意見。自身が救世主であり、自身の行為こそが宇宙に必要な救済だと主張。されどその思想、考え方は間違っている。

「命は弱く儚いからこそ、一生懸命生きる」のだと主張すれば。

「命はいつか、己が母星すら滅ぼす」と言い返し、光と闇の主張は終わらない。


「全てを取り込む事は、救済じゃない!」


「お前の考えでは命は自ら宇宙すら蝕み、滅ぼす!」


 二つは互いに空高く浮かび上がり、持ちうる全ての力を体に溜める。

 お互いに自身の主張が正しいと証明する為、全力でぶつかり合い、眩しい光が何度か起きた。

 直後、暗雲を払い除ける衝撃が広がる。

 二つは反発する様に互いの力が弾き飛ばされ、星全体へ飛んでいってしまった。


「辛うじて……封印こそ出来たが、復活の恐れもある。ともなれば」


 僅かに残った赤い光も力を使い過ぎてか、七つの小さな光を、各地へ散り散りに飛ばす。

 先のぶつかった衝撃で星が分裂する危険を感じ、虹と同じ七色の結晶を生成。

 残る力を全て使い、自身が降り立った土地。

 その地下深くに結晶を埋め、赤い光は闇夜に消え、気が遠くなる程の遥か長い年月が過ぎる中、人間や魔族が生まれた。





 その惑星は超古代人が、永久の友人との約束を果たす為、ワールドと名付け。

光と闇の衝突で世界中に散った両者の欠片から、手探りで魔法や奇跡、機械を編み出す。

 願いと償いを込めた七つの遺産を創り、自身らも世界各地へと散った。時代は過ぎ、人類の多くは扱い切れない魔法をよりも。

 制御し易い機械を選び、恐るべき勢いで発展を遂げ、魔族との戦争は決着がつかず。

 時間だけが過ぎ。現れた最大の災厄に対し、全てを三人の若者と、種族の違う4匹に託した。


「と、言う訳だ。判ったか?」


「あぁ。討伐対象は魔神王、自分達は生け贄だと言う事が判った」


「ん~……まあ、漸く魔神王が待ち構える時空の狭間。その最深部まで辿り着いたしな」


「きっと此処が最後の休憩場所になる筈。十分休んで、万全の体調で行きましょう」


「と言うかだな。二人が選ばれたのは判るんだが」


 男二人と女一人、そして4匹の仲間を連れて魔神王なる存在を倒すべく。

 全ての時間と空間が歪み、捻れる世界の最深部まで、誰一人欠ける事無く辿り着いた一行。

 来た道も休憩する場所も、薄く青い硝子の様な板が一枚あるだけ。一歩間違えて落ちれば。

 不安定な時空に呑まれ、生死確認はおろか、元の時代に戻れるかは不明。

「何故落ちこぼれの自分にまで、白羽の矢が立ったのか?」不安と疑問を溜め息混じりに口へ出す。


「保険だろ。ところでよ」


 無造作に首元まで伸ばした碧色の髪。前髪に一部、黒色が残る長身の男性は赤いジージャンを着。

 内側には白シャツ、赤い長ズボンを穿き、気だるげな赤い眼を向けて微笑み。

「遥か遠い昔、闇を封じ込た赤い光の伝説。知ってるか?」等とそのまま話し続ける。


「知ってるけど、それがどうしたの?」


「噂じゃ光と闇が生まれ変わって、肉体を持ち、今もなお争ってるって話だ」


 ポニーテールにして尚、背にかかる黒髪ロングの女性が返事を返すと。

 男は伝説に登場する光と闇の噂を話、「馬鹿馬鹿しいよな」

 笑いながら言う姿をよそに、女性は自らが着る黒いドレスと似た、軽鎧へ付いた埃を払い落とす。


「終焉。例え噂が本当だとしても、今は全く関係無い話よ」


「へいへい。全く……なあ、貴紀(たかのり)。お前は何をしてるんだ?」


「この子達へご飯をあげて、今は『パワードスーツ』の最終調整中」


「はぁ……ペットを此処まで連れてくるか、普通」


 噂の真偽がどちらにせよ、今は関係無い。

 注意され、終焉と呼ばれた男は、話し相手を三人目の仲間にして。

 紅い小龍と灰色の狼、白い四尾の狐と白蛇を連れてきた貴紀へ変え、現在の行動を訊ねる。

 名前を呼ばれた者は紅いパワードスーツと言う、機械仕掛けの身体強化服を着込んでおり、緑色のバイザーが邪魔で素顔は見えないが。

 左腕に浮かび上がる映像を触り、機能の最終調整を行っている最中。


「ペットじゃない。この子達は、自分の家族だ」


「あぁ~……悪かった。そんじゃ、魔神王の所へちゃっちゃと行こうぜ」


 直後、訂正を求めるかの様にやや怒り気味に言われ、余計な地雷を踏んだと理解。

  手短に謝罪し、自身らの到着を待ち構える魔神王が待つ、最深部の奥へ進もうと進言。

 サクヤと貴紀も異存は無く、一行は最後の休憩を終えて進んで行く。

 何もない一本道を下へ下へ、奥へ奥へ進んで行くと。

 より一層時空が捻れている、オレンジ色の硝子床以外、固形物は何もない場所に出た。


「本当によろしいのですか。魔神王様……」


「構わん。俺が完全復活する為だ」


 其処では黒服の女神官と、禍々しく渦巻く黒紫色の水晶玉が。

 三人と4匹に気付かず、何やら話している。

 近付いてくる足音に気付き、振り向いては水晶玉を守る様に前へ出ては、十字架の杖を構え。

 侵入して来た三人が離れた距離的に聞こえない、小さな声で何かぶつぶつと唱え始めた。


「終焉、貴紀。行くわよ」


 仲間の名を呼び、必要な一言だけ伝えれば、意味を理解した一行は素早く散開。

 正面左右へと分かれ、更には広い空間を利用し縦横無尽に動き回って、狙いを絞らせない。


「汝を焼き払うは赤き放火! っ……速くて、ね、狙いが」


「捕まえた。サクヤ!」


「汝を捕らえるは光の鎖!」


 相手が動き回る為、直線的な魔法しか唱えない黒服女神官は、火球を続けて連射するも。

 相手へ命中せずに空を切り、移動し避けられた後へ落ちて爆発するだけ。

 漸く視界に捉えるも背後へ回り込まれ、振り向く直前。顔や脚に小龍達が張り付き、貴紀には腕を掴まれ。

 名前を呼ぶだけでお互いに理解し合い。

 魔法を唱え光の鎖が放たれると、貴紀は拘束していた手を放し、素早く離れれば鎖は黒服女神官を縛る。


「我纏うは鋼鉄の豪腕!」


 守護者の黒服女神官も、魔法と男女一組で二重に取り押さえられて動けず。

 宙に浮かぶ水晶へ歩いて近付いた終焉は、呪文を唱え終えると黒い魔力を拳に纏い。

 力一杯振り下ろした拳骨が水晶を捉えた時、硝子が割れた様な音を鳴らし、水晶は粉々に砕け散った。


「あばよ。名ばかりの魔神王」


「これで、自分達の任務は終わりか」


「生きて帰るまでが任務よ」


 呆気なくも終わった魔神王討伐に、二人は緊張の糸が解け、胸を撫で下ろし安堵する。

 しかし勝った時こそ気を引き締めて直し、生きて帰還するまでが任務。

「最後まで油断は出来ないわ」サクヤの忠告を聞き、緩んだ気を引き締め直す。


「へいへいっと。コイツも連れて帰らねえとな」


「帰還後も超古代遺跡の調査任務があるし。早く帰ってゆっくり休みましょう」


 魔法で縛った黒服女神官を担ぎ、気だるげながらも帰路を歩む終焉。

「時は乱れ……過去現在未来。全てが入り乱れる」呟く黒服女神官を見て、変な夢を見ているんだな。そう思う一行。

 帰還後も別の任務が与えられる為、早い帰還とキチンとした休息が求められる。

 周囲の警戒も含め、前へ先に進むサクヤはだが、足取りは後方の二人よりも早く、焦り気味。


「でもよぉ。サクヤ、相棒との結婚式はもう間近だろ」


「っ……そうよ。だからこそ早く帰還して、調査を終えたいのよ」


「惚れ合って付き合ったのに結婚しねぇ。そんなお前らに腹が立ってたんだよ」


「ん、どうし……!?」


 されど二人は周りが計らってくれたお陰で、結婚式の日が近い。

 帰還して調査を終え、二人揃って申請した連休中に結婚式を挙げる予定。

 貴紀も一緒に戻ろうとしたが、割れた水晶へ向かって警戒心を剥き出しに、威嚇する4匹。

 未だ警戒する4匹へ近付き、連れ帰ろうと屈んだ。

 次の瞬間──空間諸共床が激しく揺れ動き、一行はバランスを崩し、座り込んでしまう。


「みんな、何かに捕まって!」


「捕まって、ってなぁ。此処は小石一つも無いんだぞ」


 立つ事さえも難しい程の振動が、水平に浮いていた硝子床が激しく左右へ揺れ動く為。

 何かに捕まる様言われても、此処は平らな板も同然で、端っこしか掴めない。

 例え掴んでも落下の恐れは高く、歪み捻れた時空へ落ちたら何が起きるか、予測不能。


「二人共。吸着系の魔法だ」


「そうか。そんな魔法、使う事は無いと思ってたが…」


「流石ね。魔法が使えないのに、ちゃんと覚えてるだなんて」


「我掴むは不動の位置!」


 4匹の仲間を右腕で抱き抱え、自身は左手甲から床へ伸ばす青い光を放ち、吸着させる。

 吸着魔法など使わない為、忘れていた二人は言われて思い出し、手に纏った緑色の魔力で床に引っ付く。

 一分が十分に感じる時間の中、硝子が割れる様な心地悪い音が、不安定な空間へ響き渡る。


「い、今の音は……まさか」


 三人の悪い予感は見事的中。

 予感通り、張り付いていた硝子床が真っ二つに割れ、それを切っ掛けに。

 ひび割れる音が続き、連鎖的に床は細かく割れ始めた。

 割れた床は浮力を失い、四人と4匹はそれぞれ捻れ歪んだ時空に落ち、次々消失する中。


「これで……これで魔神王様が、完全復活なされる時間が稼げる!」


 取り押さえられる前に呟いていたのは、この不安定な時空間を崩壊させる呪文だったらしく。

 不安定な時空に呑み込まれる直前ですら、仕え崇める魔神王の完全復活。

 その時間稼ぎが出来た事を誇りに思い、歓喜の笑みを浮かべながら消えていった。


「サクヤ、終焉っ……絆、(れん)(まな)静久(しずく)ー!!」


 離れ離れになって行く仲間達。幾ら名前を呼ぼうとも誰からも返事は無く。

 遂には全身を呑み込まれ、捻れ歪んだ時空に歪められながら、時間軸と空間をさまよう。





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