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小野寺麻里奈は全校男子の敵である  作者: 田丸 彬禰
第十一章 光と闇の邂逅
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続 がーるずとーく Ⅷ

 千葉県の田舎にある千葉県立北総高等学校通称北高。


 その敷地の端にポツンと建つ古い木造校舎の一室では、この部屋を部室として占拠している関係者たちが実はお仕置きされることが大好きだという噂の唯一の男子部員の悲しい性に哀れみを感じながらとりとめのない会話を楽しんでいた。


 それはまったく中身のないものである。


 しかし、彼女たちのことをよく知るすべての北高関係者は口を揃えてこう言う。


「部活動がおしゃべりをしているだけ?結構なことではないか。彼女たちがお菓子を食べて雑談しているだけで済むなら我々にとってこれほど幸せなことはない」


 教師たちが畏怖する彼女たちが属する組織。


 その組織こそ、悪名高き創作料理研究会であり、それを統べるのが、小野寺麻里奈なのである。


 さて、今日の舞台はいつもの部室ではなく教室である。


 あの事件があってからそれほど経っていない朝だった。


「お~来た。待っていたぞ」


 そう言って登校してきた麻里奈と博子を教室で出迎えたのは、この学校の制服であるセーラー服さえ着ていなければ、かわいい男の子と表現しても問題がなさそうなショートカットが良く似合う同級生の少女だった。


「春香、パンツ丸見えだぞ」


「何かのサービスのつもりかもしれませんが、私たちは朝からハルピのパンツを見る変わった趣味もないですし、そもそもふたりともハルピのパンツなどには興味がないのでそういうものを見せてあげるのは恭平君だけにしてください」


「冗談ではない。誰があの愚かな変態にそのようなサービスをするものか。それよりも、これを見ろ」


 彼女が差しだしたのは女子高校生御用達の雑誌『In April』だった。


「これがどうした?私はこのようなものには興味がないのは春香だって知っているだろう。というか、春香だって見ないだろう」


「そうですね。うちのクラブでこのような本を見るのは若作りの参考にしている恵理子先生だけです」


「もしかして、宗旨替えをしてお嬢様を目指すことにしたのか?そのつもりなら、まず机の上で胡坐をかくのはやめたほうがいいな」


「まったくです。教室でパンツを開陳するお嬢様などこの世に存在してはいけません」


「余計なお世話じゃ。それにこれはあのおばさんから接収してきただけで、このようなものに眺める暇人に鞍替えをしたわけではないぞ。さて、私がこの本を持ってきた理由だが、それがこれだ。見ろ」


 そう言って少女が見せたのは歯が浮きそうなコメントがついた雑誌の巻頭に大きく載せられた若い男女が写る写真だった。


「見覚えがあるだろう。これを」


「それはあるよ。自分の兄貴だから」


「そうですね。たしかにお兄さんです」


「いや。私が聞きたいのはまりんの兄貴の隣にいるこのちっこい生き物のことだ。見たところ、ここはお台場のようなのだが、なぜそのような場所にまりんの兄貴とこの小動物がいるのだ?」


「なぜと言われても……ヒロリンが答えなよ」


「それは一緒にお台場に遊びにいったときに雑誌の取材を受けたからではないでしょうか?」


「おい、答えになっていないぞ。だが、ゴジマがやってくる前に肝心の話まで辿り着く必要があるからとりあえずいいことにしてやる。それで、これはいつ撮影したものなのだ?」


「知らんがな。いや、そういえば兄貴が春休みに東京に行ったときに雑誌の取材を受けて軽くモデルの仕事をやったとか言っていたな。その時のものなのかな?」


「お兄さんがそう言うのならそうなのでしょう。……それにしてもお兄さんの隣にいるこの六花さんは本当にすてきですね。私もこのようなきれいな女性になりたいものです」


「……おい、ヒロリンがそれを言うのかい」


「まったく白々しいにも程がある言い草だ。それから六花などと偽名を使うこの怪しげな小動物は年齢もごまかしているぞ。何が十九歳だ。実際はまだ十五歳だろうが。それなのに小動物の分際で大人とデートとはなんと生意気な。不純異性交遊で訴えてやる。当然雑誌のモデルも無届けのアルバイトとなるので校則違反案件だ。すべてゴジマに通報だ」


「春香、もうやめておけ。不純異性交遊で捕まるのは兄貴だけだ。まあ、面白そうなのでそれはそれで構わんが。だが、無届けアルバイトは入学前のことだからゴジマに管轄外だと門前払いを食らうだけだぞ。そもそもこの六花とヒロリンが同一人物だとゴジマに認定されるのは相当な骨だと思うぞ」


「くそっ」


「この程度のことでうろたえるとは実にみっともないハルピです」


「うるさい。とにかくリア充は軽く爆発すればいいのだ。早く爆発しろ。ヒロリン」

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